執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
熱性けいれんの既往がある子に、ダイアップ坐剤とアンヒバ坐剤が一緒に出たとき。保護者からいちばん聞かれるのが「どっちが先?」です。
答えは、日本小児神経学会の「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」に、保護者向けの説明例として書いてあります。ダイアップが先、解熱の坐剤は30分以上あけてから。ガイドラインが書いているのは「同時だと吸収が遅延する可能性」までで、その理由(坐剤の基剤の違い)は薬剤学の論文が説明しています。基剤そのものは、各製品の添付文書の「添加剤」で確かめられます。
ガイドラインに書いてある順番
ジアゼパム坐剤と解熱の坐剤を同じタイミングで使用する場合には、ジアゼパム坐剤を先に挿入後30分以上間隔をあけて解熱薬を使用して下さい。同時に挿入すると、ジアゼパムの吸収が遅延する可能性があります。
同じ説明例は、アセトアミノフェン坐剤(アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤、カロナール坐剤など)を「似たような坐剤」として挙げ、ジアゼパム坐剤に解熱作用はないと念を押しています。見た目が似ているので、取り違えないよう保護者に伝えます。
理由は基剤——添付文書の「添加剤」で確かめる
坐剤の基剤は、添付文書の「3.1 組成」の添加剤欄に書いてあります。よく一緒に出る3製品を並べました。
| 製品 | 有効成分 | 添加剤(基剤) | 貯法 | 取扱い上の注意 |
|---|---|---|---|---|
| ダイアップ坐剤4・6・10 | ジアゼパム | マクロゴール4000、マクロゴール1540(水溶性) | 室温保存 | アルミピロー開封後は湿気を避けて遮光して保存 |
| アンヒバ坐剤小児用50・100・200mg | アセトアミノフェン | ハードファット(油脂性) | 冷暗所保存 | 熱による基剤の溶融を避けるため、直射日光等を避けて冷所に保管 |
| ナウゼリン坐剤10・30 | ドンペリドン | ジブチルヒドロキシトルエン、酒石酸/基剤(水溶性):マクロゴール400・1500・4000・6000 | 室温保存 | — |
ダイアップは水溶性(マクロゴール)、アンヒバは油脂性(ハードファット)です。同時に入れたときの理由は、2023年の薬剤学の論文が抄録で「ジアゼパムがアセトアミノフェン坐剤の油脂性基剤に溶け込む」と説明しています(森ら、薬剤学 83(4):239-244, 2023。英文抄録 “DPM dissolves in the oil base in the AAP suppository” の訳)。ガイドラインの本文にも「ジアゼパムの固形の坐剤は有効血中濃度に達するのが投与後約30分と報告されており」という記載があり、先に入れたダイアップが吸収されるのを待つ、という順番です。だから、けいれん予防のダイアップを先に入れて吸収させ、30分以上たってから解熱の坐剤を入れます。
保存方法も違います。アンヒバは冷暗所(体温で溶ける油脂性基剤のため)、ダイアップとナウゼリンは室温です。ガイドラインの説明例も、ジアゼパム坐剤は「光が当たらない状態の室温で保管」としています。「坐薬はぜんぶ冷蔵庫」と覚えている保護者には、製品ごとに伝え直します。
保護者の誤解を2つ、先にほどく
①「熱を下げれば、ひきつけを防げる」——防げません。ガイドラインは、解熱薬が熱性けいれんの再発を予防できるとするエビデンスはなく、再発予防のための使用は推奨しない、としています。解熱薬で下がった熱がまた上がったときに再発する、というエビデンスもないとも書いています。一方で、つらさを和らげ、家族の不安を和らげるために解熱薬を使うのは、ほかの発熱と同じように行ってよい、としています(CQ6-1)。
②「熱性けいれんの子はみんなダイアップを使う」——そうではありません。ガイドラインは、発熱時のジアゼパム予防投与は有効性は高いもののルーティンに使用する必要はないとし、遷延性発作(15分以上)や、決められた条件を2つ以上満たす熱性けいれんが2回以上起きた場合などを適応基準にしています(CQ4-1)。使うかどうかは医師が判断していて、薬局では処方の指示どおりに使えるよう説明します。
ダイアップを使うタイミング——2回目は「8時間後」
37.5℃を目安として、1回0.4~0.5mg/kg(最大10mg)を挿肛し、発熱が持続していれば8時間後に同量を追加する
- 1回目:37.5℃を目安に入れる(添付文書 8.3「熱性けいれんに用いる場合には、発熱時の間歇投与とし、37.5℃の発熱を目安に、すみやかに直腸内に挿入する」。用法・用量は「1回0.4~0.5mg/kgを1日1~2回」、1日1mg/kgを超えない)
- 2回目:発熱が持続していれば8時間後に同量(CQ4-2)。ただし説明例では、2回目を使うかどうかはかかりつけ医がチェックを入れる項目で、1回だけの指示もありえます。2回目のときに眠気やふらつきが強ければ中止、という選択肢も入っています
- ガイドラインの説明例は、何℃で使うかをかかりつけ医が記入する形式です。処方医の指示を薬袋や説明書で確認します
- 投与後1〜2日は様子を注意深く見守り、普段と違う様子があれば速やかに医療機関へ(説明例)。眠気・ふらつき・興奮は時間とともに回復することが多いが、強い・数時間以上続く場合は医療機関に相談(説明例❷)
- 鎮静のため、髄膜炎・脳炎・脳症の見分けが難しくなることがある(CQ4-2 要約2)
入れ方と、出てきてしまったとき
- ダイアップ:横向きまたは仰向けにして挿入。挿入後30分間、坐剤が漏れていないか確認し、明らかに固形物が漏れている場合には新しく入れ直す(GL2023 参考資料1 ❹)
- アンヒバ:使う前はできるだけ排便をすませておく。太い方から肛門内に深く挿入。1/2個を使うときは斜めに切る(添付文書 14.1.1〜14.1.3)
- アンヒバ:投与間隔は4~6時間以上、1日総量60mg/kgまで(6.)。アセトアミノフェンを含む他の薬(一般用医薬品を含む)との併用は避ける(警告)
ナウゼリン坐剤とアンヒバの順番は?
吐き気止めのナウゼリン坐剤と解熱のアンヒバが一緒に出ることもあります。ただ、この2つの順番と間隔は、今回確認した添付文書(ナウゼリン坐剤・アンヒバ坐剤)とガイドラインには書かれていません。ダイアップの「30分以上」をそのまま当てはめるのではなく、処方医の指示を確認するか、どちらを優先したいか(吐き気か、熱か)を処方医と相談して決めます。
ナウゼリン坐剤自体にも小児の注意があります。特に1才以下の乳児には用量に注意し、3才以下の乳幼児には7日以上の連用を避けること、脱水状態や発熱時は投与後の状態に特に注意すること、小児で錐体外路症状・意識障害・痙攣が発現することがあること(添付文書 9.7)。熱性けいれんの既往がある子に出たときは、とくに意識しておきたい記載です。
保護者に渡すときのチェックリスト
- □ ダイアップと解熱の坐剤が一緒に出ていたら:ダイアップが先、30分以上あけて解熱
- □ ダイアップに解熱作用はない(見た目が似ているので取り違えない)
- □ ダイアップは何℃で使うか、2回目を使うか(かかりつけ医の指示。2回目は発熱が続いていれば8時間後が標準)
- □ 解熱薬はひきつけの予防にはならない(つらさを和らげるために使うのは可)
- □ ダイアップは挿入後30分、漏れていないか確認。固形物が出ていたら入れ直す
- □ 保存:アンヒバは冷暗所、ダイアップ・ナウゼリンは室温(ダイアップは開封後、湿気を避けて遮光)
- □ アンヒバは4~6時間以上あける。市販薬のアセトアミノフェンと重ねない
まとめ
- ダイアップと解熱の坐剤は、ダイアップが先、30分以上あけて解熱(熱性けいれん診療GL2023)
- 理由は基剤:ダイアップは水溶性(マクロゴール)、アンヒバは油脂性(ハードファット)
- ダイアップの2回目は、指示があれば、発熱が持続しているときに8時間後に同量
- 解熱薬に熱性けいれんの再発予防効果はない(GL CQ6-1)
- 保存はアンヒバが冷暗所、ダイアップ・ナウゼリンは室温
- ナウゼリン坐剤とアンヒバの順番は、添付文書・ガイドラインに記載がない。処方医に確認する
出典
- 日本小児神経学会「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」CQ4-1・CQ4-2・CQ6-1、参考資料1「ジアゼパム坐剤の使用法の養育者への説明について」(Minds ガイドラインライブラリ掲載)
- ダイアップ坐剤4・6・10 添付文書(PMDA 400186_1124701J1022_2_06)
- アンヒバ坐剤小児用50mg・100mg・200mg 添付文書(PMDA 671450_1141700J1045_5_04)
- ナウゼリン坐剤10・30・60 添付文書(PMDA 230124_2399714J1026_1_16)
- 森健二ほか「ジアゼパム坐剤とアセトアミノフェン坐剤の同時投与に関する研究」薬剤学 83(4):239-244, 2023(J-STAGE)
