執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
酸化マグネシウム(マグミット)の添付文書には、併用注意の薬がずらりと並んでいます。ところが、書いてあるのは「同時に服用させないなど注意すること」まで。何時間あければいいのかは、マグミット側には書いてありません。
時間が書いてあるのは、相手の薬の添付文書です。そこで、相手側22品目(処方薬21・OTC1)の添付文書を1つずつ開いて、「どちらを先に飲むか」「何時間あけるか」を並べました。
マグミットの添付文書に書いてあること
マグミット錠の添付文書(10.2 併用注意)は、冒頭でこう断っています。
本剤は吸着作用、制酸作用等を有しているので、他の薬剤の吸収・排泄に影響を与えることがある。
そのうえで、相手の薬を「何が起きるか」で分けて並べています。
| 起きること | 相手の薬(添付文書の記載どおり) | マグミット側の指示 |
|---|---|---|
| 相手の吸収が落ちる(キレート形成) | テトラサイクリン系(テトラサイクリン、ミノサイクリン等)/ニューキノロン系(シプロフロキサシン、トスフロキサシン等)/ビスホスホン酸塩系(エチドロン酸、リセドロン酸等)/ラルテグラビル、エルビテグラビル・コビシスタット・エムトリシタビン・テノホビル ジソプロキシル等 | 同時に服用させないなど注意 |
| 相手の吸収が落ちる(機序不明) | セフジニル、セフポドキシム プロキセチル、ミコフェノール酸モフェチル、ペニシラミン | 同時に服用させないなど注意 |
| 相手の血中濃度が下がる(機序不明) | アジスロマイシン、セレコキシブ、ロスバスタチン、ラベプラゾール、ガバペンチン | (措置の記載なし) |
| 相手の吸収・排泄が変わる | ジギタリス製剤(ジゴキシン等)、鉄剤、フェキソフェナジン | 服用間隔をあけるなど注意 |
| 相手の効果が落ちる | リオシグアト | リオシグアト投与後1時間以上経過してから本剤 |
| 相手の効果が落ちる(機序不明) | ロキサデュスタット、バダデュスタット | (措置の記載なし) |
| 相手の効果が落ちる | ポリカルボフィルカルシウム/ポリスチレンスルホン酸カルシウム・ナトリウム(アルカローシスの報告あり) | (措置の記載なし) |
| 高マグネシウム血症 | 活性型ビタミンD3製剤(アルファカルシドール、カルシトリオール等)、炭酸リチウム | (措置の記載なし) |
| milk-alkali syndrome | 大量の牛乳、カルシウム製剤 | 観察を十分に行い、症状が出たら投与中止 |
| マグミットが効きにくくなる | H2受容体拮抗薬(ファモチジン、ラニチジン、ラフチジン等)、プロトンポンプインヒビター(オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール等) | (措置の記載なし) |
| 下痢が起きやすい | ミソプロストール | (措置の記載なし) |
具体的な時間が書いてあるのはリオシグアトの1行だけです。ほかは「同時に服用させないなど」で止まっています。
何時間あけるか——相手の添付文書で並べる
相手側の添付文書を開くと、時間だけでなく「どちらを先に飲むか」まで書いてある薬があります。順番の書き方で4つに分けました。
| 相手の薬(一般名) | 先に飲む | あける時間(添付文書の記載) |
|---|---|---|
| ① 相手の薬を先に飲み、マグネシウムをあとにする | ||
| アクトネル(リセドロン酸) | アクトネル | 服用後少なくとも30分は多価陽イオン含有製剤を服用しない。8.1でも「服用時刻を変えて服用させること」 |
| フォサマック(アレンドロン酸) | フォサマック | 本剤の服用後少なくとも30分経ってから |
| ボンビバ錠(イバンドロン酸・月1回) | ボンビバ | 本剤の服用後少なくとも60分は服用しない |
| アデムパス(リオシグアト) | アデムパス | 制酸剤は本剤投与後1時間以上経過してから |
| クラビット(レボフロキサシン) | クラビット | アルミニウム又はマグネシウム含有の制酸薬等(酸化マグネシウム等)は本剤投与から1〜2時間後に投与 |
| シプロキサン(シプロフロキサシン) | シプロキサン | 本剤服用後2時間以上あけるなど |
| セフゾン(セフジニル) | セフゾン | Mg・Al含有制酸剤は本剤の投与後2時間以上間隔をあけて投与 |
| ② 前後どちらでもよい(ただし時間が前後で違うものがある) | ||
| エベレンゾ(ロキサデュスタット) | どちらでも | 前後1時間以上 |
| マスーレッド(モリデュスタット) | どちらでも | 前後1時間以上 |
| バフセオ(バダデュスタット) | どちらでも | 本剤の服用前後2時間以上 |
| エナロイ(エナロデュスタット) | 前後で時間が違う | マグネシウムを飲んで3時間後、又はマグネシウムの1時間以上前にエナロイ |
| テビケイ(ドルテグラビル) | 前後で時間が違う | テビケイを、多価カチオン含有制酸剤の2時間前又は6時間後に(推奨) |
| ③ 順番の記載がない | ||
| ミノマイシン(ミノサイクリン) | 記載なし | 両剤の服用間隔を2〜4時間とすること(原文の表記のまま) |
| アイセントレス(ラルテグラビル) | 記載なし | 水酸化Mg・水酸化Al含有制酸剤を本剤投与前後6時間以内に併用すると血漿中濃度が低下する(間隔の指示ではなく、低下が見られた範囲) |
| ④ 時間の記載がない | ||
| オゼックス(トスフロキサシン) | 記載なし | 同時投与を避けるなど |
| バナン(セフポドキシム) | 記載なし | 同時に服用させないなど |
| アレグラ(フェキソフェナジン) | 記載なし | 水酸化Al・水酸化Mg含有製剤と同時に服用させないなど |
| セルセプト(ミコフェノール酸) | 記載なし | Mg・Al含有制酸剤で作用が減弱するおそれ |
| ジゴシン(ジゴキシン) | 記載なし | 水酸化Al・水酸化Mg等の制酸剤で作用を減弱することがある |
「先に飲む」の列が大事です。クラビット・シプロキサン・セフゾン・アクトネル・フォサマック・ボンビバ・アデムパスは、相手を先に飲んでから、マグネシウムをあとにする書き方です。同じニューキノロン・セフェムでも、オゼックスとバナンには順番の記載がありません。マグミットが毎食後で出ている患者に抗菌薬を同じ食後で重ねると、そのままでは同時服用になります。
クラビットと酸化マグネシウムは何時間あける?——吸収が約2割落ちる
時間をあける理由は、数字で示されています。
レボフロキサシン100mg 単回経口投与時に、水酸化アルミニウム(1g)、硫酸鉄(160mg)又は酸化マグネシウム(500mg)を併用投与した場合、レボフロキサシンのバイオアベイラビリティーは単回投与に比較し、それぞれ56%、81%及び78%に減少した。また、Cmaxも有意に低下した。

同じ薬効群でも、時間がそろっていない
「この系統は○時間」と覚えると外れます。HIF-PH阻害薬は5剤で、時間が3通り、記載なしが1剤です。
| HIF-PH阻害薬 | 多価陽イオン含有製剤との間隔 |
|---|---|
| エベレンゾ(ロキサデュスタット) | 前後1時間以上 |
| マスーレッド(モリデュスタット) | 前後1時間以上 |
| バフセオ(バダデュスタット) | 前後2時間以上 |
| エナロイ(エナロデュスタット) | 投与後3時間又は投与前1時間以上 |
| ダーブロック(ダプロデュスタット) | 相互作用の項にマグネシウムの記載なし |
ビスホスホネートも同じです。アクトネルとフォサマックは30分、ボンビバ錠は60分。月1回の薬だけ、待つ時間が倍になっています。
抗HIV薬のラルテグラビルには、もう1つ細かい点があります。濃度低下が報告されているのは水酸化マグネシウム・水酸化アルミニウム含有制酸剤で、添付文書は炭酸カルシウム含有制酸剤については「臨床的に意味のある影響を及ぼさなかった」と書いています(16.7.7)。
逆向きもある——胃薬でマグミットが効きにくくなる
ここまでは「マグネシウムが相手の吸収を落とす」話でした。マグミットのほうが効きにくくなる組み合わせもあります。
H2受容体拮抗薬(ファモチジン、ラニチジン、ラフチジン等)、プロトンポンプインヒビター(オメプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール等) 本剤の緩下作用が減弱するおそれがある。胃内のpH上昇により本剤の溶解度が低下するためと考えられる。
酸化マグネシウムは水にほとんど溶けず、希塩酸に溶けます(添付文書 19)。胃酸を抑えれば溶けにくくなる、という理屈です。添付文書に措置の記載はありませんが、「便が硬いまま」という訴えで増量を相談されたら、先に胃薬の併用を確かめる価値があります。市販のH2ブロッカーを自分で買って飲んでいる患者もいるので、お薬手帳に載っていない薬まで聞くのがポイントです。
OTCのアレグラFXは、処方薬より強く書いている
フェキソフェナジンは、処方薬とOTCで書き方の強さが違います。
| アレグラ錠(処方薬) | アレグラFX(OTC) | |
|---|---|---|
| 記載の場所 | 10.2 併用注意 | してはいけないこと |
| 書き方 | 水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤:同時に服用させないなど慎重に投与 | 本剤を服用している間は、水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤(制酸剤)を使用しないでください |
| 酸化マグネシウム | どちらにも名前はない(マグミット側にはフェキソフェナジンが載っている) | |
花粉の季節に、マグミットを飲んでいる人がアレグラFXを買いに来る場面は珍しくありません。OTCの添付文書は「使用しないでください」まで書いているので、販売時に聞いておく理由になります。
両方の添付文書で、書き方がそろっていない組み合わせ
相互作用は、両方の添付文書に同じ書き方で載っているとは限りません。今回確認した中で、片側にしかない、または名前の書き方が違うものがありました。
- フェキソフェナジン:両側に記載はあるが、書き方が違う。マグミット側は「フェキソフェナジン」と一般名、アレグラ側は「水酸化アルミニウム・水酸化マグネシウム含有製剤」で、「酸化マグネシウム」で探しても見つからない
- 炭酸リチウム:マグミット側に「高マグネシウム血症」。リーマス側の相互作用の項にはマグネシウムの記載がない
監査システムのアラートの出し方は製品ごとに違います。アラートが出なかったことを「問題なし」の根拠にせず、両方の添付文書を開くのが確実です。
時間をあける以外に見ること——高マグネシウム血症
活性型ビタミンD3製剤と炭酸リチウムは、服用のタイミングの話ではなく高マグネシウム血症の組み合わせです(機序は、活性型ビタミンD3がマグネシウムの消化管吸収と腎尿細管での再吸収を促進するため、炭酸リチウムは不明)。
高マグネシウム血症(頻度不明) 呼吸抑制、意識障害、不整脈、心停止に至ることがある。悪心・嘔吐、口渇、血圧低下、徐脈、皮膚潮紅、筋力低下、傾眠等の症状の発現に注意するとともに、血清マグネシウム濃度の測定を行うこと。
そもそもマグミットは、併用の有無にかかわらず長期投与・高齢者では定期的に血清マグネシウム濃度を測定するのが本則です(8.1.2・9.8)。アルファカルシドールが一緒に出ている高齢者では、嘔吐、徐脈、筋力低下、傾眠(8.1.3)を「年のせい」で片づけず、測定しているかを確認するきっかけにします。
服薬時間を組むときのチェックリスト
- ◻️ マグミットではなく相手の薬の添付文書で時間を確認した
- ◻️ どちらを先に飲むかまで確認した(クラビット・シプロキサン・セフゾン・ビスホスホネート3剤・アデムパスは相手が先)
- ◻️ 同じ系統の別の薬の時間で代用していない(HIF-PH阻害薬・ビスホスホネート)
- ◻️ 用法の「食後」が重なっていないか確認し、必要なら処方医に用法を相談した
- ◻️ マグミットの効きが悪いとき、H2ブロッカー・PPI(市販薬を含む)の併用を聞いた
- ◻️ アレグラFXなどのOTCを買う人に、制酸剤・マグネシウム製剤の使用を聞いた
- ◻️ 長期投与・高齢者、活性型ビタミンD3・炭酸リチウム併用で、血清マグネシウムを測っているか確認した
まとめ
- マグミットの添付文書は「同時に服用させないなど」まで。時間は相手の添付文書にある
- 時間は最短30分(ビスホスホネート)〜6時間(抗HIV薬)。順番まで決まっている薬がある
- HIF-PH阻害薬は5剤で時間が3通り+記載なし1剤、ビスホスホネートは30分と60分。系統でまとめて覚えない
- H2ブロッカー・PPIでは、マグミットのほうが効きにくくなる
- OTCのアレグラFXは、制酸剤を「してはいけないこと」に入れている
出典
- マグミット錠100mg・200mg・250mg・330mg・500mg 添付文書(PMDA 731040_2344009F1035_7_06)
- クラビット錠 添付文書(430574_6241013C2024_1_24)/シプロキサン錠(630004_6241008F1023_1_26)/オゼックス(400022_6241010C1024_2_08)
- ミノマイシン(300119_6152005D1108_1_11)/セフゾン(300119_6132013F1038_1_11)/バナン(430574_6132011F1080_1_09)
- アクトネル(111890_3999019F1026_2_20)/フォサマック(181615_3999018F2028_3_02)/ボンビバ錠(400059_3999040F1026_3_02)
- アイセントレス(170050_6250032F1026_2_17)/テビケイ(166272_6250038F1023_1_22)
- アデムパス(630004_2190034F1027_1_13)
- エベレンゾ(800126_3999047F1028_1_08)/マスーレッド(630004_3999055F1022_1_03)/バフセオ(400315_3999050F1020_1_05)/エナロイ(340018_3999052F1029_2_01)/ダーブロック(340278_3999049F1027_1_05)
- アレグラ錠(780069_4490023F1024_1_25)/アレグラFX(PMDA 一般用医薬品 780069_J1201000287_08_01 使用上の注意「してはいけないこと」2)
- セルセプト(450045_3999017B1025_1_17)/ジゴシン(431010_2113003F1057_2_04)/リーマス(670126_1179017F1072_1_11)
