執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
「いつもの薬を飲んでいるんですが、ロキソニンSを飲んでも大丈夫ですか?」——OTCの売り場でも、調剤の窓口でも毎日のように聞かれる質問です。
ところが、ロキソニンSの添付文書には、飲み合わせに注意する処方薬の名前が1つも書かれていません。書いてあるのは「他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬」という薬効群名と、「医師又は歯科医師の治療を受けている人は、服用前に相談」です。具体的な薬の名前は、処方薬側——処方薬のロキソニンと、相手の薬の添付文書——に書いてあります。両方を開いて、確認すべき薬を並べました。
ロキソニンSの添付文書に書いてあること
- してはいけないこと:本剤を服用している間は、他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬を服用しない。服用前後は飲酒しない。15歳未満は服用しない
- 服用しない人:医療機関で胃・十二指腸潰瘍、肝臓病、腎臓病、心臓病の治療を受けている人。医師から貧血・血小板減少・白血球減少などの血液異常を指摘されている人。出産予定日12週以内の妊婦 など
- 相談すること:医師又は歯科医師の治療を受けている人、妊婦、授乳中の人、高齢者、気管支ぜんそく・潰瘍性大腸炎・クローン病・全身性エリテマトーデス・混合性結合組織病の診断を受けた人、胃・十二指腸潰瘍、肝臓病、腎臓病、血液の病気にかかったことがある人 など
OTCの添付文書は使用者向けなので、「治療中なら相談」でとどまります。相談を受けた薬剤師が何を確認するかは、処方薬の添付文書を見ないとわかりません。
なお、以下の処方薬の「併用注意」は医療用(連用も想定)の注意です。OTCのロキソニンS(1回1錠、1日2回まで・再度症状があれば3回目可、長期連続服用しない)にそのまま危険度を移すものではなく、相談を受けたときの確認項目として使います。
処方薬ロキソニンの「併用注意」——確認する8群
| 併用薬(10.2) | 起きること | 相手の薬の添付文書では |
|---|---|---|
| ワルファリン | 抗凝血作用を増強するおそれ | ワーファリン:解熱鎮痛消炎剤(アスピリン、イブプロフェン、インドメタシン、ロキソプロフェン等)で作用増強。血液凝固能の変動に十分注意 |
| 第Xa因子阻害剤(エドキサバン等) | 出血の危険性を増大させるおそれ | エリキュース・リクシアナは10.2に「非ステロイド性消炎鎮痛剤」、イグザレルトは「非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤」(例示はジクロフェナク、ナプロキセン等)。※プラザキサ(トロンビン阻害剤)はこの群に当たらないが、プラザキサ側の10.2に「非ステロイド性消炎鎮痛剤(ジクロフェナクナトリウム等)」がある |
| SU系血糖降下剤 | 血糖降下作用を増強するおそれ(必要があれば減量) | — |
| ニューキノロン系抗菌剤(レボフロキサシン等) | 痙攣誘発作用を増強することがある | シプロキサン:プロピオン酸系(ロキソプロフェン等)は併用注意で「てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者、腎障害のある患者では特に注意」、ケトプロフェン(注射剤、坐剤)は併用禁忌/クラビット:フェニル酢酸系又はプロピオン酸系(フルルビプロフェン等)で痙攣のおそれ |
| メトトレキサート | 血中濃度を上昇させ作用を増強することがある | リウマトレックス:「サリチル酸等の非ステロイド性抗炎症剤」で副作用(骨髄抑制、肝・腎・消化管障害等)が増強されることがある |
| リチウム製剤 | 血中リチウム濃度を上昇させ、リチウム中毒を起こすことがある | 炭酸リチウム:10.2に「非ステロイド性消炎鎮痛剤〔ロキソプロフェンナトリウム水和物等〕」でリチウム中毒の報告。NSAIDs併用など血清リチウム濃度を上昇させる要因があれば濃度を測定し、患者・家族にも説明 |
| チアジド系利尿薬 | 利尿・降圧作用を減弱するおそれ | — |
| ACE阻害剤・ARB等の降圧剤 | ①降圧作用を減弱するおそれ ②腎機能を悪化させるおそれ | — |
ACE阻害剤・ARBは、処方薬ロキソニンの添付文書に2回出てきます。1回目は「降圧作用を減弱」、2回目は「腎血流量が低下し、腎機能を悪化させるおそれ」です。血圧の薬を飲んでいる人に「少し血圧が上がるかも」だけで済ませないための書き分けです。
シプロキサンは「同じプロピオン酸系」でも禁忌と注意に分かれる
シプロキサン(シプロフロキサシン)の添付文書は、ケトプロフェン(注射剤、坐剤)を投与中の患者を禁忌にしています(2.2)。一方、ロキソプロフェン・プラノプロフェン・ザルトプロフェンなどのプロピオン酸系と、ジクロフェナクなどのフェニル酢酸系は併用注意で、「痙攣を起こすおそれ」「てんかん等の痙攣性疾患又はこれらの既往歴のある患者、腎障害のある患者では特に注意」と書かれています。
ロキソニンSを買いに来た人がシプロキサンやクラビットを飲んでいたら、てんかんの既往を一言確認します(クラビットも9.1.1でてんかん等の既往を注意)。腎障害についての注記はシプロキサン側の記載です。
ロキソニンSを相談されたときの確認リスト
- □ 他の解熱鎮痛薬・かぜ薬(処方の痛み止め・OTCの総合感冒薬)を飲んでいないか → 「してはいけないこと」
- □ 胃・十二指腸潰瘍、肝臓病、腎臓病、心臓病で治療中 → 服用しない/かかったことがある(胃・十二指腸潰瘍、肝臓病、腎臓病、血液の病気)→ 相談
- □ 医師から貧血・血小板減少・白血球減少などを指摘されている → 服用しない
- □ 血をサラサラにする薬(ワルファリン、エリキュース・イグザレルト・リクシアナ、プラザキサ)。リクシアナは「非ステロイド性消炎鎮痛剤の常用」が15mgを考慮する出血性素因の1つ(7.3)
- □ ACE阻害剤・ARB → 降圧減弱+腎機能悪化/チアジド系利尿薬 → 利尿・降圧作用の減弱
- □ リチウム、メトトレキサート → 血中濃度上昇
- □ キノロン系の抗菌薬(レボフロキサシン・シプロフロキサシン等) → 痙攣、てんかんの既往
- □ SU薬 → 血糖降下作用の増強(低血糖に注意)
- □ 当てはまれば、自己判断で併用せず、処方医か、かかりつけの薬剤師に相談するよう伝える
まとめ
- ロキソニンSの添付文書には個別の併用薬名がない(薬効群名は「他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬」)。「治療中の人は相談」が入口
- 何を確認するかは処方薬ロキソニンの10.2にある:ワルファリン、第Xa因子阻害剤、SU薬、ニューキノロン、メトトレキサート、リチウム、チアジド系利尿薬、ACE阻害剤・ARB
- ACE阻害剤・ARBは降圧減弱と腎機能悪化の2つ
- シプロキサンはケトプロフェン(注射剤・坐剤)が禁忌、ロキソプロフェンは注意
出典
- ロキソニンS(一般用医薬品)添付文書(PMDA 430549_K1101000003_11_01)してはいけないこと・相談すること
- ロキソニン(医療用)添付文書(PMDA 430574_1149019C1149_1_13)10.2 併用注意
- ワーファリン(300119_3332001D1023_2_01)/エリキュース(670605_3339004F1029_1_22)/イグザレルト(630004_3339003F1024_1_28)/リクシアナ(430574_3339002F1020_1_19)/プラザキサ(650168_3339001M1024_1_19)
- シプロキサン(630004_6241008F1023_1_26)/クラビット(430574_6241013C2024_1_24)/リウマトレックス(672212_3999016M1021_3_06)/炭酸リチウム錠「フジナガ」(670126_1179017F1072_1_11)

