執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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まず、通知の主語を読みます
ここを飛ばすと、話が全部ずれます。
今般、ゾフルーザ錠20mg(成分名:バロキサビル マルボキシル)の有効期間が8年から9年に延長されたこと等を踏まえ、国及び都道府県において備蓄されている本剤の有効期間の取り扱いについて、下記のとおり御連絡いたします。
各都道府県等におかれましては、本事務連絡に基づいて本剤の使用期限を取り扱っていただくようお願いいたします。
この事務連絡は備蓄品の取扱いを決めた文書です。市場に流通している製品の期限を一律に延ばしたものではありません。

何が起きているのか——添付文書はもう9年です
混乱の元はここです。添付文書の有効期間は、すでに9年に書き換わっています。
貯法 室温保存
有効期間 9年(改訂)
ただしすでに出荷された製品の外箱には、出荷当時の期限が印字されたままです。紙の上の有効期間は9年になったが、箱の印字は変わらない。——ここに段差ができました。
事務連絡は、この段差を「備蓄分についてだけ」埋めるものです。
しかしながら、現在、有効期間の延長前に出荷され、有効期間を6年、7年又は8年とした使用期限が外箱に印字されている製剤も、国及び都道府県に備蓄されているところです。このため、このような製剤については、有効期間が9年である製剤として取り扱って差しつかえないこととしました。

読み替えの中身(備蓄担当者向け)
印字された期限から逆算して、何年で印字されたものかを判別し、その差を足す仕組みです。
| 印字されている使用期限 | 印字時の有効期間 | 読み替え |
|---|---|---|
| 令和11年(2029年)11月以前 | 6年 | +3年 |
| 令和13年(2031年)9月 | 7年 | +2年 |
| 令和15年(2033年)1月/10月 | 8年 | +1年 |
そして事務連絡には製造番号ごとの一覧(別添)が付いています。10錠包装の製造番号0159〜0268まで、1ロットずつ「印字されている期限」と「使用して差しつかえない期限」が並んでいます。
ロット単位で表と突き合わせる作業です。備蓄という「動かさずに置いておく在庫」だからできる管理であって、日々出入りする薬局の在庫を想定した書き方ではありません。
2つの条件が付いています
なお、下記の取扱いについては、添付文書上の保存方法を遵守した製剤に適用されるものであり、本取扱いを踏まえつつ、保存方法についても適切にお取り計らいいただくようお願いいたします。
2 使用期限の短い製剤の優先使用について
貴重な薬剤を無駄にせず有効に活用する観点から、使用期限の短い製剤から使用していただくよう改めてお願いいたします。
室温保存が守られていなければ、この読み替えは使えません。「9年もつ」ではなく「添付文書どおりに保管されていれば9年として扱ってよい」です。
古い通知は廃止されました
また、これに伴い、「ゾフルーザ錠20mgの使用期限の取扱いについて」(令和7年4月21日付け厚生労働省医薬局医薬品審査管理課事務連絡)は廃止することとします。
同じ表題の事務連絡が去年も出ています。そちらは8年への延長を扱ったものでした。保管しているなら差し替えてください。古いほうを見ると、読み替え幅を間違えます。
さかのぼると、同じ表題の事務連絡はこれで3本目です。令和6年12月4日付が6年→7年、令和7年4月21日付が7年→8年、今回の令和8年9月7日付が8年→9年。どれも「追加で得られた安定性データを踏まえて」1年ずつ延び、そのたびに備蓄分の読み替えが出て、前の事務連絡は廃止されています(令和7年4月21日付は令和6年12月4日付を廃止)。
事務連絡の全文(記の部分)
国の事務連絡は著作権法第13条により著作権の目的となりません(「国……の機関……が発する告示、訓令、通達その他これらに類するもの」)。原文をそのまま載せます。
原本(PDF)はこちらです。下に本文と別添を書き起こしていますので、読むだけならスクロールで足ります。
1 ゾフルーザ錠20mg の使用期限について
(1)使用期限の変更について
ゾフルーザ錠20mg については、追加で得られた安定性データを踏まえて、室温での有効期間が8年から9年に延長されました。
しかしながら、現在、有効期間の延長前に出荷され、有効期間を6年、7年又は8年とした使用期限が外箱に印字されている製剤も、国及び都道府県に備蓄されているところです。
このため、このような製剤については、有効期間が9年である製剤として取り扱って差しつかえないこととしました。
(2)見分け方及び取扱いについて
国及び都道府県に備蓄されている製剤のうち、使用期限が令和11 年(2029 年)11 月(2029/11 と表示)又はそれ以前となっている製剤については、有効期間を6年として印字されているものですので、変更後の使用期限は別添に記載のとおり、印字されている使用期限より3年長いものとして取り扱って差し支えありません。使用期限が令和13 年(2031 年)9月となっている製剤については、有効期間を7年として印字されているものですので、変更後の使用期限は別添に記載のとおり、印字されている使用期限より2年長いものとして取り扱って差し支えありません。使用期限が令和15 年(2033 年)1月又は10 月となっている製剤については、有効期間を8年として印字されているものですので、変更後の使用期限は別添に記載のとおり、印字されている使用期限より1年長いものとして取り扱って差し支えありません。
2 使用期限の短い製剤の優先使用について
貴重な薬剤を無駄にせず有効に活用する観点から、使用期限の短い製剤から使用していただくよう改めてお願いいたします。
別添:製造番号ごとの一覧
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T260907I0020.pdf
令和8年9月7日時点。ゾフルーザ錠20mg・10錠包装(10錠/シート×1シート(PTP包装))が対象です。
| 製造番号 | 印字されている使用期限 (有効期間6年のもの) | 使用して差しつかえない期限 (有効期間3年延長後) |
|---|---|---|
| 0159 | 2029/2 | 2032/2 |
| 0160 | 2029/2 | 2032/2 |
| 0161 | 2029/4 | 2032/4 |
| 0162 | 2029/4 | 2032/4 |
| 0163 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0164 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0165 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0166 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0168 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0169 | 2029/7 | 2032/7 |
| 0170 | 2029/8 | 2032/8 |
| 0171 | 2029/8 | 2032/8 |
| 0172 | 2029/9 | 2032/9 |
| 0173 | 2029/9 | 2032/9 |
| 0198 | 2029/10 | 2032/10 |
| 0199 | 2029/11 | 2032/11 |
| 製造番号 | 印字されている使用期限 (有効期間7年のもの) | 使用して差しつかえない期限 (有効期間2年延長後) |
|---|---|---|
| 0208 | 2031/9 | 2033/9 |
| 製造番号 | 印字されている使用期限 (有効期間8年のもの) | 使用して差しつかえない期限 (有効期間1年延長後) |
|---|---|---|
| 0228 | 2033/1 | 2034/1 |
| 0268 | 2033/10 | 2034/10 |
該当するのは19ロットだけです。ここに載っていない製造番号は、この取扱いの対象ではありません。そして繰り返しになりますが、この表は備蓄品のためのもので、薬局の在庫に当てはめるものではありません。
では、薬局の在庫はどうなるのか
通知には書かれていません。そこで編集部からメーカーに問い合わせました。
薬局の在庫の使用期限は、メーカーの在庫が新しい有効期間(9年)のものに切り替わり次第、9年のものになる——との回答でした。
考えてみれば当然です。備蓄は「国と都道府県が、決まった場所で、動かさずに保管しているもの」だから、ロット一覧で一括して読み替えられます。薬局の在庫は、どこで何をどう保管してきたかを国が把握していません。同じ扱いにはできません。
これは公表資料ではなく、問い合わせに対する回答です。自局の在庫の取扱いは、必ず取引先の卸またはメーカーにご確認ください。
通知を読むときは、まず主語を見る
今回の件は、通知の読み方そのものの練習問題だと思っています。
- 宛先を見る今回は都道府県・保健所設置市・特別区の衛生主管部(局)。地方厚生局や保険薬局には宛てられていません
- 本文の主語を見る「国及び都道府県において備蓄されている本剤」——ここで範囲が決まります
- 条件を見る「添付文書上の保存方法を遵守した製剤に適用」。無条件ではありません
- 廃止されたものがないか見る今回は令和7年4月21日付が廃止。古い通知で判断すると間違えます
「ゾフルーザ 期限 9年」だけが伝わると、薬局の棚の箱まで延びたように聞こえます。そういう誤解が広がったときに、条文と主語で説明できるのが薬剤師の仕事だと思います。
なお事務連絡の3日後、2026年9月10日に、ゾフルーザ錠20mgの2錠包装も発売されています。そちらはゾフルーザ20mgに2錠包装ができた理由にまとめました。1シートが成人1回分という話です。
まとめ
- 令和8年9月7日の事務連絡は「国及び都道府県において備蓄されている本剤」が対象です。薬局・卸の在庫は対象外です
- 添付文書上の有効期間は、すでに8年から9年に改訂済み(2026年9月改訂・第7版)。ただし出荷済み製品の外箱の印字は変わりません
- 事務連絡は、その段差を備蓄分についてだけ埋めるものです。6年印字→+3年/7年印字→+2年/8年印字→+1年
- 製造番号ごとの一覧(別添)で照合する形です。ロット単位で管理する備蓄だからできる運用です
- 「添付文書上の保存方法を遵守した製剤に適用」という条件付き。無条件で9年ではありません。使用期限の短い製剤から使うようにも求められています
- 令和7年4月21日付の同名事務連絡は廃止されました。保管しているなら差し替えてください
- メーカーに確認したところ、薬局の在庫はメーカーの在庫が切り替わり次第9年になるとのことでした(公表資料ではありません)。手元の印字が遡って延びるわけではありません
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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
出典
- 厚生労働省医薬局医薬品審査管理課「ゾフルーザ錠20mgの使用期限の取扱いについて」(令和8年9月7日 事務連絡)/別添:製造番号ごとの一覧
- 同「ゾフルーザ錠20mgの使用期限の取扱いについて」(令和7年4月21日 事務連絡・令和6年12月4日 事務連絡)※いずれも廃止済み。自治体に転送された写しで確認
- 塩野義製薬「新包装容量発売のお知らせ」ゾフルーザ錠20mg PTP2錠(2026年8月作成)※発売日
- ゾフルーザ錠10mg/錠20mg/顆粒2%分包 添付文書(2026年9月改訂・第7版)※貯法・有効期間
https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/6250047F1022_1_21/
※ 本記事は2026年9月8日時点の事務連絡・添付文書の原文に基づいています(2026年10月28日再確認)。
※ メーカーへの問い合わせ結果は公表資料ではありません。自局の在庫の取扱いは、取引先の卸またはメーカーにご確認ください。
※ 備蓄品の取扱いについては、各都道府県の薬務主管課の指示に従ってください。

