こんにちは、『薬Talk』編集長、薬剤師のNoriです。
“喘息持ちで眠れない”という患者さん、薬局での相談も増えています。
一方で「睡眠薬で呼吸が浅くなる」といった話を聞いて不安になる方も多いもの。
そこで今回は、呼吸抑制リスクの高い睡眠薬と喘息患者への影響、その選び方までを
優しく、でも詳しくお届けします。
目次
1️⃣ 呼吸抑制の作用機序
睡眠薬の多くはGABA-A受容体を活性化し、中枢神経を抑制します。
その影響が延髄の呼吸中枢にまで及ぶと「浅く・ゆっくり」の呼吸に。
喘息患者にとって「浅い呼吸」は息苦しさや夜間発作を誘発しうる重大リスクです。
2️⃣ ベンゾジアゼピン系睡眠薬:呼吸抑制リスク&喘息禁忌一覧
リスク | 薬剤名(商品名) | 作用時間 | 添付文書の喘息等に関する記載 |
---|---|---|---|
★★★★★ | フルニトラゼパム(サイレース) | 長時間 | 原則禁忌:気管支喘息など呼吸機能高度低下例 |
★★★★☆ | ニトラゼパム(ベンザリン) | 長時間 | 慎重投与:呼吸抑制のリスクあり |
★★★★☆ | クアゼパム(ドラール) | 長時間 | 慎重投与:同上 |
★★★★☆ | トリアゾラム(ハルシオン) | 超短時間 | 原則禁忌:呼吸機能高度低下例 |
★★★☆☆ | エスタゾラム(ユーロジン) | 中間時間 | 慎重投与:一般注意項に喘息記載あり |
★★☆☆☆ | ブロチゾラム(レンドルミン) | 短時間 | 原則禁忌:喘息含む呼吸抑制例で禁止 |
★★☆☆☆ | ロルメタゼパム(エバミール) | 短時間 | 慎重投与:同上 |
★★☆☆☆ | エチゾラム(デパス) | 短時間 | 慎重投与:睡眠補助使用時呼吸注意 |
★☆☆☆☆ | リルマザホン(リスミー) | 超短時間 | 禁忌記載なし(新規薬。報告も少ない) |
※「原則禁忌」は添付文書に明記。
※「慎重」はBZ系一般注意項に喘息兼呼吸抑制への注意記載があります。
3️⃣ 非ベンゾ・新規睡眠薬の安全性まとめ
薬剤名 | 特徴 | 呼吸抑制リスク |
---|---|---|
ラメルテオン(ロゼレム) | メラトニン受容体作動 | ほぼなし |
スボレキサント(ベルソムラ) / レンボレキサント(デエビゴ) | オレキシン受容体拮抗 | ほぼなし |
ゾルピデム、ゾピクロン(非ベンゾ) | GABA-A一部作用 | 少ないが慎重投与を要する |
4️⃣ 喘息患者さんにオススメ睡眠薬
- 最も安全:
● ロゼレム、ベルソムラ/デエビゴ → 呼吸抑制ほぼなし - 次点安全:
● ゾルピデム/ゾピクロン → リスク低めも慎重投与 - BZ系なら超注意:
● リスミー → 呼吸抑制少ないが慎重投与 - 基本的に避けたい:
● フルニトラゼパム、トリアゾラム、ブロチゾラムなど長時間高力価BZ系
● ニトラゼパムなども喘息患者には非推奨
5️⃣ まとめ:患者QOLを考えた薬剤の選び方
- 呼吸抑制リスクは「作用時間」「力価」「代謝」のバランスで決まります
- 喘息患者には、非BZ系→短作用BZ系→避けたいBZ系の順で優先
- 薬剤師として、処方前後で呼吸状態の綿密なモニタリング&説明を
→ 患者の不安を和らげ、安全な睡眠サポートを!
6️⃣ 参考文献
- 📚参考文献
- 日本呼吸器学会 喘息診療ガイドライン 2021
https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=3 - 厚生労働省 睡眠薬の適正使用と休薬のための診療ガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187987.html - PMDA 医療用医薬品添付文書(各睡眠薬の個別添付文書を参照)
https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/ - UpToDate: Management of chronic insomnia in adults
https://www.uptodate.com/contents/management-of-chronic-insomnia-in-adults - 治療薬マニュアル 2025(南江堂)