この記事でわかること:
① バイオシミラー(バイオ後続品)の使用促進を評価する新設50点の加算
② インスリン製剤は加算の対象外なのに、施設基準の計算には含める、というねじれた仕組み
③ 銘柄名処方は薬剤師の自己判断で変更調剤できないという最重要ルール
目次
まずは全体像(何のための加算?)
バイオシミラーの適切な保管・説明体制を整えた薬局に対する新設50点。インスリンだけは加算の対象外です。
バイオ後続品(バイオシミラー)の使用促進を目的に、適切な保管や患者への説明体制を整備している薬局を評価する新設加算です。
| 区分 | 点数 |
|---|---|
| 通常の薬局 | 50点 |
| 特別調剤基本料Aを算定する薬局 | 5点(100分の10) |
| 特別調剤基本料Bを算定する薬局 | 算定不可 |
⚠ インスリン製剤のバイオ後続品は「加算の対象外」
対象品目は国の示すリスト(別紙1)に定められていますが、インスリン製剤のバイオ後続品は対象外です。先行品との価格差が小さく、50点の加算をつけると患者負担が逆転してしまうためです。
施設基準(届出に必要な体制)
「体制整備」と「掲示」は必須。「調剤割合60%以上」はあくまで努力目標です。
必須要件
- 体制整備:バイオ医薬品の適切な保管及び患者への適切な説明を行える、バイオ後続品の調剤に必要な体制が整備されていること
- 掲示物の設置:「バイオ後続品の調剤を積極的に行っている旨」を、薬局の内側・外側の見えやすい場所に掲示すること(具体的な文言の指定はないが、患者に伝わる内容であることが必要)
努力目標(必須ではない)
- 自局で調剤実績のあるバイオ医薬品(後続品が存在する成分に限る)のうち、後続品の調剤割合が80%以上の成分の数が、全体の成分数の60%以上であることが望ましい
▶ あくまで「望ましい」基準
この60%はクリア必須の絶対条件ではありません。下回っていても、体制整備・掲示など他の要件を満たしていれば加算の届出・算定は可能です。ただし、届出時の様式(様式87の3の7)には、この成分ごとの数字を計算して記入する欄があります。
調剤割合の計算方法(具体例)
後続品が存在するバイオ医薬品を5種類(5成分)調剤している薬局を例にします。
| 成分 | 後続品の調剤割合 | 80%以上? |
|---|---|---|
| 成分A(例:インスリングラルギン) | 90% | ○ |
| 成分B(例:アダリムマブ) | 85% | ○ |
| 成分C(例:エタネルセプト) | 80% | ○ |
| 成分D(例:フィルグラスチム) | 50% | × |
| 成分E(例:テリパラチド) | 10% | × |
計算:80%以上を達成している成分は A・B・C の3成分。3成分 ÷ 全5成分 = 60%。この薬局はちょうど目標をクリアしています。
⚠ この計算には「インスリン」も含める
加算(50点)の対象品目からはインスリン製剤のバイオ後続品が外れていますが、施設基準の割合計算(届出書類への記入)にはインスリン製剤の成分も含めて集計します。「加算の対象」と「計算に含めるかどうか」は別の話なので混同しないでください。
調剤時の実務ルール(変更調剤・疑義照会)
銘柄名処方は薬剤師の判断で変更不可。必ず処方医への事前確認(疑義照会)が必要です。
① 銘柄名処方時の変更調剤の禁止
- 処方箋に先行バイオ医薬品が「銘柄名」で記載されている場合、薬剤師の判断のみでバイオ後続品に変更すること(変更調剤)は禁止
- 含量違いや類似する別剤形の後発医薬品への変更も同様に不可
⚠ 患者希望での変更も、必ず処方医へ確認
患者の希望等でバイオ後続品へ変更したい場合も、必ず処方医へ事前に連絡し、疑義照会で可否の確認・同意取得を行う必要があります。事前確認なしの変更調剤はできません。
② 一般名処方時の効能・効果の確認
- バイオ医薬品が一般名処方されていても、先行品と後続品で効能・効果(適応疾患)が異なるケースがある
- 通常の後発医薬品の変更調剤と同様、適応症の確認などの適切な対応が必要
- 用意しようとしている後続品が患者の疾患に適応を持たない(適応外使用となる)疑いがある場合は、処方医への疑義照会を行う
届出と関連する加算の取り扱い
届出は様式87の3の7。この届出をしていなくても特定薬剤管理指導加算3(ロ)は別途算定できます。
- 提出書類:様式87の3の7(バイオ後続品調剤体制加算に係る届出添付文書)等を用いて地方厚生(支)局へ届出
- 届出書には、要件の該当性や成分ごとの調剤割合等を記入する
▶ 「バイオ後続品調剤体制加算」と「特定薬剤管理指導加算3(ロ)」は別物
バイオ後続品調剤体制加算(様式87の3の7)の届出をしていなくても、特定薬剤管理指導加算3(ロ)は算定可能です。また、インスリン製剤であっても特定薬剤管理指導加算3(ロ)の算定対象になります。体制加算の対象外=他の加算も全部対象外、と早合点しないようにしてください。
現場での確認チェックリスト
自分の薬局でまず確認すること
- ☐ バイオ医薬品の保管・説明体制が整っているか(必須)
- ☐ 「バイオ後続品の調剤を積極的に行っている旨」の掲示が内側・外側にあるか(必須)
- ☐ 後続品調剤割合80%以上の成分が全体の60%以上か(努力目標。インスリンも計算に含める)
- ☐ 銘柄名処方されたバイオ医薬品を、確認なしに変更調剤していないか
- ☐ 一般名処方で効能・効果の異なる後続品を出していないか、適応症を確認しているか
- ☐ 体制加算の届出有無にかかわらず、特定薬剤管理指導加算3(ロ)の算定機会を見落としていないか
本記事は2026年度(令和8年度)調剤報酬改定の答申資料等をもとに、新人薬剤師・調剤事務向けに要点を整理したものです。
※ 算定の最終的な可否は、厚生労働省の点数表・施設基準の原文、最新の疑義解釈、および地方厚生(支)局の判断によります。実務での適用にあたっては必ず原文・最新情報をご確認ください。

