こんにちは、『薬Talk』編集長、薬剤師のNoriです!
ある日、処方袋を手にした患者さんからこんな質問がありました。
「この軟膏、薄めてあるって書いてあるけど…効き目、大丈夫なんですか?」
患者さんにとっては“効果が弱くなるんじゃないか”という不安は当然のこと。でも、実は希釈や混合にはちゃんとした“ねらい”や“データ”があるんです。
今回はそんな「ステロイド外用剤の希釈・混合」について、やさしく、でもしっかりと解説します!
目次
1. 希釈で効果は本当に“弱く”なるの?
✅ 軟膏の場合
ベタメタゾン軟膏0.05%を16倍に希釈しても、血管収縮効果に差が出なかったというデータがあります。
→ 「希釈=効果が弱くなる」とは一概に言えません!
❌ クリームの場合
一部のクリーム製剤では、希釈により主薬濃度が下がり、実際に効果が弱まるという報告もあります。
2. 混合すると効きづらくなる? 逆に効く?
実は、ステロイドと保湿剤を混ぜると、皮膚への浸透性が2〜4.5倍に高まったという報告もあります。
→ 濃度は下がっても、浸透が良くなり結果的に効果が保たれる、もしくは増す場合もあります。
これは、混合により基剤が塗りやすくなり、皮膚との接触性が高まることが関係していると考えられています。
3. なぜ混ぜる? 混合処方の3つの目的
- ① 効果のマイルド化:顔・首・陰部・小児など皮膚が薄い部位に安全に使うため
- ② 使用感の改善:軟膏のベタつきを抑えて塗りやすくするため
- ③ アドヒアランス向上:1本で済むことで、使いやすく・続けやすくなるため
4. 混合のメリット・デメリット
観点 | メリット | デメリット |
---|---|---|
効果 | 広範囲に安全に使える/浸透性UPで効果が保たれる場合も | 一部製剤では効果が下がることも |
使用感 | ベタつき軽減/塗りやすくなる | 分離や変質のリスクがある |
患者指導 | 混合理由を伝えると安心感UP | 説明がなければ「効かない」と誤解される恐れあり |
調剤業務 | 技術料UP | 安定性・混合比・保存性などの知識と技術が必要 |
5. 服薬指導のポイント
- 「この薬は、お肌にやさしく使えるように保湿剤と混ぜてありますよ」など、混合の目的をひとこと添えるだけで安心感が違います。
- 長期保存中に分離や油浮きが起こる可能性もあるので、「変化に気づいたら薬局に相談してください」と伝えるのも大切です。
✅まとめ
- ステロイドの希釈や混合は、必ずしも効果を弱めるものではありません。
- 安全性・使用感・使いやすさのための工夫であり、場合によっては効果を保ちつつ副作用を軽減できます。
- 薬剤師として、混合の意図と注意点をやさしく説明できることが、患者さんの安心・信頼につながります。
「混ぜてあるから効かない」は誤解かもしれません。
その背景にある“理由”と“仕組み”を、わかりやすく伝えられる薬剤師こそ、現場で本当に頼りにされる存在です!
📚参考文献
- マルホ株式会社|服薬指導に役立つ皮膚外用剤の基礎知識 No.5
- 日経メディカル|外用薬の安易な混合はやめるべき
- 他、薬剤師会資料および製剤情報より