漢方エキス錠は一包化していいのか|メーカーの安定性データを実際に見て判断する【小児の1回2錠】

漢方エキス錠は一包化していいのか メーカーの安定性データを実際に見て判断する小児の1回2錠 薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

小児に漢方エキス錠が出た。1回2錠。他の薬と一緒に一包化すれば、飲み間違いは確実に減ります。

でも漢方は吸湿する——。

ここで多くの薬剤師が止まります。「たぶんダメだろう」で断るか、「たぶん大丈夫だろう」でやるか。どちらも根拠がありません。

調べてみると、メーカーは分包を禁止していませんでした。条件を付けているだけです。しかも、その条件は添付文書には書かれておらず、インタビューフォームに書かれています。

実際のデータと、自分の在庫品で調べる方法を整理します。

結論:条件付きで「できる」

先に答えを書きます。

  • メーカーは分包を想定して安定性試験をしている品目がある
  • ただし保管条件が付く——気密性の高い容器、低湿度
  • 最初に出るのは含量低下ではなく外観の変化(変色・変形)
  • 調剤者の手の湿気でも変色するという注意書きがある
  • 冷蔵庫は逆効果(結露する)
  • 可否は品目ごと。インタビューフォームの決まった場所を見れば書いてある

順に、実際の記載を見ていきます。

実際のデータ① クラシエ半夏厚朴湯エキス錠

インタビューフォームの「Ⅳ. 製剤に関する項目 4. 製剤の各種条件下における安定性」に、こういう表があります。

保存形態保存条件細粒剤錠剤
分包品室温 3年安定安定
40℃・75%R.H. 6ヵ月安定安定
ポリエチレン製容器室温 3年安定
40℃・75%R.H. 6ヵ月安定
グラシン紙分包+ポリエチレン袋室温 4週間安定
20℃・75%R.H. 4週間安定

注目すべきは一番下の2行です。

「グラシン紙分包+ポリエチレン袋」——これは薬局が分包して渡す状態そのものです。メーカーがその条件で試験をしている。つまり分包されることを想定しているということです。

結果は「室温4週間 安定」「20℃・75%R.H.で4週間 安定」。75%R.H.はかなり高湿度です。梅雨時の室内に近い。そこで4週間もっています。

ただし、この行のデータは細粒剤のものです。錠剤の欄は空欄で、錠剤については「分包品」の条件(室温3年/40℃75%R.H. 6ヵ月)で安定というデータが載っています。錠剤をグラシン紙で分包した状態のデータは、この資料には載っていません。

——これが「メーカーに聞かないと分からない」の正体です。データがないのではなく、公開資料に載っている条件が、薬局がやろうとしている条件と一致していないのです。

同じIFの、もうひとつの重要な記載

「Ⅲ. 有効成分に関する項目」には、こう書かれています。

(3)吸湿性 吸湿性である
2. 有効成分の各種条件下における安定性
本品を開封し、室温に保存した場合、吸湿により外観の変化は認められるが、成分含量には変化がなかった。また、密封状態では安定であった。

これは判断を大きく変える情報です。

「吸湿する=効かなくなる」と思われがちですが、この条件では、変わったのは見た目だけで、含量は保たれていました。

もちろん、これはこの成分・この条件での結果であって、すべての漢方に当てはまるものではありません。それでも「変色したら効かない」という思い込みは、少なくとも自動的には成り立たないことが分かります。

実際のデータ② ヨクイニンエキス錠「コタロー」

こちらのインタビューフォームには、分包する場合の指示が具体的に書かれています。

本剤は吸湿しやすく、生薬特有のにおいがすることがあります。直射日光の当らない涼しい場所に保管してください。特に、開封後(ポリ瓶の場合:エキス散)は調剤が済んだら速やかにキャップを固く締めて保管してください。(本剤は湿気を帯びた手で触れると褐色に変色したり、変形することがありますので、投薬時に注意を行ってください。:エキス錠)

本剤をグラシン紙等の包材に分包して投薬する場合は、気密性の高い容器に入れ、湿度の低い場所(冷暗所)に保管してください。また冷所(例えば冷蔵庫など)に保管した場合、取り出し後そのまま放置されると結露により吸湿して変色の原因となりますので、速やかに保管場所に戻すよう投薬時に注意を行ってください。

「分包して投薬する場合は」——禁止していません。条件を書いています。

そして「湿気を帯びた手で触れると褐色に変色したり、変形する」。これは分包機の話ではなく、調剤している人の手の話です。

夏場、手洗いのあと。あるいは手袋の中で汗をかいた手。錠剤を数えるその瞬間に、変色は始まっています。

自分の在庫品で調べる方法

ここが本記事でいちばん役に立つ部分だと思います。

漢方エキス錠の分包可否は、インタビューフォームの決まった2か所を見れば、かなりのところまで分かります。添付文書には載っていません。

見る場所何が書いてあるか
Ⅳ. 製剤に関する項目
「製剤の各種条件下における安定性」
保存形態ごとの安定性。「グラシン紙分包」「無包装」の行があるかを見る。あれば条件と期間が分かる
Ⅹ. 取扱い上の注意等に関する項目
「薬剤取扱い上の注意点」
分包する場合の指示、保管条件、調剤時の注意。コタローの例のような具体的な指示はここ

あわせて「Ⅲ. 有効成分に関する項目」の吸湿性「開封して室温保存した場合」の記載を見ると、変化するのが外観だけなのか含量まで及ぶのかが分かります。

IFはどこで手に入るか

  • PMDAの医薬品情報検索——品名で検索し、「インタビューフォーム」を開く
  • メーカーの医療関係者向けサイト——製品ページからPDFで取得できる

1品目3分もかかりません。よく出る漢方エキス錠だけでも先に調べて、店舗の共有フォルダに入れておくと、その場で判断できるようになります。

IFに載っていなかったら

学術部門に電話します。「一包化できますか」と聞くと「推奨しません」で終わります。次の形で聞いてください。

  1. 無包装、またはグラシン紙分包での安定性データはありますか
  2. 試験の保存条件は何℃・何%R.H.ですか
  3. 何日(何週間)まで規格内でしたか
  4. 変化が出る場合、最初に変わるのは外観ですか、含量ですか
  5. 乾燥剤を同封した場合のデータはありますか
  6. 分包紙の材質による差のデータはありますか

③の答えが「4週間」なのか「1週間」なのかで、判断は完全に変わります。そして④の答えが「外観」なら、患者さんが見て気づけるということです。これは運用上とても大きい。

回答者名と回答日を薬歴に残してください。次に同じ処方が来たときに繰り返さずに済みます。

小児で一包化したい場合

小児の漢方エキス錠は、成人量より少ない用量で処方されます。1回1〜2錠ということも珍しくありません。

この場面では、一包化のメリットが特に大きくなります。

  • 飲ませるのは保護者。錠数を間違えやすい
  • 保育園・学校・祖父母宅など、渡す相手が複数になる
  • 他の薬(抗菌薬、抗アレルギー薬など)と一緒に管理される
  • バラ包装の錠剤は、小さい子の手が届くと危ない

「吸湿するから」だけで断ると、飲み間違いのリスクを保護者に押し付けることになります。ここは天秤にかける場面です。

小児で一包化する場合の現実解

  • 交付日数を短くする——小児の急性疾患なら5〜7日分が多く、そもそも短期。データが「4週間安定」なら余裕がある
  • 長期の場合は2週間ごとに分けて渡す——残りは薬局で保管、または未開封のまま渡して次回分は分包しない
  • 漢方だけ別包にして、同じ袋にまとめる——薬包紙で仕切る形。錠剤は元の包装のまま、他剤と一緒に1つの袋に入れる
  • 分包紙は防湿性の高いものを選ぶ——グラシン紙よりセロポリ系。使っている分包紙の仕様をメーカーに確認しておく
  • 調剤時に素手で触らない——「湿気を帯びた手で触れると変色」への直接の対策

3つ目の「別包にして同じ袋」は、多くの場面でいちばん実用的です。包装は守られ、飲み忘れも防げます。

保護者への説明

一包化する場合、保管方法を伝えないと意味がありません。メーカーの指示は「気密性の高い容器に入れ、湿度の低い場所」です。これを家庭の言葉に直します。

「このお薬、湿気に弱いのでチャック付きの袋か、フタのしっかり閉まる箱に入れて保管してください。洗面所や台所は避けて、居間の引き出しなどがいいです。冷蔵庫は入れないでください——出し入れのときに水滴がついて、かえって湿気てしまうんです」

「冷蔵庫はダメ」は必ず言ってください。「湿気に弱い」と聞いた保護者は、かなりの確率で冷蔵庫に入れます。良かれと思って。

そして変化に気づいてもらう一言を添えます。

「もし錠剤の色が濃くなったり、崩れたりしていたら、飲ませずにご連絡ください。残っている分は次回持ってきていただけると助かります

次回に現物を見せてもらう。これが実質的な品質チェックになります。1〜2回見れば、その家庭の保管環境で持つかどうかが分かります。

顆粒(細粒)の場合はどうか

錠剤ではなくエキス顆粒・細粒の場合、状況が変わります。

顆粒はアルミラミネートの分包で供給されるものが多く、これは防湿包装そのものです。一包化するとこれを破ることになります。

医療用漢方エキス顆粒の添付文書には、こうあります(ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒の例)。

本剤の品質を保つため、できるだけ湿気を避け、直射日光の当たらない涼しい所に保管すること
開封後は特に湿気を避け、取扱いに注意すること

ただし前掲のクラシエのデータでは、細粒剤をグラシン紙分包+ポリエチレン袋にして4週間安定という結果が出ています。顆粒だから絶対にダメ、でもありません。

ただ、顆粒はもともと分包の形で渡せるため、一包化しなくても「1回分」が明確です。わざわざ包装を破る理由が、錠剤ほど強くない——これが実務的な結論になります。

顆粒で一包化を求められたら、「一包化した袋に『+漢方1包』と印字する」で足りることがほとんどです。

一包化そのものの要件(確認)

算定要件の側も押さえておきます。令和8年3月5日 保医発0305第6号(別添3)外来服薬支援料2の項です。

一包化とは、服用時点の異なる2種類以上の内服用固形剤又は1剤であっても3種類以上の内服用固形剤が処方されているとき、その種類にかかわらず服用時点ごとに一包として患者に投与することをいう。なお、一包化に当たっては、錠剤等は直接の被包から取り出した後行うものである。

  • 漢方エキス錠は内服用固形剤——種類数のカウントに含まれる
  • 算定は処方箋受付1回につき1回。42日分以下は7日ごとに34点加算、43日分以上は一律240点
  • 薬剤師が必要を認め、医師の了解を得た後に一包化した場合は、その旨と必要と認めた理由を薬剤服用歴等に記載する

理由の記載は要件です。「小児で保護者が錠数を間違えるリスクがあるため」——こう書けます。

判断チェックリスト

  • ◻️ よく出る漢方エキス錠のIFを集めて共有フォルダに入れた
  • ◻️ IFの「製剤の各種条件下における安定性」を確認した
  • ◻️ IFの「薬剤取扱い上の注意点」を確認した
  • ◻️ データがなければメーカー学術に6項目を聞いた
  • ◻️ 回答者名・回答日を薬歴に記載した
  • ◻️ 一包化を必要と認めた理由を薬歴に記載した(算定要件)
  • ◻️ 分包時に素手で錠剤を触らない運用にした
  • ◻️ 交付日数をデータの範囲内に収めた
  • ◻️ 保護者に気密容器+低湿度の保管を伝えた
  • ◻️ 保護者に「冷蔵庫はダメ」と伝えた
  • ◻️ 保護者に変色・崩れたら連絡と伝えた
  • ◻️ 次回来局時に残薬の状態を確認した

まとめ

  • メーカーは分包を禁止していない。気密容器・低湿度という条件を付けている
  • クラシエ半夏厚朴湯では、細粒剤をグラシン紙分包+ポリエチレン袋で4週間安定というデータがある(錠剤の同条件データは公開資料にない)
  • 同IFの有効成分の項では、開封・室温保存で「外観の変化は認められるが、成分含量には変化がなかった」
  • コタローのIFは「湿気を帯びた手で触れると褐色に変色したり、変形する」と明記。素手で触らない
  • 冷蔵庫は結露するので逆効果
  • 可否はIFの2か所(製剤の各種条件下における安定性/薬剤取扱い上の注意点)で調べられる
  • 小児は一包化のメリットが大きい。短期処方ならデータの範囲に収まることが多い
  • 迷ったら「漢方だけ別包にして、同じ袋に入れる」

あわせて読みたい

出典

  • クラシエ薬品「クラシエ半夏厚朴湯エキス細粒・錠」医薬品インタビューフォーム(Ⅲ. 有効成分に関する項目/Ⅳ. 製剤に関する項目 4. 製剤の各種条件下における安定性)
  • 小太郎漢方製薬「ヨクイニンエキス錠「コタロー」・ヨクイニンエキス散「コタロー」」医薬品インタビューフォーム(Ⅳ. 4. 製剤の各種条件下における安定性/Ⅹ. 3. 薬剤取扱い上の注意点)
    https://www.kotaro.co.jp/pdf/product/if/if_tp072.pdf
  • 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号・0619訂正後)別添3 区分14の2 外来服薬支援料
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf
  • ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)添付文書(取扱い上の注意)

※ 掲載したデータは特定の品目・特定の条件での試験結果です。他の品目に一般化できるものではありません。個別品目の分包可否は必ず当該製造販売業者にご確認ください。記載は2026年8月時点の資料に基づきます。

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