次世代薬局とは、どんな働き方になるのか|自動調剤・AI薬歴・個室投薬を法令とカタログで検証した

薬局実務
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「次世代薬局モデル」の実証店舗が開局した、というプレスリリースが出ました。

読んでも、具体的な中身はほとんど書かれていません。「最新の調剤機器・システムの導入」「来局体験全体を通じた体験価値」——それだけです。

では、次世代薬局とは何なのか。

思いつくものを並べてみます。自動ピッキング、散剤も液剤も自動調剤、機械による監査、個室の投薬スペース、AI薬歴、モバイル問診票、自動受付、チェックだけで終わる処方入力、AIによる加算提案、自動会計、無人化——。

どこまでが実現していて、どこからが絵空事なのか。法令とメーカーのカタログで検証しました。

2業務薬剤師以外に認められたものピッキングと一包化の数量確認だけ
19薬剤師法第19条散剤を人が量るなら、薬剤師以外は違反
0個室の投薬室を義務づける規定構造設備規則に定めなし

結論から言うと、機械の話ではありませんでした。2019年に出た1本の通知が、すべての線を引いています。

そして本当の問いは、「薬局の仕事はどう変わるのか」のほうにあります。

検証① 自動化の線は、どこに引かれているか

調剤機器メーカーのカタログを開くと、必ず同じ通知が引用されています。

平成31年4月2日 薬生総発0402第1号「調剤業務のあり方について」——通称0402通知です。

出発点は薬剤師法第19条。薬剤師でない者は調剤してはならない。この大原則を前提に、0402通知は例外の考え方を整理しました。

調剤に最終的な責任を有する薬剤師の指示に基づき、以下のいずれも満たす業務を薬剤師以外の者が実施することは、差し支えないこと。なお、この場合であっても、調剤した薬剤の最終的な確認は、当該薬剤師が自ら行う必要があること。

・当該薬剤師の目が現実に届く限度の場所で実施されること

・……調剤した薬剤の品質等に影響がなく、結果として……患者に危害の及ぶことがないこと

・当該業務を行う者が、判断を加える余地に乏しい機械的な作業であること

そして具体例は、たった2つしか示されていません。

……薬剤師以外の者が行う処方箋に記載された医薬品(PTPシート又はこれに準ずるものにより包装されたままの医薬品)の必要量を取り揃える行為、及び当該薬剤師以外の者が薬剤師による監査の前に行う一包化した薬剤の数量の確認行為については、上記1に該当するものであること。

ピッキングと、一包化の数量確認。それだけです。

粉と水剤と軟膏は、いまも「人がやるなら薬剤師」

……薬剤師以外の者が軟膏剤、水剤、散剤等の医薬品を直接計量、混合する行為は、たとえ薬剤師による途中の確認行為があったとしても、引き続き、薬剤師法第19条に違反すること。ただし、このことは、調剤機器を積極的に活用した業務の実施を妨げる趣旨ではない。

この最後の一文が、次世代薬局のすべてを説明しています。

作業薬剤師以外の人機械
PTPのピッキングできる(3条件を満たす場合)できる
一包化の数量確認できる(薬剤師の監査前)できる
散剤の計量・混合できない(薬剤師法19条違反)できる
水剤の計量・混合できない(薬剤師法19条違反)できる
軟膏の計量・混合できない(薬剤師法19条違反)できる
最終的な確認(鑑査)薬剤師が自ら行う

粉を人が量るなら薬剤師でなければならない。機械に量らせるなら誰でもいい。

——だから散薬調剤ロボットが売れるわけです。人手不足への答えが、制度上これしかない。

「次世代薬局」を機械の展示会のように見ていると、この構造を見落とします。機械が先にあるのではなく、制度が機械を必要としています。

検証② 機械はどこまでやるのか

「ドラッグステーション」は比喩ではなく、湯山製作所の登録商標であり、実在する製品名です。正式には自動薬剤ピッキング装置 Drug Station

カタログには0402通知がそのまま引用され、「0402通知を受けて……例えば、薬剤師以外の方でもピッキング業務がその場で出来る」と書かれています。制度に合わせて設計された機械だということです。

項目Drug Station(YS-DS-3600-L)
搭載薬品数約1,200種(約3,000箱)
処理速度1剤を約13〜30秒間隔(調剤量と作業者の慣れにより変動)
外形・質量幅3,580 × 奥行1,800 × 高さ2,285mm/約2,500kg
電源本体 AC200V 2.8kVA/ピッキング台 AC100V 700VA
連結910mm刻みで最大5台(全17バリエーション)
出典:湯山製作所「自動薬剤ピッキング装置 Drug Station」カタログ(2025年1月現在)

約2.5トン、200V電源。簡単に置ける機械ではありません。新規開局や移転のタイミングでしか入りません。「次世代薬局」がまず移転で始まるのは、そういう物理的な事情もあります。

散剤は「秤量から」自動です

ここが従来の散薬分包機と決定的に違うところです。

薬品選択秤量配分・分割・分包最終鑑査
従来の散薬分包機人の手人の手機械
散薬調剤ロボット機械機械機械
出典:湯山製作所「散薬調剤ロボット DimeRoⅡ/MiniDimeRo」カタログ

従来機は「分包はするが、棚から取って秤に載せるのは人」でした。その人が薬剤師でなければ19条違反になる。散剤は薬剤師の手が塞がる工程だったわけです。

項目DimeRoⅡMiniDimeRo
分包数1〜186包(処方分割で最大837包)1〜93包(同)
外形幅1,265 × 奥行780 × 高さ1,860mm幅900 × 奥行780 × 高さ1,900mm
電源AC100V(約1,480VA/約1,400VA)
散薬カセット最大30カセット(500cc)。RFIDで薬品を自動認識
分包速度最大50包/分
調剤時間の例42包・0.5g/包(酸化マグネシウム)で3分15秒
最小総量0.5g/薬品 ±5%以内
出典:湯山製作所 カタログ(2022年1月現在)

幅90cmでAC100V。ピッキング装置と違って、こちらは既存店舗にも入ります。移転を待たなくていい。

水剤についても、メーカーの連動図には水剤分注機が並んでいます。全自動錠剤分包機/全自動散薬分包機/散薬鑑査システム/全自動PTPシート払出装置(robo-pickⅡ)/自動薬品箱入出庫装置——機器のラインナップとしては、すでに一通り揃っています。

検証③ 機械の監査で、安全性は担保できるのか

ここが一番知りたいところだと思います。散剤を無人で量らせて大丈夫なのか。

カタログは、何重にも答えていました。

不安仕組み
薬を取り違えないか各カセットにRFIDが埋め込まれ、読み取りで薬品を自動認識
秤量が狂わないか配分完了後、カセットを棚に戻す前に充填部の天秤で総量を再秤量し、配分前重量との差分をダブルチェック
途中で異常が出たら秤量誤差が規定値を超えるとワーニングで通知
用量が間違っていたら常用量マスターを保有。年齢・1日量・1回量に応じてチェックし、超えたらアラートを出して運転を停止
本当に動いていたのか内部にカメラを搭載し、秤量・配分時の様子を動画撮影
固まりが落ちていないか秤量結果を流速グラフで確認でき、カセット内から散薬の固まりが落下していないかまで推論可能
コンタミしないか分包完了後、重曹を全経路に通して自動清掃イオナイザーで除電R円盤の汚れをセンサーで検知
出典:湯山製作所 カタログ

常用量を超えたら止まる。これは人の秤量にはない機能です。動画が残るのも、インシデント対応では大きい。

ピッキング装置のほうも、該当薬品の場所しかシャッターが開かないPTP端数はカメラで撮影し画像処理で錠数をカウント患者トレイで重量鑑査充填時はGS1データバーで2回照合しないとシャッターが開かない——と、取り違えを構造で潰しています。

感心したのは停電への備えでした。2.5トンの機械に薬が全部入っているということは、止まれば薬が取り出せません。

  • 付属のノートPCが本体内蔵PCと最新のトレイ棚位置を常に同期通信
  • 電池で動くジャーナルプリンターを標準装備。薬品名・数量・トレイ棚番を印字できる
  • 本体は専用キーで解錠して手動で扉を開閉できる

停電しても、紙に棚番を印刷して手で取りに行ける。ここまで設計されているのは知りませんでした。

それでも、最終鑑査は代替されません

カタログには、繰り返し同じ但し書きが入っています。

※最終鑑査は必ず行ってください。

0402通知の「調剤した薬剤の最終的な確認は、当該薬剤師が自ら行う必要がある」と、正確に対応しています。

メーカー自身が「ここは代替できない」と書いている。これは重い事実だと思います。

検証④ 個室の投薬室は、必要なのか

次世代薬局の写真で目を引くのが、個室の投薬スペースです。

そこで薬局等構造設備規則を確認しました。個室を義務づける規定はありません。

……情報を提供し、及び指導を行うための設備を有すること。ただし、複数の設備を有する場合は、いずれかの設備が適合していれば足りるものとする。

イ 調剤室に近接する場所にあること。

求められているのは「調剤室に近接する場所にあること」だけです。調剤室のほうは6.6平方メートル以上という面積要件がありますが、投薬カウンターの個室化は法令上の要求ではありません。

つまり個室化は、法令対応ではなく設計思想です。

何のためか。薬歴に書く内容を、その場で本人から聞き出せるからでしょう。待合に会話が漏れる環境では、副作用も、飲み忘れも、経済的な事情も出てきません。

対物業務を機械に渡した先で何をするのか——個室はその答えを空間で示している、と読むこともできます。

検証⑤ 受付・入力・会計の自動化

ここからは公表された一次資料が乏しい領域です。事実と推測を分けて書きます。

要素制度上の位置づけ
モバイル問診票(お伺い書)薬歴に記載すべき事項(体質・既往・併用薬・服薬状況・残薬等)は留意事項通知で定められており、収集方法の指定はない
自動受付オンライン資格確認の端末が事実上の受付機になりつつある
自動入力電子処方箋なら処方データがそのまま流れる。紙の処方箋でもOCRで取り込む製品が実在する
AIによる加算提案制度上の規定なし。算定要件の判断は薬剤師の責任
自動会計制度上の制約なし
AI薬歴下書き生成型の製品が各社から出ている。記載義務の主体は薬剤師のまま

技術的には、受付から会計まで人が触らない薬局は、もう作れます。

「チェックだけで処方入力が終わる」が意味すること

ここは、単なる省力化ではないと思います。

処方入力という作業は、いままで「事務が一度、全処方を目で追う工程」でもありました。打ちながら「あれ、前回と量が違う」と気づく。その気づきが消えます。

チェックだけになるということは、確認の密度が下がるということです。そのぶんを機械の照合が埋められるのか——ここは各薬局が自分で検証するしかありません。

「AIが加算を提案する」は、誰の責任になるのか

これは、もっと重い論点です。

加算の算定要件には、「薬剤師が必要と認め」「治療上の必要性が認められると判断した場合に」といった判断が埋め込まれています。外来服薬支援料2なら、薬剤師が一包化の必要を認め、医師の了解を得て、その理由を薬歴に書くことまでが要件です。

AIが「この処方は加算が取れます」と提案したとき、判断したのは誰か。

提案に従って算定し、個別指導で理由を問われたとき、「システムが出したので」は通りません。責任は薬剤師にあります。

算定漏れを拾う道具としては極めて有用です。ただし要件の判断を代行する道具ではない——その線を引けるかどうかで、同じツールが武器にも地雷にもなります。

検証⑥ 調剤は、薬局の外にも出はじめています

意外に知られていませんが、調剤報酬の留意事項通知には、すでに外部委託の算定ルールが書かれています。

医薬品医療機器等法において、調剤の業務のうち当該業務に著しい影響を与えない定型的な業務であって、他の薬局開設者に委託を行うことが認められているものについて委託を行う場合は、委託する保険薬局が外来服薬支援料2を算定すること。なお、受託する薬局においては、当該処方箋受付に係る調剤報酬については算定することができない。なお、この場合の費用については両者の合議とする。

一包化を他局に外注する——その前提で点数表が書かれています。

制度のほうは令和7年5月21日公布の改正薬機法で創設されました。範囲の詰めはまだ続いていて、令和8年2月の検討会では委託可能な業務の範囲/患者への説明と合意形成/委託先薬局の地理的制限の3点が論点として示されています。

なおe-Govの薬機法の現行条文には、この外部委託の規定はまだ反映されていません。全文を確認しましたが、「委託」26か所のいずれも調剤業務の外部委託を定めたものではありませんでした。段階的に施行されている途中ということになります。

点数表が先に受け皿を作っている——この順番自体が、方向性を語っていると思います。

では、働き方はどう変わるのか

ここが本題です。

事務の仕事

消える/減る残る・増える
処方入力(チェックのみに)機械が止まったときの手動運用
受付・会計機械の充填・清掃・保守対応
棚からのピッキング在庫の例外処理(搭載外薬品、期限切れ、限定出荷)
在庫の理論値管理患者対応の入口(自動受付でこぼれた人の対応)

注意したいのは、0402通知が「薬剤師以外にやらせてよい」と認めたピッキングこそ、機械化が最も進む領域だという点です。

事務に開かれたばかりの仕事が、機械に渡されていく。皮肉な構造になっています。

薬剤師の仕事

法令上、薬剤師でなければできないことは動きません。

根拠残るもの
0402通知 記1調剤した薬剤の最終的な確認を薬剤師が自ら行う
薬剤師法第23条第2項処方医の同意なく変更して調剤してはならない
薬剤師法第24条疑わしい点があるときは問い合わせて確かめた後でなければ調剤してはならない
薬剤師法第25条の2必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない

機械が代替したのは「判断を加える余地に乏しい機械的な作業」だけです。0402通知が3条件の3つ目に置いた言葉が、そのまま境界線になっています。

逆に言えば——判断が要らない仕事しかしていない薬剤師は、置き換わります。

0402通知の前文には、こう書かれています。

薬剤師の行う対人業務を充実させる観点から、医薬品の品質の確保を前提として対物業務の効率化を図る必要があり、「調剤機器や情報技術の活用等も含めた業務効率化のために有効な取組の検討を進めるべき」とされたところです。

空いた時間を対人業務に使うことが条件で、機械化が認められています。そこを空けたまま人を減らすだけなら、通知の趣旨からは外れます。

そして薬局開設者には、機械を入れれば終わりではない責務もあります。

薬局開設者は、……薬剤師以外の者に業務を実施させる場合にあっては、保健衛生上支障を生ずるおそれのないよう、組織内統制を確保し法令遵守体制を整備する観点から、当該業務の実施に係る手順書の整備、当該業務を実施する薬剤師以外の者に対する薬事衛生上必要な研修の実施その他の必要な措置を講じること。

3つの問い

検証してみて、答えの出ていない問いが残りました。

① 機械が止まったとき、誰が調剤できるのか

メーカーは停電対策を用意していました。問題は人のほうです。

散剤を手で量ったことがない薬剤師が育ったとき、ロボットが止まった日に何が起きるのか。紙のジャーナルを持って棚を探せる人が、何人残っているのか。

② AIの提案に、誰が責任を持つのか

算定要件の「薬剤師が必要と認め」という文言は、AIには渡せません。

提案を採否する判断こそが薬剤師の仕事になる——そう再定義できる薬局と、提案をそのまま通す薬局とで、数年後に差が出るはずです。

③ 空いた時間は、本当に患者に向かうのか

0402通知が機械化を認めた条件は「対人業務を充実させる観点から」でした。

しかし現実には、空いた時間が人員削減に使われる可能性もあります。個室を作っても、そこに座る薬剤師がいなければ意味がありません。

次世代薬局が問うているのは、機械をいくら入れるかではなく、空いた時間を何に使うかだと思います。

まとめ

  • 次世代薬局の背骨は0402通知。「目が届く場所」「品質に影響しない」「判断の余地に乏しい機械的作業」の3条件
  • 薬剤師以外に認められたのはPTPのピッキング一包化の数量確認の2つだけ
  • 散剤・水剤・軟膏の計量・混合は、いまも薬剤師以外は19条違反。ただし調剤機器の活用は妨げない——だから機械が要る
  • 散薬調剤ロボットは薬品選択・秤量まで自動。最小0.5g、±5%以内。常用量超過でアラートを出して停止し、秤量の様子は動画で残る
  • ピッキング装置は約1,200種を搭載、1剤13〜30秒。約2.5トン・200Vで、移転や新規開局が導入の機会になる
  • 最終鑑査だけは薬剤師。メーカーのカタログにも「※最終鑑査は必ず行ってください」と明記されている
  • 個室の投薬室に法令上の義務はありません。構造設備規則が求めるのは「調剤室に近接する場所」だけ
  • 受付・入力・会計の自動化に制度上の障壁はほぼない。ただしAIの提案を採否する責任は薬剤師に残る
  • 調剤業務の外部委託は改正薬機法で創設され、点数表には先に算定ルールが書かれている

機械の話として見ている限り、次世代薬局はただの設備投資です。

けれど0402通知を読み直すと、これは「薬剤師の仕事を何に定義し直すか」という問いだったことが分かります。判断の要らない仕事を手放したあとに、何が残るのか。

その答えを持っている薬局が、結果として次世代薬局になるのだと思います。

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