執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
H2ブロッカーは、高齢者の処方で毎日のように見る薬です。そして5成分のうち4成分は、腎機能が低い患者では投与量を減らすか投与間隔をあけるよう添付文書で求めています(書き方は薬ごとに少しずつ違います)。ところが、Ccr別の用量表が「用法及び用量に関連する注意」(7.)に載っているのは、ガスター(ファモチジン)とタガメット(シメチジン)の2剤だけです。アルタット(ロキサチジン)・アシノン(ニザチジン)・プロテカジン(ラフチジン)の添付文書には、7.の項そのものがありません(6.の次が8.)。アルタットとアシノンは薬物動態の項(16.6)にCcr別のデータがあるだけで、何mgにするかは書かれていません。プロテカジンは尿中排泄が約20%で、添付文書の書き方そのものが違います。
この記事では、5成分の先発品(内服の錠・カプセル)の添付文書を並べて、処方監査で「どこまで添付文書で言えるか」を整理します。
5成分の比較:腎機能について添付文書に何が書いてあるか
| 成分(先発品) | 尿中排泄 | 7.の用量表 | 9.2 腎機能障害患者 |
|---|---|---|---|
| ファモチジン(ガスター) | 未変化体 経口21.0〜49.0%(24時間) | あり(Ccr 60・30・透析) | 投与量を減ずるか投与間隔をあけて使用 |
| シメチジン(タガメット) | 大部分が24時間以内に尿中 | あり(Ccr 50・30・5)+透析後に投与 | 主として腎臓から排泄されるため、血中濃度が持続する |
| ロキサチジン(アルタット) | 約70%(うち約80%が脱アセチル体) | なし(16.6.1にCcr別の半減期・AUC) | 投与量を減ずるか投与間隔をあけるなど注意 |
| ニザチジン(アシノン) | 未変化体 62.8〜64.9% | なし(16.6.1にCcr別の半減期・クリアランス) | 投与量を減ずるか投与間隔をあけて使用 |
| ラフチジン(プロテカジン) | 総排泄 約20%(未変化体10.9%) | なし | 「症状が悪化するおそれがある」。透析患者は9.1.2で「低用量から慎重に」 |
ガスター(ファモチジン):Ccr別の投与法
ガスターの表は「1回20mg1日2回投与を基準とする場合」の目安です(7.1)。Ccr 60未満の各区分には、投与法が2通り併記されています。
| Ccr(mL/min) | 投与法(2通り併記) |
|---|---|
| Ccr≧60 | 1回20mg 1日2回 |
| 60>Ccr>30 | 1回20mg 1日1回 または 1回10mg 1日2回 |
| 30≧Ccr | 1回20mg 2〜3日に1回 または 1回10mg 1日1回 |
| 透析患者 | 1回20mg 透析後1回 または 1回10mg 1日1回 |
読み方の注意が2つあります。
- 境界の向き:30ちょうどは「30≧Ccr」の行、60ちょうどは「Ccr≧60」の行です
- 表の基準は「1回20mg 1日2回」だけ:ガスターの用法は4つあります(潰瘍などの1回20mg 1日2回・1回40mg 1日1回、胃炎の1回10mg 1日2回・1回20mg 1日1回)。表の基準になっているのは最初の1つだけで、ほかの3用法を基準にした表はありません(6.、7.1)。それらの用法で腎機能が低い場合は、7.1の表をそのまま当てはめられません。9.2の「投与量を減ずるか投与間隔をあけて」に沿って、処方意図を確認します
なぜここまで減らすのか。添付文書の16.6.1には、ガスター20mgを静脈内投与したときのCcr別のデータがあります。
| 平均Ccr(mL/min/1.48m²) | t1/2β(h) | AUC(ng・h/mL) |
|---|---|---|
| 98.9(n=7) | 2.59 | 857 |
| 73.8(n=9) | 2.92 | 909 |
| 49.2(n=5) | 4.72 | 1,424 |
| 10.3(n=10) | 12.07 | 4,503 |
平均Ccr 10.3の群では、半減期が約4.7倍、AUCが約5.3倍です(98.9の群との比。表の数値からの計算)。
タガメット(シメチジン):Ccr別の投与量
| Ccr(mL/min) | タガメット投与量 |
|---|---|
| 50以上 | 1回200mg 1日4回(6時間間隔) |
| 30〜49 | 1回200mg 1日3回(8時間間隔) |
| 5〜29 | 1回200mg 1日2回(12時間間隔) |
| 0〜4 | 1回200mg 1日1回(24時間間隔) |
タガメットは区切りが50・30・5で、ガスターの60・30と違います。1回量は200mgのまま、投与間隔で調節する表です。
この表も基準があります。Ccr 50以上の「1回200mg 1日4回」は1日800mg、つまり潰瘍の用量です。胃炎の1日400mg(200mg×2回、または400mg×1回)や、潰瘍の400mg×2回・800mg×1回の処方には、表をそのまま当てはめられません(6.、7.1)。ガスターと同じ注意が要ります。
透析後に投与する理由は、「シメチジンは血液透析により除去される」ためです(13.2)。腹膜透析による除去率は「わずか」とされています(16.6.2、外国人に静脈内投与したデータ)。
シメチジンは腎機能とは別に、相互作用でも確認が要ります。添付文書は「肝薬物代謝酵素P-450を阻害する。特にCYP3A4とCYP2D6に対して強い阻害効果を有することが報告されている」(10.)と書き、併用注意にワルファリン、ベンゾジアゼピン系(ジアゼパム・トリアゾラム・ミダゾラム等)、フェニトイン・カルバマゼピン、三環系抗うつ剤・パロキセチン、β遮断剤、ニフェジピン等、リドカイン、テオフィリン等を挙げています(10.2)。腎機能の記事として見逃せないのはプロカインアミドで、機序は「本剤が近位尿細管におけるプロカインアミドの輸送を阻害し、腎クリアランスを減少させる」です(10.2)。
アルタット・アシノン:用量表はなく、データだけがある
アルタット(ロキサチジン)とアシノン(ニザチジン)は、9.2で減量または投与間隔の延長を求めていますが、何mgにするかの表は添付文書にありません。16.6.1にあるのは、腎機能別の薬物動態データです。
| Ccr(mL/min) | T1/2(hr) | AUC(ng・hr/mL) |
|---|---|---|
| Ccr≧90 | 3.94 | 2,362 |
| 90>Ccr≧60 | 5.68 | 4,101 |
| 60>Ccr≧30 | 7.70 | 4,981 |
| 30>Ccr | 12.13 | 12,993 |
| Ccr(mL/min) | 血漿中半減期(hr) | 血漿クリアランス(L/kg/hr) |
|---|---|---|
| Ccr>90(n=6) | 1.6 | 0.57 |
| 75≧Ccr≧50(n=2) | 2.1 | 0.34 |
| 50>Ccr≧10(n=6) | 4.1 | 0.22 |
| 10>Ccr(n=6) | 5.3 | 0.20 |
表がない以上、「Ccr○○だから何mg」と添付文書から言い切ることはできません。アシノンのデータには 90〜75 の区分がなく、75〜50 の群は2例です。処方監査では、腎機能が低いのに潰瘍の通常量(ロキサチジン1回75mg 1日2回、ニザチジン1回150mg 1日2回)のままになっていないかを見て、気になれば処方医に腎機能と投与量の意図を確認します。アシノンは高齢者について、血小板減少・白血球減少・貧血等の血液系副作用の発現率が高い傾向も書いています(9.8.2)。
プロテカジン(ラフチジン):腎排泄は少ないが、透析患者と高齢者は注意
ラフチジンは、24時間までの尿中総排泄率が投与量の約20%(未変化体10.9%)です(16.5)。高齢者の試験では、腎機能正常者(Ccr平均88.0)と腎機能低下傾向者(Ccr 20〜60、平均45.2)で血中動態に差を認めなかったと書かれています(16.6.1、各5例)。腎機能低下傾向者5例のCcrは20・34・54・58・60で、透析していないCcr 20未満の患者のデータは添付文書にありません。代謝には主としてCYP3A4、一部CYP2D6が関与するとの報告があります(16.4、in vitro)。
ただし透析患者は違います。非透析時は健康成人と比べてCmaxが約2倍、T1/2が約2倍、AUCが約3倍でした(16.6.2)。血液透析で除去されたのは7〜18%です。そのため9.1.2で「透析患者 低用量から慎重に投与すること」とされています。
なお、プロテカジンの9.2「腎機能障害患者」の記載は「症状が悪化するおそれがある」です。ほかの4剤のような「血中濃度が持続する」という書き方ではありません。また9.8(高齢者)では「用量あるいは投与間隔に留意するなど、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること」とされています。用量の配慮が要らない薬ではありません。
腎機能が低い患者で気をつける副作用:意識障害・痙攣
H2ブロッカーの添付文書には、意識障害・痙攣の記載があります。ガスターとタガメットは「重大な副作用」(11.1)で、どちらも腎機能障害のある患者で出やすいと明記しています。
| 成分 | 記載の場所 | 内容 |
|---|---|---|
| ファモチジン | 11.1.7 重大な副作用 | 意識障害、全身痙攣(痙直性、間代性、ミオクローヌス性)。特に腎機能障害を有する患者においてあらわれやすい |
| シメチジン | 11.1.7 重大な副作用 | 意識障害、痙攣。特に腎機能障害患者においてあらわれやすい |
| ロキサチジン | 11.2 その他の副作用 | 精神神経系に可逆性の錯乱状態、幻覚、痙攣など |
| ニザチジン | 11.2 その他の副作用 | 精神神経系にせん妄、失見当識、痙攣など |
| ラフチジン | 11.2 その他の副作用 | 精神神経系に可逆性の錯乱状態、幻覚、意識障害、痙攣など |
高齢の患者さんで「最近ぼんやりしている」「つじつまの合わないことを言う」と家族から聞いたら、H2ブロッカーの用量と腎機能を確かめる価値があります。
処方監査のチェックリスト
- □ 腎機能(Ccr)が分かるか。処方箋の検査値欄、お薬手帳、本人・家族への聞き取り。表はCcr(mL/min)なので、eGFR(mL/min/1.73m²)をそのまま当てはめない(これは添付文書外の注意)
- □ ガスター:Ccr 60未満で1回20mg 1日2回のままになっていないか
- □ ガスター:表の基準は1回20mg 1日2回だけ。40mg×1回、胃炎の10mg×2回・20mg×1回の処方には、そのまま当てはめられない。処方意図を確認
- □ タガメット:区切りは50・30・5。表は1日800mg(200mg×4回)基準。透析患者は透析後に投与
- □ タガメット:ワルファリン・テオフィリン・フェニトインなどCYPで代謝される薬、プロカインアミドとの併用
- □ アルタット・アシノン:用量表はない。腎機能が低いのに潰瘍の通常量なら、処方医に確認
- □ プロテカジン:透析患者は低用量から。高齢者も用量・投与間隔に留意
- □ 高齢者のぼんやり・錯乱・痙攣の訴えがないか
まとめ
- 7.にCcr別の用量表があるのはガスター(60・30・透析)とタガメット(50・30・5)だけ
- 表には基準がある。ガスターは「1回20mg 1日2回」、タガメットは「1日800mg」。ほかの用法の処方にはそのまま当てはめない
- アルタット・アシノンは16.6にデータがあるだけで、用量表はない。潰瘍の通常量のままなら確認
- プロテカジンは尿中排泄約20%で、Ccr 20〜60の高齢者(各5例)で動態差なし。Ccr 20未満(非透析)のデータはない。透析患者はAUC約3倍で「低用量から」
- ガスター・タガメットは意識障害・痙攣が重大な副作用で、腎機能障害患者に出やすい
- 後発品は、当該製品の添付文書で用量表の有無を確認
あわせて読みたい:四十肩の石灰化にH2ブロッカー|ファモチジンは10mgか20mgか
本記事は医療従事者向けに、各先発品の添付文書の記載を整理したものです。個々の患者さんの投与量は、処方医の判断と最新の添付文書に従ってください。
出典
- ガスター錠10mg・20mg 添付文書(PMDA 171911_2325003F1024_2_05、2026年9月改訂 第3版)6.、7.1、9.2、9.8、11.1、16.5、16.6.1
- タガメット錠200mg 添付文書(PMDA 400093_2325001F1211_1_01、2025年4月改訂 第6版)6.、7.1、7.2、9.2、10.、10.2、11.1、13.2、16.5、16.6
- アルタットカプセル37.5mg・75mg 添付文書(PMDA 470007_2325004M1087_1_07、2025年4月改訂 第3版)6.、9.2、9.8、11.2、16.5、16.6.1
- アシノン錠75mg・150mg 添付文書(PMDA 380077_2325005F1031_1_07、2020年9月改訂 第1版)6.、9.2、9.8、11.2、16.5、16.6.1
- プロテカジン錠5・10 添付文書(PMDA 400107_2325006F1036_1_18、2026年6月改訂 第2版)6.、9.1.2、9.2、9.8、11.2、16.4、16.5、16.6

