執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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「登録医しか処方できない」の根拠は承認条件です
通知でも保険ルールでもありません。製造販売承認そのものに付いた条件です。
21.1 本剤の安全性及び有効性を十分に理解し、本剤の使用に関して適切かつ十分な指導ができる医師のみによって本剤が処方・使用されるよう、本剤を納入する前に予め講習を実施する等の適切な措置を講じること。
21.2 本剤の適正使用を推進するため、本剤の未使用製剤を回収できるよう必要な措置を講じること。
21.1が登録医制度、21.2が回収の仕組みです。この2つが、エピペンの流通と交付のかたちを決めています。
登録医情報は、薬局の薬剤師にも提供されます
ここは意外と知られていないと思います。製造販売元が公表している文書に、はっきり書かれています。
速やかに製品をお届けする目的で、ご提供いただいている以下の登録医個人情報を、当社製品を取り扱う代理店、特約店、医療機関および保険薬局の薬剤師へ以下の方法で提供いたします。
● 提供する情報の項目:氏名、施設名、診療科、施設住所、電話番号
● 提供の手段、方法:電子媒体、紙媒体、口頭
つまり、処方医が登録医かどうかは薬局側で確認できます。提供先に代理店・特約店が入っているので、取引のある卸に聞くのが早い方法です。
実務上これが効くのは、初めての医療機関からエピペンの処方箋が来たときです。発注の前に確認しておけば、「取り寄せたのに納品されない」を避けられます。
規格は体重で決まります
| 規格 | 対象体重 | 有効期間 | 薬価 |
|---|---|---|---|
| エピペン注射液0.15mg | 15kg以上30kg未満が目安 | 20ヵ月 | 9,672円 |
| エピペン注射液0.3mg | 30kg以上 | 24ヵ月 | 10,197円 |
薬価は令和8年10月14日適用の薬価基準収載品目リストによる。
推奨用量は0.01mg/kgです。ここから逆算すると、0.15mg製剤は15kg、0.3mg製剤は30kgが下限になります。
0.01mg/kgを超える用量、すなわち、体重15kg未満の患者に本剤0.15mg製剤、体重30kg未満の患者に本剤0.3mg製剤を投与すると、過量となるおそれがあるので、副作用の発現等に十分な注意が必要であり、本剤以外のアドレナリン製剤の使用についても考慮する必要があるが、0.01mg/kgを超える用量を投与することの必要性については、救命を最優先し、患者ごとの症状を観察した上で慎重に判断すること。
読み方が大事なところです。「過量になるから打つな」とは書いていません。「救命を最優先し」と書いてあります。体重が足りないから使えない、ではありません。
有効期間が規格で違うのも見落としやすい点です。0.15mgは20ヵ月、0.3mgは24ヵ月。体重が増えて0.15mgから0.3mgに切り替わった患者は、次の期限が4ヵ月ぶん先になります。

交付前に説明すべきことは、添付文書に列挙されています
「14. 適用上の注意」の冒頭が、こう始まります。
本剤を処方する医師は以下の内容について正しく理解するとともに、患者に交付する際には、患者、保護者又はそれに代わり得る適切な者に以下の内容を必ず交付前に説明すること。
「必ず交付前に」です。渡してから説明する、ではありません。
主語は「本剤を処方する医師」です。一方で薬局の薬剤師にも、調剤したときは「必要な情報を提供し、及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」義務があります(薬剤師法第25条の2)。交付するのは薬局なので、この列挙は薬局で確認する項目のリストとしてそのまま使えます。以下、列挙されている内容を整理します。
① 保管——15〜30℃、ケースに入れたまま
- 15℃〜30℃で保存することが望ましい。冷所又は日光のあたる高温下等に放置しない(14.1.5)
- 光で分解しやすいため、携帯用ケースに収められた状態で保存する(14.1.4)
- 外箱開封後は遮光して保存する(20.)
冷蔵庫はダメです。「大事な薬だから冷蔵庫へ」は起こりがちなので、先に言っておいてください。逆に、夏の車内も避ける必要があります。
② 定期的に見る——変色と沈殿
アドレナリンは空気又は光によって徐々に褐色となる性質があります。だから「変色していたり、沈殿物が認められたりしないか定期的に確認する」と書かれています(14.1.2)。
携帯用ケースには窓があります。「月に1回、窓から中の色を見てください」——具体的に言うと続きます。
③ 打ち方——大腿部の前外側、衣服の上からでよい
| 内容 | |
|---|---|
| 部位 | 大腿部の前外側。尻や身体の他の部分に注射しない(14.3.2) |
| 衣服 | 緊急時には衣服の上からでも注射可能(14.3.2) |
| 手順 | ケースのふたを開けて取り出す → 青色の安全キャップを外す → 投与部位を押さえる → オレンジ色のニードルカバー先端を数秒間強く押し付ける(14.3.1) |
| 成功の合図 | オレンジ色のニードルカバーが伸びる(14.3.1) |
| 安全キャップ | 注射を必要とする時まで、絶対に外さない(14.2.1) |
| 誤注射 | 指や手をニードルカバー先端にあてない。誤注射したら直ちに医療機関を受診(14.3.4) |
「衣服の上からでよい」は、必ず伝えてください。脱がせようとして時間を失うのがいちばん怖い。
そして投与部位が動くと、針が曲がって抜けなくなるおそれがあります(14.3.3)。小児では、押さえる人が要るという話につながります。
④ 打ったあと——1.7mL残るのは正常です
本剤は投与量を安定化するため、1管中2mLの薬液が封入されているが、投与されるのは約0.3mLであり、注射後にも約1.7mLの薬液が注射器内に残るように設計されていることから、残液の量をみて投与しなかったと誤解するおそれがあるので注意すること。
これは説明しておかないと、必ず混乱します。2mL入っていて0.3mLしか出ない。8割以上残る設計です。
そして一度注射すると、再度注射しても薬液が放出しない仕組みです(14.4.2)。「まだ残っているからもう一度」はできません。
使用後は必ず医療機関を受診すること(警告1.3)。エピペンは補助治療であって、医療機関での治療に代わるものではありません。
⑤ 使用後・不要になったら、医療機関等へ提出
14.1.3に「本剤を使用した場合あるいは使用する必要がなくなった場合には、医療機関等へ本剤を提出すること」とあります。承認条件21.2の回収がここにつながります。
家庭ゴミに出す薬ではありません。期限切れも同じです。使わずに済んだときこそ、回収の話を思い出してもらう必要があります。
使い方は、メーカーの資材を渡すのがいちばん早いです
ここまで添付文書の手順を追いましたが、文章で読んで打てるようになる人はいません。絵と動画が要ります。
ヴィアトリス製薬が公式サイトで資材を公開しています。薬局で作る必要はありません。
| 資材 | 対象 | 入手先 |
|---|---|---|
| エピペン ガイドブック(日本語) | 患者さん・ご家族 | PDF(epipen.jp) |
| エピペン ガイドブック(英語版) | 患者さん・ご家族 | PDF(epipen.jp) |
| 使用情報 | 患者さん・ご家族 | PDF(epipen.jp) |
| 使い方(実践編) | 誰でも | epipen.jp |
| 動画・関連資料の一覧 | 患者・家族/教職員・保育士/救急救命士/医療関係者 | epipen.jp |
| 患者指導用ツール | 医療関係者 | Viatris e Channel |
実務で効くのは、この3点だと思います。
- 英語版のガイドブックがあります外国人の患者さん・保護者に、その場で渡せます
- 教職員・保育士・救急救命士向けのページもあります学校や保育所に預ける場面が多い薬です。「園の先生にはこれを見てもらってください」と案内先を持っておくと話が早い
- QRコードにして薬袋に貼れます紙は失くします。使い方のページをQRにして貼っておけば、いざというときスマホで開けます
もうひとつ、「重要なお知らせ通知プログラム」という無償の登録制度があります。登録した使用期限の約1カ月前に、期限切れを知らせるメールが届く仕組みです(ハガキで受け取る方法もあります)。エピペンは有効期間が20〜24か月と短く、期限管理が要る薬なので、案内する価値があります。
ただし、資材を渡すことは説明の代わりになりません。添付文書の14章は処方医に「必ず交付前に説明すること」を求めていて、薬剤師には薬剤師法第25条の2の情報提供・指導の義務があります。口で伝えて、資材は持ち帰って復習してもらう。この順番です。
併用薬でいちばん怖いのは、効かなくなる組み合わせです
副作用が増える組み合わせより、いざというときに効かない組み合わせのほうが問題です。
| 併用薬 | 何が起きるか |
|---|---|
| 抗精神病薬(ブチロフェノン系、フェノチアジン系、イミノジベンジル系、ゾテピン、リスペリドン) α遮断薬 | 本剤の昇圧作用の反転により、低血圧があらわれることがある α遮断作用でβ刺激作用が優位になるため |
| 非選択性β遮断薬 プロプラノロール、カルベジロール等 | 相互の薬剤の効果が減弱する。血圧上昇、徐脈があらわれることがある |
| 三環系抗うつ薬、SNRI、MAO阻害薬、メチルフェニデート | 本剤の作用が増強。血圧の異常上昇 |
| 利尿剤(チアジド系、チアジド系類似剤、ループ利尿剤、スピロノラクトン) | 本剤の作用が減弱することがある 本剤の血管反応性を低下させることがある |
| 甲状腺製剤/ジギタリス製剤/キニジン | 冠不全発作/異所性不整脈/心室細動 |
| 【併用禁忌】カテコールアミン製剤、アドレナリン作動薬 | 不整脈、場合により心停止。ただし蘇生等の緊急時はこの限りでない |
抗精神病薬とα遮断薬は「昇圧作用の反転」です。血圧を上げるつもりが下がる。アナフィラキシーの場面でこれは深刻です。リスペリドンが名指しされている点も押さえてください。
β遮断薬も定番です。効果が減弱します。アナフィラキシーの既往がある患者にβ遮断薬が出たら、処方医が把握しているか確認する価値があります。利尿剤も「本剤の作用が減弱することがある」と書かれています(10.2)。高血圧の薬として一緒に出ていることが多いので、見落としやすい組み合わせです。
もうひとつ。エピペンには亜硫酸塩(ピロ亜硫酸ナトリウム)が入っています。「喘息患者では非喘息患者よりも亜硫酸塩に対する過敏症が多く認められるとの報告がある」(15.1)。喘息のある患者さんでは、頭の隅に置いておく話です。
交付までの手順
- 処方医が登録医か確認する初めての医療機関なら発注前に。登録医情報は薬局にも提供されるので卸に確認できる
- 体重を確認する15kg/30kgが規格の分かれ目。規格が体重に合っているかを見る
- 有効期限を確認して発注する0.15mgは20ヵ月、0.3mgは24ヵ月。期限の長いものを
- 交付前に説明する保管(15〜30℃・遮光・ケースのまま)/打ち方(大腿部前外側・衣服の上から可)/1.7mL残るのは正常/使用後は必ず受診/不要になったら医療機関等へ提出
- トレーナーで練習してもらう警告1.2が「練習用エピペントレーナーを用い、日頃から本剤の使用方法について訓練しておくよう指導すること」としている
- 併用薬を見るβ遮断薬・利尿剤・抗精神病薬・α遮断薬があれば、効き方が変わる
- 次回の期限を伝える期限が来る前に新しい製品の処方を受けるよう指導(14.1.1)
打つタイミングも、添付文書が示しています
本剤の注射時期については、次のような目安も参考とし、注射時期を遺失しないよう注意すること。
・初期症状が発現し、ショック症状が発現する前の時点。
・過去にアナフィラキシーを起こしたアレルゲンを誤って摂取し、明らかな異常症状を感じた時点。
ショックになってからではなく、なる前です。「様子を見る」がいちばん危ない。
初期症状は患者ごとに違います(5.1)。しびれ感、違和感、口唇の浮腫、気分不快、吐き気、嘔吐、腹痛、じん麻疹、咳込みなど。だから「この人の場合はどんな症状から始まるか」を聴き取っておくことが、交付時の指導に含まれています。
まとめ
- 登録医しか処方できない根拠は承認条件21.1。そして登録医情報は保険薬局の薬剤師にも提供されるので、薬局で確認できる
- 規格は体重で決まる。0.15mgは15kg以上、0.3mgは30kg以上。下回ると過量だが、添付文書は「救命を最優先し」と書いている
- 有効期間は0.15mgが20ヵ月、0.3mgが24ヵ月。規格で違う
- 注射後に約1.7mL残るのは正常。8割以上残る設計。二度打ちはできない
- 保存は15〜30℃。冷蔵庫はダメ。光で分解するので携帯用ケースに入れたまま
- 大腿部の前外側。衣服の上からでよい。成功の合図はオレンジ色のニードルカバーが伸びること
- β遮断薬・利尿剤で効果減弱、抗精神病薬・α遮断薬で昇圧作用が反転。効かなくなる組み合わせのほうが怖い
- 使用後も、使わずに不要になった場合も、医療機関等へ提出。家庭ゴミではない
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株式会社メディカルリソースが運営する薬剤師専門サービスです(2000年設立)。転職だけでなく「派遣」を扱っているのが特徴で、有料職業紹介(13-ユ-010743)と労働者派遣(派13-010770)の両方の許可を持っています。拠点は全国12支店。運営元は日本調剤グループです——選ぶ材料になるので書いておきます。
「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。
※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
出典
- ヴィアトリス製薬「エピペン注射液0.15mg/0.3mg 添付文書」2026年3月改訂(第6版)。承認番号 21700AMY00081/21500AMY00115
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00050569.pdf - ヴィアトリス製薬「エピペン注射液 登録医情報の取り扱いについて(受諾医師控え)」
https://med.epipen.jp/pdf/EPI_TourokuiJouhou.pdf - 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト(注射薬)」令和8年10月14日適用
https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html
※ 本記事は薬剤師向けの整理です。実際の交付・指導は最新の添付文書と処方医の指示に従ってください。
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