AI薬歴、4社のブースを回ってみた ~Musubi・Solamichi・MEDIXS・GooCo+を徹底比較~

薬局実務
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薬局DX 製品比較

執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当。薬歴ソフト・帳票様式の選定にも携わっています。

※ 本記事は2026年7月時点の各社公開情報および展示会での取材内容に基づきます。AI薬歴は機能・料金の改定が速い分野です。導入を検討される際は、必ず各社の最新情報をご確認ください。記載内容に変更を確認した場合は本記事を更新します。

この記事でわかること:
① 4社のAI薬歴システムのAIの中身・得意分野の違い
② 大手薬局チェーンが実際にどれを選んでいるか
③ デバイス・費用構造を含めた自局に合う1社の選び方

展示会場の入口をくぐると、4つのブースが並んでいる——そんなイメージで読んでみてください。今日のお目当ては「AI薬歴」。どのブースも「薬歴作成が劇的にラクになる」と謳っていますが、実際にタブレットを覗き込んでみると、各社のAIが向いている方向はまったく違います。

背景には切実な現場の悩みがあります。薬剤師の8割以上が日々の業務に課題を感じており、なかでも「患者への聞き取りで確認漏れをしそうになる(56.1%)」「処方内容の薬学的分析が即座に判断できない(50.7%)」「薬歴作成に時間がかかる(49.2%)」が上位を占めます。薬歴1件の作成には数分、複雑なケースでは10分以上かかることも珍しくありません。この記事では、Musubi・Solamichi・MEDIXS・GooCo+の4社を順番に見て回り、どの薬局がどれを選んでいるかも含めて整理しました。

ひとことで

「契約数(導入企業数)はMEDIXSが多そうだが、AI薬歴の利用数ではSolamichiが一番では」という見方を耳にすることがありますが、データを見るとこの仮説は当たっていません。

システム提供企業導入店舗数AIの提供形態
Musubiカケハシ7,000店舗超(グループ全体14,000店舗超)標準機能として全ユーザーへ展開
Solamichiソラミチシステム約3,027店舗オプション(corte連携)。数百〜千店舗規模で急拡大中
MEDIXSメドレー約3,000店舗AIアシスト機能(特許出願済)を順次提供
GooCo+EMシステムズ非公開基本パッケージに標準搭載

Musubiは2026年5月より「AIアシスタント—音声薬歴生成機能—」を全ユーザーへ標準提供しました。つまり導入済みの7,000店舗以上が、追加費用なしでAI機能を使える状態にあります。導入店舗数・AI利用の絶対数ともに、現時点で最大規模なのはMusubiと見てよさそうです。一方でSolamichiは、日本調剤の全763店舗や薬樹の約140店舗への一斉導入を成立させるなど、大手チェーンを巻き込む採用スピードで存在感を放っています。

タブレットを覗くと—— 患者さんとの会話が自動で書き起こされ、処方内容と照合しながら専門用語が正確に拾われていく。服薬指導が終わる頃には、薬歴の「下書き」がほぼ完成している。

ひとことで

「AIアシスタント—音声薬歴生成機能—」は、服薬指導時の会話を生成AIが自動で薬歴に書き起こし、薬剤師が確認・修正する「高精度な下書き」を作る仕組みです。患者の主訴や、会話中に出てきた検査値の数値も自動で抽出します。

面白いのは2つの録音モードです。通常の窓口対応に使う「患者さんとの対話モード」に加え、在宅・施設訪問後に薬剤師が一人で所見を音声入力する「一人語りモード」があり、移動中の車内などの隙間時間を記録に変えられます。この精度を支えているのが、社内の薬剤師がAIの臨床的判断基準を作り込む「アラインメント」と、日々精度を磨くMLOps体制です。

▶ エコシステムとしての強さ

経営見える化クラウド「Musubi Insight」、服薬フォロー「Pocket Musubi」、「Musubi AI在庫管理」までが揃い、薬歴だけでなく薬局運営全体をデジタルで束ねる設計です。在庫管理を導入したある薬局では、在庫金額を200万円分抑制した事例も報告されています。

タブレットを覗くと—— スマホでさっと録音した会話から、雑談がきれいに消え、SOAP(S・O・A・P)の各欄に情報がきっちり振り分けられていく。方言混じりの会話でも、薬名と日数だけは正確に拾われている。

ひとことで

株式会社corteと共同開発したオプション機能「corte」の強みは、単なる文字起こしではなく、雑談を自動でカットしてSOAP形式に構造化する要約能力です。方言や訛りにも対応し、病名・薬名・処方日数・残薬数といった数値の入力精度に定評があります。

本体標準機能の「指導ナビ」(飲み合わせチェックや指導内容のナビゲーション)と組み合わせることで、薬剤師はメモを取らず録音するだけで薬歴作成が完結します。さらに服薬指導の質を可視化する「AI採点パック」も提供しており、時短だけでなく指導スキルの標準化にも踏み込んでいます。

日本調剤の薬剤師からは「想像以上にスムーズで、業務負担が軽減される」との声が、初期導入300店舗超からは「要約の精度が想像以上で、患者との会話の質も向上した」との評価が出ています。薬樹(約140店舗)も、薬歴作成にかかる時間を服薬指導や対話に振り向けるため導入を決めました。

2025年には「150店舗限定・満足できなければ全額返金」という品質保証型キャンペーンも実施しており、初期コストの不確実性を嫌う経営者の背中を押す戦略を取っています(取材協力等の条件あり)。

▶ 端末・アカウントが増えても月額定額

ソラミチ(CARADA電子薬歴)は、端末台数やアカウント数が増えても月額料金が変わらない定額制を公式に明確化しています。店舗にPCを追加しても、在宅用にタブレットを増やしても利用料は上がりません(服薬フォローのSMS連携は別途料金の場合あり)。在宅・多端末運用でコストが読める点は、後述のMEDIXSと並ぶ強みです。

タブレットを覗くと—— 患者を呼ぶ前に、お薬手帳・過去薬歴・電子カルテの情報を読み込んだAIが「今日確認すべきこと」を先にリストアップしてくれている。ポリファーマシーのリスクにも自動で印がついている。

ひとことで

MEDIXSの「AIアシスト機能(一部特許出願済)」が他社と違うのは、狙いが記録の後処理ではなく、服薬指導の”前”の分析支援にある点です。お薬手帳・過去の薬歴・電子カルテ等の情報をもとに、AIが確認すべき留意事項を抽出し、指導内容そのものを提案します。「処方内容の薬学的分析がとっさに判断できない」という新人・若手薬剤師の悩みに、最も直接的に応える設計です。

もう一つの個性が、患者フォローアップへのアプローチです。薬機法改正で義務化された服薬期間中フォローのため電話をかける業務が増えましたが、「繋がらない」「内容を全部書き留めないといけない」という二重の負担がありました。MEDIXSはTwilioのSMS APIを使い、電話よりも確実に届くショートメッセージでのフォローを構築。高齢患者にも対応しやすい設計です。隙間時間に処方箋原本をまとめてスキャンできるファイリング機能も、現場の地味な手間を拾っています。

▶ 端末を増やしても月額が変わらない

MEDIXSは端末台数によらず月額が一律のプライシングを採用しています。前述のソラミチ(CARADA電子薬歴)も端末・アカウントの追加で月額が上がらない定額制を明確に打ち出しています。全薬剤師にタブレットを配る、在宅用に端末を増やすといった運用をするほど、こうした定額制のメリットが効いてきます。端末課金型か定額型かは薬局の運用規模を左右するので、各社の課金体系は必ず確認しましょう。

タブレットを覗くと—— 普段使っているRecepty NEXTの画面とほぼ地続きで、薬歴生成AIがオプションではなく最初から組み込まれている。新しいシステムに乗り換える感覚がほとんどない。

ひとことで

EMシステムズは旧「スマレキ」を2026年4月に「GooCo+」へ刷新し、AI市場へ本格参入しました。最大の特徴は薬歴生成AIサポートをオプションではなく基本パッケージに標準搭載している点です。自社の調剤システム「Recepty NEXT」との完全連動版だけでなく、他社レセコンと接続できるバージョンも用意し、自社エコシステム外のユーザーにも開かれた戦略を取っています。

プラン月額基本料金(税抜・〜)
GooCo+(他社レセコン接続版)22,600円
Recepty NEXT TYPE GooCo+29,800円

4社の中で唯一、月額料金を具体的に公開している点は、予算計画を立てやすいという実務的なメリットです。すでにRecepty NEXTを使っている薬局にとっては、システムの総入れ替えなしにAI機能を足せる現実的な選択肢になります。

ひとことで
薬局・チェーン採用システム規模・備考
ウエルシア薬局Musubi系採用チェーン
イオン薬局/そうごう薬局Musubi系採用チェーン
日本調剤Solamichi(corte)全763店舗へ導入決定
薬樹株式会社Solamichi(corte)首都圏約140店舗

※ウエルシア薬局は緊急避妊薬の取扱研修等、別の文脈でも全薬剤師研修を実施するなど、デジタル・新制度対応に積極的な企業として知られています。採用システムは公開情報に基づくものです。

傾向としては、店舗網が広いナショナルチェーンほどMusubi系のエコシステム(薬歴+在庫+経営可視化)を選び、音声AIの精度を軸に意思決定する薬局はSolamichiを選ぶ、という棲み分けが見えてきます。

項目MusubiSolamichiMEDIXSGooCo+
対応デバイスPC・タブレットPC・タブレット・スマホPC・タブレットPC・タブレット
在宅・訪問対応一人語りモードスマホで訪問先利用可タブレットで訪問先入力タブレット対応
患者連絡網Pocket MusubiTwilio SMS連携
費用の考え方AI標準無料/周辺機能で課金オプション課金・返金保証あり台数無制限の定額制月額22,600円〜(公開)

旧来のオンプレミス型は初期費用200万〜500万円に加え、5年ごとのハード更新で再び同程度の出費が発生する構造でした。クラウド型の4社はいずれもこの「重い初期投資+定期的な大型更新」から解放される点が共通の利点です。

ひとことで

AI薬歴はもはや一部の先進的な薬局だけのものではなく、対人業務へのシフトという政策の流れ(電子的調剤情報連携体制整備加算など、2026年度改定での医療DX関連の評価もその一環です)の中で「不可欠な業務インフラ」になりつつあります。導入企業の比較を見るほど、料金やAIの仕組みだけでなく「自局がどこで一番時間を失っているか」を先に言語化しておくことが、選定の近道だと感じます。気になるシステムがあれば、まずはデモを依頼して、実際の画面で自局の処方傾向を試してみるのが一番です。

あわせて読みたい

参考文献・出典(リンク付き)

Musubi(カケハシ)

Solamichi(CARADA電子薬歴・ソラミチシステム)

MEDIXS(メドレー)

GooCo+(EMシステムズ)

比較・業界情報

※ リンクは記事作成時点のものです。各社の店舗数・料金・キャンペーン・機能は頻繁に更新されるため、最新かつ正確な情報は必ず各社公式サイト・問い合わせ窓口でご確認ください。導入店舗数やシェアに関する数値は、各社プレスリリース・公開資料および上記比較メディアの記載に基づく記事作成時点の参考値です。


本記事は各社の公開情報・プレスリリース・導入事例をもとに、薬局経営者・薬剤師向けに要点を整理したものです。

※ 導入店舗数・費用・キャンペーン内容は変更される可能性があります。実際の導入検討にあたっては、各社への直接の問い合わせ・最新の公式情報をご確認ください。

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