長期収載品でも選定療養費がかからない3つの場合|薬局の判断で保険給付にできる

長期収載品でも選定療養費がかからない3つの場合 薬局の判断で保険給付にできる 調剤報酬・制度改正
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

長期収載品を出すと必ず選定療養費(通知でいう「特別の料金」)がかかる——そう思われがちですが、違います。選定療養にせず保険給付にできる場面が、通知に3つ明記されています。しかも、薬局の判断で決まります。

3薬局の判断で保険給付にできる場面処方箋に何も書かれていなくても
10特別の料金にかかる消費税保険給付分にはかからない
1/2保険で見るのは価格差の半分まで残り半分が特別の料金
とくに2つ目——「後発医薬品では適切な服用等が困難」と薬剤師が判断した場合は、通知に「医療上必要がある場合に該当」と書かれています。剤形や効能・効果の差を見て判断できるのは、薬局だけです。

まず、処方箋のどこを見るか

判定の起点は処方箋の2つの欄です。「変更不可(医療上必要)」欄「患者希望」欄

処方箋の記載扱い
「変更不可(医療上必要)」に「✓」または「×」
+「保険医署名」欄に署名または記名・押印
保険給付(選定療養にならない)
「患者希望」に「✓」または「×」選定療養
銘柄名処方だがどちらの欄にも記載がない後発品を調剤できる。患者が長期収載品を希望すれば選定療養
一般名処方(両欄とも記載しない)患者が長期収載品を希望すれば選定療養

「変更不可(医療上必要)」に記載した場合は、「患者希望」欄には記載しないと決められています(第1の3(1))。両方に印がついた処方箋が来たら、疑義照会の対象です。

なお、医療上の必要性がなく、患者の希望もない場合は、一般名処方が望ましいと通知は書いています。

薬局の判断で保険給付にできる3つの場合

ここが本題です。処方箋の記載で機械的に決まる——ではありません。

ただし、保険薬局において、次の場合において、次のような判断をすることは差し支えないこと。なお、これらの場合において、患者に対して調剤する薬剤を変更すること等を説明の上、同意を得ること。

・ 後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、当該保険薬局において後発医薬品の提供が困難であり、長期収載品を調剤せざるを得ない場合には、患者が希望して長期収載品を選択したことにはならないため、保険給付とすること。

・ 処方の段階では後発医薬品も使用可能としていたが、保険薬局の薬剤師において、患者が服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断した場合には、医療上必要がある場合に該当し、保険給付とすることも想定されること。

・ 処方箋において「患者希望」欄に「✓」又は「×」の記載がされていたが、調剤時に選定療養について説明した結果、患者が後発医薬品を希望した場合に、後発医薬品を調剤し、保険給付とすること。

① 後発品の在庫がなくて先発を出したとき

患者が希望して選んだことにはならないので、選定療養になりません。供給不安で後発品が入らない場面は今も続いています。ここで「先発しかないので特別の料金がかかります」と説明してしまうと、取らなくていいお金を取ることになります。

② 後発品では適切な服用等が困難と、薬剤師が判断したとき

通知が挙げているのは2つです。

  • 患者が服用しにくい剤形である
  • 長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある

この2つは、処方医には見えにくい部分です。処方の段階では「後発品でも可」と判断されていても、窓口で患者を見て、薬を見て初めて分かります。

着目点確認すること
剤形の違いOD錠か素錠か/錠剤の大きさ/粉砕や簡易懸濁の可否/貼付剤のサイズや粘着性/点眼容器の押しやすさ
効能・効果の差異先発にあって後発にない適応がないか。添付文書の「効能又は効果」を並べて確認する
用法の違い1日の回数や食事との関係が揃っているか
添加物アレルギー歴と照らす

効能・効果の差異は、思っているより起こります。先発品が後発品の発売後に適応を追加した場合、後発品にその適応がないことがあります。処方目的がその適応であれば、後発品では適切ではありません。

ただし通知は「保険給付とすることも想定されること」という書き方です。無条件で認められるわけではありません。判断した根拠を薬歴に残してください。「剤形が飲みにくい」だけでなく、何がどう困難なのかを書いておくことです。

③ 説明したら、患者が後発品を選んだとき

処方箋の「患者希望」欄に印があっても、窓口で選定療養の説明をした結果、患者が後発品を希望すれば、後発品を調剤して保険給付にできます。

診察室で「先発のままで」と言った患者が、金額を聞いて考えを変えることはあります。処方箋の印は、窓口での意思決定を縛りません。

3つとも、患者の同意が要ります

通知は「調剤する薬剤を変更すること等を説明の上、同意を得ること」としています。薬局の判断だけで黙って変えることはできません。

選定療養になった場合、いくらになるか

厚労省が計算例を公表しています。そのまま引きます。

前提(厚労省の計算例)
XX錠10mg(内服薬) 1日2錠 30日分
長期収載品の薬価100.0円
後発品の最高価格49.3円
価格差の1/2【a】25.35円(特別の料金の計算に使う)
保険外併用療養費の算出に用いる価格【b】74.65円(100.0 − 25.35)
自己負担率3割
計算
A 特別の料金25.35円×2錠=50.7円→5点/5点×30日=150点
150点×10円×(1+消費税率0.10)
1,650円
B 保険対象の費用74.65円×2錠=149.3円→15点/15点×30日=450点
450点×10円
4,500円
C 患者自己負担4,500円×0.301,350円
D 保険外併用療養費4,500円×0.703,150円
E 患者負担の総額A+C=1,650円+1,350円3,000円

選定療養費(特別の料金)には消費税がかかります

計算式の「×(1+消費税率)」がそれです。150点×10円=1,500円に、消費税150円が乗って1,650円になります。

「特別の料金」は消費税の課税対象であるところ、「長期収載品と後発医薬品の価格差の2分の1」の額、及びこの額を用いて算定した点数には消費税分は含まれていないため、……10円を乗じて得た額に消費税分を加え、「特別の料金」に係る費用(以下「A」という。)を求める。

同じ1つの薬なのに、保険で見る部分には消費税がかからず、特別の料金の部分にはかかります。保険診療は非課税、選定療養は課税——制度が分かれているためです。患者に金額を伝えるときは、税込みで言わないと合いません。

端数は「1剤1日分」ごとに丸めます

上の例で、25.35円×2錠=50.7円が5点になっています。点数への換算は所定単位(内服薬なら1剤1日分)ごとで、そこで丸めてから日数を掛けます。先に30日分を合計してから丸めるのではありません。

また、1つの所定単位に選定療養の対象が複数ある場合は、それぞれの「価格差の1/2」を合算してから点数にします。対象外の薬が同じ剤に含まれる場合は、その薬の薬価を合算して別に計算します。

【a】【b】の数値は自分で計算せず、厚労省が公表している対象医薬品リスト(厚労省マスタ)の値を使ってください。

説明は、医師と薬剤師の両方に求められています

処方医は、選定療養に係る処方に当たり、後発医薬品が選択可能であること、長期収載品を患者が希望した場合には特別の料金が生じ得ること等に関し、患者に十分な説明を行うこと。また、保険薬局の薬剤師も、調剤時に同様の事項を説明し、患者の希望を確認すること。

「医師から聞いているはず」では足りません。薬局でも説明し、希望を確認することが通知に書かれています。

窓口で使えるチェックリスト

  • ◻️ 「変更不可(医療上必要)」欄に印+保険医署名があるか(あれば保険給付)
  • ◻️ 「患者希望」欄に印があるか(あれば選定療養が原則)
  • ◻️ 両方に印がついていないか(併記は想定されていない。疑義照会)
  • ◻️ 自局に後発品の在庫があるか(なければ選定療養にならない)
  • ◻️ 後発品と剤形・効能効果に差がないか(あれば医療上必要に該当し得る)
  • ◻️ 選定療養について説明し、患者の希望を確認したか
  • ◻️ 薬局の判断で変える場合、説明して同意を得たか
  • ◻️ 判断の根拠を薬歴に残したか
  • ◻️ 金額は消費税込みで伝えたか

まとめ

  • 長期収載品を出しても、薬局の判断で保険給付にできる場面が3つある
  • 後発品の在庫がなくて出した場合は選定療養にならない(患者が希望して選んだことにならない)
  • 剤形が服用しにくい/効能・効果に差異があると薬剤師が判断すれば、医療上必要に該当し得る
  • 3つとも説明して同意を得ることが条件。根拠は薬歴に残す
  • 特別の料金には消費税がかかる。保険で見る部分にはかからない
  • 点数への換算は1剤1日分ごと。【a】【b】は厚労省マスタの値を使う

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出典

※ 薬価・後発品最高価格・【a】【b】の数値は改定のたびに変わります。実際の計算では、必ず最新の厚労省マスタをご確認ください。

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