んにちは、『薬Talk』編集長、薬剤師のNoriです!
薬局で「片頭痛の薬、効かないんです…」という相談を受けたことはありませんか?
片頭痛は患者のQOLを大きく左右する疾患であり、服薬指導や生活支援の重要性が年々増しています。
この記事では、片頭痛の最新知見から治療薬の使い分け、予防的アプローチまでを、薬剤師目線でわかりやすくまとめました。患者さんとの対話や指導に、すぐに活かせる内容をお届けします。
目次
1. 片頭痛とは?|定義と疫学的背景
片頭痛(migraine)は、一次性頭痛のひとつ。主に以下の特徴がみられます:
- 拍動性の片側性頭痛(ときに両側)
- 持続時間は4〜72時間
- 悪心、嘔吐、光・音への過敏性を伴う
- 身体活動で悪化
日本における有病率は約8.4%で、特に30〜40代の女性に多いと報告されています(日本頭痛学会ガイドライン 2021)。
2. 発症メカニズム|CGRPと三叉神経血管説
片頭痛は以下の流れで発症すると考えられています:

✅ CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)は近年の注目ポイント。抗CGRP薬の登場は、片頭痛治療に新たな選択肢をもたらしました。
3. 誘因と生活因子|投薬時に押さえたいポイント
片頭痛の誘因は人それぞれ異なります。服薬指導時に確認すべき主な項目は以下です:
誘因 | 説明 |
---|---|
ストレス | 特に緊張が緩んだ週末に出現しやすい |
睡眠リズムの乱れ | 過眠・寝不足どちらもリスク因子に |
月経周期 | エストロゲンの低下が誘発要因になる |
特定の食物 | チョコ・赤ワイン・チーズなど |
天候変化 | 気圧の急変と相関する例も |
📔 片頭痛ダイアリーの活用は誘因特定と予防策の第一歩になります。
4. 予防法|生活+薬物による長期管理
片頭痛の予防は、日々の生活習慣の見直しと、必要に応じた薬物療法の組み合わせが効果的です。
▽生活指導の例:
- 睡眠・食事・運動のリズムを一定に保つ
- カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける
- マインドフルネスや深呼吸などのストレス対処法を勧める
▽予防薬の種類と特徴:
薬剤群 | 代表例 | 特徴 |
---|---|---|
β遮断薬 | プロプラノロール | 不安傾向や高血圧を合併する方に有用 |
抗てんかん薬 | バルプロ酸、トピラマート | 中枢神経系副作用に注意 |
Ca拮抗薬 | ロメリジン | 日本で片頭痛予防薬として承認済み |
抗CGRP抗体 | エムガルティ、アジョビ | 月1回の皮下注(保険適用あり) |
⏩ CGRP抗体薬は、「月4日以上片頭痛発作がある人」が適応対象です。
5. 急性期治療|投与タイミングと使い分け
発作が起きたら、できるだけ早い薬物投与が重要。以下のような薬剤が用いられます:
薬剤群 | 代表薬 | 特徴 |
---|---|---|
NSAIDs・アセトアミノフェン | ロキソプロフェン等 | 軽度〜中等度の頭痛に有効 |
トリプタン系 | スマトリプタン等 | 5-HT1B/1D作動薬、片頭痛の定番 |
ジタン系 | ラスミジタン | 5-HT1F作動薬、日本未承認(2025年7月時点) |
経口CGRP拮抗薬 | アトゲパント等 | 海外では急性期薬として承認拡大中 |
⚠️ トリプタンは「痛みのピーク前」に使うのがカギ。使用タイミングの指導は極めて重要です。
6. 他の頭痛との鑑別
頭痛タイプ | 痛みの性質 | 随伴症状 | 発作頻度 |
---|---|---|---|
片頭痛 | 拍動性、片側性 | 悪心・光過敏・音過敏 | 月1〜数回 |
緊張型頭痛 | 締め付け、両側性 | 肩こり、全体的なだるさ | 頻繁・慢性的 |
群発頭痛 | 激烈な片側性眼窩痛 | 流涙・鼻閉・夜間発作 | 発作期に集中 |
✅鑑別が難しいケースでは「日内変動・動作による変化・発作パターン」に着目を。
7. 現場でできる支援|薬剤師の役割
薬剤師として、片頭痛患者にできる支援は多岐にわたります。
- トリプタンの適切な使い方を再確認
- 誘因の記録と生活習慣の見直し支援
- 副作用への気づきと相談対応
- 医師と連携しながら治療継続をサポート
慢性疾患として片頭痛を捉える視点が、継続支援の第一歩です。
✅おわりに|「また来るかも」の不安を和らげるために
片頭痛は“完全に治す”より“うまく付き合う”ことが重視される疾患です。
「薬が効かない」という声の裏には、タイミングや誘因、指導不足が隠れているかもしれません。
だからこそ、私たち薬剤師が持つ知識と気づきが、大きな支えになるのです。
📚参考文献・出典
The Lancet Neurology, Neurology誌, 他一次文献
日本頭痛学会ガイドライン(2021年)
厚生労働省 eJIM「慢性頭痛について」
https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c02/14.html