室温保存は1〜30℃です|夏の配送も雪国の冬も範囲外、そして「常温」のほうが室温より狭い

薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

「室温保存」の室温は、何℃から何℃なのか。日本薬局方の通則に書いてあります。1〜30℃です。そうすると疑問が2つ出ます。夏の配送は30℃を超えないか。雪国の冬は1℃を下回らないか。——どちらも、条文に照らせば範囲外です。そしてもうひとつ、「常温」のほうが「室温」より狭いという、日常語の感覚と逆の事実があります。
1〜30室温上も下も外れる場面がある
15〜25常温室温より狭い。感覚と逆
1〜15冷所別に規定するもののほか

定義は、日本薬局方の通則16にあります

まず原文を。第十九改正日本薬局方——令和8年4月10日 厚生労働省告示第193号です。今年の4月に切り替わりました。

試験又は貯蔵に用いる温度は、原則として、具体的な数値で記載する。ただし、以下の記述を用いることができる。

標準温度は20℃、常温は15〜25℃、室温は1〜30℃、微温は30〜40℃とする。冷所は、別に規定するもののほか、1〜15℃の場所とする。

冷水は10℃以下、微温湯は30〜40℃、温湯は60〜70℃、熱湯は約100℃の水とする。

並べます。

記述温度
標準温度20℃
常温15〜25℃10℃
室温1〜30℃29℃
微温30〜40℃10℃
冷所1〜15℃(別に規定するもののほか)14℃

「常温」のほうが、「室温」より狭い

ここが最初の引っかかりどころだと思います。

日常の言葉では「常温=ふつうに置いておけばいい」「室温=部屋の温度」で、常温のほうがゆるい印象があります。実際は逆です。

常温 15〜25℃
室温 1〜30℃
同じ目盛りで並べると、常温は室温の約3分の1の幅しかない

常温は室温の中に、すっぽり入ります。「常温保存」と書いてあったら、室温保存より厳しい条件だと読むのが正しい。

そもそも「原則として、具体的な数値で記載する」

見落とされやすいのが、通則16の書き出しです。

「試験又は貯蔵に用いる温度は、原則として、具体的な数値で記載する。ただし、以下の記述を用いることができる。」

原則は数値です。「室温」「常温」「冷所」は、ただし書きで認められた書き方という位置づけになっています。

だから近年の製剤は「2〜8℃で保存」「30℃以下で保存」のように数値で書かれているものが増えています。一方で、古くからある製剤は「室温保存」のままです。たとえばロキソプロフェンナトリウム錠の添付文書は、いまも貯法「室温保存」と書かれています。

手元の薬がどちらの書き方かで、確認すべきことが変わります。数値で書いてあればその数値。「室温保存」なら1〜30℃です。

夏の配送は、30℃を超えます

ここからが本題です。

在宅や配送で薬を運ぶとき、真夏の車内やバイクのボックスは30℃どころではありません。直射日光下の車内は50℃を超えることもあります。

そのあいだ、その薬は「室温」にありません。貯法が「室温保存」である以上、1〜30℃を外れた時点で、貯法の条件から外れています。ここは解釈の余地がありません。通則が数字で決めているからです。

では配送してはいけないのか——そうではなく、「30℃以下に保って運ぶ」が答えになります。保冷バッグ、保冷剤、車内の空調。冷所品を保冷して運ぶのと同じ考え方を、室温品にも上限側で当てるということです。

実務で効くのは、この2点だと思います。

  • 保冷剤を直接あてない。上限を守ろうとして1℃を下回れば、今度は下側で外れます。冷所品と室温品を同じ箱に入れるときは、ここが起きやすい
  • 置き配・不在時の再配達。玄関前に置かれた時間が、いちばん温度が読めません

雪国の冬は、1℃を下回ります

そして下側です。ここは意識されにくい。

室温の下限は1℃です。0℃ではありません。氷点下はもちろん、0℃でも室温の範囲外になります。

冬の朝、暖房を落とした調剤室。配送車の荷台。玄関前に置かれた薬。いずれも1℃を下回りうる場面です。

凍結が問題になるのは冷所品だけではありません。「室温保存」の製剤も、1℃未満は貯法の範囲外です。液剤・シロップ・軟膏など、低温で性状が変わりうる剤形では特に見ておく必要があります。

夏だけ気をつけて冬は気にしない、というのは条文上つじつまが合いません。幅は1〜30℃で、両端があります。

調剤室の温度は、規則には書いてありません

「業務時間外の温度管理」の話です。薬局等構造設備規則を読み直しました。

二 換気が十分であり、かつ、清潔であること。

七 冷暗貯蔵のための設備を有すること。

八 鍵のかかる貯蔵設備を有すること。

九 貯蔵設備を設ける区域が、他の区域から明確に区別されていること。

調剤室の温度についての規定は、ありません。面積(6.6㎡以上)、天井と床の材質、明るさ(調剤台の上は120ルクス以上)までは定められていますが、何℃に保てとは書かれていない。

つまり調剤室の温度を縛っているのは、規則ではなく「そこに置いてある薬の貯法」です。室温保存の薬を置いている以上、その場所は1〜30℃である必要がある——そういう構造になっています。

だから閉店後が問題になります。空調を止めた薬局は、夏は締め切った室内で温度が上がり、冬は明け方に下がります。営業時間中しか測っていない記録は、いちばん危ない時間帯を見ていないことになります。

薬局だけ、ただし書きがありません

同じ規則を読み比べると、面白いことに気づきます。

冷暗貯蔵のための設備鍵のかかる貯蔵設備
薬局(第1条)必須必須
店舗販売業(第2条)必須
ただし、冷暗貯蔵が必要な医薬品を取り扱わない場合は、この限りでない
必須
ただし、毒薬を取り扱わない場合は、この限りでない
卸売販売業(第3条)必須
同上のただし書きあり
必須
同上のただし書きあり

薬局にだけ、ただし書きがありません。「冷所品を扱っていないから冷蔵庫は不要」「毒薬を扱っていないから鍵のかかる棚は不要」——薬局では通りません。扱いの有無にかかわらず、設備として持っていることが要件です。

鍵のかかる貯蔵設備が何のために要るかは、毒薬と劇薬は何が違うのか|かぎをかけるのは毒薬だけに書きました。

まず測るところから

  1. 最高最低温度計を置く調剤室・在庫棚・冷蔵庫に1つずつ。閉店中の最高と最低が翌朝わかります
  2. 夏と冬、それぞれ1週間記録する通年で測らなくても、両端の季節を押さえれば実態がつかめます
  3. 30℃を超えた/1℃を下回った時間があるかあれば空調の運用を変える。閉店後も弱運転にする等
  4. 配送の箱の中も測るいちばん読めないのがここ。保冷剤の当て方で下振れもします
  5. 数値表記の貯法を拾い出す「2〜8℃」「30℃以下」など個別に指定された製剤は、室温の話とは別に管理する

薬局で確認すること

  • ◻️ 室温=1〜30℃だと、スタッフ全員が言える
  • ◻️ 常温(15〜25℃)は室温より狭いことを共有した
  • ◻️ 調剤室・在庫棚に最高最低温度計を置いた
  • ◻️ 閉店中の最高・最低温度を、夏と冬に記録した
  • ◻️ 夏の配送で30℃を超えない手当てをしている(保冷バッグ等)
  • ◻️ 冬の配送・置き配で1℃を下回らない手当てをしている
  • ◻️ 保冷剤を室温品に直接あてていない(下側で外れる)
  • ◻️ 貯法が数値で書かれている製剤を洗い出し、別枠で管理している
  • ◻️ 冷蔵庫の温度記録を、休業日も含めて取れる形にした

まとめ

  • 室温は1〜30℃。第十九改正日本薬局方 通則16(令和8年4月10日 厚生労働省告示第193号)
  • 常温は15〜25℃で、室温より狭い。日常語の感覚と逆です
  • 冷所は1〜15℃(別に規定するもののほか)。標準温度は20℃、微温は30〜40℃
  • 通則16の原則は「具体的な数値で記載する」。「室温」等はただし書きで認められた書き方です
  • 夏の配送で30℃を超えれば、その間その薬は室温にありません。保冷して上限を守るのが筋
  • 下限は1℃。0℃でも範囲外です。雪国の冬、暖房を落とした調剤室、置き配——下側も外れます
  • 薬局等構造設備規則に、調剤室の温度規定はありません。縛っているのは規則ではなく、そこに置いてある薬の貯法です
  • 冷暗貯蔵設備と鍵のかかる貯蔵設備は、薬局だけただし書きなしで必須。店舗販売業・卸売販売業には「取り扱わない場合はこの限りでない」があります

出典

※ 本記事は2026年8月30日時点の日本薬局方および法令の原文に基づいています。
貯法は製剤ごとに異なります。数値で指定されているものはその数値が優先します。個々の製剤の貯法は添付文書でご確認ください。
※ 輸送中の温度管理の具体的な基準については、別途、流通に関するガイドライン等をご確認ください。本記事は日本薬局方の定義から導ける範囲を整理したものです。

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