執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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まず点数です。手帳を出さないほうが、高くなります
ここが直感に反するところなので、先に置きます。
1 原則3月以内に再度処方箋を持参し、手帳を提示した患者に対して行った場合
イ かかりつけ薬剤師が行った場合 45点/ロ イ以外の場合 45点
2 1の患者以外の患者に対して行った場合
イ かかりつけ薬剤師が行った場合 59点/ロ イ以外の場合 59点
注3 1の患者であって手帳を提示しないものに対して、必要な指導等を行った場合は、2により算定する。
手帳を出せば45点。出さなければ59点。差は14点——3割負担なら患者さんの窓口負担が約40円増えます。
「手帳を忘れたら安くなる」ではありません。逆です。ここを患者さんに説明できていない薬局は、まだ多いと思います。
そして本題。マイナ保険証をかざして薬剤情報を見た場合、これは「手帳を提示した」に入りません。59点のほうです。
画面には薬の名前が並んでいるのに、です。なぜなのか。

法令の「手帳」の定義を読むと、理由が出てきます
「手帳」は薬機法施行規則に定義があります。点数表のローカルな用語ではありません。
当該薬剤を使用しようとする者が患者の薬剤服用歴その他の情報を一元的かつ経時的に管理できる手帳(別表第一を除き、以下単に「手帳」という。)を所持しない場合はその所持を勧奨し、当該者が手帳を所持する場合は、必要に応じ、当該手帳を活用した情報の提供及び指導を行わせること。
読むべき語が2つあります。「一元的かつ経時的」と「所持」です。
そして診療報酬側にも定義があります。記録する欄が要るという話です。
この場合の「手帳」とは、経時的に薬剤の記録が記入でき、かつ次のアからウまでに掲げる事項を記録する欄がある薬剤の記録用の手帳をいう。
ア 患者の氏名、生年月日、連絡先等患者に関する記録
イ 患者のアレルギー歴、副作用歴等薬物療法の基礎となる記録
ウ 患者の主な既往歴等疾病に関する記録
アレルギー歴。副作用歴。既往歴。——マイナ保険証の薬剤情報画面に、これらの欄はありません。
手帳は「薬の一覧」ではないということです。薬歴に加えて、アレルギーと既往歴を患者自身が持ち歩くもの。定義がそう作られています。
では、マイナ保険証で見えているあれは何なのか
厚生労働省のガイドラインが、はっきり書いています。
マイナポータルによりレセプトに基づく薬剤情報(以下「薬剤情報」という。)に加え、処方・調剤情報を閲覧することができるようになっている。
また、マイナポータルを利用すれば、過去3年分の薬剤情報の閲覧・取得が可能であるが、それ以上の期間の薬剤情報や、要指導医薬品や一般用医薬品(以下「一般用医薬品等」という。)は含まれない。
「レセプトに基づく」。ここが決定的です。
レセプトは保険請求のデータです。だから——
- ◻️ 自費の薬が入りません(自由診療、保険適用外の処方)
- ◻️ OTCが入りません(ガイドラインが明記)
- ◻️ 3年より前が見えません
- ◻️ アレルギー歴・副作用歴・既往歴の欄がありません
定義が求めていたのは「一元的」な管理でした。保険で請求した分だけのデータは、一元的ではありません。
ロキソプロフェンを薬局で買って飲んでいる患者さん。マイナ保険証には1行も出ません。紙のお薬手帳になら、書けます。
そして、いちばん根本的な理由
ガイドラインの一行目に書いてありました。
お薬手帳は、利用者本人のものであり、利用者の服用歴を記載し、経時的に管理することで、利用者自らの健康管理に役立てたり、医師・薬剤師が確認したりすることで相互作用防止や副作用回避に資するものである。
「利用者本人のもの」。
マイナポータルで閲覧できる薬剤情報は、審査支払機関が保険請求から作ったデータです。患者さんが記録したものでも、持ち歩いているものでもありません。見せてもらっているだけです。
施行規則も「所持しない場合はその所持を勧奨し」と書いています。所持する対象として設計されている。データベースは所持できません。
並べると、違いがはっきりします
| お薬手帳 (紙・電子版) | マイナ保険証/マイナポータルの 薬剤情報 | |
|---|---|---|
| 誰のものか | 利用者本人のもの | 審査支払機関等が保有するデータ |
| 情報源 | 薬剤師の記載+患者自身の記録 | レセプト(保険請求) |
| OTC・自費 | 記録できる | 入らない |
| 遡れる期間 | 手帳がある限り | 過去3年分 |
| アレルギー歴・既往歴 | 記録欄がある(定義上の要件) | 欄がない |
| 服薬管理指導料 | 提示すれば45点 | 59点(手帳提示にはならない) |
この表の上から3行が「一元的」、4行目が「経時的」に対応しています。定義に照らすと、足りないのは薬の名前ではなく、範囲と持ち主でした。

電子版お薬手帳は、「そう名乗るための要件」が決まっています
ここも誤解されやすいところです。薬の記録が付くアプリなら何でも電子版お薬手帳、ではありません。
電子版お薬手帳はPHR の1つとして位置づけられる。本ガイドラインはPHR の中でも電子版お薬手帳として呼称するために必要な要件を定めたものであり、その他必要な要件は「民間PHR事業者による健診等情報の取扱いに関する基本的指針」……やその他関連のガイドライン等に準じる。
「電子版お薬手帳として呼称するために必要な要件」。名乗りの条件がある、と書いてあります。
そのなかにマイナポータルとの連携があります。
マイナポータルでは医療保険の薬剤情報や電子処方箋の処方・調剤情報(以下「薬剤情報等」という。)を確認することが可能であり、これらの情報は、提供施設が提供する情報を補完しうる。API 連携により、マイナポータルから提供される薬剤情報等を電子版お薬手帳に取り込むことができるようにするなど、マイナポータルと連携した対応が重要である。
ガイドラインは機能を「実装すべき機能」「実装が望ましい機能」「将来的に実装が望ましい機能」の3段階に整理していて、「実装すべき機能」は通知発出から1年を目処に実装するよう運営事業者に依頼したと本文に書かれています(通知は令和5年3月31日)。
マイナポータルとのAPI連携は、その「実装すべき機能」に置かれています。
そして関係が逆転していることに気づきます。マイナポータルの情報が、電子版お薬手帳を「補完する」。主役は手帳のほうです。OTCも、患者自身が書いた副作用の記録も、マイナポータルからは来ない。そこを埋めるのが手帳の仕事だと、ガイドラインは整理しています。
なお紙の手帳がなくなるわけではありません。ガイドラインは「高齢者などスマートフォンの操作に不慣れな方もいるため」「紙のお薬手帳も利用可能であることを示し」と明記しています。

薬局でどうするか
いちばん困るのは、「マイナ保険証出したから手帳いらないでしょ」と言われる場面だと思います。
「マイナ保険証で見えるのは保険で出たお薬だけなんです。市販薬やサプリ、それに3年より前のお薬は入っていません。お薬手帳のほうが情報が多いので、そちらも見せていただけると助かります。お会計も手帳をお出しいただいたほうが安くなります。」
最後の一行が効きます。「安くなる」は、理屈より先に伝わります。
- マイナ保険証=手帳提示ではない、を全員が知っているここを勘違いすると45点で算定してしまいます
- 手帳を出すと安くなることを伝える45点と59点。3割負担で約40円の差
- OTC・サプリを聞き取って手帳に書くマイナポータルからは絶対に来ない情報。ここが薬剤師の付加価値です
- 電子版を案内するときは紙も選べると伝えるガイドラインが求めている対応です
3番目を強調したいです。マイナ保険証が普及するほど、手帳の役割は「保険で出た薬の記録」から「それ以外の記録」に移ります。OTC、サプリ、副作用の自覚症状、アレルギー。データベースが持っていない情報だけが残る。
まとめ
- 手帳を提示すれば服薬管理指導料は45点、提示しなければ59点。注3に「手帳を提示しないものに対して……2により算定する」と明記されています。出さないほうが高くなります
- マイナ保険証をかざして薬剤情報を見ても、「手帳を提示した」にはなりません
- 理由は定義にあります。手帳は薬機法施行規則で「一元的かつ経時的に管理できる手帳」と定義され、診療報酬上はアレルギー歴・副作用歴・既往歴の記録欄が要件です
- マイナポータルの薬剤情報はレセプト由来。過去3年分までで、要指導医薬品・一般用医薬品は含まれません(ガイドラインが明記)
- そして根本的な理由。「お薬手帳は、利用者本人のものであり」——保険請求から作られたデータベースは、患者本人のものではありません。施行規則も「所持」を前提に書かれています
- 電子版お薬手帳は「そう呼称するための要件」がガイドラインで定められています。マイナポータルとのAPI連携は「実装すべき機能」で、通知発出から1年を目処に実装するよう運営事業者に依頼されました
- 関係はマイナポータルが手帳を「補完する」という向きです。OTC・サプリ・患者自身の記録は、マイナポータルからは来ません。そこを埋めるのが手帳の仕事です
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「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。
※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
出典
- 厚生労働省医薬・生活衛生局総務課長「電子版お薬手帳ガイドラインについて」(令和5年3月31日 薬生総発0331第1号)別添「電子版お薬手帳ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/content/001199653.pdf - 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第15条の13第1項第3号
https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000100001 - 厚生労働省告示「診療報酬の算定方法」別表第三 調剤報酬点数表 10の3 服薬管理指導料
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa9729&dataType=0&pageNo=31 - 厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号)※「手帳」の定義(B011-3 薬剤情報提供料)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/tokaihokuriku/000433602.pdf - 厚生労働省「お薬手帳について」(中央社会保険医療協議会 提出資料)※お薬手帳の法令上の定義、マイナポータルと電子版お薬手帳のAPI連携の図
https://www.mhlw.go.jp/content/001332913.pdf - 厚生労働省「電子版お薬手帳」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/e-okusuritecho.html
※ 本記事は2026年9月2日時点の告示・通知・省令の原文に基づいています。
※ 服薬管理指導料の点数は令和8年6月1日適用の告示によります。特別調剤基本料Aを算定する薬局等では取扱いが異なります。
※ マイナポータルで閲覧できる情報の範囲は、システムの改修により変わることがあります。最新の範囲は厚生労働省の案内でご確認ください。
※ 個別の算定可否の判断に迷う場合は、地方厚生(支)局にご確認ください。

