プロペトとヘパリン類似物質(ヒルドイド)の混合|混合後の安定性は、どちらの添付文書にも書かれていない

プロペトとヘパリン類似物質の混合 なぜ混ぜるのか、効果と安定性はどうなるか 外用薬・点眼薬・坐薬
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「ヘパリン類似物質軟膏50g+プロペト50g」。皮膚科から日常的に来る処方です。

この記事は、混ぜていいのかを添付文書で確かめたものです。結論から書くと、プロペト側には答えが書いてあります。混合後の安定性については、どちらにも書かれていません。

本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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プロペトの効能・効果は「基剤として調剤に用いる」です

まずプロペトから。添付文書の4. 効能又は効果は、これだけです。

眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる。

そして6. 用法及び用量が、まったく同じ文言です。

眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる。

「基剤として調剤に用いる」こと自体が、承認された効能・効果であり、用法・用量でもある。薬効分類名も「眼科用・一般軟膏基剤」です。混ぜて使う前提で承認されている薬、ということになります。

だから「混ぜていいのか」という問いに対しては、プロペト側からは明確にイエスです。ここで迷う必要はありません。

プロペトが「精製品」と呼ばれる理由も書いてあります

プロペトは白色ワセリンの一種です(一般的名称も「白色ワセリン」)。ただの白色ワセリンとの違いは、3.2 製剤の性状に書かれています。

プロペトは日本薬局方白色ワセリンの規格に適合するとともに、次のように眼科用基剤として適切な物性を有する。
○稠度、粘度ともに眼科用軟膏として適切な物性を有する。
○夾雑有機酸類が少なく、その他の刺激性要素をほとんど含有しない。
○加熱滅菌に耐え、ほとんど変色することがない。

「夾雑有機酸類が少なく、刺激性要素をほとんど含有しない」——これが、顔や眼の周り、乳児に使われる理由です。「白色ワセリンでいいのでは」と聞かれたときに、この一文が答えになります。

添加剤はジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤)0.01mgだけ。融点は38〜60℃です。

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。


プロペトの添付文書から、基剤として調剤に用いることが効能・効果であることを示した図。4.効能又は効果は「眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる」で、6.用法及び用量もまったく同じ文言。薬効分類名は眼科用・一般軟膏基剤。3.2 製剤の性状では、日本薬局方白色ワセリンの規格に適合するとともに、稠度・粘度ともに眼科用軟膏として適切な物性を有し、夾雑有機酸類が少なくその他の刺激性要素をほとんど含有せず、加熱滅菌に耐えほとんど変色することがないとされる。3.1 組成は有効成分1g中に日局白色ワセリン1g、添加剤はジブチルヒドロキシトルエン(抗酸化剤)0.01mgのみ。20.1 取扱い上の注意では容器から取り出した後は遮光して保存することとされ、貯法は室温保存、有効期間は3年
プロペト 添付文書(2023年12月改訂 第1版)3.1 組成、3.2 製剤の性状、4. 効能又は効果、6. 用法及び用量、20.1 取扱い上の注意

ヒルドイドの効能・効果に「保湿」という言葉はありません

ここは意外かもしれません。ヘパリン類似物質製剤の効能・効果を全文で挙げます。

血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷(打撲、捻挫、挫傷)後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)

「保湿」も「乾燥肌」も出てきません。保湿の文脈で該当するのは「皮脂欠乏症」と「進行性指掌角皮症」です。

細かい話に見えますが、美容目的での使用が問題になった経緯を踏まえると、ここは押さえておく価値があります。効能・効果は「皮脂欠乏症」であって、「乾燥が気になる人の保湿」ではありません。

用法・用量はこうです。

〈クリーム、ソフト軟膏〉通常、1日1〜数回適量を患部に塗擦又はガーゼ等にのばして貼付する。
〈ローション、フォーム〉通常、1日1〜数回適量を患部に塗布する。

ヒルドイドには禁忌があります

保湿剤という印象が強いせいか見落とされがちですが、2. 禁忌があります。

  • 2.1 出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)の患者[血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある]
  • 2.2 僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者[血液凝固抑制作用を有し、出血を助長するおそれがある]

理由はどちらも「血液凝固抑制作用を有し」です。ヘパリン類似物質という名前のとおりで、副作用にも投与部位の紫斑が挙がっています。

そして14. 適用上の注意に、実務で効く一文があります。

14.1.1 潰瘍、びらん面への直接塗擦又は塗布を避けること。

アトピーで掻き壊している部位に、そのまま塗ってよいものではありません。混合薬として1本で渡すと、「どこに塗るか」の情報が一緒に渡りにくくなる——ここが、混合処方の見えにくいリスクです。


ヘパリン類似物質製剤(ヒルドイド)の添付文書から、効能・効果と禁忌を示した図。4.効能・効果は血栓性静脈炎(痔核を含む)、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患(注射後の硬結並びに疼痛)、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸(乳児期)で、「保湿」という語は含まれない。2.1の禁忌は出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病等)の患者、2.2の禁忌は僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者で、いずれも血液凝固抑制作用を有し出血を助長するおそれがあることが理由。14.1.1では潰瘍、びらん面への直接塗擦又は塗布を避けることとされる。11.2の副作用は過敏症として皮膚炎、そう痒、発赤、発疹、潮紅等が0.1から5%未満、投与部位の紫斑が頻度不明
ヒルドイドクリーム0.3%/ソフト軟膏0.3%/ローション0.3%/フォーム0.3% 添付文書(2025年7月改訂 第4版)2. 禁忌 2.1〜2.2、4. 効能・効果、11.2 副作用、14.1.1 適用上の注意

混合後の安定性は、どちらの添付文書にも書かれていません

ここは正直に書きます。「混ぜたあとどうなるか」は、両方の添付文書に記載がありません。

プロペトの添付文書が答えているのは「基剤として調剤に用いてよい」までです。どの薬と、どの比率で、どれだけ安定かは、承認された記載の外にあります。

つまり——

  • 混ぜること自体は、プロペトの効能・効果に含まれる
  • 混ぜた結果の安定性・有効性は、添付文書では保証されていない
  • したがって使用期限や保存条件は、混合した薬局側の判断になる

「添付文書に書いてあります」と言えるのは1つめまでです。2つめを根拠づけたい場合は、各社の配合変化試験データや院内の検討結果を当たる必要があります。

プロペト単独の使用期限は3年(室温保存)、取扱い上の注意に「容器から取り出した後は、遮光して保存すること」とあります。混合品はこの条件から外れる、という点は意識しておいてよいと思います。


薬歴と服薬指導で押さえる4点

  • 基剤として混ぜること自体は、プロペトの効能・効果の範囲内です。「混ぜて大丈夫か」と聞かれたら、ここを根拠にできます
  • ヘパリン類似物質の効能は「皮脂欠乏症」であって「保湿一般」ではありません。美容目的の相談には、この線で答えます
  • 出血性血液疾患は禁忌です。血液凝固抑制作用が理由で、副作用にも紫斑が挙がっています
  • 潰瘍・びらん面への直接塗布は避けます。混合1本だと塗り分けの指示が伝わりにくいので、そこを口頭で補います

出典

  • プロペト 添付文書(2023年12月改訂 第1版)3.1 組成/3.2 製剤の性状/4. 効能又は効果/6. 用法及び用量/11.2 副作用/14. 適用上の注意/19. 有効成分に関する理化学的知見/20. 取扱い上の注意(PMDA)
  • ヒルドイドクリーム0.3%/ソフト軟膏0.3%/ローション0.3%/フォーム0.3% 添付文書(2025年7月改訂 第4版)2. 禁忌/3.1 組成/4. 効能・効果/6. 用法・用量/11.2 副作用/14.1 適用上の注意(PMDA)

※ 本記事は薬剤師向けの整理です。個別の処方意図や混合の可否は、処方医および最新の添付文書をご確認ください。

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