こんにちは、『薬Talk』編集長、薬剤師Noriです!
薬局の現場で睡眠薬について説明する際、「ロゼレムってどう違うの?」「ベルソムラとデエビゴの選び方は?」といったご質問をよくいただきます。近年ではこれらに加え、2024年に登場した新薬「クービビック」にも注目が集まっています。
この記事では、メラトニン受容体作動薬とオレキシン受容体拮抗薬、そしてクービビックについて、作用機序や効果、副作用、使い分けのポイントまでわかりやすく解説します。
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睡眠薬の新分類:どんな薬?どう効くの?
まずはそれぞれの薬が「何をターゲットにして」「どうやって眠気を引き出すのか」を整理してみましょう。
分類 | 薬剤名 | 作用機序 | 関連する体内物質 |
---|---|---|---|
メラトニン受容体作動薬 | ロゼレム | メラトニンMT1/MT2受容体を活性化 | メラトニン |
オレキシン受容体拮抗薬 | ベルソムラ/デエビゴ/ クービビック | 覚醒維持系オレキシン受容体(OX1/OX2)を阻害 | オレキシン |
ロゼレムは「体内時計を整えるホルモン」として知られるメラトニンの働きを補います。自然な眠気を誘導し、生活リズムが崩れがちな人にも向いています。
一方、ベルソムラ・デエビゴ・クービビックは、「覚醒物質」であるオレキシンをブロックすることで、強制的ではなく“自然な眠り”を促すアプローチ。依存性が少なく、副作用も抑えめなため注目されています。
作用のスピードや持続時間、副作用の違い
次に、それぞれの薬の効き始めの速さや持続時間、気になる副作用リスクなどを見ていきましょう。
薬剤 | 発現時間 | 持続時間 | 中途覚醒予防 | 日中眠気 | 呼吸抑制 | 緑内障 | 主な注意点 |
ロゼレム | 緩やか | 2〜5時間 | △ やや弱い | ◎ 少ない | ◎ なし | ◯ 使用可 | 肺疾患のある方は注意 |
ベルソムラ | 遅い | 6〜12時間 | ◯ 効果あり | △ ややあり | ◎ なし | ◯ 使用可 | CYP3A4阻害薬との併用注意 |
デエビゴ | 中等度 | 6〜10時間 | ◯ 効果あり | ◯ 少なめ | ◎ なし | ◯ 使用可 | 高齢者でも比較的安全 |
クービビック | 速い | 8〜10時間 | ◎ 非常に効果的 | ◯ 少なめ | ◎ なし | ◯ 使用可 | CYP3A4阻害薬の影響に注意 |
ロゼレムは穏やかに効き、起床時の眠気も少なめ。ただし中途覚醒への効果はやや弱めです。
ベルソムラは眠気が出るまでやや時間がかかるものの、夜間の覚醒を防ぐ力は十分。副作用としては、朝の眠気が少し残ることがあります。
デエビゴはベルソムラと似ていますが、効き始めが早く、日中の眠気も比較的軽め。高齢者への安全性も高いとされています。
クービビックは4剤の中で最も発現が早く、中途覚醒の予防にも非常に優れています。CYP3A4阻害薬との併用には注意が必要です。
どの薬を選ぶ?使い分けのポイント
患者さんの睡眠の悩みや生活背景によって、適した薬は変わります。以下にシチュエーション別に整理しました。
シチュエーション | 適した薬剤 | 解説 |
入眠が難しい | クービビック、ロゼレム | 効き始めが速く、寝つきを改善したい人にぴったり |
夜中に目が覚める | デエビゴ、クービビック | 中途覚醒の予防効果が高く、夜間も安定した睡眠を維持できる |
翌朝スッキリ起きたい | ロゼレム、デエビゴ、クービビック | 起床時の眠気が少なく、日中の活動に支障が出にくい |
高齢者・多剤併用中 | ロゼレム、デエビゴ、クービビック | 呼吸抑制リスクが低く、安全性が高い処方が望まれるケース |
まとめ:新しい睡眠薬は「やさしい」だけじゃない!
これからの睡眠薬は、ただ眠れるだけではなく、「自然に近い睡眠」や「生活への影響の少なさ」も重視されます。
ロゼレムやクービビックなどは、習慣性やふらつきが少ないため、高齢者や併用薬の多い患者さんにも適しています。
医療従事者として、それぞれの特徴を理解し、個々の患者さんに合った選択ができるようにしていきましょう!