フォシーガの後発品に慢性心不全・慢性腎臓病の適応はありません|効能差のある内服・外用27成分と、選定療養への効き方

医薬品
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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フォシーガの後発品には、1型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病の適応がありません。薬価収載されている7社14品目のすべてです。それどころか後発品の添付文書には「1型糖尿病の患者には投与しないこと」と書かれています。そしてこの「効能差」は、選定療養にするかどうかを薬局が判断できる根拠になります。
14品目フォシーガの後発品(7社)すべて2型糖尿病のみ
4品目ロスバスタチンで家族性高コレステロール血症がない数後発61品目中。残り57品目は持っている
6成分銘柄で分かれる成分(内服・外用)採用銘柄を1回照合すれば済む

このリストは、厚生労働省が名指しで挙げています

まず位置づけから。業界団体の参考資料ではありません。長期収載品の選定療養に関する疑義解釈が、判断材料としてこのリストを名指ししています。

① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。

(※)効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」

つまり「どこで効能差を調べればいいか」に、国が答えを出しているということです。このリストを見ていない、という状態は避けたほうがいいと思います。

効能差には2つのパターンがあります

リストは2部構成です。ここを分けて理解しないと、判断を間違えます。

内容先発品の数
(内服・外用)
実務での意味
Ⅰ先発品のみが特定の効能・用法を持つ16後発品はすべてダメ。成分で覚えられる
Ⅱ先発品と一部の後発品が持つ6銘柄で分かれる。自局の採用品を見ないと分からない

※ JGAリスト2026年10月19日版。注射剤を除き、先発品を製品名で数えました(同じ製品の錠とOD錠などは1つ)。

厄介なのはⅡです。「後発品だからダメ」ではなく、「あのメーカーだけダメ」。頭で覚えられません。

Ⅰ 後発品にはひとつも適応がないもの

16製品のうち、保険薬局で見る機会が多いものを並べます。

先発品後発品にない効能・用法後発品数
フォシーガ錠5mg・10mg①1型糖尿病 ②慢性心不全 ③慢性腎臓病14
フェブリク錠10・20・40mg①痛風、高尿酸血症に対する小児用法50
ネキシウムカプセル10・20mg①〜③1歳以上の幼児及び小児の用法用量(逆流性食道炎の維持療法、NSAIDs・低用量アスピリン投与時の潰瘍再発抑制)16
イグザレルト錠・OD錠10・15mg①Fontan手術施行後における血栓・塞栓形成の抑制18
サムスカ顆粒1%・OD錠7.5・15mg①SIADHにおける低ナトリウム血症の改善16
トビエース錠4・8mg①神経因性膀胱における排尿管理2
イーケプラドライシロップ50%①部分発作に対する生後1か月以上4歳未満の小児てんかん用法9
ロゼックスゲル0.75%①酒さ1
オキシコンチンTR錠5〜40mg①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛4
フェントステープ0.5〜8mg①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛10
デュロテップMTパッチ2.1〜16.8mg/ワンデュロパッチ0.84〜6.7mg①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛25
(3日用20・1日用5)
ヴォリブリス錠2.5mg①小児の用法用量3

並べてみると傾向が見えます。小児の用法用量が多い。ネキシウム、フェブリク、イーケプラDS、ヴォリブリス——後発品が追いついていないのは、たいてい小児です。Ⅱ群のアジルバ(6歳以上の小児の用法用量)とリスパダール(小児期の自閉スペクトラム症)も、小児の差です。

そしてオピオイドの「慢性疼痛」。オキシコンチンTR錠、フェントステープ、デュロテップMTパッチ・ワンデュロパッチは、がん性疼痛の後発品はありますが、慢性疼痛は先発品だけです。非がん性慢性疼痛でこれらが出たら、後発品への変更はできません。

フォシーガは、いちばん見落としやすいと思います

ダパグリフロジンの後発品は2型糖尿病しか持っていません。フォシーガが持つ①1型糖尿病、②慢性心不全、③慢性腎臓病——この3つがありません。薬価収載されている7社14品目のすべてです(TSP・サワイ・EP・トーワ・日新・ニプロ・杏林OD)。

添付文書を開くと、さらに踏み込んで書かれています。

5.1 本剤は2型糖尿病と診断された患者に対してのみ使用し、1型糖尿病の患者には投与しないこと。

「適応がない」ではなく「投与しないこと」です。先発から後発へ変えた瞬間に、禁止に変わります。

ここが危ないのは、処方箋を見ても病名が書いていないからです。「フォシーガ錠10mg 1錠 分1」——2型糖尿病なのか、心不全なのか、CKDなのか、判別できません。

手がかりは併用薬です。循環器の薬が並んでいれば心不全、腎臓の薬が並んでいればCKDの可能性が上がります。SGLT2阻害薬が糖尿病薬から心腎保護薬に軸足を移したことは、こちらの記事で整理しています。

迷ったら聞くのがいちばん早い。「この薬は何のために飲んでいますか」——これだけで判断できます。

ロスバスタチン製剤の効能又は効果の比較。クレストール錠・OD錠は高コレステロール血症と家族性高コレステロール血症の両方、ロスバスタチン錠「三和」「ツルハラ」は高コレステロール血症のみ
PMDA 添付文書「4. 効能又は効果」(いずれも2026年3月改訂)
フォシーガ錠と後発3銘柄の効能・効果の比較。フォシーガは2型糖尿病・1型糖尿病・慢性心不全(標準的な治療を受けている患者に限る)・慢性腎臓病(末期腎不全又は透析施行中の患者を除く)。サワイ・トーワ・TSPはいずれも2型糖尿病のみで、後発にだけ1型糖尿病の患者には投与しないこととの記載。eGFR25未満は臨床試験を実施していない。

Ⅱ 銘柄で分かれるもの——ここが本題です

同じ成分の後発品でも、持っている銘柄と持っていない銘柄があります。そして多くの場合、持っていないほうが少数派です。

先発品効能・用法この効能を持たない後発品
クレストール錠2.5・5mg家族性高コレステロール血症ロスバスタチン錠2.5mg・5mg
「三和」「ツルハラ」(61品目中4品目)
エビリファイ散・錠・OD錠・内用液①双極性障害における躁症状の改善 ②うつ病・うつ状態 ③小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性「タカタ」の細粒・OD錠・内用液(①〜③すべて持たない)、OD錠24mg「オーハラ」
アジルバ錠10・20・40mg6歳以上の小児における用法用量アジルサルタン錠「JG」「サンド」「武田テバ」、OD錠「明治」(42品目中12品目)
リスパダール錠・OD錠・内用液小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性リスペリドン錠0.5・1・2mg「クニヒロ」(39品目中3品目)
ファムビル錠250mg再発性単純疱疹の用法用量(1回1000mgを2回)ファムシクロビル錠250mg「日本臓器」(8品目中1品目)
プログラフカプセル0.5・1mg細胞移植に伴う免疫反応の抑制タクロリムスカプセル0.5mg・1mg「サンド」(20品目中2品目)

ロスバスタチンの後発品はリスト上61品目(19社)あり、家族性高コレステロール血症を持たないのは三和とツルハラの4品目だけです。添付文書を開くと、はっきり分かれます。

クレストール錠/ロスバスタチン錠「トーワ」「DSEP」ほか
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症

ロスバスタチン錠「三和」「ツルハラ」
高コレステロール血症

採用品がその4品目でなければ問題は起きません。逆に採用していれば、家族性高コレステロール血症の患者さんで変更調剤ができません。

表は、JGAリスト2026年10月19日版のⅡ群(内服・外用)の6成分すべてです。ただし銘柄ごとの有無は頻繁に動きます(後発品各社が順次効能追加申請を行うため)。「持たない」銘柄は、成分ごとに1製品以上を添付文書で照合しました。自局の採用品は、必ず添付文書でご確認ください。

だからこの表の使い方は1つです。自局の採用品が、この「持たない」欄に入っているかどうかを確認する。入っていなければ、この件で悩む必要はありません。

やることは1回だけです。
ロスバスタチン・アリピプラゾール・アジルサルタン・リスペリドン・ファムシクロビル・タクロリムス——この6成分の採用銘柄を調べて、上の表と照合する。それで終わりです。

アリピプラゾールだけは注意が要ります。「タカタ」がほぼ全規格で持っていません。細粒・OD錠・内用液まで揃えて採用している薬局は、まとめて該当します(「タカタ」の錠は、令和8年10月14日適用の薬価基準にはもう載っていません)。

効能差が分かると、選定療養と変更調剤の両方が動きます

ここからが制度の話です。効能差は、単なる薬学的な知識ではありません。患者の負担額と、薬剤師の権限に直結します。

① 長期収載品を出しても、選定療養になりません

効能・効果に差異があり、その患者の治療に長期収載品が必要なら、「医療上の必要がある場合」に該当します。選定療養ではなく、従来どおりの保険給付です。

そしてこれは薬局でも判断できます。留意事項通知(令和8年3月27日改正)に、薬剤師が判断する場面が書かれています。

処方の段階では後発医薬品も使用可能としていたが、保険薬局の薬剤師において、患者が服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断した場合には、医療上必要がある場合に該当し、保険給付とすることも想定されること。

一般名処方で患者が長期収載品を希望した場面は、疑義解釈が答えています。

問5 一般名処方された患者が薬局で長期収載品を希望し、薬剤師がその理由を聴取した際に、患者希望ではあるものの、患者の疾病に関し、長期収載品と後発医薬品における効能・効果等の違いがある等の医療上の理由と考えられる場合には、保険薬局の判断で従来通りの保険給付とすることは可能か。

(答)問1の後段に記載する通り。

その「問1の後段」がこれです。疑義照会が要らないと書かれているのは④(剤形の違い)だけで、効能差(①)は「懸念があれば疑義照会」です。

また、保険薬局の薬剤師においては、

・①、②及び③に関して、医療上の必要性について懸念することがあれば、医師等に疑義照会することが考えられ、

・また、④に関しては、医師等への疑義照会は要さず、薬剤師が判断することも考えられる。

つまり、効能差で保険給付にする判断は薬剤師がしてよい。ただしその患者に長期収載品が必要か迷ったら、疑義照会する——これが原文どおりの読み方です。

「患者が先発を希望している」と聞くと、反射的に選定療養にしてしまいがちです。理由を聴いてください。効能差にあたるなら、選定療養にはなりません。

② 後発品処方から先発品への変更調剤は、疑義照会なしでできます

後発品が銘柄名処方されていて「変更不可」欄に記載がない場合。薬剤師が長期収載品を調剤する医療上の必要があると考えるなら——変更調剤に該当しますが、変更そのものに疑義照会は要りません。そのうえで、医療上の必要性の判断は①と同じく問1のとおりです(同 問4)。

変更調剤に該当するところ、「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」(令和6年3月15日厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、当面の間、疑義照会なく、変更調剤できることとしている。

供給不安対応の事務連絡が、ここでも効いています。この事務連絡は剤形変更の壁も外していて、錠剤から散剤への変更調剤も、いまはできます。

③ ただし、変更後の情報提供は必要です

疑義照会をしない場合も、処方元への情報提供は残ります。調剤した薬剤の銘柄等を伝えてください。あらかじめ合意がある医療機関は、その方法で構いません。

効能差を理由に長期収載品にした場合は、その理由も一緒に伝えると次回から処方が変わります。「後発品に慢性心不全の適応がないため」——一言で足ります。

窓口で使う順番

  1. この成分は効能差リストに載っているか載っていなければ、ここで終了。通常どおり
  2. ⅠかⅡかⅠなら後発品はすべて不可。Ⅱなら採用銘柄を確認
  3. 患者の疾患はどれか処方箋では分からない。「何のために飲んでいますか」と聞く
  4. 差のある効能に当たるか当たるなら「医療上の必要がある場合」。選定療養にしない
  5. 調剤して情報提供する迷ったら疑義照会。調剤後は銘柄と理由を処方元へ

このリストの限界も書いておきます

作成元のJGAが、注意書きを付けています。

  • JGAが独自に調査したもので、すべての効能効果等の違いを網羅したものではない
  • 後発品各社が再審査期間・特許期間の満了に伴い、順次効能追加申請を行っている
  • つまりこの表は動きます。本記事は2026年10月19日版です

実務としては、Ⅱ群の6成分だけブックマークしておいて、年に1〜2回リストを見に行くくらいで足りると思います。Ⅰ群は成分単位なので、一度覚えれば当分変わりません。

まとめ

  • リストは2つの群に分かれています。Ⅰ=先発品のみが特定の効能・用法を持つもの、Ⅱ=先発品と一部の後発品が持つもの。Ⅱ群は銘柄単位で確認が要ります
  • フォシーガの後発品には1型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病がない。処方箋では病名が分からないので、患者に聞く
  • Ⅱ群は「持っていないほうが少数派」。ロスバスタチンは61品目中4品目だけ。自局の採用品を1回照合すれば済む
  • 効能差があれば、長期収載品を出しても選定療養にならない。薬局でも判断できる(留意事項通知 第1の3(4))。ただし疑義照会が要らないと明記されているのは剤形の違いだけ。迷ったら疑義照会(疑義解釈 問1・問5)
  • 後発品処方から先発品への変更調剤そのものは、疑義照会なしでできる(疑義解釈 問4・令和6年3月15日事務連絡)。ただし処方元への情報提供は必要
  • 厚労省の疑義解釈が、このJGAリストを名指しで挙げている。調べる場所は決まっている

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

  • 日本ジェネリック製薬協会「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」2026年10月19日版(同版のExcelから内服・外用の行を読み取り。注射剤は除く)
    https://www.jga.gr.jp/medical/confirm-effective.html
  • 各製剤の添付文書(PMDA)※フォシーガと後発7社、クレストールと後発品の効能・効果を個別に照合。フォシーガ錠/クレストール錠/ロスバスタチン錠「三和」/同「ツルハラ」
    ※後発品の照合(2026年10月25日):ダパグリフロジン錠5mg「サワイ」、同OD錠5mg「杏林」、アジルサルタン錠10mg「JG」、リスペリドン錠0.5mg「クニヒロ」、ファムシクロビル錠250mg「日本臓器」、タクロリムスカプセル0.5mg「サンド」と、それぞれの先発品
  • 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト」(令和8年10月14日適用)※フォシーガ後発品の銘柄数・先発後発の区分
    https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html
  • 厚生労働省保険局医療課「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」令和6年7月12日 事務連絡 問1・問4・問5
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275325.pdf
  • 厚生労働省保険局医療課長・歯科医療管理官「「長期収載品の処方等又は調剤について」の一部改正について」令和8年3月27日 保医発0327第9号(同年6月1日適用)別添 第1の3(4)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/15-4.pdf
  • 厚生労働省保険局医療課「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」令和6年3月15日 事務連絡
    https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001229089.pdf

※ 本記事の後発品数と「持たない」銘柄は、JGAリスト2026年10月19日版によるものです。成分ごとに1製品以上を添付文書で照合しました。群ごとの数は、同版の内服・外用(注射剤を除く)の先発品を製品名で数えたものです。
※ JGAのリストは同協会の独自調査であり、すべての効能効果等の違いを網羅したものではありません。個別の判断は、必ず当該製品の最新の添付文書でご確認ください。

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