管理薬剤師になると何が変わるか|条文に「5年」はない、そして意見は書面で述べる義務がある

管理薬剤師になると何が変わるか 条文に「5年」はない、そして意見は書面で述べる義務がある 薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

「管理薬剤師になれば手当がつく」——求人票はそう書きます。ただ、管理薬剤師は役職ではなく、薬機法が定める「立場」です。

5条文には書いていない薬機法は「必要な能力及び経験」とのみ
書面意見を述べる義務「述べることができる」ではない
記録開設者が無視するならその理由まで保存する義務がある
制度は、管理薬剤師の側に武器を与えています。書面で出せば、会社は「対応する」か「対応しない理由を残す」かの二択になります。

この記事では、管理薬剤師になると法的に何が変わるのかを、薬機法の条文と厚生労働省の法令遵守ガイドラインの原文で確認します。引き受ける前に読んでおく内容です。

条文に「5年」とは書いていない

「管理薬剤師には実務経験5年が必要」——よく言われます。これは法律の条文ではありません。

薬機法第7条第3項(令和元年改正後)の条文はこうです。

薬局の管理者は、次条第一項及び第二項に規定する義務並びに同条第三項に規定する厚生労働省令で定める業務を遂行し、並びに同項に規定する厚生労働省令で定める事項を遵守するために必要な能力及び経験を有する者でなければならない。

「必要な能力及び経験」としか書いていません。年数の指定はありません。

では「5年」はどこから来たのか。厚生労働省の法令遵守ガイドラインです。

薬局開設者においては、こうした管理者の選任義務を適切に果たすため、原則として、管理者は薬局における実務経験が少なくとも5年あり、中立的かつ公共性のある団体(公益社団法人薬剤師認定制度認証機構等)により認証を受けた制度又はそれらと同等の制度に基づいて認定された薬剤師であることが重要である。

さらに遡ると、平成26年1月21日付 薬食総発0121第1号「薬局の求められる機能とあるべき姿」でも、管理薬剤師について5年以上の経験や研修の規定が示されていました。

整理するとこうなります。

出どころ内容性質
薬機法 第7条第3項「必要な能力及び経験を有する者」法律上の義務(年数の指定なし)
厚労省 法令遵守ガイドライン原則として実務経験5年以上かつ認定薬剤師行政の指針(「重要である」)

4年目で管理薬剤師になること自体は、違法ではありません。ただしガイドラインが原則を示している以上、選任した開設者の側が説明を求められることになります。「経験が浅いのに任された」と感じたら、それは自分の問題ではなく、開設者の選任責任の問題です。

いちばん重い義務は「書面で意見を述べること」

管理薬剤師の義務としてよく挙がるのは「従業者の監督」「医薬品の管理」ですが、実務でいちばん重いのはこれです。

管理者は、保健衛生上支障を生ずるおそれがないように薬局等の業務を行うために必要があるときは、薬局開設者等に対し、意見を書面により述べなければならない。

「述べることができる」ではなく「述べなければならない」。義務です。そして書面で

ガイドラインは理由も説明しています。

意見申述は、意見の内容が薬局開設者等に明確に示されるとともに、意見申述があったことが記録されるよう、書面により行わなければならない。もちろん、緊急を要する事項についての報告が、一次的に口頭等で行われることを否定するものではない。

口頭で言って終わり、では義務を果たしたことになりません。「言った・言わない」を残さないための書面です。

さらにガイドラインは、受け身でいることも認めていません。

管理者は、自ら主体的かつ積極的に法令遵守上の問題点の把握に努めなければならず、また、薬局等の管理について広く法令遵守上の問題点を把握できるよう、薬局等の業務に従事する者と密接な連携を図らなければならない。

問題を知らなかった、では済まない設計になっています。

開設者側にも義務がある——無視した記録まで残す

ここを知らない管理薬剤師が多い。意見を出したあとは、開設者の義務になります。

薬局開設者等は、管理者の意見を尊重し、法令遵守のために措置を講じる必要があるかどうかを検討しなければならず、措置を講じる必要がある場合は当該措置を講じなければならない。また、講じた措置の内容については記録した上で適切に保存しなければならず、管理者から意見が述べられたにもかかわらず措置を講じない場合は、措置を講じない旨及びその理由を記録した上で適切に保存しなければならない。

意見を無視するなら、「無視した理由」を記録して保存する義務がある。ここが効きます。

人員が足りない、設備が古い、法令上まずい運用がある——書面で意見を出せば、会社は「対応する」か「対応しない理由を記録に残す」かの二択になります。放置という選択肢がなくなる。

ガイドラインは、開設者に意見を受け付ける体制の明確化も求めています。

意見を受け付け、意見を踏まえて措置を講じる必要があるかどうかを検討する責任役員・会議体や、当該措置を講じる責任役員を明示する等、管理者が意見を述べる方法及び薬局開設者等において必要な措置を講じる体制を明確にする必要がある。

「意見はどこに出せばいいですか」と聞いて、答えが返ってこない会社は、この体制ができていません。面接で聞く価値のある質問です。

「店長」がいても、権限は管理薬剤師にある

チェーン薬局でよくある構図です。店長・薬局長・支店長・エリアマネージャーといった肩書の人がいて、管理薬剤師とは別に指示を出す。

ガイドラインは、この点に明確に触れています。

薬局等においては、薬機法に基づく管理者とは別に、「店長」「薬局長」「支店長」等の名称・肩書きを付した者を配置していることがある。このような場合であっても、薬機法上の薬局等の管理に関する権限はあくまで管理者にあることに留意し、その権限や薬局等ごとの業務管理の指揮命令系統を明確にしておく必要がある。

肩書がどうであれ、薬機法上の管理権限は管理薬剤師にあります。そして責任も。

「店長の指示だったので」は、管理薬剤師の免責になりません。逆に言えば、店長の指示が法令上まずいと判断したなら、意見を述べる義務があるのは管理薬剤師のほうです。

エリアマネージャーは「指示者」ではなく「伝達者」

複数店舗を持つ会社には、たいていエリアマネージャーがいます。その役割も、ガイドラインで整理されています。

複数の薬局を開設している場合、開設者に求められるのは次のことです。

  • 複数の薬局を開設しているときは、全ての薬局において法令遵守体制が確保されていることを確認する
  • 開設者を補佐する者(エリアマネージャーなど)を置くときは、その者が行う業務を明らかにする
  • 補佐する者に、管理薬剤師から必要な情報を収集させ、収集した場合は開設者に速やかに報告させる。また開設者からの指示を受けて、管理者に当該指示を伝達する

読むと分かりますが、エリアマネージャーの役割は「管理薬剤師から情報を集めて開設者へ上げる」「開設者の指示を管理薬剤師へ伝える」——つまり伝達です。独自の管理権限を持つ立場としては書かれていません。

そしてエリアマネージャーの監督体制が不十分だった場合、責任が問われるのは開設者と責任役員である、ともガイドラインは述べています。

実務では逆転しがちな部分です。「エリアマネージャーに言われたから」で法令上まずい運用を通してしまうと、管理薬剤師の意見申述義務を果たしていないことになります。

買収・合併された薬局は、リスクが高いとされている

転職先を選ぶうえで、知っておく価値のある記述があります。

薬局開設者等が2以上の許可を受けている場合であって、複数の法人が一つの法人に合併された場合など社内体制に変更があった場合には、社内でも法令遵守体制に係る考え方に相違が見られることなどから、法令遵守上のリスクが高まっている可能性がある。

そして、こう続きます。

形式的に手順書等の社内規程や社内組織を整えるだけでなく、法令遵守のための仕組みが、社内全体で適切に運用されるよう留意しなければならない。(中略)管理者が法令違反の事象について意見を述べやすい環境の整備、薬局開設者等が管理者の意見を受け入れて適切な措置を講じる体制となっていることの社内での十分な周知等を、より徹底して行うことが重要である。

薬局業界は再編が続いています。買収された薬局では、旧会社と新会社で「何がまずいか」の基準が違うことがある。その状態で管理薬剤師を引き受けるなら、意見申述の宛先と方法が新体制で決まっているかを、最初に確認しておくべきです。

なお、買収は調剤基本料の区分にも影響します。同一グループの処方箋受付回数で判定されるため、自分の店舗は何も変わっていないのに区分が下がることがあります。

管理薬剤師の権限として明確化されるもの

ガイドラインは、開設者が管理薬剤師の権限の範囲を明確にし、社内に周知することを求めています。挙げられているのは次の内容です。

  • 薬局に勤務する薬剤師・その他の従業者に対する業務の指示及び監督、その他薬局の管理
  • 医薬品の試験検査及び試験検査の結果の確認
  • 薬局の設備、医薬品その他の物品の管理
  • 薬局の管理に関する事項を記録するための帳簿の記載
  • 特定生物由来製品に関する記録の保存

逆に言えば、これらの権限が与えられていないなら、開設者側が義務を果たしていないということです。「管理薬剤師なのに人員配置に口を出せない」「発注権限がない」——よく聞く話ですが、制度の建て付けとは食い違っています。

書面での意見申述を、実際にどう書くか

「書面で述べなければならない」と言われても、様式は決まっていません。形式より、記録として成立していることが重要です。

最低限そろえたい要素を挙げます。

項目書く内容
日付意見を述べた日。いつ認識していたかの証拠になる
宛先薬局開設者(法人名・代表者名)。会議体があればその名称
事実何が起きているか。評価ではなく事実を先に書く
法令上の問題点どの法令・通知に照らして問題なのか
求める措置「検討してほしい」ではなく、具体的に何をしてほしいか
署名管理薬剤師の氏名

控えを自分でも保管してください。開設者側にも記録・保存の義務がありますが、退職後に手元に残るのは自分の控えだけです。

メールでも構いません。ガイドラインは「書面により」としか求めておらず、内容が明確に示され、意見申述があったことが記録されることが目的だからです。むしろメールのほうが日時が残ります。

言いにくいことを書く場面もあります。ただ、これは告発ではなく、法令が管理薬剤師に課している通常業務です。ガイドラインが「忌憚なく述べることが求められる」と明記し、開設者側には「意見を述べやすい環境の整備」を求めている以上、意見を出したことを理由に不利益な扱いをするのは、体制側の問題になります。

引き受ける前に確認すること

  • ◻️ 管理薬剤師の権限の範囲が、社内で文書化されているか——ガイドラインが求めているもの
  • ◻️ 意見を書面で出す宛先と方法が決まっているか——責任役員か会議体か
  • ◻️ 過去に管理薬剤師から意見が出た実績があるか——ゼロなら機能していない
  • ◻️ 店長・エリアマネージャーとの指揮命令系統が明確か
  • ◻️ 手当の額だけでなく、負う義務の内容を理解したか
  • ◻️ 近年に買収・合併があったか——あるなら新体制での意見申述の方法を確認する
  • ◻️ その薬局の届出内容を確認したか(求人票の読み方の記事を参照)

手当の額で判断しない

管理薬剤師手当が月3万円か5万円か。求人を比べるときはそこに目が行きます。

ただ、手当が0円でも、負う義務は同じです。薬機法は手当の額を条件にしていません。

だから見るべきは金額ではなく、その義務を果たせる環境があるかどうかです。

  • 意見を書面で出す先が決まっているか
  • 出した意見に、記録が残る仕組みがあるか
  • 権限の範囲が文書になっているか

これらが整っていない薬局で管理薬剤師を引き受けると、責任だけを負うことになります。手当5万円でも割に合いません。

逆に、体制が整っている薬局なら、書面での意見申述は現場を変える手段になります。会社は「対応する」か「対応しない理由を記録する」かを選ばざるを得ない。制度は、管理薬剤師の側に武器を与えています。

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