葛根湯に多形紅斑が追加されました|医療用12銘柄と一般用が同日改訂、根拠は国内6例と、かぜとの鑑別が難しい理由

医薬品
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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2026年8月25日、葛根湯の「使用上の注意」に多形紅斑が追加されました。医療用だけではありません。一般用も同じ日に、3つの別紙に分けて改訂されています。合わせて4件。根拠になった国内症例は6例です。そして厄介なのは、多形紅斑がかぜそのものでも起こるという点でした。
6例根拠になった国内症例うち因果関係が否定できない4例・死亡0例
4件同日に出た改訂指示医療用1件・一般用3件
2週間好発時期服用後2週間以内の発症が多い

4件が同時に出ています

通知は医薬安発0825第1号(令和8年8月25日)。この1本の中に、葛根湯が4か所出てきます。

別紙区分対象改訂箇所
14医療用葛根湯(漢方製剤)11.1 重大な副作用に追記
26一般用葛根湯含有製剤(かぜ薬。生薬のみからなる製剤を除く)「相談すること」の既存の欄に追記
27一般用葛根湯エキスにジリュウエキス又はビタミン類を配合した製剤「相談すること」に新設
28一般用葛根湯(一般用漢方製剤)「相談すること」に新設

処方箋で来るものも、棚で売るものも、同時に変わりました。薬局とドラッグストアの両方が対象です。

葛根湯エキスの添付文書。11.1.4に多形紅斑(頻度不明)が改訂マーク付きで加わり、従来からの偽アルドステロン症・ミオパチー・肝機能障害と並んで重大な副作用に記載されている
PMDA 添付文書「オースギ葛根湯エキスG」(2026年8月改訂 第2版)

医療用は「重大な副作用」に入りました

【薬効分類】520 漢方製剤 【医薬品名】葛根湯

【措置内容】以下のように使用上の注意を改めること。

11. 副作用 11.1 重大な副作用
現行:(新設) → 改訂案:多形紅斑

対象は12銘柄です。PMDAの調査報告書に、販売名と承認取得者が全部並んでいます。

販売名製造販売元販売開始
ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)ツムラ1986年10月
クラシエ葛根湯エキス細粒クラシエ1986年10月
クラシエ葛根湯エキス錠T大峰堂薬品工業1986年10月
コタロー葛根湯エキス細粒小太郎漢方製薬1986年10月
三和葛根湯エキス細粒三和生薬1986年11月
ジュンコウ葛根湯FCエキス細粒 医療用康和薬通1986年10月
〔東洋〕葛根湯エキス細粒東洋薬行1986年12月
オースギ葛根湯エキスG大杉製薬1986年10月
オースギ葛根湯エキスT錠大杉製薬1987年10月
JPS葛根湯エキス顆粒〔調剤用〕ジェーピーエス製薬1987年10月
太虎堂の葛根湯エキス顆粒太虎精堂製薬1986年11月
本草葛根湯エキス顆粒−M本草製薬1986年10月

全銘柄が1986〜87年の発売です。40年使われてきて、いま重大な副作用が1つ増えたことになります。

そして添付文書はもう書き換わっています。PMDAの品目ページで確認したところ、12銘柄すべてが2026年8月25日付(クラシエ葛根湯エキス錠Tのみ8月26日付)で改訂済みでした。「これから変わる」ではありません。

一般用は、製剤のタイプで3つに分かれています

ここが今回いちばん見落としやすいところです。OTCの葛根湯は1種類ではありません。

別紙28:葛根湯(一般用漢方製剤)

いわゆる「ツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A」のような、葛根湯そのものです。ここは欄ごと新設されました。

相談すること/まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は直ちに医師の診療を受けること。

現行:(新設)

改訂案:多形紅斑|皮膚が広い範囲で赤くなる、水疱が皮膚の赤い部分にあらわれる、高熱、のどの痛み等が持続したり、急激に悪化する。

別紙27:ジリュウエキス又はビタミン類を配合したもの

葛根湯エキスにジリュウ(地竜)やビタミン類を足した製剤です。こちらも新設で、文言は別紙28と同じです。

別紙26:葛根湯含有製剤(かぜ薬)——ここだけ書き方が違います

薬効群が「かぜ薬(生薬のみからなる製剤を除く)」。葛根湯に解熱鎮痛成分などを配合した総合感冒薬です。すでにある欄に挟み込む形で改訂されました。

現行|皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死融解症、急性汎発性発疹性膿疱症※

改訂案|皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症※

症状の記述にも追記:高熱、目の充血、目やに、唇のただれ、のどの痛み、皮膚の広範囲の発疹・発赤、水疱が皮膚の赤い部分にあらわれる、赤くなった皮膚上に小さなブツブツ(小膿疱)が出る※、全身がだるい※、食欲がない※等が持続したり、急激に悪化する。

※アセトアミノフェンを含有する製剤のみ

別紙26はSJS・中毒性表皮壊死融解症と同じ欄に置かれました。並びを見れば、どういう重みで扱われているかが分かります。

PMDAの報告書には、一般用の例としてツムラ漢方葛根湯エキス顆粒A(ツムラ)とプレコールエース顆粒(田村薬品工業)が挙がっています。「他一般用医薬品」と続くので、この2つに限りません。

伝える一文は「水疱が皮膚の赤い部分にあらわれる」です

今回の改訂で、症状の記述にもこの一行が足されています。別紙26・27・28のすべてに入りました。

ただの発疹と多形紅斑を分けるのが、ここです。厚労省の重篤副作用疾患別対応マニュアルは、他覚症状をこう書いています。

多発する紅色丘疹で始まり、拡大して境界の明瞭な類円形の紅斑となり癒合する。紅斑の中心に水疱およびびらんをみる。紅斑が環状または標的状の部分は隆起性である(typical targets または raised atypical targets と表現される)。

「赤い斑点の真ん中に水ぶくれができる」。これが的(まと)のように見えるので標的状と呼ばれます。患者さんに伝えるなら、この一言で足ります。

好発時期は「服用後2週間以内」です

原因医薬品の服用後2週間以内に発症することが多いが、数日以内あるいは1ヶ月以上服用してから発症することもある。

早期に認められる症状:医薬品服用後の境界明瞭な紅斑、紅斑の中央部に形成される水疱、多形紅斑重症型(erythema multiforme [EM] major)では発熱、両眼の結膜充血や口唇の発赤

医療関係者は、急激な皮疹の拡大を認めた場合や全身症状・粘膜症状を伴う場合、スティーヴンス・ジョンソン症候群の恐れがあるため、早急に入院設備のある皮膚科の専門機関に紹介する。

両眼の結膜充血と口唇の発赤が、重症型(EM major)のサインです。ここが出たらSJSとの鑑別が要ります。

今回の改訂の根拠も、この重症型でした。PMDAの報告書は、集計対象をこう定義しています。

※:医薬品医療機器総合機構における副作用等報告データベースに登録された医療用医薬品及び一般用医薬品の症例のうち、多形紅斑重症型(EM major)に該当するPT「多形紅斑」、「薬疹」の症例

医療用と一般用を合わせて数えています。だから改訂も両方に出ました。ここが今回の構造です。

かぜとの鑑別が難しい——ここが本題です

葛根湯は、かぜのひきはじめに飲みます。そして多形紅斑は、かぜを起こす病原体そのものでも発症します。

多形紅斑は薬剤に対する反応のほか、感染、自己免疫疾患、妊娠、寒冷刺激、内臓悪性腫瘍など様々な原因で発症する。特にマイコプラズマや連鎖球菌などの細菌感染や単純ヘルペスウイルス感染に伴う多形紅斑は、しばしば薬剤性の多形紅斑との鑑別が必要となる。薬剤の摂取時期と症状の出現時期との関係を注意深く問診する。

並べてみると、重なり方がよく分かります。

薬剤性(葛根湯)感染性
きっかけかぜ症状で服用マイコプラズマ・溶連菌・単純ヘルペス
発症時期服用後2週間以内が多い感染の経過中
皮疹どちらも標的状の紅斑・中心に水疱

かぜをひいた人が葛根湯を飲み、その2週間以内に紅斑が出る。薬のせいか、感染のせいか、見た目では分かりません。

だから「薬剤の摂取時期と症状の出現時期との関係を注意深く問診する」と書かれています。いつから飲んで、いつ出たか。これを記録するのが薬局の仕事になります。

そして、この鑑別の難しさは数字にも表れています。

6例(うち、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例 4例)/転帰死亡 0例

6例のうち「因果関係が否定できない」と評価されたのが4例です。残る2例がどう評価されたか(否定されたのか、情報が足りず評価できなかったのか)は、報告書には書かれていません。その4例の集積を受けて、改訂になりました。

マニュアルの推定原因医薬品の並びにも、「感冒薬」が入っています。抗菌薬・解熱消炎鎮痛薬に続く3番目です。

甘草の副作用とは、別の話です

葛根湯で気をつけることといえば、これまでは甘草でした。医療用の添付文書の「11.1 重大な副作用」は、改訂後こう並んでいます(ツムラ葛根湯エキス顆粒(医療用)2026年8月改訂 第2版)。

11.1 重大な副作用添付文書・マニュアルの記載
11.1.1 偽アルドステロン症「8.2 本剤にはカンゾウが含まれているので、血清カリウム値や血圧値等に十分留意すること」
11.1.2 ミオパチー「低カリウム血症の結果として」(甘草由来)
11.1.3 肝機能障害、黄疸—
11.1.4 多形紅斑今回追加。マニュアルは発症機序を「免疫・アレルギー反応により発症すると考えられている」と書いています

甘草の副作用は「量と期間」の話です。他の漢方との併用で甘草が積み上がっていないか、長期に飲んでいないか。そこを見ます。

多形紅斑は違います。マニュアルの好発時期は「服用後2週間以内」で、「数日以内」の発症もあります。ひきはじめに数日飲んだだけでも起こりえます。「短期間だから大丈夫」が通用しません。見るべき点が1つ増えた、ということです。

漢方エキス製剤そのものの扱いは漢方エキス錠は一包化していいのか|メーカーの安定性データを実際に見て判断するにまとめています。

葛根湯の重大な副作用は偽アルドステロン症・ミオパチー・肝機能障害黄疸に多形紅斑が加わり4つ。15.1に湿疹皮膚炎等が悪化することがあるとの記載。麻黄側の併用注意はマオウ含有製剤・エフェドリン類・プソイドエフェドリン配合剤・MAO阻害剤・甲状腺製剤・カテコールアミン・キサンチン系。狭心症や重症高血圧、排尿障害、甲状腺機能亢進症は悪化のおそれ。

窓口と売場で言うこと

  1. 渡すとき「赤い斑点の真ん中に水ぶくれが出たら、飲むのをやめて連絡してください」。1文で足ります
  2. 目と唇を足す両目が充血する・唇がただれるが出たら重症型のサイン。すぐ受診と伝える
  3. いつから飲んだかを記録する感染性との鑑別が服用時期と発症時期の関係で決まります。薬歴に開始日を残す
  4. OTCも同じ売場の葛根湯・葛根湯配合のかぜ薬も対象。登録販売者にも共有する
  5. 2週間を目安にする飲み始めて2週間以内が好発。かぜが治ったあとに出ることもある

薬局でやること

  • ◻️ 医療用の葛根湯の添付文書を差し替えた(12銘柄・2026年8月25日付で改訂済み)
  • ◻️ 薬情・説明文書の副作用欄に多形紅斑が反映されているかレセコンで確認した
  • ◻️ 売場の葛根湯(OTC)と葛根湯配合のかぜ薬を洗い出した
  • ◻️ 登録販売者に共有した(別紙26〜28の3タイプがあること)
  • ◻️ 「赤い斑点の真ん中に水ぶくれ」を説明の定型文に入れた
  • ◻️ 薬歴に服用開始日を残す運用にした(感染性との鑑別に要る)
  • ◻️ 葛根湯以外の甘草を含む漢方との併用も、あわせて棚卸しした

まとめ

  • 2026年8月25日、葛根湯に多形紅斑が追加されました。医薬安発0825第1号。医療用1件・一般用3件の計4件が同日
  • 医療用は12銘柄。添付文書はもう改訂済みです(2026年8月25日付。1銘柄のみ26日付)
  • 一般用は3タイプに分かれています。葛根湯そのもの/ジリュウ・ビタミン配合/かぜ薬。かぜ薬だけはSJS・中毒性表皮壊死融解症と同じ欄に入りました
  • 見分ける記述は「水疱が皮膚の赤い部分にあらわれる」。赤い斑点の真ん中に水ぶくれ=標的状
  • 両眼の結膜充血・口唇の発赤は重症型(EM major)のサイン。SJSとの鑑別が必要
  • 好発は服用後2週間以内。数日以内も1か月以上もありえます
  • 多形紅斑はマイコプラズマ・溶連菌・単純ヘルペスでも起こります。かぜで飲む薬なので鑑別が難しい。服用開始日を記録することが効きます
  • 根拠は国内6例(うち因果関係が否定できない4例)、死亡0例。医療用と一般用を合わせて数えています
  • 甘草の副作用とは別枠。量と期間の話ではないので、「短期間だから大丈夫」は通りません

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

※ 本記事は2026年8月30日時点で、PMDAが公開している改訂指示通知・調査報告書・添付文書情報の原文に基づいて作成しています(2026年10月28日再確認:医療用12銘柄の添付文書はすべて2026年8月改訂版で、11.1に多形紅斑あり)。
※ 一般用医薬品は製品ごとに配合成分が異なります。手元の製品がどの別紙に当たるかは、外箱の成分表示でご確認ください。
※ 個々の症例の判断は主治医・皮膚科専門医の診療によります。本記事は添付文書改訂の内容を整理したものです。

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