こんにちは、「薬Talk」編集長Noriです!
「フェブリク?ユリス?どれが安全なの?」
「SJSが怖くてアロプリノール出したくないけど、結局何を選べば…?」
――こんな迷い、現場では日常茶飯事。
本記事では、高尿酸血症治療薬を作用機序別に整理し、副作用・相互作用・対処法・薬剤ごとの適応患者像まで徹底解説します。
服薬指導や疑義照会、医師への提案に役立つ知識をこの1本に凝縮しました。
目次
高尿酸血症治療薬|作用機序による分類
分類 | 薬剤名 | 作用機序 | 特徴・注意点 |
---|---|---|---|
尿酸生成抑制薬 | アロプリノール(ザイロリック) フェブキソスタット(フェブリク) トピロキソスタット(トピロリック) | キサンチンオキシダーゼ阻害で尿酸生成を抑える | 腎機能・心血管リスクに応じて使い分け |
尿酸排泄促進薬 | ベンズブロマロン(ユリノーム) ドチヌラド(ユリス) | 尿細管URAT1阻害で尿酸排泄促進 | 肝機能・結石・併用薬に注意が必要 |
解説:
尿酸生成を抑える薬か、尿酸を出す薬か、基本はこの2択。その上で「腎機能」「肝機能」「併用薬」「年齢」を見て選びましょう。
各薬剤の特徴・副作用・相互作用と対処法
▶ アロプリノール(ザイロリック)
- 作用:キサンチンオキシダーゼ阻害 → 尿酸生成を抑制
- 選ばれる患者:腎機能が良好で、コストを抑えたい人
- 副作用:重篤な皮膚障害(SJS/TEN)、肝障害、薬疹
- 対処法:HLA-B*5801陽性なら避ける/初期の発疹で即中止
- 相互作用:アザチオプリン・6-MPの代謝を抑制 → 骨髄抑制↑
- 対処法:併用禁忌/やむを得ない場合は6-MPを1/4量に+厳重モニター
▶ フェブキソスタット(フェブリク)
- 作用:選択的キサンチンオキシダーゼ阻害(非プリン型)
- 選ばれる患者:腎機能低下例(eGFR<50)、アロプリノール不耐
- 副作用:肝機能障害、まれに心血管イベント(心不全・心筋梗塞)
- 対処法:心疾患既往ありでは避ける/肝機能定期検査
- 相互作用:アザチオプリン・6-MP・テオフィリンなど代謝抑制
- 対処法:併用禁忌 or 代替薬提案(ユリス等)
▶ トピロキソスタット(トピロリック)
- 作用:キサンチンオキシダーゼ阻害(国産の選択肢)
- 選ばれる患者:フェブリク類似の効果を求める場合
- 副作用:肝機能障害(軽度〜中等度)
- 対処法:AST・ALT定期確認/フェブリクと同等の対応
- 相互作用:アザチオプリン・6-MPでの骨髄抑制リスクあり
- 対処法:同上
▶ ベンズブロマロン(ユリノーム)
- 作用:URAT1阻害 → 尿酸排泄促進
- 選ばれる患者:尿酸排泄量が少なく、肝機能良好な人
- 副作用:重篤な肝障害、尿路結石
- 対処法:肝機能定期検査/水分摂取指導1日2L+尿pH管理
- 相互作用:
- サリチル酸:URAT1刺激 → 効果減弱
- ワルファリン:代謝酵素阻害 → 出血リスク↑
- 対処法:他剤選択 or INRモニター徹底
▶ ドチヌラド(ユリス)
- 作用:選択的URAT1阻害(OAT1/3やABCG2にほぼ作用せず)
- 選ばれる患者:腎・肝機能のいずれかに不安があり、高齢者・多剤併用患者
- 副作用:軽度肝酵素上昇(頻度は非常に低い)
- 対処法:定期検査/発現時は中止+肝機能評価
- 相互作用:臨床上重大な相互作用なし(現時点)
- 対処法:併用薬が多くても比較的安心
薬ごとの選び方まとめ
状況・背景 | おすすめ薬剤 | 理由・補足 |
---|---|---|
腎機能障害あり(eGFR<30) | フェブリク・ユリス | 腎排泄少なく使用可 |
心疾患の既往あり | ユリス・アロプリノール | フェブリクは回避 |
肝機能障害あり | アロプリノール・フェブリク | ユリノームは禁忌級 |
コスト重視 | アロプリノール | 最も安価な選択肢 |
尿中尿酸排泄量が低い | ユリノーム・ユリス | 排泄促進が有効 |
※表内の選択はあくまで一例です。併用薬・生活状況なども加味して選択しましょう。
服薬指導ポイント
- 開始時の痛風発作リスクには事前説明+予防薬処方(コルヒチンなど)
- 排泄促進薬時は水分摂取2L/日以上を強く指導(結石予防)
- 肝・腎機能モニタリングが必要な薬剤では検査予定の確認を忘れずに
- 併用薬(アザチオプリン、ワルファリンなど)の影響を早めに疑義照会!
✨薬剤師だからこそできる、”処方の理由”への気づき
医師は患者全体像から処方を選んでいますが、薬剤師は「なぜこの薬?」「他の選択肢は?」と考える専門職です。
高尿酸血症治療薬は、地味だけど副作用も相互作用も奥が深い分野。
今日の服薬指導が、患者さんの将来の痛風発作を1つ減らすかもしれません。
参考文献
- 日本痛風・尿酸核酸学会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
- ユリス錠 インタビューフォーム(帝人ファーマ)
- フェブリク錠 適正使用ガイド(日本化薬)
- アロプリノール・ユリノーム 添付文書・IF
- PMDA 医薬品医療機器総合機構 医薬品情報
- Micromedex(2024)相互作用データベース