執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
DOAC(直接経口抗凝固薬)の処方監査で見る検査値は、4剤とも同じではありません。エリキュースは血清クレアチニン(+年齢・体重)、リクシアナは体重とクレアチニンクリアランス、イグザレルトはクレアチニンクリアランス、プラザキサはクレアチニンクリアランス・併用薬・年齢——減量を決める物差しが違います。
エリキュース・イグザレルト・リクシアナ・プラザキサの添付文書を並べて、非弁膜症性心房細動(NVAF)での用量・減量基準・禁忌、それに飲み忘れたときの対応を比べました。
4剤の比較表(非弁膜症性心房細動)
| エリキュース (アピキサバン) | イグザレルト (リバーロキサバン) | リクシアナ (エドキサバン) | プラザキサ (ダビガトラン) | |
|---|---|---|---|---|
| 通常用量 | 1回5mg 1日2回 | 15mg 1日1回 食後 | 体重60kg以下 30mg/60kg超 60mg 1日1回 | 1回150mg 1日2回 |
| 減量後 | 1回2.5mg 1日2回 | 10mg 1日1回 | 30mg 1日1回(7.3の条件をすべて満たす高齢者などでは15mgを考慮) | 1回110mg 1日2回 |
| 減量の基準 | 80歳以上・体重60kg以下・血清クレアチニン1.5mg/dL以上のうち2つ以上(7.1) | CCr 30~49(7.1)。CCr 15~29は適否を慎重に検討し、投与するなら10mg(7.2) | CCr 30~50で30mg(7.1)。CCr 15~30未満は適否を慎重に判断し、投与するなら30mg(NVAFでは15mgを考慮、7.1注3)。P糖蛋白阻害作用のある薬剤は2段階(7.2、本文参照) | CCr 30~50、P-糖蛋白阻害剤(経口剤)併用で110mgを考慮(7.1)。70歳以上・消化管出血の既往でも考慮(7.2) |
| 腎機能の禁忌 | CCr 15未満(2.4) | CCr 15未満(2.12) | CCr 15未満(2.4) | CCr 30未満(透析患者を含む)(2.2) |
| 主な併用禁忌 | 10.1なし。ただし10.2でアゾール系抗真菌剤(フルコナゾールを除く)・HIVプロテアーゼ阻害剤は減量を考慮、または併用しない | リトナビル含有製剤・ダルナビル・ホスアンプレナビル、コビシスタット含有製剤、イトラコナゾール・ポサコナゾール・ボリコナゾール・ミコナゾール・ケトコナゾールの経口又は注射剤、エンシトレルビル、ロナファルニブ(2.6〜2.10)。フルコナゾールは併用注意(10.2) | 10.1なし(P糖蛋白阻害作用のある薬剤は7.2で用量調整) | イトラコナゾール(経口剤)(2.6・10.1) |
| 妊婦(9.5) | 有益性投与 | 投与しないこと(2.5 禁忌) | 有益性投与 | 有益性投与 |
| 剤形の注意 | — | — | — | カプセルを開けて服用しない。吸湿性があり服用直前にPTPから出す(14.1.2・14.1.3) |
エリキュースだけ「血清クレアチニン」で決まる
次の基準の2つ以上に該当する患者は、出血のリスクが高く、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあるため、1回2.5mg 1日2回経口投与する。
・80歳以上 ・体重60kg以下 ・血清クレアチニン1.5mg/dL以上
ほかの3剤はクレアチニンクリアランス(CCr)で減量を決めますが、エリキュースの減量基準は血清クレアチニンそのものです。処方箋の検査値欄にCCrやeGFRしか載っていなくても、エリキュースでは血清クレアチニンの値を見ます。そして3つのうち2つ以上なので、80歳以上というだけでは減量の基準に当たりません。
なお、腎機能の禁忌(CCr 15mL/min未満)はエリキュースもCCrで書かれています。減量はCr、禁忌はCCrと、物差しが2つあることになります。
リクシアナは「体重」で通常量が変わる
リクシアナの用法・用量は、体重60kg以下なら30mg、60kg超なら60mgです。そのうえで、CCr 30~50mL/minなら60kg超でも30mgに減量します(7.1)。
P糖蛋白阻害作用のある薬剤の併用は、添付文書(7.2)で2段階に分かれています。
- 30mgを「投与すること」:キニジン、ベラパミル、エリスロマイシン、シクロスポリン
- 併用の適否を判断し、併用するなら30mgを「考慮」:アジスロマイシン、クラリスロマイシン、イトラコナゾール、ジルチアゼム、アミオダロン、HIVプロテアーゼ阻害剤(リトナビル等)等
ベラパミル併用で60mgなら確認が必要ですが、アミオダロン併用で60mgは「考慮」の範囲です。15mgは、NVAFで80歳以上を目安とする高齢の患者が、出血性素因(重要器官の出血既往・体重45kg以下・CCr 15~30未満・NSAIDsの常用・抗血小板剤の使用)を1つ以上もち、かつ通常用量や他の経口抗凝固剤の承認用量では出血リスクのため投与できない場合に考慮する用量です(7.3)。
処方監査では体重が要ります。体重の記載がない処方箋で60mgが出ていたら、確認する項目です。
プラザキサは腎機能の禁忌ラインが高い
NVAFで腎機能による禁忌は、エリキュース・イグザレルト・リクシアナがCCr 15mL/min未満なのに対し、プラザキサはCCr 30mL/min未満(透析患者を含む)です。CCr 20台の患者では、ほかの3剤とプラザキサで扱いが分かれます。
また、プラザキサはカプセルを開けて服用しないよう指導することが添付文書に書かれています(14.1.3)。吸湿性があるため、服用直前にPTPシートから取り出すこと、アルミピロー包装のまま調剤するのが望ましいことも書かれています(14.1.2)。一包化の依頼があったときに確認する点です。
飲み忘れたときの対応も4剤で違う
| 製品 | 添付文書の指導内容 |
|---|---|
| エリキュース(1日2回) | 気づいたときにすぐに1回量を服用し、その後通常どおり1日2回服用。一度に2回量を服用しない(8.10) |
| イグザレルト(NVAF・1日1回) | 直ちに服用し、翌日から毎日1回。一度に2回分を服用せず、次の服用まで12時間以上空ける(8.8) |
| リクシアナ(1日1回) | 一度に2回分を服用せず、直ちに1回分を服用し、次の服用まで12時間以上空ける(8.4) |
| プラザキサ(1日2回) | 同日中にできるだけ早く1回量を服用し、次の服用まで6時間以上空ける。決して2回量を服用しない(8.11) |
4剤とも「2回分をまとめて飲まない」ことは共通です(イグザレルトのVTE初期3週間を除く)。「患者の判断で服用を中止しない」は、エリキュース・リクシアナ・プラザキサの3剤に書かれています。違うのは次の服用までの間隔で、1日1回の2剤は12時間、1日2回のプラザキサは6時間です。エリキュースは時間の指定ではなく「その後通常どおり」と書かれています。
処方監査のチェックリスト
- □ 効能はNVAFか、静脈血栓塞栓症か(用量と腎機能の禁忌ラインが違う)
- □ エリキュース:年齢・体重・血清クレアチニンのうち2つ以上なら2.5mg。アゾール系(フルコナゾール除く)・HIVプロテアーゼ阻害剤の併用は減量考慮
- □ リクシアナ:体重(60kg以下は30mg)、CCr 30~50、P糖蛋白阻害作用のある併用薬(キニジン・ベラパミル・エリスロマイシン・シクロスポリンは30mg必須、その他は考慮)
- □ イグザレルト:CCr 30~49で10mg、食後、妊婦禁忌、併用禁忌(イトラコナゾール等5成分、HIV治療薬、エンシトレルビル(ゾコーバ)など。フルコナゾールは併用注意)
- □ プラザキサ:CCr 30未満は禁忌、イトラコナゾール(経口)併用禁忌、脱カプセル不可
- □ 飲み忘れ時の説明(12時間/6時間/すぐ1回分)
まとめ
- 減量の物差しは、エリキュース=血清Cr(+年齢・体重)、リクシアナ=体重+CCr+併用薬、イグザレルト=CCr、プラザキサ=CCr+併用薬+年齢・出血既往(いずれも「考慮」)
- NVAFの腎機能禁忌は3剤がCCr 15未満、プラザキサだけCCr 30未満
- 妊婦禁忌はイグザレルトのみ(4剤の中で)
- 飲み忘れ後の間隔は、リクシアナ・イグザレルト12時間、プラザキサ6時間、エリキュースは「すぐ1回量、その後通常どおり」
出典
- エリキュース錠2.5mg・5mg 添付文書(PMDA 670605_3339004F1029_1_22)
- イグザレルト錠10mg・15mg 添付文書(PMDA 630004_3339003F1024_1_28)
- リクシアナ錠15mg・30mg・60mg 添付文書(PMDA 430574_3339002F1020_1_19)
- プラザキサカプセル75mg・110mg 添付文書(PMDA 650168_3339001M1024_1_19)

