経口補水液は「病者用食品」です|毎日OS-1という患者への答え方と、添付文書が水分補給を指示する薬

経口補水液の使い方と注意点 飲み過ぎのリスク、デメリット、スポーツドリンクとの違い OTC・健康管理
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「熱中症が心配だから、毎日OS-1を飲んでいます」

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薬局でよく聞く話です。これに何と答えるか。「それは違いますよ」で終わらせると、次に本当に必要な場面で飲んでもらえなくなります。

そして逆に、添付文書のほうが「水分補給を指導すること」と薬剤師に求めている薬もあります。飲ませるべき患者と、そうでない患者がいる、という話です。

50mEq/LOS-1のナトリウムスポーツドリンクは9〜23
1.8%ブドウ糖スポーツドリンクは6〜10%
1.5g食塩相当量(500mL)毎日飲む量ではありません

OS-1は清涼飲料水ではありません

まず位置づけから。OS-1は特別用途食品の「個別評価型病者用食品」です。根拠は健康増進法にあります。

販売に供する食品につき、乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用その他内閣府令で定める特別の用途に適する旨の表示(以下「特別用途表示」という。)をしようとする者は、内閣総理大臣の許可を受けなければならない。

許可制です。申請には製品見本、原材料の配合割合、製造方法、成分分析表を添えることが同条第2項で求められ、第3項では「研究所」(=国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所)又は登録試験機関による許可試験を行わせるとされています。

その許可を受けた表示が、これです。

オーエスワンは、脱水症のための食事療法(経口補水療法)に用いる経口補水液です。軽度から中等度の脱水症における水・電解質の補給、維持に適した病者用食品です。

読み飛ばしやすいところを2つ。

  • ◻️ 「食事療法に用いる」——予防のための飲み物とは書かれていません
  • ◻️ 「軽度から中等度の脱水症における」——脱水していない人は対象外です

許可表示の文言に「予防」も「日常」も入っていない。ここが、毎日飲む使い方と食い違います。

なお許可の取得時期は、オーエスワンが2004年12月、ゼリーが2006年12月、パウダーが2012年3月です。パッケージに付いている許可証票(マーク)は、この許可を受けた印になります。

経口補水液とスポーツドリンクの電解質組成の比較。OS-1はナトリウム50mEq/L、スポーツドリンクは9〜23mEq/L
出典:大塚製薬工場「経口補水液の電解質組成」(WHO/ESPGHAN/米国小児科学会の各指針より)
健康増進法第43条の条文を並べ、特別用途食品が許可制であることを示した図。第1項は乳児用、幼児用、妊産婦用、病者用その他内閣府令で定める特別の用途に適する旨の表示をしようとする者は内閣総理大臣の許可を受けなければならないと定める。第2項は製品見本を添え、商品名、原材料の配合割合及び製造方法、成分分析表、許可を受けようとする特別用途表示の内容等を記載した申請書の提出を求める。第3項は研究所又は登録試験機関に許可試験を行わせるものとする。第5項は許可をしようとするときはあらかじめ厚生労働大臣の意見を聴かなければならないとする。第6項は許可に係る食品を特別用途食品と定義し、内閣府令で定める事項を表示しなければならないとする。許可の対象は商品ではなく表示である
健康増進法(平成14年法律第103号)第43条 第1項・第2項・第3項・第5項・第6項(e-Gov法令検索)

組成を並べると、別物だと分かります

「スポーツドリンクを薄めたようなもの」と思われがちですが、逆です。

Na
(mEq/L)
K
(mEq/L)
Cl
(mEq/L)
ブドウ糖
(%)
浸透圧
(mOsm/L)
WHO-ORS(2002年)7520651.35245
ESPGHAN6020601.6240
米国小児科学会
経口補水療法指針(維持液)
40〜6020―2.0〜2.5―
オーエスワン5020501.8
(炭水化物2.5)
約260
スポーツドリンク9〜233〜55〜186〜10―
ミネラルウォーター0.04〜4.040.04〜4.04―――
出典:大塚製薬工場「経口補水液の電解質組成」(WHO/ESPGHAN/米国小児科学会の各指針より)

ナトリウムは3〜5倍、糖はむしろ低い。薄めたものではなく、設計思想が違います。

なぜ糖を低くするのか

糖を増やせば水分の吸収が速くなる、わけではないからです。

小腸のナトリウム・グルコース共輸送体は、ブドウ糖とナトリウムを一緒に取り込みます。だから糖は必要です。ただし糖が多すぎると管腔内の浸透圧が上がり、かえって水を腸管側へ引き込みます。浸透圧性下痢の方向です。

WHO-ORSが2002年に低浸透圧組成(245 mOsm/L)へ改訂されたのも、ここが理由です。OS-1の約260 mOsm/Lも同じ思想の中にあります。

下痢や嘔吐で脱水している患者に糖の多い飲料を勧めると、下痢を悪化させる方向に働きます。「甘いほうが飲みやすいから」で選ぶ話ではありません。

どれくらい失われているのか

失われる経路食塩相当量
汗(500mL)1.3g
おう吐(400mL)1.4g
下痢(400mL)0.2〜2.1g
出典:北岡建樹「チャートで学ぶ輸液療法の知識」南山堂 2002/井上知己ほか 医学のあゆみ 1997;183(9):643-649 より算出(大塚製薬工場の資料による)

OS-1は500mLで食塩相当量1.5g。上の喪失量と釣り合う設計です。スポーツドリンクは500mLで約0.5〜1gなので、嘔吐や下痢の塩分喪失には足りません。

添付文書が「水分補給を指導すること」と書いている薬があります

ここからが薬局の話です。SGLT2阻害薬の添付文書を見てください。

本剤の利尿作用により多尿・頻尿がみられることがある。また、体液量が減少することがあるので観察を十分に行い、適度な水分補給を行うよう指導すること。特に体液量減少を起こしやすい患者(高齢者、腎機能障害のある患者、利尿剤併用患者等)においては、脱水や糖尿病ケトアシドーシス、高浸透圧高血糖症候群、脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の発現に注意すること。

「指導すること」です。努力目標ではありません。そして続く9.1にも明記があります。

9.1 脱水を起こしやすい患者(血糖コントロールが極めて不良の糖尿病患者、高齢者、利尿剤併用患者等)

9.1.1 本剤の利尿作用により脱水を起こすおそれがある。

そして高齢者の項に、見落とせない一文があります。

脱水症状(口渇等)の認知が遅れるおそれがある。

つまり——「のどが渇いたら飲んでくださいね」が通用しない患者がいる、と添付文書が言っています。

高齢者でSGLT2阻害薬、そこに利尿薬が乗っている。この組み合わせは薬局でよく見ます。渇いてから飲む設計では間に合わないので、時間を決めて飲む形に変える必要があります。

① SGLT2阻害薬+利尿薬の併用がないか

② 高齢者か(口渇の認知が遅れる)

③ 夏・発熱・下痢など、喪失が増える場面が重なっていないか

④ 重なるなら「渇いたら」ではなく「起床時・入浴前後・就寝前」と時刻で伝える

ただし、ここで勧めるのは水やお茶です。経口補水液ではありません。理由は次です。

利尿薬の添付文書も、同じことを言っています

SGLT2阻害薬の8.2が名指ししていた「利尿剤併用患者」。その利尿薬のほうを見ると、こう書かれています。

8.1 本剤の利尿効果は急激にあらわれることがあるので、電解質失調、脱水に十分注意し、少量から投与を開始して、徐々に増量すること。

8.2 連用する場合、電解質失調があらわれることがあるので定期的に検査を行うこと。

そして高齢者の項が、SGLT2阻害薬より具体的です。

・急激な利尿は血漿量の減少をきたし、脱水、低血圧等による立ちくらみ、めまい、失神等を起こすことがある。

・特に心疾患等で浮腫のある高齢者では急激な利尿は急速な血漿量の減少と血液濃縮をきたし、脳梗塞等の血栓塞栓症を誘発するおそれがある。

・低ナトリウム血症、低カリウム血症があらわれやすい。

SGLT2阻害薬の8.2も「脳梗塞を含む血栓・塞栓症」を挙げていました。別の薬効群の添付文書が、同じ行き先を書いていることになります。脱水が怖いのは、ふらつきだけではありません。

ここで薬局が向き合うのが、患者が抱えている矛盾です。

病院では「塩分を控えて」「水分を摂りすぎないで」と言われている。

一方で添付文書は「適度な水分補給を行うよう指導すること」と求めている。

——患者からすると、逆のことを言われています。

この矛盾を抱えた患者が、夏に「脱水が心配だから」と経口補水液を毎日飲み始める——これがいちばん危ない形です。食塩1.5g/500mLが、減塩指導の真横に入ってきます。

そして利尿薬は低ナトリウム血症・低カリウム血症を起こしやすい薬です。自己判断で電解質を含む飲料を常用すれば、定期検査で追っている値が動きます。「良かれと思って」が検査値を濁らせることがあります。

なおSGLT2阻害薬は成分ごとに適応が違います。心不全やCKDで出ているのか、糖尿病で出ているのかによって、併用薬の顔ぶれも変わります——SGLT2阻害薬6成分の適応比較にまとめました。

それでも「毎日OS-1」は違います

作っている大塚製薬工場自身が、こう書いています。

日常生活における水・電解質補給であればスポーツドリンクでも十分ですが、軽度から中等度の脱水症には経口補水液オーエスワンが適しています。

メーカーが「日常はスポーツドリンクで十分」と言っている。ここは説明に使えます。

そして薬剤師が気にすべきなのは、組成そのものが負荷になる患者です。

成分500mLあたり気になる背景
食塩相当量1.5g高血圧、心不全、腎機能低下——減塩指導と正面から衝突します
カリウム20 mEq/L
(500mLで10 mEq)
腎機能低下、RA系阻害薬・K保持性利尿薬の併用
炭水化物2.5%スポーツドリンクよりは低いものの、ゼロではありません

高血圧で減塩6g未満を指導されている患者が、毎日500mL飲めばそれだけで1日の目標の4分の1が入ります。心不全や腎不全ならもっと効きます。

「脱水が心配だから」と毎日飲んでいる人ほど、高血圧や腎疾患を持っていることが多い——年齢層が重なるからです。

止めるのではなく、「本当に脱水した日に取っておく」という伝え方のほうが通ります。

聞かれたときの答え方

場面何を勧めるか
発熱・嘔吐・下痢で水分が摂れていない経口補水液。許可表示どおりの使い方です
炎天下の作業・運動で大量に発汗した経口補水液。汗500mLで食塩1.3gが出ています
高齢者がふらつき・傾眠・口渇を訴えている受診を優先。意識障害や嘔吐があれば飲ませない
日常の水分補給・予防水やお茶で十分。メーカーもそう書いています
SGLT2阻害薬・利尿薬を飲んでいる水やお茶を、時刻を決めて。添付文書が指導を求めています

「毎日は違います」だけで終えると、次に本当に必要なときに買ってもらえません。いつ飲むものかをセットで渡すのが、いちばん効きます。

まとめ

  • ◻️ OS-1は特別用途食品の個別評価型病者用食品。健康増進法第43条に基づく許可制です
  • ◻️ 許可表示は「脱水症のための食事療法に用いる」「軽度から中等度の脱水症における」——予防も日常も入っていません
  • ◻️ Naは3〜5倍、糖は逆に低い。薄めたスポーツドリンクではありません
  • ◻️ 糖を低くするのは浸透圧を上げないため。糖が多いと水を腸管へ引き込みます
  • ◻️ SGLT2阻害薬の添付文書は「適度な水分補給を行うよう指導すること」(フォシーガ8.2)
  • ◻️ 高齢者は「脱水症状(口渇等)の認知が遅れる」(同9.8)。「渇いたら飲む」が通じません
  • ◻️ ただし勧めるのは水やお茶。500mLで食塩1.5g・K10 mEqは、毎日入れる量ではありません
  • ◻️ メーカー自身が「日常生活であればスポーツドリンクでも十分」と書いています

経口補水液は、飲み物の顔をした食事療法です。そう捉えると、勧める場面と止める場面がはっきりします。

参考にした一次資料

  • 健康増進法(平成14年法律第103号)第43条(特別用途表示の許可)
  • 大塚製薬工場「オーエスワンシリーズが消費者庁から許可を受けた表示と科学的根拠」(個別評価型病者用食品 許可表示)
  • 大塚製薬工場「OS-1の特徴1 脱水した身体に必要な成分」(経口補水液の電解質組成、症状別の塩分喪失量)
  • フォシーガ錠5mg・10mg 添付文書(2025年4月改訂 第7版)8.2/9.1/9.8
  • ラシックス錠10mg・20mg・40mg 添付文書(2026年4月改訂 第2版)8.1/8.2/9.8 高齢者
  • WHO-ORS(2002年)/ESPGHAN/米国小児科学会 経口補水療法指針の各組成

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