適応外でも審査上認める事例が10件追加|ミニリンメルト25・50μgが中枢性尿崩症に、カペシタビンには限定条件

令和8年9月14日、支払基金が第34次審査情報提供事例(医科)として適応外使用の事例を10件追加。うち内服薬4件、注射薬6件。ミニリンメルトは規格によって禁忌が違う 調剤報酬・制度改正
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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「この薬、この病名で保険通るんですか」

効能・効果に書いていない使い方でも、審査上は認めると示されているものがあります。その一覧に令和8年9月14日、10件が追加されました。

うち4件が内服薬です。薬局の窓口に届きます。そして1件には、見落とすと危ない限定条件が付いています。

10件追加された事例事例№423〜432(第34次)
4件内服薬429・430・431・432
限定431カペシタビンには対象を絞る記載がある「術後乳癌」なら何でもではない

そもそも、この仕組みは何なのか

出しているのは社会保険診療報酬支払基金です。審査情報提供検討委員会(平成16年7月設置)で検討した結果を、「審査情報提供事例」として公表しています。

今回は第34次。令和8年9月14日提供分です。資料の冒頭に、この仕組みの位置づけが書かれています。

審査支払機関における診療報酬請求に関する審査は、健康保険法、療養担当規則、診療報酬点数表及び関係諸通知等を踏まえ各審査委員会の医学的・歯科医学的見解に基づいて行われています。

一方、審査の公平・公正性に対する関係方面からの信頼を確保するため、審査における一般的な取扱いについて広く関係者に情報提供を行い、審査の透明性を高めることとしております。

公表時点で、医科は34次にわたり診療行為87事例・薬剤345事例が積み上がっています。今回追加された10件は、そのうち「薬理作用に基づく医薬品の適応外使用事例」に分類されるものです。

追加された10件

事例№成分名(資料の表記)主な製品名審査上認める使用例
423ピロリン酸テクネチウム(99mTc)注射液
【注射薬】
テクネピロリン酸静注心シンチグラムによる心疾患の診断
424フィルグラスチム(遺伝子組換え)
【注射薬】
グラン注射液75/同M300 ほか免疫抑制療法(腎移植、肝臓移植、心臓移植、肺移植、膵移植)に伴う好中球減少症
425レノグラスチム(遺伝子組換え)
【注射薬】
ノイトロジン注50μg/同100μg/同250μg免疫抑制療法(肝臓移植、心臓移植、肺移植、膵移植)に伴う好中球減少症
※424と違い腎移植が入っていない
426グルカゴン
【注射薬】
グルカゴン注射用1単位「ILS」腹部骨盤コンピューター断層撮影(CT/MRI)時の蠕動抑制
427グルカゴン(遺伝子組換え)
【注射薬】
グルカゴンGノボ注射用1mg腹部骨盤コンピューター断層撮影(CT/MRI)時の蠕動抑制
428ブチルスコポラミン臭化物
【注射薬】
ブスコパン注20mg、後発品あり腹部骨盤コンピューター断層撮影(CT/MRI)時の蠕動抑制
429デスモプレシン酢酸塩水和物
【内服薬】
ミニリンメルトOD錠25μg・50μg中枢性尿崩症
430メトトレキサート
【内服薬】
リウマトレックスカプセル2mg、後発品あり小児非感染性慢性ぶどう膜炎
431カペシタビン
【内服薬】
ゼローダ錠300 他後発品あり術後乳癌(ただし限定あり。後述)
432ジメチルポリシロキサン
【内服薬(内用液)】
ガスコンドロップ内用液2%、他後発品あり上部消化管造影撮影時における有泡性粘液の除去
出典:社会保険診療報酬支払基金「第34次審査情報提供事例(医科)」(令和8年9月14日提供分)「薬理作用に基づく医薬品の適応外使用事例」

注射薬6件のうち3件(426・427・428)が同じ使用例——「腹部骨盤CT/MRI時の蠕動抑制」です。グルカゴン2剤とブスコパンが、同じタイミングで整理されました。

424と425の差も見どころです。フィルグラスチムには腎移植が入っていて、レノグラスチムには入っていません。同じG-CSFでも、認められる範囲が違います。

ミニリンメルトOD錠の規格による違い。25µg・50µgは効能が男性における夜間多尿による夜間頻尿で用法は1日1回就寝前に50µg、禁忌は2.1から2.9の9項目で副腎皮質ステロイド剤の投与中とチアジド系利尿剤等の投与中が禁忌。60µg・120µg・240µgは効能が中枢性尿崩症で用法は1回60から120µgを1日1から3回、禁忌は2.1から2.6の6項目で副腎皮質ステロイド剤とチアジド系利尿剤の記載はない
PMDA 電子添文「ミニリンメルトOD錠25µg/ミニリンメルトOD錠50µg」及び「ミニリンメルトOD錠60µg/ミニリンメルトOD錠120µg/ミニリンメルトOD錠240µg」(2026年9月27日閲覧)

429 ミニリンメルト——規格が違うと、禁忌まで違います

薬局にいちばん効くのがこれです。ミニリンメルトOD錠は、規格によって別の薬と言っていいほど内容が違います。電子添文で並べます。

ミニリンメルトOD錠
25μg・50μg
ミニリンメルトOD錠
60μg・120μg・240μg
効能又は効果男性における夜間多尿による夜間頻尿〈製剤共通〉中枢性尿崩症
〈OD錠120μg、OD錠240μg〉尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症
用法及び用量成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する〈中枢性尿崩症〉通常、デスモプレシンとして1回60〜120μgを1日1〜3回経口投与する。……1回投与量は240μgまでとし、1日投与量は720μgを超えないこと
禁忌 2.9
副腎皮質ステロイド剤を投与中の患者
禁忌に記載あり記載なし
今回の事例429中枢性尿崩症に使った場合も審査上認める—(もともと効能あり)
出典:PMDA 電子添文「ミニリンメルトOD錠25µg/ミニリンメルトOD錠50µg」及び「ミニリンメルトOD錠60µg/ミニリンメルトOD錠120µg/ミニリンメルトOD錠240µg」

事例429が認めるのは、25μg・50μgを中枢性尿崩症に使うケースです。認められる用法も示されています。

当該使用例の用法・用量 通常、デスモプレシンとして1回25〜50μgを1日1〜3回経口投与する。

承認用法は「成人男性には、通常、1日1回就寝前に50μg」です。1日1〜3回という用法は、添付文書のどこにも書かれていません。ここを知らずに「1日1回のはずでは」と疑義照会すると、空振りします。

留意事項に、理由まで書いてあります

ミニリンメルトOD錠25μg、50μgの適応は『男性における夜間多尿による夜間頻尿』であるが、中枢性尿崩症患者には女性が含まれる。また添付文書の禁忌項目のうち『2.9副腎皮質ステロイド剤(注射剤、経口剤、吸入剤、注腸剤、坐剤)を投与中の患者』に関しては、中枢性尿崩症に適応のあるミニリンメルトOD錠60μg,120μg,240μgでは禁忌に該当しない。実際、中枢性尿崩症では続発性副腎不全を合併することがしばしばあり、これらの患者では副腎皮質ステロイド製剤とミニリンメルトOD錠60μg,120μg,240μgが併用されている。

薬局で引っかかるのは、この2点です。

  • ◻ 女性に25μg・50μgが出ている——添付文書の効能は「男性における」だが、中枢性尿崩症なら女性が含まれる
  • ◻ 副腎皮質ステロイド剤を併用している——25μg・50μgの添付文書では禁忌だが、60μg以上の規格では禁忌に記載がない

同じ成分・同じ剤形で、規格によって禁忌が違う。そして中枢性尿崩症では、その併用が普通に起きる。資料がわざわざ理由まで書いているのは、ここで止められることが想定されているからだと読めます。

※禁忌の判断そのものは添付文書に基づきます。審査上の取扱いと、添付文書上の禁忌は別の話です。併用の可否は処方医に確認してください。

ミニリンメルトOD錠の規格別比較。25μg・50μgは効能が男性における夜間多尿による夜間頻尿で禁忌2.9に副腎皮質ステロイド剤投与中の患者の記載があるが、60μg以上は効能が中枢性尿崩症で禁忌2.9の記載がない。令和8年9月14日の事例429で25・50μgを中枢性尿崩症に使う場合も審査上認められた
PMDA 電子添文(ミニリンメルトOD錠 各規格)/支払基金「第34次審査情報提供事例(医科)」事例429

430 メトトレキサート——使う医師に条件が付いています

原則として、「メトトレキサート【内服薬】」を「小児非感染性慢性ぶどう膜炎」に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める。

当該使用例の用法・用量 1週間単位の投与量をメトトレキサートとして4〜10mg/m2とし、1週間単位の投与量を1回又は2〜3回に分割して経口投与する。

関節リウマチの用法は1週間単位で6mg(最大16mg)ですが、こちらは4〜10mg/m2——体表面積あたりです。小児の若年性特発性関節炎と同じ考え方になっています。

そして、この事例には使用者の条件が明記されています。

メトトレキサートの投与において感染症、肺障害、血液障害などの重篤な副作用を生じることがあるため緊急時に対応できる医療施設、および本剤について十分な知識と適応疾患の治療経験を有する眼科医が使用する必要がある。また腎機能が低下している場合は副作用が強くあらわれることがあるため本剤開始前、および投与中は腎機能検査を行い患者の状態を十分に観察する。特に骨髄抑制や慢性肝疾患、腎障害のある患者、また活動性結核の患者では症状を悪化させるおそれがあるため投与はしない。これらの注意点をふまえ本薬剤使用に関して以下の条件を満たすことを求める。

1 日本眼科学会の定める眼科専門医の資格を有し、ぶどう膜炎の診療に十分な経験のある眼科医であること
2 小児科との連携ができること

「誰が出しても通る」わけではありません。薬局から見ると、眼科からリウマトレックスの処方が来るという、ふだん見ない形になります。

431 カペシタビン——「術後乳癌」なら何でも、ではありません

ここがいちばん誤解されやすいところです。使用例だけ読むと「術後乳癌」に見えます。

原則として、「カペシタビン【内服薬】」を「術後乳癌」に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める。

ところが留意事項⑵に、対象を絞る一文があります。

「トリプルネガティブ乳癌の術前化学療法後の手術時に浸潤がんが残存していた症例における術後療法」に限定して使用されるべきであること。

トリプルネガティブ/術前化学療法後/浸潤がんが残存。3つとも満たす症例に限られます。術後乳癌一般ではありません。

用法も、体表面積別に4段階で示されています。

体表面積1回用量
1.33m2未満1,500mg
1.33m2以上 1.57m2未満1,800mg
1.57m2以上 1.81m2未満2,100mg
1.81m2以上2,400mg
出典:同 事例431 留意事項⑴「体表面積にあわせて次の投与量を朝食後と夕食後30分以内に1日2回、14日間連日経口投与し、その後7日間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。」

承認されている効能は「手術不能又は再発乳癌」で、術後の補助化学療法が入っていません。結腸・直腸癌には補助化学療法の用法があるのに、乳癌にはない——その穴が、条件付きで埋まった形です。

432 ガスコンドロップ——変わるのは検査名だけ

原則として、「ジメチルポリシロキサン【内服薬(内用液)】」を「上部消化管造影撮影時における有泡性粘液の除去」に対して使用した場合、当該使用事例を審査上認める。

当該使用例の用法・用量 検査15〜40分前にジメチルポリシロキサンとして、通常成人40〜80mgを約10mLの水とともに経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。

承認されているのは「胃内視鏡検査時」です。用法は同じで、変わるのは検査名だけ。バリウム検査の前に出るガスコンドロップが、これで整理されました。

※資料内で表記がゆれています。目次と使用例は「ジメチルポリシロキサン」、成分名欄は「ジメチコン」。同一成分です。

読み方の注意——「必ず通る」ではありません

なお、情報提供する審査の一般的な取扱いについては、療養担当規則等に照らし、当該診療行為の必要性、用法・用量の妥当性などに係る医学的・歯科医学的判断に基づいた審査が行われることを前提としておりますので、本提供事例に示された適否が、すべての個別診療内容に係る審査において、画一的あるいは一律的に適用されるものではないことにご留意ください。

「事例に載っているから絶対に通る」とは書かれていません。個別の審査は個別に行われます。

それでも薬局にとっては意味があります。「効能・効果にないから疑義照会」という反射が、1つ減るからです。事例に載っているならまずそれを確認する、載っていないなら照会する——という順番になります。

なお、厚生労働省が同内容を保険局医療課長通知(保医発)として周知する場合があります。過去分では「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」(令和8年2月25日 保医発0225第1号)が発出されています。第34次分に対応する保医発は、本稿の執筆時点(2026年9月26日)で地方厚生局の通知一覧に掲載を確認できませんでした。本記事は支払基金が公表した資料の原文に基づいています。

まとめ

  • ◻ 令和8年9月14日、支払基金が第34次審査情報提供事例(医科)として10事例を公表(事例№423〜432)
  • ◻ うち内服薬は4件。薬局に届くのはここ
  • ◻ 429 ミニリンメルトOD錠25・50μg → 中枢性尿崩症。認められる用法は1回25〜50μgを1日1〜3回。添付文書の「1日1回就寝前」とは違う
  • ◻ 同じ成分・同じ剤形でも、25・50μgには禁忌2.9(副腎皮質ステロイド剤投与中)があり、60μg以上にはない。中枢性尿崩症では続発性副腎不全の合併がしばしばある
  • ◻ 430 メトトレキサート → 小児非感染性慢性ぶどう膜炎。眼科専門医+小児科連携が条件。用量は4〜10mg/m2/週
  • ◻ 431 カペシタビン → 「術後乳癌」だが、トリプルネガティブ・術前化学療法後・浸潤がん残存に限定と留意事項に明記
  • ◻ 432 ジメチルポリシロキサン → 上部消化管造影撮影時。用法は胃内視鏡のときと同じ
  • ◻ 424と425は範囲が違う。フィルグラスチムには腎移植が入り、レノグラスチムには入っていない
  • ◻ ただし「画一的あるいは一律的に適用されるものではない」と資料に明記されている

適応外を見つけたときに開く場所が、1つ増えました。

参考にした一次資料

  • 社会保険診療報酬支払基金「第34次審査情報提供事例(医科)」(令和8年9月14日提供分)「薬理作用に基づく医薬品の適応外使用事例」事例№423〜432
  • 社会保険診療報酬支払基金 プレスリリース「令和8年9月14日 審査情報提供事例(医科)を追加」
  • PMDA 電子添文「ミニリンメルトOD錠25µg/ミニリンメルトOD錠50µg」
  • PMDA 電子添文「ミニリンメルトOD錠60µg/ミニリンメルトOD錠120µg/ミニリンメルトOD錠240µg」
  • 厚生労働省「医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて」(令和8年2月25日 保医発0225第1号)※過去分の通知例として

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

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