執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
「使い始めたインスリンは、冷蔵庫に入れていいの?」「何日まで使える?」——患者さんにも、病棟や施設の看護師さんにもよく聞かれます。答えは製品ごとに違います。「4週間」と覚えていると、トレシーバ(8週間)やノボリン(6週間)で外れます。
インスリン製剤の添付文書の「20. 取扱い上の注意」から、使用開始後の保存場所と期限を製品別に並べました。
使用開始後の期限と保存場所(製品別)
| 製品 | 使用開始後の期限 | 使用中の冷蔵庫 |
|---|---|---|
| ノボ ノルディスク | ||
| ノボラピッド注 フレックスタッチ/フレックスペン | 4週間 | 室温。冷蔵庫保管も可能(凍結を避ける) |
| ノボラピッド注 ペンフィル、ノボラピッド30ミックス・50ミックス | 4週間 | 冷蔵庫に入れない |
| フィアスプ注 フレックスタッチ | 4週間 | 室温。冷蔵庫保管も可能 |
| フィアスプ注 ペンフィル | 4週間 | 冷蔵庫に入れない |
| ノボリンR・N・30R 注フレックスペン | 6週間 | 冷蔵庫に入れない |
| レベミル注 フレックスペン | 6週間 | 室温。冷蔵庫保管も可能 |
| レベミル注 ペンフィル | 6週間 | 冷蔵庫に入れない |
| トレシーバ注 フレックスタッチ | 8週間 | 室温。冷蔵庫保管も可能 |
| トレシーバ注 ペンフィル | 8週間 | 冷蔵庫に入れない |
| アウィクリ注 フレックスタッチ(週1回) | 総量300単位:6週間/総量700単位:12週間 | 室温。冷蔵庫保管も可能 |
| 日本イーライリリー | ||
| ヒューマログ注 カート/ミリオペン/ミリオペンHD | 28日 | 30℃以下。ミリオペンは冷蔵庫に保存しない。カートは注入器に装着したまま冷蔵庫に保存しない |
| ヒューマログミックス25・50 | 28日間は安定 | ミリオペンは使用開始後冷蔵庫に保存しない。カートは注入器に装着したまま冷蔵庫に保存しない(温度の記載なし) |
| ルムジェブ注 カート/ミリオペン/ミリオペンHD | 28日 | キャップをつけて30℃以下。ミリオペンは冷蔵庫に保存しない |
| ヒューマリンR・N・3/7 カート/ミリオペン | 28日 | 30℃以下。ミリオペンは冷蔵庫に保存しない |
| サノフィ | ||
| ランタス注 ソロスター/カート | 4週間 | 使用中は冷蔵庫に保存しない(カートは注入器に装着したまま保存しない)。遮光して室温 |
| ランタスXR注 ソロスター | 6週間 | 冷蔵庫に保存しない |
| アピドラ注 ソロスター/カート | 4週間 | 使用中は冷蔵庫に保存しない(カートは注入器に装着したまま保存しない) |
同じ製品でも、ペンとカートリッジで書き方が違う
ノボ ノルディスクの製品では、フレックスタッチ(とノボラピッド・レベミルのフレックスペン)は「冷蔵庫保管も可能」、ペンフィル(カートリッジ)は「冷蔵庫に入れず」と書き分けられています。トレシーバもレベミルも同じです。
リリーのカート製剤と、サノフィのランタス・アピドラ・リスプロBSのカートには、「(インスリン/専用の)ペン型注入器に装着したまま冷蔵庫に保存しないこと」という一文があります(アスパルトBSのカートは「使用中は冷蔵庫に入れず」)。患者さんが「冷やしたほうが長持ちする」と注入器ごと冷蔵庫に入れていないか、確認するポイントです。
バイアル(100単位/mL)は「冷蔵保存できない場合は」
- ヒューマログ注100単位/mL、ヒューマリンR・N・3/7注100単位/mL、ルムジェブ注100単位/mL:使用開始後は「冷蔵保存できない場合には、遮光して30℃以下で保存」、28日以内に使用
- ランタス注100単位/mL:使用開始後、冷蔵庫に保存できない場合は遮光して室温保存。4週間を超えたものは使用しない
- ノボラピッド注100単位/mL:使用中は冷蔵庫に入れず、遮光して室温、4週間以内
- フィアスプ注100単位/mL:使用中は室温に遮光して保管し4週間以内。冷蔵庫保管(2~8℃)も可能(凍結を避ける)
- アピドラ注100単位/mL:使用開始後、冷蔵庫に保存できない場合は遮光して保存。使用開始後の期限の記載はなし(ポンプ使用時は48時間以内に交換)
- ノボリンR注100単位/mL:使用中は冷蔵庫に入れず、遮光して室温、6週間以内
同じバイアルでも、リリー・サノフィは「冷蔵保存できない場合は」と使用中の冷蔵を前提にした書き方です。ノボ ノルディスクはノボラピッド・ノボリンRが「冷蔵庫に入れず」、フィアスプは「冷蔵庫保管も可能」と、同じ会社でも分かれます。
バイオシミラーは先行品と同じとは限らない
- インスリン グラルギンBS「リリー」(カート/ミリオペン):使用開始後は30℃以下で28日以内。ミリオペンは冷蔵庫に保存しない
- インスリン グラルギンBS注キット「FFP」:使用中は冷蔵庫に保存しない、4週間を超えたものは使用しない
- インスリン リスプロBS「サノフィ」:カート/ソロスターは使用開始後30℃以下で28日以内。バイアルは「冷蔵保存できない場合には、遮光して30℃以下」で28日以内(ヒューマログのバイアルと同じ書き方)
- インスリン アスパルトBS「サノフィ」:使用中は冷蔵庫に入れず、室温(30℃以下)で4週間以内
ノボラピッドのフレックスタッチ/フレックスペンは「冷蔵庫保管も可能」ですが、アスパルトBS「サノフィ」のソロスターは「冷蔵庫に入れず」です(ノボラピッドもペンフィルとバイアルは「冷蔵庫に入れず」)。バイオシミラーに切り替わったときは、保存の説明もやり直します。
見た目で使わないもの
- ヒューマリンN・3/7、ヒューマログミックス25・50:カートリッジ(バイアル)の壁や底に白色の霜状粒子が付着したものは使用しない
- グラルギンBS「リリー」:無色澄明な液剤。液中に塊が見られた場合は使用しない
- 未使用品は凍結を避け、2~8℃で保存(ノボは貯法「凍結を避け、2~8℃に保存」、リリーは20.で「凍結を避け、遮光して2~8℃で冷蔵保存」、サノフィは外箱開封後は遮光)。凍結してしまった場合の使用可否は、添付文書には明記されていません
- 未開封品を室温に置いてしまった場合の扱いも、添付文書には記載がありません(メーカーの資料で確認)
患者さん・看護師さんへの説明のチェックリスト
- □ 使い始めた日をペンに書いておく(期限は製品で4・6・8・12週間)
- □ 使用中のペンを冷蔵庫に入れてよいか(フレックスタッチは可。フレックスペンは製品で分かれ、ノボラピッド・レベミルは可、ノボリン・ノボラピッドミックスは不可。ペンフィル・ミリオペン・ソロスターは入れない)
- □ カートリッジは注入器に装着したまま冷蔵庫に入れない
- □ 未使用品は2~8℃。凍らせない
- □ 白い霜状粒子や塊があれば使わない
- □ バイオシミラーへの切り替え時は、保存の説明をやり直す
まとめ
- 使用開始後の期限は4週間(28日)が多いが、ノボリン・レベミル・ランタスXRは6週間、トレシーバは8週間、アウィクリ700単位は12週間
- 使用中の冷蔵は、フレックスタッチは「冷蔵庫保管も可能」、フレックスペンは製品で分かれ、ペンフィル・ミリオペン・ソロスターは入れない
- バイアルは、リリー・サノフィが「冷蔵保存できない場合は」、ノボはノボラピッド・ノボリンRが「冷蔵庫に入れず」、フィアスプは「冷蔵庫保管も可能」
- バイオシミラーは先行品と保存の書き方が違うことがある
出典
- 各製品の添付文書(PMDA)20. 取扱い上の注意。ノボラピッド 620023_2492415G1031・A2035・A3031・A4038・G2020・G4022/フィアスプ 620023_2492415G7021・A5026/ノボリン 620023_2492413G1059・G5054・G8053・2492403A4043/レベミル 620023_2492417G1030・A1038/トレシーバ 620023_2492419G1021・A1029/アウィクリ 620023_2492424G1022
- ヒューマログ 530471_2492414A1026・A2030/ヒューマログミックス 530471_2492414A3029・A4025/ルムジェブ 530471_2492414A7024・A6028/ヒューマリン 530471_2492403H4041・H5030・H6036・A4051・A3047・H1034
- ランタス 780069_2492416G2024・A1033・A3036/ランタスXR 780069_2492416G3020/アピドラ 780069_2492418G1027・A2020・A1024/グラルギンBS「リリー」530471_2492420A1021/グラルギンBS「FFP」400022_2492421G1029/リスプロBS「サノフィ」780069_2492422A2027・A1020/アスパルトBS「サノフィ」780069_2492423A2021・A1025・G1028

