執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
スタチンの処方で、処方箋の検査値欄のCK(クレアチンキナーゼ)が基準値より高い。このとき「何倍なら中止か」を添付文書で探しても、数字は書かれていません。クレストール・リピトール・リバロの添付文書は、ミオパチーについて「著明なCKの上昇があらわれた場合には投与を中止すること」と書くところまでです。
数字の目安は、日本動脈硬化学会の「スタチン不耐に関する診療指針2018」にあります。指針は、CKが基準値上限の4倍・10倍のどこにあるかと、筋症状の有無を組み合わせて、A〜Dの4区分で対応を分けています。この記事では、添付文書と指針を並べて、処方箋のCK値を見たときに確認することを整理します。
添付文書に書いてあること:数字はなく、症状とセット
| 項目 | クレストール | リピトール | リバロ |
|---|---|---|---|
| 横紋筋融解症(11.1) | 「筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とする横紋筋融解症」。急性腎障害等の重篤な腎障害があらわれることがあり、このような場合は投与を中止 | ||
| ミオパチー(11.1) | 広範な筋肉痛、高度な脱力感や著明なCKの上昇で中止 | 広範な筋肉痛、筋肉圧痛や著明なCKの上昇で中止 | 広範な筋肉痛、筋肉圧痛や著明なCKの上昇で中止 |
| 免疫介在性壊死性ミオパチー(11.1) | 近位筋脱力、CK高値、抗HMG-CoA還元酵素(HMGCR)抗体陽性等。投与中止後も持続する例が報告されている | ||
| 横紋筋融解症が起きやすい患者(9.1) | 甲状腺機能低下症、遺伝性の筋疾患(またはその家族歴)、薬剤性の筋障害の既往、アルコール中毒。リピトール・リバロは高齢者も(9.8) | ||
| フィブラート系との併用(9.2) | 腎機能検査値に異常がある患者では「治療上やむを得ないと判断される場合にのみ」併用。やむを得ず併用する場合は定期的に腎機能検査等を行い、自覚症状、CK上昇、ミオグロビン上昇、血清クレアチニン上昇等を認めたら直ちに投与を中止 | ||
| 用量に関する注意(7.) | CCr 30mL/min/1.73m²未満は2.5mgから、1日最大5mg | ― | 4mgに増量する場合は、CK上昇・ミオグロビン尿・筋肉痛・脱力感等に注意(7.2)。小児は運動の頻度や強度、CK上昇に注意(9.7.1) |
| 定期検査の指示(8.) | 8.に定期検査として書かれているのは肝機能(開始・増量後12週までの間など)と血中脂質で、CKの定期測定の指示はない。CKが出てくるのは、上のフィブラート併用時やリバロ4mg増量時などの「注意」の中 | ||
添付文書は、CKを筋肉痛・脱力感・ミオグロビン上昇などの症状と一緒に書いています。CKの数字だけで判断する作りにはなっていません。
指針2018:CK×筋症状で4区分
指針は、スタチンが原因と考えられる筋症状(筋肉の痛み、つり、こわばり、違和感など)をSAMS(スタチン関連筋症状)と呼びます。そのうえで、CKが基準値上限(ULN)の何倍かと組み合わせて区分します(5.1.4、図1-2)。
| CK(基準値上限との比) | 筋症状なし | 筋症状あり |
|---|---|---|
| 4倍未満 | A | B |
| 4倍以上10倍未満 | B | C |
| 10倍以上 | C | D |
| 区分 | 指針の位置づけと対応(要約) |
|---|---|
| A | 正常、または検査データだけの異常。スタチン継続が可能 |
| B | 軽度の筋有害事象。筋症状を許容できれば継続、または減量して継続。2〜4週間後に再評価し、C・Dに悪化すれば中止。許容できなければ中止して4〜6週間休薬し、再評価。A・Bなら別のスタチンを開始できるが、C・Dに悪化するようなら中止 |
| C | 中等度の筋有害事象。継続の必要性が高い場合に限り、筋症状を許容できれば継続または減量して継続。悪化しそうなら2〜4週間、またはそれより短い間隔で再評価。許容できなければ中止して4〜6週間休薬し、再評価。A・Bに改善すれば別のスタチンを開始できるが、C・Dならスタチンを中止し、脂質代謝専門医へ |
| D | 重篤な筋有害事象。すぐにスタチンを中止し、横紋筋融解症・ミオパチーへの進行に注意。今後の脂質管理は脂質代謝専門医へ |
指針は、CKの倍数の基準そのものについて「その根拠は明確ではなく1つの目安に過ぎない」とも書いています。目安としての実数は、4倍未満がおよそ500 IU/L未満、4倍以上10倍未満がおよそ500〜2,000 IU/L、10倍以上がおよそ2,000 IU/L以上です(5.1.3)。CKの基準値は筋肉量で違い、指針は男性50〜200、女性40〜170 IU/Lとしています。施設の基準値上限が違えば、倍数で見直します。
CKが高いとき、まず確かめること
指針は、CKは激しい運動や筋肉内注射で上昇し、数日間は影響が残るとしています。CKが上がっていたら、採血前にそうした出来事がなかったかを確認し、後日できるだけ安静にしてから再検するのが望ましいとしています(5.1.3、図1-2)。窓口で「採血の前に運動や力仕事をしたか」「筋肉注射を受けたか」を聞くのは、この確認にあたります。
測るタイミングも書かれています。スタチンを新しく始めるとき、休薬後に再開するときは、事前にCKを測るべきとされています。理由は、甲状腺機能低下症などを背景にした無症候性の高CK血症や、潜在的な筋疾患を除外できるからです。開始後は初回を4週間後を目安に、その後も随時測るのが望ましいとされています(5.1.3)。筋症状は開始から4〜6週間以内に出ることが多く、増量や別のスタチンへの変更のあとにも新たに出ることがあります。同じスタチンを一度中止してから再開した場合は、早期に出ることが多いとされています(5.1.2)。
重い筋障害のサイン
| 病態 | 指針の記載 |
|---|---|
| 横紋筋融解症 | スタチン服用者の0.001%。数日で進行し、広範な筋肉痛、把握痛、倦怠感、筋力低下、発熱。CKはしばしば基準値上限の40倍以上(およそ10,000 IU/L以上)。赤色尿(コーラ色尿)なのに尿沈渣で赤血球を認めないミオグロビン尿。急性腎不全に注意 |
| スタチン関連ミオパチー(免疫介在性壊死性ミオパチーに含まれる) | スタチンを中止しても四肢・体幹の筋力低下が数か月かけて進行。高齢者に多い。CKの平均は5,000 IU/L程度。抗HMGCR抗体が検出される |
「スタチンをやめたのに力が入らないままだ」という相談は、添付文書の「投与中止後も持続する例」(11.1)と指針のスタチン関連ミオパチーにあたる可能性があります。受診をすすめる理由になります。
起きやすい患者と併用薬
指針は筋障害の危険因子として、高齢女性、小柄な体格、アジア人、腎機能障害、甲状腺機能低下症、アルコール多飲、外科手術などを挙げています。注意すべき併用薬として、アゾール系抗真菌薬、マクロライド系抗菌薬、プロテアーゼ阻害薬、ベラパミル、ジルチアゼム、アミオダロン、ワルファリン、シクロスポリンを挙げています(図1-2の注)。
添付文書の側では、シクロスポリンはクレストールとリバロで併用禁忌(2.)です。リピトールの併用禁忌はグレカプレビル・ピブレンタスビルで、シクロスポリンは併用注意(AUCが8.7倍に上昇したとの報告、10.2)です。フィブラート系は3剤とも併用注意で、腎機能検査値に異常がある患者では「治療上やむを得ないと判断される場合にのみ」併用です(9.2)。
スタチンを変えて再開するときについて、指針は「薬物代謝系の異なるスタチンを、低用量から」投与するのが望ましいとしています。隔日投与で筋症状やCK値の上昇が抑えられたという報告にも触れています(図1-2の注)。隔日の処方を見たら、こうした経緯の可能性があります。
処方監査のチェックリスト
- □ 処方箋の検査値欄のCKを、施設の基準値上限で割って何倍かを見る(4倍・10倍が指針の区切り)
- □ 筋肉の痛み・だるさ・脱力、尿の色(コーラ色)を聞く。CKの数字だけで判断しない
- □ 採血前の運動・力仕事・筋肉注射がなかったか
- □ 開始・増量・変更・再開からの時期(筋症状は4〜6週間以内が多く、同じスタチンの再開では早期に出やすい)
- □ 甲状腺機能低下症、腎機能障害、飲酒、高齢女性などの背景
- □ 併用薬:シクロスポリン(クレストール・リバロは禁忌)、フィブラート系、アゾール系、マクロライド系など
- □ 中止後も筋力低下が続いていないか
まとめ
- スタチンの添付文書には、CKの中止基準の数字はない(「著明なCKの上昇」まで)。8.の定期検査は肝機能と脂質で、CKはフィブラート併用時やリバロ4mg増量時などの注意の中に出てくる
- 数字の目安は日本動脈硬化学会「スタチン不耐に関する診療指針2018」:CKが基準値上限の4倍・10倍と筋症状の有無でA〜D
- 10倍以上かつ筋症状あり(D)はすぐ中止。Bは許容できれば継続・減量して2〜4週間で再評価、Cは継続の必要性が高い場合に限り継続・減量。許容できなければ中止して4〜6週間休薬
- CKは運動・筋注で上がる。安静にしてから再検
- CKの測定は開始前・再開前と、開始後は初回4週間後が目安
- 横紋筋融解症はCKがしばしば40倍以上。中止後も進む筋力低下は免疫介在性壊死性ミオパチーを考える
本記事は医療従事者向けに、各先発品の添付文書と学会の指針の記載を整理したものです。後発品は当該製品の添付文書を確認してください。継続・中止の判断は処方医が行います。
出典
- 日本動脈硬化学会 スタチン不耐診療指針作成ワーキンググループ「スタチン不耐に関する診療指針2018」5.1.2〜5.1.5、図1-2(https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/statin_intolerance_2018.pdf)
- クレストール錠・OD錠 添付文書(PMDA 670227_2189017F1022_1_33、2026年3月改訂 第7版)2.、7.、8.、9.1、9.2、11.1
- リピトール錠 添付文書(PMDA 671450_2189015F1023_2_06、2026年5月改訂 第7版)2.、8.、9.1、9.2、9.8、10.2、11.1
- リバロ錠 添付文書(PMDA 270072_2189016F1028_1_38、2023年7月改訂 第3版)2.、7.2、8.、9.1、9.2、9.7.1、9.8、11.1
