オンライン診療専門の薬局はつくれません|ファストドクターが川崎に実店舗を出した理由は、構造設備規則の第1条にあります

薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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オンライン診療のファストドクターが、薬局を始めました。川崎市幸区の塚越薬局——求人には「薬局の1号店」とあります。ここで面白いのは、オンライン専業ではなく「対面+在宅+オンライン服薬指導」の複合型だと書かれていることです。なぜ実店舗を作るのか。答えは薬局等構造設備規則の第1条第1号にありました。——「容易に出入りできる構造であり、薬局であることがその外観から明らかであること」。
19.8㎡薬局に必要な面積おおむね。調剤室は別に6.6㎡以上
外観薬局だと分かること法定要件。看板のない薬局は作れません
近接指導設備は調剤室のそばオンライン服薬指導でも薬局の設備が要ります

何が始まったのか

ファストドクターの採用ページに、薬剤師の募集が出ています。公開情報から分かる事実は次のとおりです。

  • ◻️ 薬局名は塚越薬局。所在地は神奈川県川崎市幸区塚越2丁目(南武線 矢向駅から徒歩10分)
  • ◻️ 「薬局の1号店を一緒に作る」薬剤師の募集
  • ◻️ 複合型——業務は調剤業務全般(対面・在宅・オンライン服薬指導含む)
  • ◻️ オンライン診療から服薬指導、お薬の受け取りまで「一気通貫した患者体験」を提供すること
  • ◻️ 医薬品在庫管理・発注、業務フロー改善(KPI改善など)、アルバイトスタッフとの協働・育成

「オンライン診療専門の薬局」ではありません。実店舗があり、対面も在宅もやる。そこが読みどころです。

薬局等構造設備規則 第1条第1項の主な要件。容易に出入りできる構造で外観から薬局と分かること、面積おおむね19.8平方メートル以上、調剤台の上120ルクス以上、調剤室6.6平方メートル以上、情報提供・指導の設備は調剤室に近接する場所
薬局等構造設備規則 第1条第1項。下段のみ薬機法施行規則 第15条の13第1項第1号

オンライン専業の薬局は、制度上つくれません

薬局を開くには薬局等構造設備規則の基準を満たす必要があります。第1条の第1号を読んでください。

一 調剤された薬剤又は医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者が容易に出入りできる構造であり、薬局であることがその外観から明らかであること。

二 換気が十分であり、かつ、清潔であること。

三 当該薬局以外の薬局又は店舗販売業の店舗の場所、常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。

四 面積は、おおむね19.8平方メートル以上とし、薬局の業務を適切に行なうことができるものであること。

「客が容易に出入りできること」「外から見て薬局だと分かること」が、法令上の要件です。——倉庫やオフィスの一室では、薬局になりません。

設備の要件も具体的です。

五 医薬品を通常陳列し、又は調剤された薬剤若しくは医薬品を交付する場所にあつては60ルクス以上、調剤台の上にあつては120ルクス以上の明るさを有すること。

七 冷暗貯蔵のための設備を有すること。

八 鍵のかかる貯蔵設備を有すること。

十 次に定めるところに適合する調剤室を有すること。
 イ 6.6平方メートル以上の面積を有すること。
 ロ 天井及び床は、板張り、コンクリート又はこれらに準ずるものであること。
 ハ (患者等が)進入することができないよう必要な措置が採られていること。

面積、明るさ、床と天井の材質まで決まっています。これを満たす場所を用意して初めて、薬局の開設許可が下ります。「オンラインだけだから店舗は要らない」は成立しません。

薬機法施行規則第15条の13第1項が定める情報提供と指導の方法6号。第1号の場所は薬局内の情報提供設備がある場所、居宅等で調剤の業務を行う場所、またはオンライン服薬指導を行う場合における当該薬局において調剤に従事する薬剤師と相互に連絡をとることができる場所。第2号は状況に応じて個別に提供、第3号は手帳の所持勧奨と活用、第4号は副作用が疑われる症状が発生した場合の対応の説明、第5号は理解したことと質問の有無の確認、第6号は薬剤師の氏名を伝えること
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律施行規則(昭和36年厚生省令第1号)第15条の13第1項〜第3項/薬局等構造設備規則(昭和36年厚生省令第2号)第1条第1項第十四号(e-Gov法令検索)

オンライン服薬指導にも、設備の要件があります

「画面越しに話すだけなら、どこでもできるのでは」と思いますが、そうではありません。情報提供・指導を行うための設備が、構造設備規則に定められています。

十四 次に定めるところに適合する……法第9条の4第1項、第4項及び第5項……に基づき情報を提供し、及び指導を行うための設備……を有すること。

 イ 調剤室に近接する場所にあること。

指導のための設備は「調剤室に近接する場所」に置く。薬機法第9条の4は、薬剤師が調剤した薬剤について情報提供と指導を行う義務を定めた条文です。その義務を果たす場所が、薬局の中に要るということです。

そしてオンライン服薬指導を行う場所についても、施行規則に定めがあります。

当該薬局内において薬局等構造設備規則第1条第1項第14号に規定する情報を提供し、及び指導を行うための設備がある場所、居宅等において調剤の業務を行う場合……又はオンライン服薬指導を行う場合における当該薬局において調剤に従事する薬剤師と相互に連絡をとることができる場所において行わせること。

オンライン服薬指導は薬局の外からでも行えますが、「当該薬局において調剤に従事する薬剤師と相互に連絡をとることができる場所」という条件が付いています。薬局が実在していて、そこに調剤している薬剤師がいることが前提です。

オンライン服薬指導は「薬局の業務」であって、薬局の代わりではありません。だから、オンラインを主軸にするほど先に実店舗が要る——この順番になります。

「複合型」という設計は、たぶん必然です

ここからは条文ではなく、私の読みです。

実店舗を作らなければならない。作った以上、対面もやらないと設備が遊びます。そして在宅を組み合わせれば、店舗の商圏に縛られずに患者を持てます。

求人に書かれている「対面+在宅+オンライン服薬指導」という並びは、制度の制約から逆算した形に見えます。「オンラインをやりたいから複合型にした」のではなく、「オンラインをやるには薬局が要る。薬局を作ったから全部やる」——そう読むほうが自然です。

そのうえで「一気通貫した患者体験」という言葉が効いてきます。オンライン診療のプラットフォームを持っている会社が薬局を持つと、受診から受け取りまでが1つの導線に乗ります。これは既存の薬局が真似しにくいところです。

薬局側から見ておきたい論点

  1. 調剤基本料の区分がどうなるか特定の医療機関からの処方箋が集中すれば、区分は下がります。オンライン診療のプラットフォームと同じ資本の薬局が、そのプラットフォーム経由の処方箋を多く受けたとき、どう判定されるか
  2. 薬の届け方配送するなら送料の扱いが問題になります。「送料無料」の宣伝・広告は、令和8年6月23日の事務連絡で口頭指導の対象だと明確化されました
  3. 在庫をどう持つかオンライン診療は疾患も薬もばらけます。面で受けるほど在庫が広がる——ここは既存薬局と同じ悩みです
  4. 対面が要る場面をどう扱うか吸入指導、自己注射の手技、一包化。画面越しでは完結しない業務は残ります

2番目は、そのまま自局にも返ってくる話です。詳しくは調剤のポイントは一部負担金の1%までにまとめました。問題にされているのは「無料にすること」ではなく「無料だと宣伝すること」です。

1番目については調剤基本料の区分はどう決まるかを参照してください。集中率と処方箋回数で決まります。

まとめ

  • ファストドクターが薬局を始めました。塚越薬局(川崎市幸区)が1号店で、対面+在宅+オンライン服薬指導の複合型と公開情報にあります
  • オンライン専業の薬局は制度上つくれません。構造設備規則第1条第1号が「容易に出入りできる構造」「外観から薬局であることが明らか」を求めています
  • 面積はおおむね19.8㎡以上、調剤室は6.6㎡以上、明るさは調剤台の上で120ルクス以上。冷暗貯蔵設備と鍵のかかる貯蔵設備も必要です
  • 情報提供・指導のための設備は「調剤室に近接する場所」に置くことが求められています(第1条第14号)
  • オンライン服薬指導は薬局の外でも行えますが、「当該薬局において調剤に従事する薬剤師と相互に連絡をとることができる場所」という条件付きです。薬局の代わりにはなりません
  • だから「オンラインをやるには薬局が要る。薬局を作ったから全部やる」——複合型という設計は、制度から逆算した必然に見えます

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株式会社メディカルリソースが運営する薬剤師専門サービスです(2000年設立)。転職だけでなく「派遣」を扱っているのが特徴で、有料職業紹介(13-ユ-010743)と労働者派遣(派13-010770)の両方の許可を持っています。拠点は全国12支店。運営元は日本調剤グループです——選ぶ材料になるので書いておきます。

「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。

※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

※ 本記事は2026年9月9日時点の法令の原文と、公開されている採用情報に基づいています。
※ 事業内容・開設時期・運営形態については、公開されている採用ページに書かれている範囲を超えて確認していません。推測を含む箇所は本文中でその旨を示しています。
※ 構造設備の基準は改正されます。開設・移転の際は都道府県の薬務主管課にご確認ください。

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