こんにちは、「薬Talk」編集長、薬剤師のNoriです!
妊娠中や妊活中に処方されることもある「バイアスピリン」。
本来は心筋梗塞や脳梗塞などの再発予防に使われる薬ですが、実は不妊治療や妊娠高血圧症候群(PIH)の予防目的としても使われることがあります。
こうした使い方は「適応外使用」にあたるため、服薬に対して不安を感じる患者さんも少なくありません。
本記事では、薬剤師の視点からバイアスピリンの作用機序・標準的な使い方・適応外使用の根拠と注意点をやさしく解説します。
目次
◆バイアスピリンってどんな薬?
項目 | 内容 |
---|---|
一般名 | アスピリン(アセチルサリチル酸) |
製品名 | バイアスピリン錠100mgなど |
分類 | 抗血小板薬(COX阻害) |
主な適応 | 心筋梗塞・脳梗塞・狭心症などの再発予防 |
作用機序:
バイアスピリンは「COX(シクロオキシゲナーゼ)」を阻害して、トロンボキサンA₂の産生を抑えます。
これにより血小板の凝集が抑えられ、血栓ができにくくなります。
📌つまり一言でいうと…
「血のかたまり=血栓」ができるのを防いでくれる薬、です。
◆使い方:基本は“低用量”でOK?
用量 | 主な目的 |
---|---|
81〜100mg | 抗血小板(血栓予防)目的 |
300mg〜 | 解熱鎮痛・抗炎症(※現在はほぼ使われません) |
◆実は適応外でも使われている…?(要確認)
📍不妊治療で使うバイアスピリン
低用量アスピリンは、子宮・胎盤の血流を改善し、着床環境を整える目的で使用されます。
これは添付文書上の適応外使用です。
➤ 医学的背景:
- 抗リン脂質抗体症候群の予防
- 着床不全や流産予防への期待
用途 | 根拠レベル | 注意点 |
---|---|---|
不妊治療補助 | RCTありだが施設差あり | 出血リスクと胎児影響に留意 |
習慣流産予防 | 抗リン脂質抗体陽性時に推奨 | 医師の判断で使用 |
📍妊娠高血圧症候群(PIH)の予防としての使用
妊娠12〜16週からバイアスピリンを開始し、PIHの発症リスクを下げることが近年注目されています。
➤ 背景:
PIHは胎盤血流不全が原因とされ、アスピリンが血流改善を通じてリスク低下に寄与します。
条件 | 推奨されるケースの例 |
---|---|
高リスク妊婦 | 多胎妊娠、PIHの既往、糖尿病合併妊娠など |
開始時期 | 妊娠12〜16週までに開始 |
用量 | 81〜100mg/日 |
終了時期 | 妊娠34〜36週(医師判断) |
📝薬剤師のポイント:
- 妊娠中の使用は基本的に慎重だが、医師の管理下での限定的使用は存在する
- 出血傾向・薬歴チェックは必須
- 飲み忘れや急な中止にも注意を呼びかける
◆こんな服薬指導、できていますか?
患者さん:「この薬、ずっと飲み続けるの?」
薬剤師の対応例:
「これは血栓ができるのを防ぐための薬です。特に心筋梗塞や脳梗塞などを再発させないように、継続して飲むことが大事なんです。急にやめてしまうと、逆にリスクが高くなることもあるんですよ」
◆まとめ:バイアスピリンの使い方を一目で整理!
使用目的 | 用量 | 適応 | 注意点 |
---|---|---|---|
血栓予防 | 100mg | 心血管イベント予防 | 出血、副作用、急な中止に注意 |
不妊治療 | 81〜100mg | 適応外 | 医師の判断のもと、使用理由の確認を |
妊娠高血圧予防 | 81〜100mg | 適応外 | 開始時期・リスク評価・出血リスクの確認が必要 |
◆まとめ
バイアスピリンは「血をサラサラにする薬」としてよく知られていますが、近年では不妊治療や妊娠高血圧予防といった用途でも使用されるようになってきました。
このような適応外使用には一定の根拠がありますが、必ず医師の判断と適切な服薬管理が必要です。薬剤師としても、患者さんに安心して服用してもらえるよう、正しい情報をわかりやすく伝えることが求められています。