調剤ベースアップ評価料 ~2026年度調剤報酬改定~ をやさしく解説

制度改正
この記事は約6分で読めます。

薬局で働く薬剤師・事務の賃上げ原資を確保するための点数。得た収入は賃金改善に全額充てるのがルールです。

薬局に勤務する薬剤師・事務職員等の確実な賃上げを図ることを目的に新設された評価料です。国が掲げる賃上げの目標値は、薬剤師が+3.2%程度、事務職員等が+5.7%程度(満たないこと自体が直ちに問題になるわけではありません)。令和8年度・令和9年度で段階的に点数が引き上がる設計です。

▶ 点数表での位置づけ

調剤技術料や薬学管理料とは独立した「第5節 その他(区分40)」に位置づけられます。処方箋の受付1回につき算定します。

令和8年6月から4点、令和9年6月から8点(所定点数の100分の200)に倍増します。

時期点数算定ルール
令和8年6月1日〜4点処方箋受付1回につき
令和9年6月1日〜8点所定点数の100分の200として算定

40歳未満の薬剤師+事務職員(年齢不問)が対象。管理薬剤師40歳以上の薬剤師本部職員等は対象外です。

  1. 40歳未満の薬局の勤務薬剤師
  2. 事務職員(年齢制限なし)
  • 管理薬剤師(管理者)
  • 40歳以上の薬剤師
  • 事業主・使用者・開設者
  • 業務委託により勤務する者
  • 本部職員・エリアマネージャー等(調剤業務に直接従事せず管理的業務に専従する者)

▶ 年齢の判定基準日

「賃金の支払対象となった月の初日(1日)時点」で40歳未満なら対象。例:5/15に40歳になる薬剤師は、5月分(5/1時点で39歳)までは対象、6月分(6/1時点で40歳)から対象外になります。

派遣・出向・兼務の特例(グループ実務向け)

派遣:業務委託は対象外だが、派遣元と協力し当該薬局職員と同程度以上の賃金改善を行う等の要件を満たせば対象に含められる。出向:出向元から賃金が支払われていても、出向先が出向元と協議し賃金改善額を把握すれば出向先の実績に含められる。本部兼務:調剤業務等を主に行いつつ管理業務を兼務する者は「主として調剤業務に従事した実績のある月のみ」対象(複数店舗の重複カウントは不可)。

届出には「届出前1か月の給与支払い実績」が必要。得た収入は基本給・毎月の手当の引上げにのみ使えます。

  • 給与支払い実績:届出にあたり「届出前の1か月」の給与支払い実績が必要
  • 対象職員の賃金改善を実施するために必要な体制が整備されていること
  • 労働基準法等を遵守し、賃金改善の方法・就業規則を周知し、照会には書面等で分かりやすく回答する体制があること
  • OTC等併設時の按分:得た収入は保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ用いる。明瞭に区分できない場合は、全収入に占める保険調剤収入の割合で対象職員数を按分

▶ 「届出前1か月の実績」の意味

これは賃上げ額を計算する土台(基礎額)にするためのデータで、「1か月前から賃上げを始めておく」という意味ではありません。新規開設店は、開設直後は届出不可。スタッフに1か月分の給与を支払った実績ができてから届出可能になります。

  • 対象職員の基本給又は毎月決まって支払う手当の引上げ(ベア)、及びそれに伴う賞与・時間外手当・法定福利費等の増加分に用いる
  • 引き下げの禁止:この評価料以外の賃金項目の水準を低下させることは禁止

使い切れない分は一時金で調整可

処方箋受付回数の変動等で収入がベアに用いた額を上回り、追加のベアが困難な場合に限り、賞与等の一時金による賃金改善が認められます。中間報告時点で収入超過でも、最終的に実績報告で収入≦賃金改善総額にできれば問題ありません。

同一給与体系のグループなら一括報告の特例あり。賃上げは4月遡及でも、報告は6月以降分を使うのがコツです。

  • 事前届出(様式103)は店舗ごとに提出。ただし「同一グループの全薬局で本様式により届け出ていること」を誓約する欄があり、グループで足並みを揃えるのが前提
  • 実績・中間報告は、同一給与体系の店舗群なら給与データを通算して作成可。単独店舗用の様式104別添1ではなく、複数店舗集約用の様式104別添2を使用

▶ 4月から賃上げ済みなら「3月の給与」が基礎額

基礎額は原則「届出月の直近1か月」ですが、すでに当年度の賃金改善を開始済みなら改善開始の前月を用います。4月から賃上げしている場合は3月の給与総額が基準。施設基準上も「令和8年3月時点の給与体系」を比較の基準とすると規定されています。

▶ 4月・5月分を6月に一括支給してもOK

やむを得ない事情で算定開始月から賃金改善が難しい場合、年度末までに4月へ遡及して差額を一括支給すれば「4月から実施したもの」とみなせます。6月給与で4・5月分のベア相当を遡及一括支給する形で問題ありません。

「6月〜翌5月」で取ると余剰金を減らせる

賃金改善実施期間は「令和8年4月〜令和9年3月」または「令和8年6月〜令和9年5月」の12か月で取れますが、4月・5月は支援金部分を実績に含められないため、6月開始にすると12か月すべてを評価料の実績として計上でき、使い切れずに生じる余剰金を少なくできます。

  • 中間報告(令和8年8月提出):賃金改善=令和8年4月〜7月、評価料算定=令和8年6月〜7月の実績を記載
  • 実績報告(令和9年8月提出):賃金改善=令和8年4月〜令和9年3月(12か月)、評価料算定=令和8年6月〜令和9年5月(12か月)の実績を記載
  • 算定に係る書類は、算定年度の終了後3年間保管
処方箋の種類カウント
自賠責保険(自由診療)含めない
時間外加算等の対象含める
公費負担医療・労災保険など、点数表に従って算定する患者含める

まず確認すること

  • ☐ 対象職員(40歳未満薬剤師・事務)と対象外を正しく仕分けできているか
  • ☐ 届出前1か月の給与支払い実績があるか(新規店は開設直後は届出不可)
  • ☐ 様式103を全店舗で届け出る前提を満たしているか(グループ誓約欄)
  • ☐ 基礎額は改善開始の前月(4月開始なら3月)で計算しているか
  • ☐ 賃金改善実施期間を6月開始で取り、余剰金を抑える設計にしているか
  • ☐ OTC併設店は保険調剤収入割合での按分計算ができているか
  • ☐ 8月の中間報告・翌年8月の実績報告(様式104)の準備と3年保管の体制があるか

本記事は2026年度(令和8年度)調剤報酬改定の答申資料・厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要【調剤】」・疑義解釈(その2・その3・その7等)をもとに、新人薬剤師・調剤事務およびグループ実務向けに要点を整理したものです。様式番号・期限等の細目は最新の様式・地方厚生局の案内に依存します。

※ 算定・届出の最終的な取扱いは、厚生労働省の施設基準の原文、最新の疑義解釈、様式の記載要領、および地方厚生(支)局の判断によります。実務での適用にあたっては必ず原文・最新情報をご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました