執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
メトグルコ(メトホルミン)の処方監査で見る検査値はeGFRです。添付文書は腎機能を3つの線で区切っていて、線ごとに「禁忌」「1日最高750mg」「1日最高1,500mg」と扱いが変わります。造影剤とシックデイの決まりも合わせて、添付文書の項目番号つきで整理しました。
eGFRで決まる扱い(添付文書)
| eGFR(mL/min/1.73m²) | 扱い | 1日最高投与量の目安 |
|---|---|---|
| 30未満、または透析(腹膜透析を含む) | 禁忌(2.1、9.2.1) | — |
| 30以上45未満 | 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与(7.、9.2.2) | 750mg |
| 45以上60未満 | 少量より開始し、より頻回に腎機能を確認(7.) | 1,500mg |
| 60以上 | 用量上限の個別規定なし。軽度の腎機能障害(9.2.3)も9.2の注意の対象で、投与中は定期的にeGFRを確認(8.1(1)) | 成人2型糖尿病 2,250mg/10歳以上の小児 2,000mg/多嚢胞性卵巣症候群 1,500mg |
処方箋の検査値欄にeGFRが載っていれば、この表と照らします。添付文書は高齢者について、「血清クレアチニン値が正常範囲内であっても、eGFR等も考慮して」慎重に観察するよう書いています(9.8)。血清クレアチニンだけを見て「正常だから大丈夫」としないための一文です。
ヨード造影剤:検査前に中止、48時間は再開しない
ヨード造影剤を用いて検査を行う患者においては、本剤の併用により乳酸アシドーシスを起こすことがあるので、検査前は本剤の投与を一時的に中止すること(ただし、緊急に検査を行う必要がある場合を除く)。ヨード造影剤投与後48時間は本剤の投与を再開しないこと。なお、投与再開時には、患者の状態に注意すること。
CT(造影)の予定がある患者さんには、検査の予約が入った時点で「検査前に止める・検査後48時間は再開しない」ことを処方医の指示と合わせて確認します。
シックデイと、患者さんに伝えること
添付文書は、投与開始時とその後も、患者と家族に次のことを指導するよう求めています(8.1(3))。
- 過度のアルコール摂取を避ける(アルコールの過度の摂取は併用禁忌、10.1)
- 発熱、下痢、嘔吐、食事摂取不良等の体調不良(シックデイ)の時は、いったん服用を中止し、医師に相談
- 乳酸アシドーシスの症状(胃腸障害、倦怠感、筋肉痛、過呼吸等)があらわれたら、直ちに受診
なお、下痢・嘔吐等の胃腸障害のある患者や経口摂取が困難な患者など、脱水状態が懸念される患者は禁忌です(2.1)。また、利尿作用を有する薬剤(利尿剤、SGLT2阻害剤等)との併用時は、特に脱水に注意するよう書かれています(8.1(2))。メトホルミンとSGLT2阻害薬の組み合わせは多いので、シックデイの説明はセットで行います。
高齢者:75歳以上は「適否を慎重に」
警告(1.2)は、腎機能障害・肝機能障害のある患者、高齢者では定期的に腎機能や肝機能を確認するよう求め、特に75歳以上の高齢者では本剤投与の適否を慎重に判断するとしています。9.8には、承認時までの国内臨床試験で75歳以上への1日1,500mgを超える用量の使用経験は限られているとも書かれています。
知っておきたい効能:多嚢胞性卵巣症候群と、妊婦禁忌の薬を妊娠を目指す人に使う場面
メトグルコには、2022年9月の改訂(第4版)で「多嚢胞性卵巣症候群における排卵誘発」「多嚢胞性卵巣症候群の生殖補助医療における調節卵巣刺激」の効能が加わっています(肥満、耐糖能異常、又はインスリン抵抗性のいずれかを呈する患者に限る)。用法は、他の排卵誘発薬・卵巣刺激薬との併用で1日1回500mgから開始し、1日1,500mgを超えない範囲で、排卵まで(または採卵まで)に中止です。
一方でメトグルコは妊婦又は妊娠している可能性のある女性が禁忌です(2.5、9.5)。妊娠を目指す患者さんに妊婦禁忌の薬を使う場面になるため、添付文書は、各治療周期の投与開始前に妊娠していないことを確認すること、排卵後又は採卵後に服用を継続しないよう服用中止時期を患者に指示することなどを求めています(9.4)。糖尿病を合併する場合は糖尿病の治療を優先し(5.1)、排卵誘発では、ゴナドトロピン製剤を除く排卵誘発薬で十分な効果が得られない場合に併用を考慮する(5.2)とされています。
処方監査のチェックリスト
- □ eGFR 30未満・透析ではないか(禁忌)
- □ eGFR 30以上45未満なら1日750mg以下、45以上60未満なら1,500mg以下か(目安)
- □ 血清クレアチニンが正常でも、高齢者はeGFRで見る
- □ 造影CT等の予定(検査前に中止、48時間再開しない)
- □ シックデイの説明、SGLT2阻害薬・利尿薬との併用時の脱水
- □ 75歳以上(適否を慎重に)
- □ 多嚢胞性卵巣症候群での処方なら、妊娠の可能性と中止時期の説明
まとめ
- eGFR 30未満は禁忌、30〜45は1日750mg、45〜60は1日1,500mgが最高量の目安
- ヨード造影剤は検査前に中止、投与後48時間は再開しない
- シックデイはいったん服用を中止して医師に相談
- 2022年9月に多嚢胞性卵巣症候群の効能が加わった。妊婦は禁忌なので、排卵後・採卵後に続けないよう中止時期を指示
- この記事の数値はメトグルコの添付文書によるもの。メトホルミンの他製品(後発品・別規格)は、効能や記載が異なることがあるので当該製品の添付文書で確認
出典
- メトグルコ錠250mg・500mg 添付文書(PMDA 400093_3962002F2027_1_22、2023年11月改訂 第5版)1.、2.、4.、5.、6.、7.、8.1、9.2、9.4、9.5、9.8、10.1

