この記事でわかること:
① 外来患者への投薬で「投与が必要な理由」の記載が必須になった経緯
② 理由の記載がない処方箋はそのまま調剤できないという対応フロー
③ レセプトへの確認方法(コード)の記載と、薬歴に残すべき情報の違い
目次
まずは全体像(何が厳格化された?)
保険適用自体はそのまま。ただし「なぜ必要か」を処方箋とレセプトに明記しないと算定できなくなりました。
エンシュアやラコール等の経腸栄養剤(栄養保持を目的とした医薬品)は引き続き保険適用での処方・調剤が可能ですが、保険給付の対象とするためのルールが厳格化されました。
対象となる医薬品
薬効分類が「たん白アミノ酸製剤」で、効能・効果が「一般に、手術後患者の栄養保持」、用法・用量に「経口投与」が含まれる以下の医薬品が対象です。
- エンシュア・リキッド/エンシュア・H
- ラコールNF配合経腸用液
- ツインラインNF配合経腸用液
- イノラス配合経腸用液
- エネーボ配合経腸用液
保険給付の新たな要件(外来患者)
入院中以外の患者には、3つの理由のいずれかを処方箋とレセプトに記載することが必須です。
入院中の患者以外(外来患者・在宅患者など)への投薬では、単に処方するだけでは保険給付の対象になりません。保険給付とするには、以下のいずれかに該当する理由を処方箋及びレセプトに記載する必要があります。
- 手術後の患者である旨
- 経管により栄養補給を行っている患者である旨
- 必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者である場合その他これに準ずる場合であって、医師が当該医薬品の投与が必要であると判断した理由
⚠ 「食事代わり」「食欲不振」だけでは不十分
単なる「食事代わり」や漠然とした「食欲不振」といった理由ではなく、医師による医学的な必要性の判断と明確な理由の記載が求められます。
薬局での対応手順(3ステップ)
①理由の記載を確認→②なければ疑義照会→③確認方法をレセプトに記録、の3段階です。
① 処方箋の「投与理由」の記載を確認する
受け取った処方箋に、医師が「投与が必要と判断した理由」が明記されているかを確認します。
| 判定 | 記載例 |
|---|---|
| OKな例 | 「胃がん手術後のため」「胃瘻から投与」「嚥下機能低下により食事摂取が著しく困難なため」 |
| NGな例 | 「エンシュア・リキッド 1日3缶」とだけ記載/「食欲不振」のみの記載 |
② 記載がない場合は疑義照会を行う
処方箋に投与理由の記載がない場合、そのまま調剤して保険請求することはできません。必ず処方医へ疑義照会を行い、理由を確認します。
例:薬局から処方元へ連絡し「保険適用での算定のため、エンシュアの投与が必要な医学的理由をお教えいただけますでしょうか」と確認。医師から「食道狭窄があり食事が通らないため」等の具体的な回答を得たうえで調剤を進める。
③ レセプトの摘要欄に「確認方法」を記録する
調剤後のレセプト請求では、理由をどの手段で確認したか(処方箋の記載か、疑義照会か)を摘要欄に記録します。具体的な手術日や胃瘻造設日などをレセプトに入力する必要はありません。
| 確認方法 | コード | レセプト表示文言 |
|---|---|---|
| 処方箋に理由の記載があった場合 | 820101929 | 処方箋記載により確認(栄養保持を目的とした医薬品が処方されている処方箋に基づき調剤を行った場合) |
| 疑義照会で確認した場合 | 820101930 | 疑義照会により確認(栄養保持を目的とした医薬品が処方されている処方箋に基づき調剤を行った場合) |
▶ レセプトと薬歴で「残す情報」が違う
疑義照会で聞き取った具体的な理由(例:「食道狭窄のため」)は、レセプトには記載不要ですが、調剤録や薬歴には疑義照会の記録として詳細を残す必要があります。レセプトは確認方法(コード選択)だけ、詳細は薬歴へ、と覚えてください。
現場での確認チェックリスト
自分の薬局でまず確認すること
- ☐ 対象6品目(エンシュア・リキッド/H、ラコールNF、ツインラインNF、イノラス、エネーボ)を把握しているか
- ☐ 外来患者の処方箋に投与理由の記載があるかを毎回確認する運用になっているか
- ☐ 記載がない場合に「そのまま調剤しない」ことがスタッフ間で周知されているか
- ☐ 疑義照会の聞き取り方(医学的理由の確認)がスムーズにできるか
- ☐ レセプトのコード(820101929/820101930)を確認方法に応じて正しく選べているか
- ☐ 疑義照会で得た具体的な理由を薬歴に記録する運用になっているか
本記事は2026年度(令和8年度)調剤報酬改定の答申資料等をもとに、新人薬剤師・調剤事務向けに要点を整理したものです。
※ 算定の最終的な可否は、厚生労働省の点数表・施設基準の原文、最新の疑義解釈、および地方厚生(支)局の判断によります。実務での適用にあたっては必ず原文・最新情報をご確認ください。

