[PR]本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含みます。紹介している食品は薬局・通販で購入できるもので、処方箋医薬品は含みません。
執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
「エンシュア、もう出せないって言われたんですけど、代わりに何を買えばいいですか」
2026年度改定で経腸栄養剤の保険適用が厳格化されてから、窓口でこう聞かれる場面が増えました。
制度の説明はできる。問題は、その次に「では何を」と聞かれたときです。
ドラッグストアにも通販にも、それらしい製品が並んでいます。メイバランス、アイソカル、クリミール、テルミール、カロリーメイトゼリー——どれも「200kcal」と書いてあるのに、中身も値段も違う。
この記事では、医薬品扱いの経腸栄養剤と、薬局・店頭で買える食品扱いの製品を、同じ表に並べて比較します。そして患者さんの負担が実際にいくら変わるのかを、薬価から計算します。
まず、なぜ代替を探すことになったのか
2026年度改定で、「栄養保持を目的とした医薬品」の保険給付に条件が付きました。単に食が細いというだけでは給付されず、処方箋に投与理由の記載が求められます。
制度の中身と薬局での対応手順は、こちらに整理しています。
→ エンシュア・ラコールが保険適応外になる条件|経腸栄養剤の保険適用厳格化【2026年度改定】
ここから先は、「保険で出せなかったあと」の話です。
医薬品と食品は、何が違うのか
同じ「経腸栄養剤」と呼ばれていても、法律上の位置づけが二つに分かれます。
| 医薬品扱い | 食品扱い(濃厚流動食) | |
|---|---|---|
| 入手方法 | 医師の処方箋が必要 | 誰でも購入できる |
| 保険 | 適用される(自己負担1〜3割) | 適用されない(全額自費) |
| 承認 | 臨床試験を経て承認 | 臨床試験は不要 |
| 製品の数 | 少ない | 非常に多い |
| 病態別製品 | 肝不全用など一部のみ | 腎臓用・糖尿病用など豊富 |
| 味の種類 | 限られる | 多い |
ここで押さえておきたいのは、「医薬品のほうが上位互換」ではないということです。
医薬品は臨床試験を要するぶん開発に時間がかかり、製品の入れ替わりが遅い。結果として、微量元素の設計が古いまま残っている製品があります。エンシュア・リキッドとエンシュア・Hにはセレン・クロム・モリブデンが含まれていません。一方、食品であるアイソカル100にはセレン・クロム・モリブデン・ヨウ素がいずれも配合されています。
保険が効くかどうかと、栄養設計が新しいかどうかは、別の話だということです。
もうひとつ。成分栄養剤(窒素源がアミノ酸のもの)は医薬品にしか存在しません。エレンタール、ヘパンEDがこれにあたります。クローン病などで成分栄養剤が必要な患者さんに、食品で代替する道はありません。ここは明確に線が引かれています。

医薬品扱いの経腸栄養剤【一覧】
半消化態栄養剤(窒素源がたんぱく質)を中心に、主なものを並べます。薬価は2026年8月時点です。
| 製品 | 製造販売元 | 濃度 | 主な規格 | 1本のkcal | たんぱく質 | 薬価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| エンシュア・リキッド | アボットジャパン | 1.0kcal/mL | 250mL缶 | 250kcal | 8.8g | 0.71円/mL(1缶177.5円) |
| エンシュア・H | アボットジャパン | 1.5kcal/mL | 250mL缶 | 375kcal | 13.2g | 1缶235円 |
| エネーボ | アボットジャパン | 1.2kcal/mL | 250mL缶 | 300kcal | 13.5g | 8.3円/10mL(1缶207.5円) |
| ラコールNF配合経腸用液 | イーエヌ大塚製薬 | 1.0kcal/mL | 200mLパウチ | 200kcal | 8.8g | 1.07円/mL(200mL=214円) |
| イノラス | 大塚製薬工場 | 1.6kcal/mL | 187.5mL | 300kcal | 12.0g | 1.39円/mL(1本260.6円) |
このほか、ツインラインNF(消化態)、エレンタール・ヘパンED(成分栄養剤)、アミノレバンEN(肝不全用)、ラコールNF配合経腸用半固形剤(半固形)があります。
実務で効いてくる差を3つ挙げます。
- 飲む量が違う。750kcalを摂るのに、エンシュア・リキッドなら750mL。イノラスなら469mLで済みます。飲水量を抑えたい患者さんでは、この差が効きます
- 浸透圧が違う。エンシュア・リキッド約330mOsm/L、エンシュア・H約540mOsm/L、イノラス約670mOsm/L、ラコールNF 330〜360mOsm/L。高濃度のものは浸透圧も高く、経管で速く入れると下痢の原因になります
- 微量元素の設計が違う。前述のとおり、エンシュア系にはセレン・クロム・モリブデンがありません
食品扱いの主な製品【一覧】
店頭・通販で買えるもののうち、代替候補になりやすい5製品です。
| 製品 | メーカー | 容量 | kcal | たんぱく質 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 明治メイバランスMini | 明治 | 125mL | 200kcal | 7.5g | 脂質5.6g/炭水化物31.8g/食物繊維2.5g。ビタミン11種・ミネラル10種。味は8種類 |
| アイソカル100 | ネスレ | 100mL | 200kcal | 8.0g | 最も少量で200kcal。セレン・クロム・モリブデン・ヨウ素を配合 |
| エンジョイクリミール | 森永乳業クリニコ | 125mL | 200kcal | 7.5g | 食物繊維2.5g、シールド乳酸菌100億個 |
| テルミールミニ | ニュートリー | 125mL | 200kcal | 7.3g | 脂質7.5g/炭水化物26.0g。麦茶味がある |
| カロリーメイトゼリー | 大塚製薬 | 215g | 200kcal | 8.2g | ゼリータイプ。ビタミン10種・ミネラル4種。味は3種類 |
表を見て気づくとおり、この市場は「200kcal・たんぱく質7〜8g」でほぼ横並びに設計されています。メーカーが違っても栄養量はほとんど変わりません。
つまり選ぶ基準は栄養量ではなく、「飲み切れるか」になります。容量、形状(液体かゼリーか)、味。ここが実際の摂取量を決めます。
なおテルミールは2021年にテルモからニュートリーへ移管されています。「テルモの製品ですよね」と言われることがありますが、現在の製造販売元は違います。

患者さんの負担は、いくら変わるのか
ここがいちばん聞かれるところです。薬価から計算します。
まず、保険が効いた場合の3割負担を100kcalあたりに直します。
| 製品 | 1本の薬価 | 3割負担 | 100kcalあたり |
|---|---|---|---|
| エンシュア・リキッド(250kcal) | 177.5円 | 約53円 | 約21円 |
| エンシュア・H(375kcal) | 235円 | 約71円 | 約19円 |
| エネーボ(300kcal) | 207.5円 | 約62円 | 約21円 |
| ラコールNF 200mL(200kcal) | 214円 | 約64円 | 約32円 |
| イノラス(300kcal) | 260.6円 | 約78円 | 約26円 |
対して食品は全額自費です。実売価格は店舗や購入単位で動きますが、1本200円前後で買えることが多く、100kcalあたりおよそ100円。
同じカロリーで、負担はおよそ4〜5倍になります。
1日750kcalを補っている患者さんで、1か月30日として試算すると——
- 保険(エンシュア・リキッド3缶/日・3割負担) 約53円×3×30日=約4,800円/月
- 自費(食品200kcal×4本/日・1本200円) 200円×4×30日=約24,000円/月
差額は月およそ1万9,000円。年間に直せば22万円を超えます。
これは「代替品をご案内しますね」で済む金額ではありません。まず確認すべきは、本当に保険給付の対象外なのかです。経管栄養、術後、医師が必要と判断した場合は給付されます。処方箋に投与理由の記載がないだけであれば、疑義照会で解決する話です。代替品の案内は、そのあとの話になります。
※薬価は2026年8月時点。食品の価格は購入先により変動するため目安です。3割負担で計算しています。

経管栄養の患者さんは、どうなるのか
ここを混同すると説明を誤ります。
2026年度改定で給付の対象外になりやすいのは「経口で飲んでいて、栄養保持が目的」の場合です。経管栄養で使っている患者さんは、給付が続きます。
つまり代替品を探すことになるのは、主に経口摂取の患者さんです。胃瘻や経鼻チューブの患者さんに「食品に切り替えてください」と案内するのは、多くの場合まちがいです。
そのうえで、経管で食品(濃厚流動食)を使うこと自体は可能です。実際、病院・施設では日常的に使われています。ただし在宅では、次の落とし穴があります。
在宅で食品に替えると、管理料はどうなるか
「安いほうでいいです」と患者さんに言われて、そのまま食品に切り替えると、医療機関側の管理料が算定できなくなることがあります。
ここは管理料の種類によって扱いが正反対です。
| 管理料 | 対象になる栄養剤 | 食品への切替 |
|---|---|---|
| C105 在宅成分栄養経管栄養法指導管理料 | 成分栄養剤のみ(アミノ酸・ジペプチド・トリペプチドを主な窒素源とし、未消化態タンパクを含まないもの)=エレンタール、エレンタールP、ツインラインNF | 不可。「単なる流動食」では算定できない |
| C105-3 在宅半固形栄養経管栄養法指導管理料 | 薬価基準収載の高カロリー薬または、薬価基準に収載されていない流動食(市販されているものに限る)で、投与時間の短縮が可能な半固形状のもの | 可能。市販品でも算定できる |
C105 の留意事項には、「栄養維持のために主として単なる流動食を用いており、栄養素の成分の明らかなものを一部用いているだけの場合」は該当しないと明記されています。成分栄養剤を市販品で置き換える道はありません。
一方 C105-3 は、条文がはじめから市販の流動食を織り込んでいます。ただし胃瘻を造設していることが要件で、最初に算定した日から1年が限度です。
薬剤師がここを押さえておく意味は、ひとつです。患者さんの「安いほうに替えます」という一言が、医療機関側の算定を壊すことがある。費用の相談を受けたら、薬局で完結させず、処方元に情報を戻す。それだけで防げます。
代替品を選ぶときの分岐
製品の栄養量が横並びである以上、患者さんの状況から絞り込むほうが早いです。
腎臓や肝臓に配慮が必要な患者さんに、店頭で製品を選ばせてはいけません。たんぱく質・カリウム・リンの調整が要る場合、一般的な製品はむしろ負荷になります。ここは医師・管理栄養士の判断を挟む場面です。

窓口で聞かれたら、こう答える
制度の説明ができても、次に来る質問に答えられないと会話が止まります。実際によく聞かれる3つを、答え方ごと置いておきます。
「メイバランスは薬局で買えますか」
買えます。食品なので処方箋は要りません。店頭・通販のどちらでも購入できます。ただし保険は効かず全額自費です。この2点はセットで伝えてください。「買えます」だけで終えると、値段のところで必ず戻ってこられます。
「エンシュアと同じものは市販にありますか」
栄養量なら近いものがあります。200kcal・たんぱく質7〜8gという設計は、エンシュア・リキッド1缶(250kcal・8.8g)とほぼ同等です。
ただし「同じ」ではありません。成分栄養剤は市販にありません。逆に微量元素は市販品のほうが充実している場合があります(エンシュア系にはセレン・クロム・モリブデンが入っていません)。どちらが上位ということはなく、設計が違うだけです。
「まとめ買いすれば安くなりますか」
購入単位を大きくすれば単価は下がります。ただし先に箱で買わせないでください。この種の製品は味が合わないと飲み切れず、そのまま残ります。まず数本で試して、飲めることを確認してから箱にする。結果としてこれがいちばん安くつきます。
対応の順番
質問に答える前に、踏む順番があります。
- ◻️ まず「本当に対象外か」を確認する——処方箋の投与理由の記載漏れなら疑義照会。ここで解決するケースがある
- ◻️ 金額の差を先に伝える——月2万円規模で変わることを、あとから知られるより先に
- ◻️ 「同じ200kcalでも飲み切れるかが違う」と説明する——量・形状・味で選ぶ理由を伝える
- ◻️ 腎・肝の配慮が要る人は、必ず医師・管理栄養士へつなぐ
- ◻️ 成分栄養剤が必要な患者さんに、食品の代替はないと伝える
- ◻️ 在宅の患者さんは、勝手に切り替えさせず処方元へ情報を戻す——C105は成分栄養剤限定で、食品では算定できない
「保険が効かなくなりました」で終わらせると、患者さんは自分で選ぶしかなくなります。選び方の軸をひとつ渡すだけで、窓口の会話は変わります。
この記事で取り上げた食品
いずれも食品扱いで、処方箋なしで購入できます(保険は効きません)。味が合わないと飲み切れないため、まず数本で試すことをおすすめします。
