ロキソプロフェンを痛むたびに飲んで浮腫が出ました|歯痛と抜歯後で用法が違う、半減期1.2時間でも腎が傷む理由

ロキソプロフェンを痛むたびに飲んで浮腫が出ました|歯痛と抜歯後で用法が違う、半減期1.2時間でも腎が傷む理由 医薬品
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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歯の治療が長引いて、痛みが引きませんでした。痛むたびにロキソプロフェンを飲んでいたら、むくみが出ました。薬剤師なのに、です。あとで添付文書を読み直したら、私がやったことも、起きたことも、そのまま書いてありました。そして歯痛と抜歯後で、用法が違うことも。
25疾患重篤副作用マニュアルの数葛根湯は4。桁が違う
180mg急性の痛み・熱での1日上限原則1日2回まで
1.2時間半減期蓄積しない。それでも腎は傷む
ロキソプロフェンの用法及び用量は効能で2段に分かれる。関節リウマチ・腰痛症・歯痛などは1回60mg1日3回、手術後・外傷後・抜歯後と急性上気道炎は1回60mgを頓用で原則1日2回まで1日最大180mg
PMDA 添付文書「ロキソニン錠60mg/ロキソニン細粒10%」6. 用法及び用量

ロキソプロフェンの用法は、1つではありません

ここを取り違えていました。添付文書の「6. 用法及び用量」は、効能ごとに2段に分かれています。

効能・効果用法・用量
関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、肩関節周囲炎、頸肩腕症候群、歯痛の消炎・鎮痛1回60mg、1日3回経口投与
頓用の場合は1回60〜120mg
手術後、外傷後並びに抜歯後の鎮痛・消炎
急性上気道炎の解熱・鎮痛
1回60mgを頓用
原則として1日2回まで/1日最大180mgを限度

同じ歯科でも、「歯痛」と「抜歯後」で枠が違います。

歯痛は上の段で、定期投与なら1日3回。抜歯後は下の段で、頓用・原則1日2回まで・1日180mgが限度です。かぜの熱にも同じ枠がかかります。

「原則として1日2回まで」と書いてあるのは、下の段だけです。上の段にこの制限はありません。処方箋の効能が見えない薬局では、ここが判断しにくいところです。

ちなみに「歯痛」がロキソプロフェンの効能に加わったのは2005年12月です。それ以前は適応外でした。

「痛むたびに飲む」を、添文は名指しで止めています

私がやっていたのは、まさにこれでした。

急性疾患に対し本剤を使用する場合には、次の事項を考慮すること。

・急性炎症、疼痛及び発熱の程度を考慮し、投与すること。

・原則として同一の薬剤の長期投与を避けること。

・原因療法があればこれを行い、本剤を漫然と投与しないこと。

「原因療法があればこれを行い」。歯の治療という原因療法が進行中だったのに、痛みだけを薬で抑え続けていました。添文はその状態を名指しで戒めています。

そして8.1が、そもそもの前提を置いています。

8.1 消炎鎮痛剤による治療は原因療法ではなく対症療法であることに留意すること。

7.1 他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい。

7.1は、実務でいちばん破られる項目だと思います。処方されたロキソプロフェンが切れて、ドラッグストアで買い足す。成分が同じでも、患者さんは別の薬だと思っています。

浮腫は、添文に3か所書いてあります

むくみが出たとき、正直「なぜ痛み止めで」と思いました。読み直したら、3か所に出てきます。

腎のプロスタグランジン生合成抑制により浮腫、循環体液量の増加が起こり、心臓の仕事量が増加するため症状を悪化させるおそれがある。

浮腫、蛋白尿、血清クレアチニン上昇、高カリウム血症等の副作用が起こることがある。

そして「11.2 その他の副作用」の表に、頻度つきで載っています。

分類0.1〜2%未満0.1%未満頻度不明
泌尿器蛋白尿—血尿、排尿困難、尿量減少
その他浮腫、顔面熱感—胸痛、倦怠感、発汗

浮腫と蛋白尿は「0.1〜2%未満」。頻度不明ではありません。1,000人に1人から100人に2人の幅です。まれな副作用として扱う数字ではないと思います。

機序は9.1.4に書いてあるとおりです。腎でのプロスタグランジン合成が止まる → 腎血流が落ちる → 水とナトリウムが排泄されない → むくむ。痛みを止める仕組みと、まったく同じ仕組みで起こります。

半減期は1.2時間。蓄積しません。それでも腎は傷みます

ここが、いちばん腑に落ちなかった点です。

最高血漿中濃度に到達する時間はロキソプロフェンで約30分、trans-OH体で約50分であり、半減期はいずれも約1時間15分であった。

健康成人男性5例にロキソプロフェンナトリウム80mgを1日3回5日間反復経口投与したとき、初回投与時と血漿中濃度に大きな差異はなく、蓄積性は認められなかった。

薬は溜まりません。1日3回5日間飲んでも、血中濃度は初日と変わりません。

では、なぜ連用で腎が傷むのか。溜まるのは薬ではなく、「プロスタグランジンが作られない時間」だからです。

飲むたびに腎のプロスタグランジン合成が止まり、腎血流が落ちます。薬が抜ければ戻る——はずですが、痛むたびに飲めば、戻る前にまた止まります。血中濃度のグラフは平らなのに、腎血流は落ちたままになる。

「体から早く抜けるから安全」は、NSAIDsの腎障害には当てはまりません。私が油断したのは、たぶんここです。

その先に、重大な副作用が3つ並んでいます

急性腎障害(頻度不明)、ネフローゼ症候群(頻度不明)、間質性腎炎(頻度不明)

急性腎障害に伴い高カリウム血症があらわれることがあるので、特に注意すること。

浮腫・蛋白尿・尿量減少の先にあるのが、この3つです。むくみは入口のサインと考えるのが自然だと思います。

高カリウム血症がわざわざ名指しされているのも、覚えておく価値があります。腎機能が落ちた人がNSAIDsを飲むと、カリウムが上がります。9.2.2にも高カリウム血症が挙がっています。

併用で、腎血流はさらに落ちます

相互作用の表に、腎に効く組み合わせが2つ並んでいます。

併用薬臨床症状機序
チアジド系利尿薬
ヒドロクロロチアジド等
利尿・降圧作用を減弱腎のPG生合成抑制により水、ナトリウムの排泄を減少させる
降圧剤
ACE阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤等
降圧作用を減弱PG生合成抑制により降圧作用を減弱させる
降圧剤
ACE阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤等
腎機能を悪化させるおそれPG生合成抑制により腎血流量が低下する

ACE阻害剤・ARBは、同じ相手に2行を割いています。降圧が効かなくなる話と、腎機能が悪化する話。別々に書かれているのは、別の問題だからです。

この2つを足すと、実務でよく見る組み合わせになります。降圧薬(ACE阻害剤・ARB)+利尿薬を飲んでいる人に、NSAIDsが加わる。腎血流を支える3つの仕組みが同時に外れます。高齢者の処方では、ここを最初に見ます。

メトトレキサートとリチウムも、機序は同じです。腎のPG生合成抑制で腎排泄が減り、血中濃度が上がります。

重篤副作用マニュアルが、25疾患ぶら下がっています

PMDAの品目ページには、その医薬品に関係する重篤副作用疾患別対応マニュアルが紐づけられています。ロキソプロフェンナトリウム水和物のページを開くと、25個並びます。

系統マニュアル
腎急性腎障害(急性尿細管壊死)、ネフローゼ症候群、間質性腎炎(尿細管間質性腎炎)
皮膚スティーヴンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、NSAIDsによるじんま疹/血管性浮腫、血管性浮腫(NSAIDsによらないもの)
血液再生不良性貧血、無顆粒球症、薬剤性貧血、血小板減少症、出血傾向
消化器・肝消化性潰瘍、薬物性肝障害
呼吸器間質性肺炎、NSAIDsによる喘息発作
循環器うっ血性心不全、血栓症(血栓塞栓症、塞栓症、梗塞)
その他アナフィラキシー、横紋筋融解症、無菌性髄膜炎、頭痛、角膜混濁

比較のために書くと、先日多形紅斑が追加された葛根湯は4個です。25と4。「よく効いて、すぐ抜けて、市販でも買える薬」の裏側がこれです。

頭痛がマニュアルに入っているのも、目を引きます。痛み止めの副作用が頭痛——薬物乱用頭痛の話です。

ロキソニン錠の用法の末尾と重要な基本的注意。空腹時の投与は避けさせることが望ましい、過度の体温下降や虚脱は高熱を伴う高齢者で注意、長期投与では定期的に尿検査と血液検査と肝機能検査、高齢者は少量から、妊娠後期は投与しない、感染症を不顕性化するおそれ。

窓口で聞くこと・言うこと

  1. 何日ぶんもらったかではなく、何日飲んだかを聞く「痛いときだけ」は連用の入口です。頓服で出ていても、実態は毎日のことがあります
  2. 原因療法が進んでいるかを聞く歯科なら治療中か。「原因療法があればこれを行い、漫然と投与しない」が添文の指示です
  3. むくみを最初に伝える「足やまぶたがむくんだら教えてください」。浮腫・蛋白尿は0.1〜2%未満で、頻度不明の副作用より手前にあります
  4. 市販の痛み止めを併用していないか聞く7.1で併用は避けることが望ましいとされています。成分名で確認する
  5. 降圧薬と利尿薬を確認するACE阻害剤・ARB+利尿薬にNSAIDsが乗ると、腎血流を支える仕組みが同時に外れます
  6. 効能で用法の枠が変わることを頭に置く抜歯後・かぜは原則1日2回・180mgまで。歯痛は1日3回の枠

薬局で決めておくこと

  • ◻️ 頓服のNSAIDsを渡すとき、「1日何回まで」を必ず口に出す運用にした
  • ◻️ 抜歯後・急性上気道炎は1日2回・180mgまでを、スタッフ全員が言えるようにした
  • ◻️ 説明の定型文に「足やまぶたのむくみ」を入れた
  • ◻️ 市販の痛み止めの併用を聞く項目を、初回質問票に入れた
  • ◻️ ACE阻害剤・ARB+利尿薬の患者にNSAIDsが出たとき、拾える仕組みにした
  • ◻️ 長期に続いている頓服NSAIDsを、薬歴から洗い出した
  • ◻️ 売場のロキソプロフェン(第1類)で、反復購入の人に声をかけるようにした

まとめ

  • 用法は2段構え。歯痛は1日3回の枠、抜歯後と急性上気道炎は頓用・原則1日2回・1日180mgまで
  • 「原因療法があればこれを行い、本剤を漫然と投与しないこと」——添文8.4が、痛むたびに飲む状態を名指しで止めています
  • 浮腫と蛋白尿は0.1〜2%未満。頻度不明ではありません。機序は腎のプロスタグランジン生合成抑制
  • 半減期1.2時間、反復投与で蓄積性なし。それでも腎は傷みます。溜まるのは薬ではなく、プロスタグランジンが作られない時間
  • 重大な副作用に急性腎障害・ネフローゼ症候群・間質性腎炎。高カリウム血症が名指しで注意されています
  • ACE阻害剤・ARBには2行が割かれています。降圧の減弱と、腎機能の悪化は別問題。利尿薬が乗ると、腎血流を支える仕組みが同時に外れます
  • 重篤副作用疾患別対応マニュアルは25疾患。葛根湯の4と並べると、この薬の性格が見えます
  • 7.1「他の消炎鎮痛剤との併用は避けることが望ましい」。市販薬の買い足しが、いちばん見えない併用です

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

※ 本記事は添付文書およびPMDA公開情報の原文に基づいています。効能・効果と用法・用量は、先発(ロキソニン錠)と後発4銘柄で記載が一致することを確認しました(表記の差は「○」記号と mg/㎎ のみ)。ただし全銘柄を照合したものではありません。調剤の際は当該製剤の添付文書をご確認ください。
※ 冒頭の経験は筆者自身のものです。症状や対応は人によって異なります。むくみ等の症状が出た場合は、自己判断で続けず、処方元または薬剤師にご相談ください。
※ 用法・用量は製剤によって異なる場合があります。調剤の際は当該製剤の添付文書をご確認ください。

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