免疫の注射薬を標的別に整理しました|薬局から出せるかは告示第十第一号で決まる、投与間隔で対象外になる4製剤【生物学的製剤シリーズ①】

免疫の注射薬を標的別に整理しました|薬局から出せるかは告示第十第一号で決まる、投与間隔で対象外になる4製剤【生物学的製剤シリーズ①】 医薬品
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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免疫の注射薬が増えました。標的が違うのに適応が重なり、名前も似ています。整理の軸は「何を止めるか」と、もうひとつ——「薬局から出せるか」です。後者は告示で決まっていて、ペン製剤があるのに院外処方できない薬が2つあります。そして投与間隔が延びた瞬間に対象外になる薬が4つあります。
12系統標的で分けた数TNF・IL-6・IL-17・IL-23ほか
4製剤投与間隔で対象外になる維持期に入ると出せなくなる
2製剤ペンがあるのに告示にないスキリージ・ステラーラ

出せるかどうかは、告示で決まっています

先に、いちばん実務に効く話から。注射薬は、処方箋で出せるものが限定列挙されています。

療担規則第二十条第二号ト及び療担基準第二十条第三号トの厚生労働大臣が定める保険医が投与することができる注射薬

インスリン製剤、ヒト成長ホルモン剤、……エタネルセプト製剤、……アダリムマブ製剤、……セクキヌマブ製剤、……(以下列挙)

ここに名前がない注射薬は、患者さんに渡して自宅で使ってもらうことができません。院内で医師が打つぶんは別の話ですが、院外処方箋で薬局から交付できるのは、このリストに載っているものだけです。

つまり「自己注射できる形になっているか」と「保険で出せるか」は、別の問題です。ペン型でもオートインジェクターでも、告示になければ出せません。

標的別の地図

告示に載っている免疫系の注射薬を、何を止めるかで並べます。標的はすべて添付文書の「薬効分類名」で確認しました。薬価は令和8年8月13日適用、代表的な規格のものです。

標的一般名販売名薬価(代表規格)
TNFαエタネルセプト
※抗体ではなく可溶性レセプター製剤。LTα(リンホトキシンα)も阻害
エンブレル14,591円(50mgペン)
アダリムマブヒュミラ40,275円(40mgペン)
セルトリズマブペゴルシムジア53,942円(200mg)
ゴリムマブシンポニー100,813円(50mg)
オゾラリズマブナノゾラ111,521円(30mg)
IL-6受容体トシリズマブアクテムラ32,608円(162mg)
サリルマブケブザラ45,596円(200mg)
サトラリズマブエンスプリング1,152,032円(120mg)
T細胞共刺激アバタセプトオレンシア19,068円(125mg)
IL-17
A/受容体A/A・F
セクキヌマブ
IL-17A
コセンティクス138,249円(300mgペン)
イキセキズマブトルツ148,952円(80mg)
ブロダルマブ
IL-17受容体A(A・F・A/F・IL-25・IL-17Cを遮断)
ルミセフ73,508円(210mg)
ビメキズマブ
IL-17A/IL-17F/※投与間隔の条件あり
ビンゼレックス156,820円(160mg)
IL-23p19グセルクマブ
※投与間隔の条件あり
トレムフィア339,253円(200mgペン)
ミリキズマブオンボー123,561円(100mg)
IL-4/13受容体デュピルマブデュピクセント53,659円(300mgペン)
IL-13トラロキヌマブアドトラーザ41,859円(300mgペン)
レブリキズマブイブグリース50,782円(250mg)
IL-31RAネモリズマブミチーガ116,009円(60mg)
IL-5メポリズマブヌーカラ159,891円(100mg)
ベンラリズマブ
※投与間隔の条件あり
ファセンラ351,731円(30mgペン)
IgEオマリズマブ
※季節性アレルギー性鼻炎は対象外
ゾレア21,260円(150mgペン)
TSLPテゼペルマブテゼスパイア170,987円(210mgペン)
BLySベリムマブベンリスタ26,873円(200mg)
Ⅰ型IFN受容体アニフロルマブサフネロー24,932円(120mg)
α4β7インテグリンベドリズマブエンタイビオ69,888円(108mg)
CD20オファツムマブケシンプタ230,860円(20mg)

エンスプリング1本115万円。視神経脊髄炎スペクトラム障害の薬です。同じIL-6を止めるアクテムラの35倍あります。標的が同じでも、値段はまったく別物です。

片頭痛のCGRP関連薬も、同じ告示に並んでいます。免疫の薬ではありませんが、薬局から出す高額な皮下注という点では同じ扱いです。

標的一般名販売名薬価
CGRPガルカネズマブエムガルティ42,400円(120mg)
フレマネズマブ
※4週間に1回投与の場合に限る
アジョビ38,856円(225mg)
エレヌマブ
※3剤で唯一「CGRP受容体」に結合
アイモビーグ38,842円(70mg)
告示107号 第十 一の括弧書きによる限定。フレマネズマブは4週間に1回投与する場合に限る、ビメキズマブ・ベンラリズマブ・グセルクマブは4週間を超える間隔で投与する場合を除く、エダラボンはALS患者に限る、オマリズマブは季節性アレルギー性鼻炎を除く
平成18年厚生労働省告示第107号 第十 一

投与間隔が延びると、対象外になります

ここが今回いちばんお伝えしたい点です。告示には、括弧書きの条件が付いた製剤があります。

製剤告示の条件
ビメキズマブ(ビンゼレックス)四週間を超える間隔で投与する場合を除く
ベンラリズマブ(ファセンラ)四週間を超える間隔で投与する場合を除く
グセルクマブ(トレムフィア)四週間を超える間隔で投与する場合を除く
フレマネズマブ(アジョビ)四週間に一回投与する場合に限る
オマリズマブ(ゾレア)季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く

この3剤は、導入期は4週ごと、維持期になると8週ごとという使い方をします。すると何が起きるか。

維持期に入った時点で、告示の「四週間を超える間隔」に該当します。同じ患者・同じ薬なのに、途中から院外処方で出せなくなります。

アジョビは逆向きです。「四週間に一回投与する場合に限る」——3か月に1回まとめて打つ用法だと、対象から外れます。

薬の名前だけで判断できません。投与間隔まで見る必要があります。処方箋を受けたときに確認する項目が、1つ増えるということです。

告示で4週超が除かれる製剤の、効能別の投与間隔。ファセンラは気管支喘息が以降8週間隔だが好酸球性多発血管炎性肉芽腫症と好酸球増多症候群は4週間隔のまま。トレムフィアは乾癬系が8週間隔、潰瘍性大腸炎クローン病は200mgを4週間隔も可。ビンゼレックスは16週以降も4週間隔を選べる。アジョビは4週に1回225mgか12週に1回675mg。

ペンがあるのに、院外処方できない2剤

告示を全件つき合わせて、載っていないものを探しました。IL-23阻害薬に2つあります。

一般名販売名自己注射用の剤形告示第十第一号
リサンキズマブスキリージシリンジ・ペン・オートドーザーあり記載なし
ウステキヌマブ
※標的はIL-12/23p40(他3剤はIL-23p19)
ステラーラシリンジあり(後続品も)記載なし
グセルクマブトレムフィアシリンジ・ペンあり(4週超は除く)
ミリキズマブオンボーシリンジ・オートインジェクターあり

スキリージにはオートドーザーまであります。患者さんが自分で打つための設計です。それでも告示に名前がないので、院外処方箋では出せません。

トレムフィア・オンボー・スキリージは、いずれもIL-23のp19サブユニットを標的にしています(添付文書の薬効分類名で確認)。同じIL-23p19を止める薬なのに、トレムフィアとオンボーは出せて、スキリージは出せない。薬理では説明がつきません。告示に載ったかどうかという、それだけの違いです。

なおステラーラだけは標的が違います。薬効分類名は「ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤」——IL-23だけでなくIL-12も止めます。ひとくくりに「IL-23阻害薬」と呼ばれることがありますが、添付文書の分類は別です。

告示は改正されます。ここは毎回リストを見に行くしかありません。

適応が重なるのは、この3か所です

「どれを選ぶか」で悩むのは、標的が違うのに同じ病気に使う場面です。大きく3つあります。

気管支喘息——標的が5つとも違います

販売名標的薬価告示
ゾレアIgE21,260円○(鼻炎は除く)
ヌーカラIL-5159,891円○
ファセンラIL-5受容体α351,731円△ 4週超は除く
デュピクセントIL-4/13受容体53,659円○
テゼスパイアTSLP170,987円○

5剤で標的が5つとも違います。そして薬価はゾレアとファセンラで16倍の開きがあります。ここは第2回で詳しくやります。

アトピー性皮膚炎——IL-13が2剤あります

販売名標的薬価
デュピクセントIL-4/13受容体(IL-4とIL-13の両方を止める)53,659円
アドトラーザIL-1341,859円
イブグリースIL-1350,782円
ミチーガIL-31受容体A(かゆみ)116,009円

ミチーガだけ狙いが違います。IL-31はかゆみを伝える経路です。炎症そのものではなくかゆみを止める設計になっています。4剤とも告示にあり、投与間隔の条件はありません。

乾癬——IL-17系とIL-23系

系統販売名告示
IL-17Aコセンティクス○
トルツ○
IL-17受容体Aルミセフ○
IL-17A/IL-17Fビンゼレックス△ 4週超は除く
IL-23p19トレムフィア△ 4週超は除く
スキリージ× 記載なし
IL-12/23p40ステラーラ× 記載なし

乾癬がいちばん複雑です。IL-17系は4剤とも出せますが、ビンゼレックスだけ維持期で外れます。IL-23p19系は3剤中2剤が出せず、ステラーラ(IL-12/23p40)も出せません。

バイオ後続品があるのは6成分です

薬価差が大きいので、ここも押さえておきます。

成分先発バイオ後続品差
アダリムマブ
40mgペン
ヒュミラ
40,275円
「FKB」
15,584円
約2.6倍
エタネルセプト
50mgペン
エンブレル
14,591円
「TY」「日医工」
9,924円
約1.5倍
オマリズマブ
150mgシリンジ
ゾレア
20,822円
「CT」
14,602円
約1.4倍
ゴリムマブ
50mgシリンジ
シンポニー
108,577円
「F」
67,615円
約1.6倍
ウステキヌマブ
45mgシリンジ
ステラーラ
192,647円
「F」
131,440円
約1.5倍
トシリズマブ点滴静注のみ(皮下注の後続品はなし)

ヒュミラとアダリムマブBSで、1本あたり24,691円の差。2週間に1回なら、年間で60万円を超えます。

令和8年度改定で新設された加算はバイオ後続品調剤体制加算(使用体制加算)|算定要件と対象品目にまとめています。

処方箋を受けたときに見る順番

  1. 告示第十第一号にあるかなければ院外処方できません。スキリージ・ステラーラは記載なし
  2. 括弧書きの条件が付いていないかビンゼレックス・ファセンラ・トレムフィアは4週を超える間隔だと対象外。アジョビは4週に1回のときだけ
  3. 投与間隔を処方箋で確認する導入期か維持期かで変わります。薬の名前だけでは決まりません
  4. バイオ後続品があるか6成分にあり。年間の差が数十万円になります
  5. 高額療養費の案内をしたか1本で数万〜数十万円。限度額適用認定証の有無を確認する

まとめ

  • 院外処方できる注射薬は、告示第十第一号の限定列挙です。自己注射用の剤形があるかどうかとは別問題
  • スキリージ・ステラーラは告示に記載がありません。ペンやオートドーザーがあっても院外処方できません
  • ビンゼレックス・ファセンラ・トレムフィアは「四週間を超える間隔で投与する場合を除く」。維持期に入ると対象外になります
  • アジョビは逆で「四週間に一回投与する場合に限る」。まとめ打ちだと外れます
  • ゾレアは季節性アレルギー性鼻炎に使う場合が対象外。同じ薬でも適応で変わります
  • 標的は12系統。喘息・アトピー性皮膚炎・乾癬の3か所で適応が重なります
  • エンスプリング1本115万円。同じIL-6を止めるアクテムラの35倍です
  • バイオ後続品は6成分。アダリムマブは1本で24,691円の差、年間60万円超になります

次回は、気管支喘息の5剤を横並びで比べます。標的が5つとも違い、薬価に16倍の開きがある——選択の根拠がどこにあるのかを見ていきます。

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

  • 厚生労働省「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」(平成18年3月6日 厚生労働省告示第107号)第十 一 保険医が投与することができる注射薬
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=84aa7837&dataType=0&pageNo=1
  • 各製剤の添付文書(PMDA)※標的(薬効分類名)は全32成分を添付文書で確認。例:ステラーラ=「ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤」、エンブレル=「完全ヒト型可溶性TNFα/LTαレセプター製剤」
    https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/
  • 厚生労働省「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について」(令和8年8月13日適用)※販売名・規格・薬価はすべてこの一覧から
    https://www.mhlw.go.jp/topics/2026/04/tp20260401-01.html

※ 薬価は令和8年8月13日適用の収載品目リストに基づき、各成分の代表的な規格を1つ挙げています。同一成分でも規格・デバイスにより薬価が異なります。
※ 告示は改正されます。本記事は2026年8月30日時点の内容です。対象品目・条件は必ず最新の告示でご確認ください。
※ 標的の分類は理解のための整理です。個々の効能・効果および用法・用量は、当該製剤の添付文書をご確認ください。

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