処方箋を見てください。薬を書く欄が、どんどん狭くなっています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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「変更不可(医療上必要)」「患者希望」「リフィル可」——そして令和9年3月から、「一部保険外療養」欄が加わります。
「また増えるのか」と思います。でも1つずつ根拠を確かめると、増える理由は全部同じでした。
薬局からは判定できないからです。
いま処方欄にある5つの欄
| 欄 | 何を伝えるものか | これがないと薬局は |
|---|---|---|
| 変更不可(医療上必要) | 後発品へ変更してよいか | 医療上の必要性が分からない |
| 患者希望 | 長期収載品を患者が希望したか | 選定療養の対象か分からない |
| リフィル可 | 反復して調剤してよいか(最大3回) | 症状が安定しているか分からない |
| 調剤する薬剤を減量した上で 保険医療機関に情報提供 | 残薬があれば減らしてよいか | その都度、照会するしかない |
| 一部保険外療養 (令和9年3月〜) | OTC類似薬の負担の対象か | 何の効能で処方されたか分からない |
右の列を見てください。全部「薬局からは見えない情報」です。
処方箋には病名が書かれません。診察の中身も、患者さんとどんなやり取りがあったかも分からない。
だから「医師の判断」をチェックボックスにして処方箋に載せるしかない。欄が増えるのは、そういう構造です。

令和9年3月に増えるのは、これです
処方箋様式を改正し、「一部保険外療養」欄を追加する。令和9年3月以降に対象医薬品を処方する場合は、別途の負担の対象である場合は「○」を、別途の負担の対象外である場合は「−」を処方箋に記載することとする。

「変更不可」「患者希望」の隣に、3つ目の欄が並びます。
そして記載のパターンは、9月30日の通知(保医発0930第6号)の記入例でこうなります。
| 変更不可 (医療上必要) | 患者希望 | 一部保険外療養 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ○ | 一部保険外療養の特別の料金の対象 | ||
| ― | 特別の料金の対象外 | ||
| 長期収載品であり、対象医薬品でもある場合 | |||
| (×でも空欄でも) | (×でも空欄でも) | ○ | 一部保険外療養の対象(長期収載品の選定療養は対象外) |
| × | ― | 長期収載品の選定療養の対象(患者希望) | |
| × | ― | 長期収載品の選定療養の対象外(医療上必要) | |
| ― | 長期収載品の選定療養の対象(患者が後発医薬品に切り替えた場合を除く) | ||
3つの欄の組み合わせで、意味が細かく分かれます。ただし薬局側の読み方の順番は単純で、通知は「「一部保険外療養」欄に「○」の記載があれば、(「変更不可(医療上必要)」又は「患者希望」欄の記載に関わらず)一部保険外療養の特別の料金の支払いを受けること。」としています。まず○か―かを見て、―のときだけ長期収載品の欄を見ます。
これを医師が診察の合間に判断して、正しくチェックする。負担は処方する側にも重くのしかかります。
国の資料も、この複雑さを認めています
現場の実務が複雑になり、医師によって判断が分かれると、患者の納得が得られないため、できるだけ統一的な仕組みとすべき
——と書いたうえで、3つの欄の組み合わせになりました。
矛盾しているようですが、避けようがない面もあります。「複雑にしない」と「正しく判定する」は、両立しにくいからです。
欄が増えると、薬局は何が変わるか
実は楽になります。ここは押さえておきたいところです。
| 欄がない場合 | 欄がある場合 | |
|---|---|---|
| 判定 | 薬局が推理する/照会する | 処方箋に書いてある |
| 責任 | あいまい | 記載した医師 |
| 患者説明 | 根拠を示しにくい | 処方箋を示せる |
| 疑義照会 | 1件ごとに電話 | 減らせる |
一部保険外療養について、中医協が示した実務フローでも、判断は医療機関側に置かれています。
❶ 保険医療機関:外形的な基準の確認(対象77成分か/18歳年度末の者か/生活保護の医療扶助か)
❷ 保険医療機関:医師による確認(OTCが対応していない効能・効果か/がん・指定難病か/公費か/処置等に伴う14日以内か/年間の服用が医療上必要か/妊婦・授乳婦か)
❸ 保険薬局:患者への別途の負担の説明(必要に応じ疑義照会)
❹ 保険薬局:別途の負担の支払い
薬局は❸と❹だけ。判定は医療機関側です。9月30日の通知の別紙も、対象か対象外かの判断は「対象医薬品の処方時に保険医療機関・処方医によって行われるもの」とし、対象外になる場合を9つ(18歳年度末まで、がん、指定難病等、国の公費負担医療、入院時(退院時処方を含む)、侵襲を伴う検査等の後14日以内分、年間を通じた長期使用、OTCの効能・効果では対応できない状態、OTCの使用が特に困難な場合)に整理しています。
——という建前ですが、「なんで高いの」と聞かれるのは薬局の窓口です。説明できる状態にしておく必要があるのは、結局こちら側になります。
当面は「欄のない処方箋」も来ます
この省令の施行の際現にある旧様式による用紙については、当分の間、これを取り繕って使用することができる。
施行直後、欄のない古い処方箋が届きます。
そのときの扱いは、9月30日の通知(保医発0930第6号)の第2の3で決まりました。古い様式は「手書き等で修正することにより」使えて、医師は「処方する対象医薬品名の近傍に「一部保険外療養」として」○か―を書きます。
そして、○も―も書かれていなければ、処方医に疑義照会です。例外は2つで、患者が「18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者」か、「妊婦、妊娠している可能性がある者又は授乳婦が、代替性が特に高い要指導医薬品又は一般用医薬品を服用できない場合」に当たるときは、年齢等を確かめれば対象外と分かるので、照会せずに特別の料金を求めなくてよく、事後的に処方医に報告します。
処方箋に対象医薬品が記載されている場合において、「一部保険外療養」欄に「○」又は「―」が記載されていない場合は、処方医に疑義照会を行うこと。
もう1つ、令和9年3月1日より前に出た処方箋が3月1日以降に持ち込まれた場合は、施行前の扱いで特別の料金の対象になりません。通知は、リフィル処方箋や分割指示のある処方箋の2回目以降の調剤も含むと書いています。
過去にも同じことは起きています。療養担当規則の附則には、様式改正のたびに「当分の間、これを取り繕って使用することができる」という趣旨の経過措置が繰り返し置かれてきました。今回の省令第143号の附則第3項も同じ文言です。新旧が混在する期間は、毎回あります。

今から準備できること
- ◻️ レセコンの様式対応時期をベンダーに確認した
- ◻️ 「○」と「−」の意味をスタッフ全員が言えるようにした
- ◻️ 「○」がついたら長期収載品の選定療養は取らないことを共有した
- ◻️ ○も―もない処方箋は疑義照会(18歳年度末まで・妊婦等は照会せず事後報告)と全員で共有した
- ◻️ 自局の在庫から77成分に当たる品目を洗い出した
- ◻️ 近隣の医療機関に制度開始を情報提供した
最後の1つは効きます。欄を正しく使ってもらえるかどうかで、窓口の手間がまるで変わります。
まとめ
- 処方欄まわりの欄は令和9年3月時点で5つ——変更不可(医療上必要)/患者希望/リフィル可/減量した上で情報提供/一部保険外療養
- 5つとも「薬局からは見えない情報」を伝えるためのものです。処方箋に病名は書かれません
- 欄が増えるのは、判断を処方箋に載せるしか方法がないから。これが構造です
- 一部保険外療養は対象が「○」、対象外が「−」。「○」なら長期収載品の選定療養は取りません(二重取りなし)
- 長期収載品でもある対象医薬品は、まず○か―を見て、―のときだけ「変更不可」「患者希望」を見ます
- 当面は古い様式も手書き等で修正して使えます。○も―もなければ疑義照会。3月1日より前に出た処方箋(リフィル2回目以降を含む)は特別の料金の対象外
- 欄が増えると薬局はむしろ楽になります。判定が書いてあり、責任の所在もはっきりする
処方欄が狭くなっていくのは、気持ちのいいものではありません。
ただ、あの欄がなければ、全部こちらで照会することになります。そう考えると、見え方は少し変わります。
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