こんにちは、薬Talk編集長、薬剤師のNoriです。
「熱中症が心配だから、毎日OS-1飲んでます!」
そんな声を薬局でよく耳にします。でも実はそれ、ちょっと危ないかもしれません。
経口補水液は、体が本当に脱水状態にあるときにだけ使う“医療的な飲み物”。
日常的に使うと、かえって体調を崩してしまうこともあります。
この記事では、経口補水液とスポーツドリンクの違い、正しい使い方、飲むタイミング、
さらに製品比較表まで含めて、薬剤師の視点からやさしく解説していきます。
目次
【1】経口補水液とは?スポーツドリンクとの違い
経口補水液(ORS)は、水分と電解質(ナトリウムやカリウム)を効率よく補給する飲料です。
脱水症状の際に、体に必要な成分をすばやく吸収できるよう設計されています。
一方、スポーツドリンクは糖分補給を主目的としており、塩分濃度が比較的低めで

【2】経口補水液を飲むべきタイミング
次のような場面では、経口補水液の出番です:
- 発熱・嘔吐・下痢などで水分が失われたとき
- 炎天下での屋外作業やスポーツ後
- 高齢者のふらつき・口渇があるとき
- 二日酔いで頭痛・倦怠感がある朝
✅ 喉が渇いたと感じたときには、すでに軽度の脱水が始まっています。
【3】正しい飲み方と注意点
🔹飲み方のポイント
- 一気に飲まず、数口ずつゆっくり摂取
- 嘔吐・下痢時は、5〜10分おきに少量ずつ
⚠️注意が必要なケース
- 腎機能に問題のある方(塩分の排泄に支障がある場合)
- 心不全などで水分制限がある方
👉 不安がある場合は、医師や薬剤師にご相談を!
【4】市販の経口補水液の特徴比較
商品名 | 特徴 | 補足 |
---|---|---|
OS-1(大塚製薬) | 医療用に近い組成、脱水対策の定番 | ドラッグストア・病院で入手可 |
アクアソリタ | マイルドな味、飲みやすさ重視 | 小児や高齢者にもおすすめ |
アクエリアス経口補水液 | 甘みあり、組成バランス良好 | コンビニ・スーパーでも入手しやすい |
ポカリスエット | 糖分多め、水分補給に適するが電解質はやや少ない | 日常の水分補給向け |
【5】よくある誤解とリスク
❌「毎日予防のために飲んでいる」
→ 塩分・糖分の過剰摂取でむくみや高血圧、吐き気の原因に。
❌「スポーツドリンクの代わりに使っている」
→ 経口補水液は治療目的の飲料。日常的な水分補給には不向きです。
❌「運動前に飲むと安心」
→ 予防ではなく、脱水が起きてから使うものです。
【6】実際の事例紹介
以前、薬局で20代の男性からこんな相談がありました:
「毎日OS-1飲んでたら、むしろ気持ち悪くなってきて…」
詳しく聞くと、冷房の効いたオフィスでデスクワーク中心の生活。
脱水でも何でもない状態で、毎日OS-1を飲んでいたのです。
→ 普通の水や麦茶に戻したところ、数日で症状は改善しました。
【7】まとめ|経口補水液は“飲み薬の一歩手前”
経口補水液は、医薬品ではありませんが、**用途を誤ると体調を悪化させる可能性もある“医療的飲料”**です。
- 「喉が渇く前に予防的に飲む」 → ❌
- 「熱中症っぽいかも…」 → ✅ 正しく使うタイミング!
体調・場面に合った使い方が何よりも大切です。
📚参考文献・出典
- 大塚製薬「OS-1」公式サイト|https://www.os-1.jp
- 厚生労働省「熱中症関連情報」|https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000175380.html
- WHO「Oral Rehydration Salts」|https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/diarrhoeal-disease
- 日本小児科学会「下痢症に対する経口補水療法」|https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/2017_ers.pdf