執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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このリストは、厚生労働省が名指しで挙げています
まず位置づけから。業界団体の参考資料ではありません。長期収載品の選定療養に関する疑義解釈が、判断材料としてこのリストを名指ししています。
① 長期収載品と後発医薬品で薬事上承認された効能・効果に差異がある場合(※)であって、当該患者の疾病に対する治療において長期収載品を処方等する医療上の必要があると医師等が判断する場合。
(※)効能・効果の差異に関する情報が掲載されているサイトの一例
PMDAの添付文書検索サイト
日本ジェネリック製薬協会が公開する「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」
つまり「どこで効能差を調べればいいか」に、国が答えを出しているということです。このリストを見ていない、という状態は避けたほうがいいと思います。
効能差には2つのパターンがあります
リストは2部構成です。ここを分けて理解しないと、判断を間違えます。
| 内容 | 成分数 (内服・外用) | 実務での意味 | |
|---|---|---|---|
| Ⅰ | 先発品のみが特定の効能・用法を持つ | 17 | 後発品はすべてダメ。成分で覚えられる |
| Ⅱ | 先発品と一部の後発品が持つ | 10 | 銘柄で分かれる。自局の採用品を見ないと分からない |
厄介なのはⅡです。「後発品だからダメ」ではなく、「あのメーカーだけダメ」。頭で覚えられません。
Ⅰ 後発品にはひとつも適応がないもの
17成分のうち、保険薬局で見る機会が多いものを並べます。
| 先発品 | 後発品にない効能・用法 | 後発品数 |
|---|---|---|
| フォシーガ錠5mg・10mg | ①1型糖尿病 ②慢性心不全 ③慢性腎臓病 | 12 |
| フェブリク錠10・20・40mg | ①痛風、高尿酸血症に対する小児用法 | 50 |
| ネキシウムカプセル10・20mg | ①〜③1歳以上の幼児及び小児の用法用量(逆流性食道炎の維持療法、NSAIDs・低用量アスピリン投与時の潰瘍再発抑制) | 16 |
| イグザレルト錠・OD錠10・15mg | ①Fontan手術施行後における血栓・塞栓形成の抑制 | 18 |
| サムスカ顆粒1%・OD錠7.5・15mg | ①SIADHにおける低ナトリウム血症の改善 | 16 |
| トビエース錠4・8mg | ①神経因性膀胱における排尿管理 | 2 |
| イーケプラドライシロップ50% | ①部分発作に対する生後1か月以上4歳未満の小児てんかん用法 | 5 |
| ロゼックスゲル0.75% | ①酒さ | 1 |
| オキシコンチンTR錠5〜40mg | ①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛 | 4 |
| フェントステープ0.5〜8mg | ①中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛 | 10 |
| ヴォリブリス錠2.5mg | ①小児の用法用量 | 3 |
並べてみると傾向が見えます。小児の用法用量が多い。ネキシウム、フェブリク、イーケプラDS、アジルバ、ヴォリブリス——後発品が追いついていないのは、たいてい小児です。
そしてオピオイドの「慢性疼痛」。オキシコンチンTR錠とフェントステープは、がん性疼痛の後発品はありますが、慢性疼痛は先発品だけです。非がん性慢性疼痛でこれらが出たら、後発品への変更はできません。
フォシーガは、いちばん見落としやすいと思います
ダパグリフロジンの後発品は2型糖尿病しか持っていません。フォシーガが持つ①1型糖尿病、②慢性心不全、③慢性腎臓病——この3つがありません。薬価収載されている7社14品目のすべてです(TSP・サワイ・EP・トーワ・日新・ニプロ・杏林OD)。
添付文書を開くと、さらに踏み込んで書かれています。
5.1 本剤は2型糖尿病と診断された患者に対してのみ使用し、1型糖尿病の患者には投与しないこと。
「適応がない」ではなく「投与しないこと」です。先発から後発へ変えた瞬間に、禁止に変わります。
ここが危ないのは、処方箋を見ても病名が書いていないからです。「フォシーガ錠10mg 1錠 分1」——2型糖尿病なのか、心不全なのか、CKDなのか、判別できません。
手がかりは併用薬です。循環器の薬が並んでいれば心不全、腎臓の薬が並んでいればCKDの可能性が上がります。SGLT2阻害薬が糖尿病薬から心腎保護薬に軸足を移したことは、こちらの記事で整理しています。
迷ったら聞くのがいちばん早い。「この薬は何のために飲んでいますか」——これだけで判断できます。
Ⅱ 銘柄で分かれるもの——ここが本題です
同じ成分の後発品でも、持っている銘柄と持っていない銘柄があります。そして多くの場合、持っていないほうが少数派です。
| 先発品 | 効能・用法 | この効能を持たない後発品 |
|---|---|---|
| クレストール錠2.5・5mg | 家族性高コレステロール血症 | ロスバスタチン錠2.5mg・5mg 「三和」「ツルハラ」(33銘柄中4銘柄) |
ロスバスタチンの後発品は33銘柄あり、家族性高コレステロール血症を持たないのは4銘柄だけです。添付文書を開くと、はっきり分かれます。
クレストール錠/ロスバスタチン錠「トーワ」「DSEP」ほか
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
ロスバスタチン錠「三和」「ツルハラ」
高コレステロール血症
採用品がその4銘柄でなければ問題は起きません。逆に採用していれば、家族性高コレステロール血症の患者さんで変更調剤ができません。
Ⅱ群にはほかにもアリピプラゾール、リスペリドン、アジルサルタン等が挙がっています。ただし銘柄ごとの有無は頻繁に動きます(後発品各社が順次効能追加申請を行うため)。本記事では、添付文書で個別に確認できたものだけを表に載せています。自局の採用品は、必ず添付文書でご確認ください。
だからこの表の使い方は1つです。自局の採用品が、この「持たない」欄に入っているかどうかを確認する。入っていなければ、この件で悩む必要はありません。
ロスバスタチン・アリピプラゾール・リスペリドン・アジルサルタン・ファムシクロビル——この5成分の採用銘柄を調べて、上の表と照合する。それで終わりです。
アリピプラゾールだけは注意が要ります。「タカタ」がほぼ全規格で持っていません。細粒・錠・OD錠・内用液まで揃えて採用している薬局は、まとめて該当します。
効能差が分かると、選定療養と変更調剤の両方が動きます
ここからが制度の話です。効能差は、単なる薬学的な知識ではありません。患者の負担額と、薬剤師の権限に直結します。
① 長期収載品を出しても、選定療養になりません
効能・効果に差異があり、その患者の治療に長期収載品が必要なら、「医療上の必要がある場合」に該当します。選定療養ではなく、従来どおりの保険給付です。
そしてこれは薬局が判断できます。一般名処方で患者が長期収載品を希望した場面についても、疑義解釈がはっきり答えています。
問5 一般名処方された患者が薬局で長期収載品を希望し、薬剤師がその理由を聴取した際に、患者希望ではあるものの、患者の疾病に関し、長期収載品と後発医薬品における効能・効果等の違いがある等の医療上の理由と考えられる場合には、保険薬局の判断で従来通りの保険給付とすることは可能か。
(答)問1の後段に記載する通り。(=薬剤師が判断でき、疑義照会は要さない)
「患者が先発を希望している」と聞くと、反射的に選定療養にしてしまいがちです。理由を聴いてください。効能差にあたるなら、選定療養にはなりません。
② 後発品処方から先発品へ、疑義照会なしで変更できます
後発品が銘柄名処方されていて「変更不可」欄に記載がない場合。薬剤師が長期収載品を調剤する医療上の必要があると考えるなら——変更調剤に該当しますが、疑義照会は要りません。
変更調剤に該当するところ、「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」(令和6年3月15日厚生労働省保険局医療課事務連絡)において、当面の間、疑義照会なく、変更調剤できることとしている。
供給不安対応の事務連絡が、ここでも効いています。この事務連絡は剤形変更の壁も外していて、錠剤から散剤への変更調剤も、いまはできます。
③ ただし、変更後の情報提供は必要です
疑義照会が不要でも、処方元への情報提供は残ります。調剤した薬剤の銘柄等を伝えてください。あらかじめ合意がある医療機関は、その方法で構いません。
効能差を理由に長期収載品にした場合は、その理由も一緒に伝えると次回から処方が変わります。「後発品に慢性心不全の適応がないため」——一言で足ります。
窓口で使う順番
- この成分は効能差リストに載っているか載っていなければ、ここで終了。通常どおり
- ⅠかⅡかⅠなら後発品はすべて不可。Ⅱなら採用銘柄を確認
- 患者の疾患はどれか処方箋では分からない。「何のために飲んでいますか」と聞く
- 差のある効能に当たるか当たるなら「医療上の必要がある場合」。選定療養にしない
- 調剤して情報提供する疑義照会は不要。銘柄と理由を処方元へ
このリストの限界も書いておきます
作成元のJGAが、注意書きを付けています。
- JGAが独自に調査したもので、すべての効能効果等の違いを網羅したものではない
- 後発品各社が再審査期間・特許期間の満了に伴い、順次効能追加申請を行っている
- つまりこの表は動きます。本記事は2026年8月27日版です
実務としては、Ⅱ群の5成分だけブックマークしておいて、年に1〜2回リストを見に行くくらいで足りると思います。Ⅰ群は成分単位なので、一度覚えれば当分変わりません。
まとめ
- リストは2つの群に分かれています。Ⅰ=先発品のみが特定の効能・用法を持つもの、Ⅱ=先発品と一部の後発品が持つもの。Ⅱ群は銘柄単位で確認が要ります
- フォシーガの後発品には1型糖尿病・慢性心不全・慢性腎臓病がない。処方箋では病名が分からないので、患者に聞く
- Ⅱ群は「持っていないほうが少数派」。ロスバスタチンは33銘柄中4銘柄だけ。自局の採用品を1回照合すれば済む
- 効能差があれば、長期収載品を出しても選定療養にならない。薬局が判断できる(疑義解釈 問1・問5)
- 後発品処方から先発品への変更も、疑義照会なしでできる(令和6年3月15日事務連絡)。ただし処方元への情報提供は必要
- 厚労省の疑義解釈が、このJGAリストを名指しで挙げている。調べる場所は決まっている
あわせて読みたい
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- 【SGLT2阻害薬 完全解説】糖尿病から心・腎保護まで担う新時代の薬剤を読み解く
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「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。
※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
出典
- 日本ジェネリック製薬協会「効能効果、用法用量等に違いのある後発医薬品リスト」2026年8月27日版(本記事は同版のExcelを全件解析)
https://www.jga.gr.jp/medical/confirm-effective.html - 各製剤の添付文書(PMDA)※フォシーガと後発7社、クレストールと後発品の効能・効果を個別に照合。フォシーガ錠/クレストール錠/ロスバスタチン錠「三和」/同「ツルハラ」
- 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト」(令和8年8月13日適用)※銘柄数・先発後発の区分
https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html - 厚生労働省保険局医療課「長期収載品の処方等又は調剤の取扱いに関する疑義解釈資料の送付について(その1)」令和6年7月12日 事務連絡 問1・問4・問5
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001275325.pdf - 厚生労働省保険局医療課「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」令和6年3月15日 事務連絡
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001229089.pdf
※ 本記事に載せた銘柄数・効能の有無は、すべて当該製剤の添付文書で個別に確認したものです。JGAリストは参照の入口として用い、リスト全体の成分数の集計は行っていません(同リストは結合セルを含み、機械的な集計が正確に行えないため)。
※ JGAのリストは同協会の独自調査であり、すべての効能効果等の違いを網羅したものではありません。個別の判断は、必ず当該製品の最新の添付文書でご確認ください。

