DPP-4阻害薬の違い|9成分の用量と腎機能(CCr・eGFR)を添付文書で比較【トラゼンタ・テネリアは記載なし】

DPP-4阻害薬の違い|9成分の用量と腎機能(CCr・eGFR)を添付文書で比較【トラゼンタ・テネリアは記載なし】 医薬品
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

DPP-4阻害薬は9成分。処方監査でいちばん差が出るのは腎機能と用量の関係です。腎機能が落ちても用量調節の記載がない薬もあれば、CCr 50未満で減らす薬、週1回なのに減量がある薬もあります。

9成分(10製品)の添付文書の「6. 用法及び用量」「7. 用法及び用量に関連する注意」を並べました。処方箋の検査値欄(CCr・eGFR・血清クレアチニン)と照らし合わせるときの早見表です。

2成分腎機能による用量調節の記載なしトラゼンタ・テネリア
50未満CCr 50未満から減量する薬ジャヌビア・ネシーナ・オングリザ・ザファテック
eGFRマリゼブだけ基準がeGFR区分のある他の薬はCCr

9成分の用量と腎機能(添付文書)

製品(一般名)通常用量腎機能による調節(7.)
ジャヌビア/グラクティブ(シタグリプチン)50mg 1日1回(100mgまで増量可)中等度 30≤CrCl<50:25mg(最大50mg)/重度・末期腎不全 CrCl<30:12.5mg(最大25mg)
エクア(ビルダグリプチン)50mg 1日2回朝夕(状態により1日1回朝)中等度以上の腎機能障害・透析中の末期腎不全:50mgを1日1回朝に投与するなど慎重に
ネシーナ(アログリプチン)25mg 1日1回中等度 30≤Ccr<50:12.5mg/高度・末期腎不全 Ccr<30:6.25mg
トラゼンタ(リナグリプチン)5mg 1日1回記載なし
テネリア(テネリグリプチン)20mg 1日1回(40mgまで増量可)記載なし
スイニー(アナグリプチン)1回100mg 1日2回朝夕(1回200mgまで)重度・末期腎不全 Ccr<30:100mg 1日1回
オングリザ(サキサグリプチン)5mg 1日1回(状態により2.5mg)中等度以上 Ccr<50:2.5mgに減量すること
ザファテック(トレラグリプチン)100mg 週1回中等度 30≤Ccr<50:50mg 週1回/高度・末期腎不全 Ccr<30:25mg 週1回
マリゼブ(オマリグリプチン)25mg 週1回重度・末期腎不全 eGFR<30:12.5mg 週1回
各添付文書(PMDA)6. 用法及び用量・7. 用法及び用量に関連する注意から。CCrの単位はmL/min、eGFRはmL/min/1.73m²。血清クレアチニンの換算値も併記(ネシーナ・スイニー・オングリザ・ザファテックは年齢60歳・体重65kg、マリゼブは年齢60歳の条件。ジャヌビアは「概ね相当する値」で条件の記載なし)。末期腎不全では、ジャヌビア・ネシーナ・スイニー・ザファテック・マリゼブとも「血液透析との時間関係は問わない」

トラゼンタとテネリアには腎機能の用量調節がない

トラゼンタとテネリアの添付文書には、腎機能による用量調節の記載がありません。薬物動態の項(16.6)には腎機能障害患者のデータがあり、トラゼンタは単回投与後のAUCが健康被験者の約1.3〜1.6倍、テネリアは約1.16〜1.68倍(末期腎不全で約1.16倍)とされています。テネリアは血液透析で投与量の15.6%が除去されたとの報告も記載されています。

腎機能が下がっている患者で、ほかのDPP-4阻害薬からこの2剤に変わったら、用量の調節が要らなくなった理由として理解できます。逆に、この2剤から変更になったときは、変更先の腎機能の基準に照らして用量を確認します。

物差しの違い——CCr・eGFR・血清クレアチニン

  • CCrで区切る:ジャヌビア・ネシーナ・スイニー・オングリザ・ザファテック(各表に血清クレアチニンの換算値つき)
  • eGFRで区切る:マリゼブだけ(eGFR<30、換算値は年齢60歳の条件)
  • 区切りの数値なし:エクア(「中等度以上」で1日1回朝に)。トラゼンタ・テネリアは区分自体がない

減量が始まる線も違います。CCr 50未満から減らすのがジャヌビア・ネシーナ・オングリザ・ザファテック、30未満からなのがスイニー・マリゼブ(eGFR)です。オングリザは区分が1段階で、CCr 50未満なら一律2.5mgです。マリゼブの減量用量は「シミュレーション結果に基づき設定されたもの」で、患者の状態を慎重に観察するよう添えられています(7.1)。

個別に押さえる注意

  • エクア:重度の肝機能障害が禁忌。投与開始前、開始後1年間は少なくとも3ヵ月ごと、その後も定期的に肝機能検査(8.2)
  • テネリア:QT延長を起こしやすい患者に注意(9.1.4。海外臨床試験で160mg 1日1回投与時にQT延長の報告)。クラスⅠA・Ⅲ抗不整脈薬などQT延長を起こすことが知られている薬剤と併用注意
  • ザファテック(週1回):同一曜日に服用。飲み忘れたら気づいた時点で決められた用量のみを服用し、その後は定めた曜日に(7.2)
  • マリゼブ(週1回):飲み忘れたら気づいた時点で1回分、その後は定めた曜日に。同日中に2回分を服用しない(7.3)

9成分に共通して、インスリン製剤・SU剤などとの併用で低血糖に注意し、これらの減量を検討する旨が併用注意に書かれています。

なお、類天疱瘡・急性膵炎・イレウスは、9成分すべての添付文書に記載があります。水疱やびらん、持続的な激しい腹痛、高度の便秘や腹部膨満などは、どのDPP-4阻害薬でも伝える症状です。

処方監査のチェックリスト

  • □ 処方箋の検査値はCCrか、eGFRか、血清クレアチニンか(マリゼブだけeGFR)
  • □ CCr 30~50未満:ジャヌビア25mg(最大50mg)・ネシーナ12.5mg・ザファテック50mg週1回、CCr 50未満のオングリザは2.5mgになっているか
  • □ CCr 30未満:ジャヌビア12.5mg(最大25mg)・ネシーナ6.25mg・オングリザ2.5mg・スイニー100mg 1日1回・ザファテック25mg週1回・マリゼブ12.5mg週1回(eGFR<30)
  • □ エクア:中等度以上の腎機能障害で1日1回朝か。重度の肝機能障害(禁忌)、肝機能検査
  • □ テネリア:QT延長のリスク、抗不整脈薬の併用
  • □ 週1回製剤:服用曜日と飲み忘れ時の説明

まとめ

  • 腎機能による用量調節の記載がないのはトラゼンタ・テネリア
  • CCr 50未満から減量:ジャヌビア・ネシーナ・オングリザ・ザファテック。30未満から:スイニー・マリゼブ
  • マリゼブだけeGFR、区分のあるほかの薬はCCr
  • エクアは重度の肝機能障害が禁忌、テネリアはQT延長に注意

出典

  • 添付文書(PMDA):ジャヌビア 170050_3969010F1034_2_36/グラクティブ 180188_3969010F1026_1_37/エクア 300242_3969011F1020_1_28/ネシーナ 470310_3969012F1025_2_02/トラゼンタ 650168_3969014F1024_1_21
  • テネリア 400315_3969015F1029_2_29/スイニー 300297_3969016F1023_1_12/オングリザ 230124_3969017F1028_1_16/ザファテック 470310_3969024F1028_2_02/マリゼブ 230034_3969025F1022_2_02
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