ロキソニンがサントリーへ|2,465億円の買収と、令和9年3月に窓口が430円になる仕組み

ロキソニンがサントリーへ|2,465億円の買収と、令和9年3月にロキソプロフェンが負担増になること 調剤報酬・制度改正
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ロキソニンが、サントリーのものになります。

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2026年4月15日、第一三共が第一三共ヘルスケアの株式を全てサントリーホールディングスに譲渡すると発表しました。譲渡価額は2,465億円です。

2,465億円譲渡価額(予定)株式100%・10,000株
3段階2026年6月/2027年6月/2029年6月完全子会社化まで3年
1/4ロキソプロフェンは77成分に入っている令和9年3月から薬剤費の4分の1が保険外

飲料メーカーがOTCを買う、という話に見えます。でも制度の側から見ると、時期が絶妙です。

令和9年3月、OTC類似薬77成分の保険給付が見直されます。そこにロキソプロフェンが入っています。

まず、発表された事実だけ

項目内容
発表2026年4月15日(取締役会決議は3月31日)
譲渡するもの第一三共ヘルスケア株式会社の株式100%
譲渡先サントリーホールディングス株式会社
譲渡価額246,500百万円=2,465億円(予定)
日程2026年6月1日に議決権70%へ/2027年6月1日に30%へ/2029年6月1日に全株譲渡
出典:第一三共株式会社「第一三共ヘルスケアの株式譲渡(連結子会社の異動)に関するお知らせ」(2026年4月15日)

一度に売り渡すのではなく、3年かけて段階的に手放します。

第一三共ヘルスケアはどういう会社か

決算期売上高営業利益当期純利益
2023年3月期601億円109億円72億円
2024年3月期657億円120億円81億円
2025年3月期760億円129億円89億円
出典:同プレスリリース(単位は百万円表記を億円に換算)

2年で売上が160億円伸びています。営業利益率は17%。順調に伸びている会社を売っているということになります。

年商760億円の会社に2,465億円——売上の3.2倍です。

第一三共は「集中する」と書いています

売る側の理由は、プレスリリースにはっきり書かれています。

当社は、サイエンス&テクノロジーの強みを活かし、経営資源をイノベーティブ医薬品事業、特にオンコロジー事業に集中させることで、標準治療を変革しうる革新的な医薬品を継続的に創出・提供し、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献してまいります。

抗がん剤に集中する。エンハーツを持つ会社の判断としては、筋が通っています。

買う側についても、こう書かれています。

当社及びサントリーHD は、DSHC の当該事業の更なる成長に向け、飲料・食品及び健康食品事業において強固な事業基盤を確立しているサントリーHD の強みを活かして事業を推進することが最適と判断し、このたびの契約締結に至りました。

サントリーはセサミンやDHA・EPAなど健康食品を持っています。通信販売のノウハウも。第一三共ヘルスケアも「通信販売の強化を図り」と書かれているので、噛み合う部分はあります。

ここからが、薬剤師の見方です

企業の説明はここまでです。制度の側から見ると、別の絵が見えます。

令和9年3月、OTC類似薬について「一部保険外療養」が始まります。根拠は、令和8年6月に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)です。

本年6月に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)において、適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする「一部保険外療養」が創設され、対象となるOTC類似薬を使用する場合に、薬剤費の4分の1の別途の負担をお支払いいただく新たな仕組みが令和9年3月から施行することとなった。

対象は77成分1,042品目。同じ資料に、こう書かれています。

対象医薬品は、OTC医薬品と成分、投与経路が同一で、一日最大用量が異ならない医療用医薬品77成分1042品目(抗アレルギー薬、鎮痛消炎剤、胃腸薬、去痰薬、皮膚保湿剤等)

その77成分の一覧に、こう並んでいます。

No有効成分用途
76ロキソプロフェンナトリウム水和物解熱消炎鎮痛剤
出典:厚生労働省「OTC類似薬(医療用医薬品)の成分(77成分)」(第209回社会保障審議会医療保険部会 資料)

第一三共ヘルスケアの看板であるロキソニンS。その成分の医療用が、負担増の対象になります。

※念のため補足します。77成分は医療用医薬品の成分一覧であって、OTC製品が規制されるわけではありません。「医療用のロキソプロフェンの患者負担が上がる」という話です。かぜ薬・鎮痛薬・胃腸薬など、同社が扱う領域の成分も一覧には複数入っていますが、製品と成分の対応は個別に確認が必要なので、ここではロキソプロフェンだけを挙げます。

いくらになるのか|中医協が出した計算例を全部ばらす

「薬剤費の4分の1」と言われても、窓口でいくらになるのかは分かりません。中医協が具体例を出しているので、数字をそのまま追いかけます。

例は薬価16.50円の内服錠を、1回1錠・1日2回・30日分処方した場合です。

記号中身計算金額
—薬価—16.50円
a対象医薬品の価格の4分の116.50 ÷ 44.13円
b保険外併用療養費の算出に用いる価格薬価からaを引いた額12.38円
A「別途の負担」に係る費用4.13円【a】× 1回1錠 × 1日2回 × 30日 = 247.8円≒250円
B一部保険外療養を除く保険対象となる費用12.38円【b】×2錠=24.76円→2点。2点×30日=60点。60点×10円600円
C患者自己負担(保険対象部分)B × 自己負担率 600円 × 0.30180円
D保険外併用療養費B × (1-自己負担率) 600円 × 0.70420円
E患者負担の総額A + C 250円 + 180円430円
出典:厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」(令和8年9月9日 中医協 総-2)「一部保険外療養における費用の計算方法のイメージ」

読み方の注意を1つ。180円は「改定前の自己負担」ではありません。改定後の内訳のうち、保険対象部分(B)に自己負担率を掛けた額です。

つまり患者から見えるのは430円という総額で、そのうち250円が保険の外に出た分。レシートの内訳を聞かれたときに説明するのは、この構造です。

細かい点も押さえておきます。別途の負担は1の位を四捨五入します(247.8円→250円)。消費税の取扱いは、資料の時点で「現在、政府内で検討中」と書かれています。

OTC類似薬の一部保険外療養における費用の計算例。薬価16.50円の内服錠を1日2錠30日分処方した場合、別途の負担250円、保険対象部分の患者自己負担180円、患者負担の総額430円となる
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」(令和8年9月9日 中医協 総-2)

処方箋に「一部保険外療養」欄が増えます

薬局にとって、いちばん実務が変わるのはここです。

処方箋様式を改正し、「一部保険外療養」欄を追加する。令和9年3月以降に対象医薬品を処方する場合は、別途の負担の対象である場合は「○」を、別途の負担の対象外である場合は「ー」を処方箋に記載することとする。

※処方箋様式は当面の間、変更前の様式を使用することを可能とする経過措置を設ける。

対象か対象外かを処方箋の上で医師が示す設計です。薬局が独自に判断するのではありません。ただし経過措置で旧様式も当面使えるので、欄がない処方箋が来たときにどうするかは、別途の整理が要ります。

長期収載品の選定療養と重なる場合の整理も示されています。

  • 長期収載品でありOTC類似薬でもある場合——OTC類似薬の一部保険外療養が優先し、長期収載品の選定療養の特別の料金は求めない
  • 長期収載品の選定療養の計算方法も変わります。「先発薬と後発薬の差額2分の1×投薬全量」で計算する方式になります(現行は算定告示に基づき点数換算して計算)

2つ目は見落としやすいところです。令和9年3月から、いま走っている長期収載品の選定療養の計算そのものが変わります。OTC類似薬の話だと思って読み飛ばすと、足をすくわれます。

OTC類似薬の一部保険外療養で別途の負担の対象外となる整理。OTC医薬品では対応できない効能効果・傷病名として蕁麻疹や皮膚疾患に伴うそう痒が挙げられる。長期使用は年間処方日数おおむね50週(1年)が過去1年分の処方実績を一律に求めるものではなく目安であると明確化され、確認期間は少なくとも6か月程度で、その後も年間を通じた使用が必要と医師が医学的に判断した場合は対象外。アトピー性皮膚炎のプロアクティブ療法として通年で定期的にステロイド外用薬を使用する場合も対象外。指定難病は受給者証又は登録者証を原則とし令和9年度末までは他の書類でも確認可
厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年9月16日 第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1)「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けたとりまとめ(案)」

「全部が対象」ではありません|対象外になる4つの型

ここが窓口で一番聞かれるところです。とりまとめには、対象外となる場合が具体的に書かれています。

対象外になる場合原文の内容
OTC医薬品では対応できない効能・効果「蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒の場合は、OTC医薬品にない効能効果のため別途の負担の対象外」
長期使用「少なくとも6か月程度」の使用実績を確認したうえで、「その後も年間を通じた使用が必要であると医師が医学的に判断した場合」は対象外。目安は「年間処方日数がおおむね50週(1年)」だが、1年分の処方実績を一律に求めるものではない
ステロイド外用薬のプロアクティブ療法「アトピー性皮膚炎に対し、プロアクティブ療法等として通年にわたり定期的にステロイド外用薬を使用している場合には、別途の負担の対象外とする。」
指定難病患者等特定医療費(指定難病)受給者証・登録者証による確認が原則。ただし令和9年度末までの経過的な取扱いとして、客観的に確認できる一定の書類による代替確認を認める。令和10年度以降は受給者証又は登録者証のみ
出典:厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年9月16日 第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1)「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施に向けたとりまとめ(案)」

2つ目の「長期使用」は、当初「年間処方日数がおおむね50週(1年)」という基準だけが示されていました。それが医療保険部会での意見を受けて緩められた、という経緯が資料に残っています。

「年間処方日数がおおむね50週(1年)」とは、過去1年分の処方実績の確認を一律に求めるのではなく、年間を通じた使用の必要性を判断するための目安であることを明確化する。

3つ目のプロアクティブ療法も、中間とりまとめの時点では「ステロイド外用薬は別途の負担の対象として整理する」でした。患者団体の意見を受けて、通年で定期的に使う場合は対象外に変わっています。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024が根拠として明示されています。

国が用意すると書いているもの

現場の事務負担が争点になり、国の対応が資料に列挙されました。薬局として「出てくるのを待てばいいもの」が分かります。

  • 対象医薬品に係る薬剤コード
  • 効能・効果が対応しない傷病名の一覧(=対象外になる病名のリスト)
  • 別途の負担を求めない場合のレセプトへの記載の標準例
  • 紙カルテの医療機関向けの対象成分の一覧表及び簡易なチェックシート
  • 全国共通のQ&A、処方箋及びレセプトへの記載方法、患者説明資料

厚生労働省において、電子カルテ及びレセプトコンピュータを使用する医療機関において円滑な運用が可能となるよう、対象医薬品に係る薬剤コード、効能・効果が対応しない傷病名の一覧、別途の負担を求めない場合のレセプトへの記載の標準例等を国が公表し、システム上で対象・対象外の判断を支援できる環境整備を進める。

なお、がん、指定難病、長期使用等の医学的確認を要する事項については、システムにより自動判定するものではなく、システムが確認に必要な情報を提示し、診療を踏まえて医師が最終的に確認することになるため……

最後の一文が重要です。自動判定ではありません。処方箋の「○」「ー」は医師の判断の結果であり、薬局側はそれを受けて負担を計算する立場になります。

そして国は「範囲を拡大する」と書いています

今後、セルフメディケーションに関する国民の理解や、OTC医薬品に関する医師・薬剤師の理解を深めるための取組、医療用医薬品のスイッチOTC化に係る政府目標の達成に向けた取組などの環境整備を進めるとともに、将来、OTC医薬品の対応する症状の適応がある処方箋医薬品以外の医療用医薬品の相当部分にまで対象範囲を拡大することを目指し……令和9年度以降にその対象範囲を拡大していく。あわせて、特別の料金の対象となる薬剤費の割合の引き上げについても検討する。

「相当部分にまで対象範囲を拡大することを目指し」——国が文書で宣言しています。

77成分1,042品目は入口です。令和9年度以降、対象は広がり、4分の1という割合も引き上げが検討されます。

つまり国策としてOTC市場が広がることが、すでに決まっている。

時系列に並べてみます

時期出来事
令和7年12月24日大臣折衝事項。「令和9年度以降に対象範囲を拡大」「割合の引き上げも検討」
令和7年12月25日第209回社会保障審議会医療保険部会で議論の整理を公表
令和8年3月31日第一三共の取締役会が譲渡を決議
令和8年4月15日サントリーHDへの譲渡を発表(2,465億円)
令和8年6月健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)公布。「一部保険外療養」を創設
令和8年6月1日議決権70%へ(第1段階)
令和8年8月6日技術的検討会が中間とりまとめ
令和8年8〜9月中医協で77成分・計算方法・処方箋様式が具体化
令和9年3月一部保険外療養の施行
令和9年度以降対象範囲の拡大
令和11年6月1日第一三共ヘルスケアが完全にサントリーのものに

大臣折衝事項の4か月後に、取締役会が決議しています。

もちろん、これで因果関係が証明されるわけではありません。企業の判断は何年もかけて進むものですし、プレスリリースに制度の話は一言も出てきません。

ただ、OTC市場の追い風が政府文書で約束されている局面で、2,465億円が動いた——これは事実として並びます。

薬局の窓口で何が起きるか

買収そのものは、明日の業務を変えません。変わるのは令和9年3月からです。

起きること薬局の対応
「ロキソニンが高くなった」と言われる成分が77成分に入ったこと、薬剤費の4分の1が保険外になったことを説明する。中医協の例では、薬価16.50円の錠剤を1日2錠30日分で別途の負担250円+保険対象部分の自己負担180円=総額430円
処方箋に「ー」が付いている別途の負担の対象外。医師が長期使用・指定難病・OTCにない効能効果などを判断した結果。薬局で覆さない
「一部保険外療養」欄がない処方箋当面は旧様式も使える経過措置がある。院内のルールをあらかじめ決めておく
長期収載品の選定療養と重なったOTC類似薬の一部保険外療養が優先し、選定療養の特別の料金は求めない
「市販薬のほうが安いのでは」いまは市販薬のほうが高いことが多い。ただし差は縮まる。次回までに調べると答える
「じゃあ病院に行かない」制度は「一律にセルフメディケーションを求めるもの」ではない。受診を止めない

最後の行が大事です。制度の趣旨は「受診するな」ではありません。中医協総会でも、こういう意見が出ています。

OTC類似薬の一部保険外療養の導入によって、患者の誤った判断によりOTC医薬品を使用し、必要な受診が遅れるといった事象が増えないよう、医療機関の受診が常に念頭に置かれるものであることを周知すべき。

まとめ

  • 2026年4月15日、第一三共が第一三共ヘルスケアの株式100%をサントリーHDへ譲渡すると発表。2,465億円
  • 段階的に3回。2026年6月に70%、2027年6月に30%、2029年6月に全株
  • 第一三共ヘルスケアは2025年3月期で売上760億円・営業利益129億円。2年で売上が160億円伸びている
  • 第一三共は「経営資源をイノベーティブ医薬品事業、特にオンコロジー事業に集中させる」と説明
  • 令和9年3月、一部保険外療養が施行。根拠は令和8年法律第31号。対象は77成分1,042品目で、ロキソプロフェンはNo.76
  • 中医協の計算例では、薬価16.50円を1日2錠30日分で別途の負担250円+保険対象部分の自己負担180円=患者負担の総額430円。180円は改定前の金額ではなく、改定後の内訳
  • 処方箋に「一部保険外療養」欄が追加。対象は「○」、対象外は「ー」。当面は旧様式も可
  • 長期収載品の選定療養の計算方法も「先発薬と後発薬の差額2分の1×投薬全量」に変わる
  • 対象外になるのはOTCにない効能効果(蕁麻疹・湿疹等に伴うそう痒)/長期使用/プロアクティブ療法/指定難病等
  • 大臣折衝事項は「令和9年度以降にその対象範囲を拡大していく」「割合の引き上げについても検討する」と明記

買収のニュースとしては「飲料メーカーがOTCを買った」で終わります。

でも薬剤師が見るべきなのは、令和9年3月に自分の窓口で起きることのほうです。ロキソニンの値段を聞かれる日は、確実に来ます。

出典

  • 第一三共株式会社「第一三共ヘルスケアの株式譲渡(連結子会社の異動)に関するお知らせ」(2026年4月15日)
  • 厚生労働省保険局「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年9月16日 第216回社会保障審議会医療保険部会 資料1)
  • 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(その2)」(令和8年9月9日 中医協 総-2)
  • 厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について」(令和8年8月26日 中医協 総-2)
  • 厚生労働省「OTC類似薬(医療用医薬品)の成分(77成分)」(社会保障審議会医療保険部会 資料)
  • 令和7年12月24日 大臣折衝事項

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