執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当。薬歴の添削と社内研修も担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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※ 本記事は令和8年3月5日 保医発0305第6号(0619訂正後)別添3の記載に基づきます。
「SOAPがぐちゃぐちゃ」「Aが書けない」「薬歴指導が怖い」——薬歴の悩みは尽きません。私も新人の頃は、薬歴指導が公開処刑のように感じていました。
ただ、長く添削する側に回って分かったことがあります。多くの人が、SOAPという「型」から入って迷子になっています。
順序が逆です。先に決まっているのは「何を記載しなければならないか」で、SOAPはそれを整理するための道具にすぎません。この記事は、通知が求める記載事項から逆算して、SOAPの書き方を組み立て直します。
そもそもSOAPは義務ではありません
意外に思われるかもしれませんが、調剤報酬の通知は「SOAPで書け」とは言っていません。求めているのは記載事項です。
留意事項通知が挙げる、薬剤服用歴等に記載する事項は次のとおりです。
| ア | 患者の基礎情報(氏名、生年月日、性別、被保険者証の記号番号、住所、必要に応じて緊急連絡先) |
|---|---|
| イ | 処方及び調剤内容等(処方した保険医療機関名、処方医氏名、処方日、調剤日、調剤した薬剤、処方内容に関する照会の要点等) |
| ウ | 患者情報および、それを踏まえた薬学的管理及び指導の要点(下記7項目) |
| エ | 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点 |
| オ | 指導した保険薬剤師の氏名 |
そして「ウ」の中身が、実務でいちばん効きます。
| (イ) | 患者の体質(アレルギー歴、副作用歴等を含む)、薬学的管理に必要な患者の生活像、後発医薬品の使用に関する患者の意向 |
|---|---|
| (ロ) | 疾患に関する情報(既往歴、合併症、他科受診において加療中の疾患を含む) |
| (ハ) | 併用薬(要指導医薬品、一般用医薬品、医薬部外品、健康食品を含む)等の状況、服用薬と相互作用が認められる飲食物の摂取状況 |
| (ニ) | 服薬状況 |
| (ホ) | 残薬状況(残薬がないときは、その旨を記載すること) |
| (ヘ) | 患者の服薬中の体調の変化(副作用が疑われる症状など)、患者又は家族等からの相談事項の要点 |
| (ト) | 手帳活用の有無(活用しなかった場合はその理由と患者への指導の有無。複数の手帳を1冊にまとめなかった場合はその理由) |
(ホ)に注目してください。「残薬がないときは、その旨を記載すること」と明記されています。「残薬なし」と書かないと、確認したこと自体が記録に残りません。個別指導で指摘されやすい箇所です。
(ト)の手帳活用の有無も同様です。使わなかったなら、その理由まで書く必要があります。
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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

記載事項をSOAPに割り当てる
SOAPが役に立つのは、この記載事項を漏れなく拾うための枠として使うときです。対応させると、こうなります。
| 意味 | 通知の記載事項との対応 | |
|---|---|---|
| S Subjective | 患者の訴え・主観情報 | 体調の変化、相談事項の要点、生活像、後発品への意向 |
| O Objective | 薬剤師が確認した事実 | 服薬状況、残薬状況、併用薬、検査値、手帳活用の有無 |
| A Assessment | 薬剤師の評価・考察 | 薬学的管理及び指導の要点(=ここが本体) |
| P Plan | 今後の対応 | 今後の継続的な薬学的管理及び指導の留意点 |
この対応を頭に入れておくと、「何を書けばいいか」で止まらなくなります。SOAPの枠を埋めるのではなく、記載事項を置く場所を決めるだけになるからです。
Sが「メモ帳」になっていませんか
添削していて最も多いのが、Sが患者の発言の書き起こしになっているケースです。
- 「咳が出る」
- 「眠れない」
- 「薬はちゃんと飲んでいる」
- 「特に困っていない」
間違いではありません。ただ、これだけではAにつながりません。Sは会話の実況中継ではなく、後のA・Pの材料です。
深掘りの視点
患者の言葉に、次を足すだけで材料になります。
- いつから——「3日前から」
- どんなふうに——「乾いた咳が夜間に」
- 変化——「前回より頻度が増えた」
- 生活への影響——「夜中に目が覚める」
- 服薬への影響——「そのため寝る前の薬を飲み忘れる」
- 患者の希望・不安——「薬を増やしたくない」
「咳が出る」が「3日前から夜間に乾性咳嗽。中途覚醒があり、就寝前の服薬を忘れることがある。薬を増やしたくないとの希望」になれば、Aが自然に書けます。
Aが書けないのは、Aの書き方が分からないからではなく、Sに材料がないからです。ここが分かると、薬歴は一気に楽になります。
そして材料を集めるのは、文章力ではなく会話です。「お変わりないですか」ではなく、「前回の咳はどうなりました?」と聞く。それだけでSは埋まります。
通知が明確に戒めていること
薬歴の書き方について、通知には次の記載があります。ここは全文を読む価値があります。
薬剤服用歴等の記載に当たっては、患者から収集した情報、相談事項及び患者への指導内容を単に全て記載するのではなく、その要点を記載することで差し支えないが、指導後速やかに記載を完了させること。また、定型文を用いて画一的に記載するのではなく、指導等を行った保険薬剤師が必要事項を判断して記載すること。特に、薬学管理料やその加算を算定する場合には、その根拠及び指導内容等について簡潔に記載すること。
4点が読み取れます。
- 全部書かなくてよい。要点で足りる——長く書くことが良い薬歴ではありません
- 指導後、速やかに記載する——後でまとめて書くのは想定されていません
- 定型文の画一的な使用は明確に否定されている——テンプレートの貼り付けは、通知に反します
- 加算を算定するなら、その根拠を書く
最後の点は特に重要です。加算を算定したのに、薬歴にその根拠がなければ、算定要件を満たした記録が残りません。個別指導で最も問われる部分です。
令和8年度改定で新設された調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算や、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、いずれも薬歴への記載が要件に含まれています。加算が増えるほど、薬歴の重要性が上がります。
よくある指摘と、直し方
| 指摘 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| Sが薄い | 会話が「お変わりないですか」で終わっている | 前回の内容を起点に聞く。5W1Hと生活への影響を足す |
| Oに残薬の記載がない | 確認したが書いていない | 「残薬なし」も書く(通知が明記) |
| Aが「経過観察」だけ | Sに材料がない | Sを厚くする。Aは「なぜそう判断したか」を1文で |
| Pが「次回も確認」だけ | 何を確認するかが決まっていない | 次回の具体的な確認項目を書く |
| 定型文の使い回し | 効率を優先している | 通知が否定している。1行でも患者固有の内容を入れる |
| 加算の根拠がない | 算定と記録が別作業になっている | 算定した加算ごとに、根拠を1文添える |
保存期間
あわせて押さえておきたい規定です。
薬剤服用歴等の保存については、最終記入日から起算して3年間保存すること。
「調剤日から」ではなく「最終記入日から」です。追記があれば、そこから3年です。電子薬歴でも同じです。
まとめ
- SOAPは義務ではない。通知が求めているのは記載事項。SOAPはそれを漏らさないための枠
- 「残薬なし」も書く。手帳を使わなかったならその理由も書く
- Aが書けないのは、Sに材料がないから。文章力ではなく会話の問題
- 通知は定型文の画一的な使用を明確に否定している
- 加算を算定するなら、根拠を薬歴に書く。新設加算が増えるほど重要になる
- 記載は指導後速やかに。保存は最終記入日から3年
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出典
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号・0619訂正後)別添3 調剤報酬点数表に関する事項
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf
※ 記載事項の解釈は個別指導の運用によって幅があります。実際の記録方法については、通知の原文をご確認のうえ、貴施設の方針に従ってください。

