オンライン服薬指導で吸入指導はできるのか|「動画を送るだけ」は指導と認められません、そしてAIの活用は通知に明記されています

オンライン服薬指導で吸入指導はできるのか|「動画を送るだけ」は指導と認められません、そしてAIの活用は通知に明記されています 薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

オンライン服薬指導が広がると、必ずぶつかるのが手技指導です。吸入、自己注射、点眼。「動画を送ればいいのでは」——そう考えたくなりますが、通知にはこう書かれています。「一方的に情報を発信することのみでは、継続的服薬指導を実施したものとは認められない」。そして吸入薬指導加算の要件は「文書及び練習用吸入器等を用いて」——物を渡さないと成立しません。一方でAIの活用は明記されています。そして「オンラインだから吸入薬指導加算は取れない」は誤りでした——取れないのは在宅のオンラインだけです。
在宅だけ吸入薬指導加算が取れないのは外来のオンラインなら条文上は算定できます
AI活用が通知に明記ただし薬剤師が確認してから送信
実費配送料は徴収できます情報通信機器の運用費も

動画を「見せながら」指導するのは成立します。「送るだけ」は別です

結論から書きます。画面共有で動画を見せながら、その場でやりとりする——これは問題ありません。通知が否定しているのは「送りっぱなし」のほうです。

(1)の電話等によるフォローアップの方法については、電話の他に情報通信機器を用いた方法も含まれるが、患者等に対し一方的に情報を発信すること(例えば、一律の内容の電子メールを一斉送信することその他画一的な内容の通知を行うこと)のみでは、継続的服薬指導を実施したものとは認められない。

また、フォローアップにおける服薬状況及び残薬状況等の継続的な確認並びに必要な指導等については、個々の患者の状況等に応じて、双方向性を有する方法により必要な確認及び指導を行う必要があることから……

否定されているのは「一方的」「画一的」であることです。動画という手段が否定されているのではありません。

だから線はここで引けます。

やり方指導として
画面共有で動画を見せながら、その場で説明する
患者の反応を見て、質問を受けて、手元を確認する
成立します
双方向だからです
動画のURLを送って終わり
全員に同じものを配る
認められません
「画一的な内容の通知」

動画を見せながらの指導は、むしろ有効な手段です。デバイスの動きは言葉で説明しにくく、画面越しに薬剤師が実演するより正しい手順の動画を一緒に見て、止めながら確認するほうが伝わる場面もあります。

ただし、指導が成立することと、加算が取れることは別です。ここを分けて考える必要があります。

吸入薬指導加算は「物」が要ります

手技指導のなかで、点数として評価されているのが吸入薬指導加算(6月に1回・30点)です。要件を読むと、オンラインの壁がはっきりします。

 喘息又は慢性閉塞性肺疾患に対して吸入薬を用いる患者の場合は、文書及び練習用吸入器等を用いて、吸入手技の指導を行い、患者が正しい手順で吸入薬が使用されているか否かなどの確認等を行うこと。また、インフルエンザウイルス感染症に対して吸入薬を用いる患者の場合は、保険薬剤師による看視の下、吸入させること。

 保険医療機関に対し、吸入指導の結果等を文書により情報提供を行うこと。

2つ、オンラインでは簡単でないことが書かれています。

①「練習用吸入器等を用いて」。ここが動画では埋まりません。動画を見せることも、薬剤師が画面越しに実演することもできますが、要件は「用いて」です。患者の手元に器具がなければ、正しい手順で吸入できているかの確認になりません。事前に渡すか、薬と一緒に送るかが必要になります。

「練習用吸入器等」の「等」に動画が含まれるかは、通知からは読み取れません。文言は「文書及び練習用吸入器等」——文書に加えて器具、という並びです。動画で代替できると読むのは、無理があると思います。

②インフルエンザの吸入薬は「保険薬剤師による看視の下、吸入させること」。その場で吸ってもらう前提の書き方です。画面越しの「看視」が要件を満たすかは、通知からは読み取れません。ここは厚生局に確認する場面だと思います。

在宅のオンラインでは、そもそも算定できません

点数表の側に、はっきりした制限があります。服薬管理指導料4——オンライン服薬指導の点数は、4つに分かれています。

区分対象
4のイ(45点)3月以内に再度処方箋を提出し手帳を提示した患者/介護老人福祉施設等の患者
4のロ(59点)在宅で療養を行っている患者であって、通院が困難なもの
4のハ(59点)ロのうち、状態の変化等を伴うもの
4のニ(59点)初回、3月超、手帳を提示していない患者

……吸入薬指導加算として、6月に1回に限り30点を所定点数に加算する。……また、4のロ又はハを算定する場合においては、当該加算は算定しない。

在宅のオンライン(4のロ・ハ)では、吸入薬指導加算は算定できません。同じ扱いになっている加算が、ほかにもあります。

  • ◻️ 特定薬剤管理指導加算1(注7)— 4のロ・ハでは算定しない
  • ◻️ 特定薬剤管理指導加算2(注8)— 同
  • ◻️ 特定薬剤管理指導加算3(注9)— 同
  • ◻️ 吸入薬指導加算(注12)— 同

一方で麻薬管理指導加算(注6)、乳幼児服薬指導加算(注10)、小児特定加算(注11)には、この除外がありません。「オンラインだから全部だめ」ではなく、加算ごとに違います。

これは机上の話ではありません

オンライン診療のファストドクターは、喘息・咳のオンライン診療を24時間365日提供しています。公開ページには処方できる薬として「咳止め・喘息薬」「抗炎症薬」「吸入薬」が挙げられています(診療科目は内科・小児科、保険適用)。

受け取りは2通り。薬局受け取り(診察終了後1時間程度で指定薬局へ処方箋を送付)と、宅配受け取り(翌日配達の場合、別途届くSMSからオンライン服薬指導の予約が必要)。

「吸入薬」が処方でき、宅配ならオンライン服薬指導になる。——つまり吸入デバイスが宅配で届き、手技指導は画面越しになる場面が、すでに現実に存在します。

公開ページに吸入指導についての記載はありません。実際にどう運用されているかは、こちらでは確認できていません。ただ、受ける側の薬局にとっては、他人事ではないという話です。

そして「薬局受け取り」を選ばれた場合、処方箋を受けるのは近所の薬局です。オンライン診療で出た吸入薬を、対面で指導する——この形がいちばん多くなるはずです。初回の吸入デバイスが処方されていたら、指導はこちらの仕事になります。

「オンラインだから吸入薬指導加算は取れない」——これは誤りです

ここは思い込みやすいところなので、条文をもう一度読んでください。

……また、4のロ又はハを算定する場合においては、当該加算は算定しない。

名指しされているのは「4のロ又はハ」だけです。4のイと4のニは書かれていません。

4のロ・ハは「在宅で療養を行っている患者であって、通院が困難なもの」。つまり除外されているのは在宅のオンラインだけで、外来のオンライン服薬指導(4のイ・ニ)は、条文上は算定できると読めます。

同じことが特定薬剤管理指導加算1・2・3にも当てはまります。いずれも「4のロ又はハを算定する場合」としか書かれていません。

「オンライン=加算が取れない」ではありませんでした。取れないのは在宅のオンラインです。

ただし算定できることと、要件を満たせることは別です。外来のオンラインで吸入薬指導加算を取るなら、「文書及び練習用吸入器等を用いて」を実際に満たす必要があります。患者の手元に器具が要る——結局そこに戻ります。

宅配で薬を送るなら、練習用デバイスを同送する。——条文を素直に読むと、そういう運用が見えてきます。個別の算定可否は地方厚生(支)局にご確認ください。

配送料は実費で取れます

オンラインを回すうえで、地味に効くのがここです。

 当該服薬指導を行う際の情報通信機器の運用に要する費用及び医薬品等を患者に配送する際に要する費用は、療養の給付と直接関係ないサービス等の費用として、社会通念上妥当な額の実費を別途徴収できる。

 薬剤を患者に配送する場合は、その受領の確認を行うこと。

配送料も、システムの運用費も、実費なら取れます。ただし「社会通念上妥当な額」という縛りがあります。

そして取らない選択をした場合に、宣伝すると別の問題になります。令和8年6月23日の事務連絡で、「送料無料」の宣伝・広告は口頭指導の対象だと明確化されました。詳しくは調剤のポイントは一部負担金の1%までにまとめています。

無料にすること自体は問題ではありません。「無料だと宣伝すること」が対象です。オンラインを売りにする薬局ほど、ここは気をつける場面だと思います。

エの「受領の確認」も見落とされがちです。送りっぱなしにしない。届いたことを確認するところまでが業務です。

AIの活用が、通知に明記されました

これは知っておく価値があります。フォローアップにAIを使ってよいと書かれています。

(ロ)の対応は情報通信機器を用いた方法(AIを活用して患者の状態に応じたフォローアップ等の内容を作成する場合を含む。)により実施して差し支えないが、この場合においては、フォローアップ等のために送信する内容及び送信する時期について当該保険薬局の保険薬剤師が確認した上で送信し、その後の患者とのやりとり内容を踏まえ、当該保険薬剤師の判断により適切に介入を行うなど、個々の患者の状況等に応じて対応する必要があること。

AIが内容を作ってよい。ただし送信前に薬剤師が確認する。そしてやりとりを踏まえて薬剤師の判断で介入する。——「AIに任せきり」は認められていませんが、下書きをAIに作らせることは想定されています。

先ほどの「一方的な発信はだめ」と合わせて読むと、方向が見えます。作るのは機械でもよい。ただし、送る判断と、返ってきた反応への対応は薬剤師がやる。

結局、オンラインで完結しない業務は残ります

条文を並べると、「物」と「その場」が要る業務が浮かび上がります。

  1. 吸入手技の指導練習用吸入器等が患者の手元に要ります。事前に渡すか、同送するか
  2. インフルエンザの吸入薬「保険薬剤師による看視の下、吸入させること」。その場で吸ってもらう前提の書き方です
  3. 自己注射の手技デバイスを持って、針を付けて、押す。手元が見えるかどうかが全てです
  4. 一包化・粉砕の適否実物を見ないと判断できない場面があります

だからオンラインを主軸にする薬局ほど、実店舗と在宅の両方を持つ形になります。制度がそう作られている——という話はオンライン診療専門の薬局はつくれませんに書きました。

まとめ

  • 画面共有で動画を見せながら指導するのは成立します。双方向だからです。否定されているのは「動画のURLを送って終わり」——通知が「画一的な内容の通知を行うことのみでは、継続的服薬指導を実施したものとは認められない」と明記しています
  • ただし「指導が成立すること」と「加算が取れること」は別です。吸入薬指導加算の要件は「文書及び練習用吸入器等を用いて」——動画では埋まりません
  • 吸入薬指導加算は「文書及び練習用吸入器等を用いて」が要件。患者の手元に器具がなければ手技の確認になりません
  • インフルエンザの吸入薬は「保険薬剤師による看視の下、吸入させること」。画面越しの看視が要件を満たすかは、通知からは読み取れません
  • 「オンラインだから加算が取れない」は誤りです。条文が名指ししているのは「4のロ又はハ」=在宅のオンラインだけ外来のオンライン(4のイ・ニ)は、条文上は算定できると読めます
  • 在宅のオンラインで算定できないのは吸入薬指導加算と特定薬剤管理指導加算1・2・3。一方、麻薬管理指導加算・乳幼児服薬指導加算・小児特定加算には除外がありません
  • 配送料と情報通信機器の運用費は、社会通念上妥当な額の実費を別途徴収できます。そして薬剤を配送したら受領の確認が必要です
  • AIの活用が通知に明記されました。フォローアップの内容をAIが作ってよい。ただし送信前に薬剤師が確認し、やりとりを踏まえて薬剤師の判断で介入することが条件です

出典

※ 本記事は2026年9月9日時点の告示・通知の原文に基づいています。
画面越しの「看視」が要件を満たすかなど、通知から読み取れない点は、そう明記しています。個別の算定可否は地方厚生(支)局にご確認ください。
※ 加算の算定可否は、算定する服薬管理指導料の区分によって変わります。必ず告示の「注」をご確認ください。

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