執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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向精神薬とは、何もかも違います
前回の向精神薬の手引と並べると、違いがはっきりします。
| 向精神薬 | 麻薬 | |
|---|---|---|
| 免許 | 申出をしない限りみなし免許 | 申請が必要(都道府県知事) |
| 免許の期限 | — | 受けた日の属する年の翌年12月31日 |
| 保管 | 人が見ていない時間だけ施錠 | 常に鍵をかけた堅固な設備 |
| 記録 | 第1種・第2種のみ | すべて帳簿に記載 |
| 廃棄 | 許可も届出も不要 | 届出+立会いが必要 |
| 事故届 | 錠剤120個以上等の数量基準あり | 数量基準なし |
| 年間報告 | なし | 毎年11月30日まで |
同じ「麻薬及び向精神薬取締法」なのに、ここまで違います。混ぜて覚えると事故のもとです。

廃棄届は2種類。手続きが正反対です
ここが本題です。どちらの麻薬かで、順番がひっくり返ります。
| 麻薬廃棄届(法第29条) | 調剤済麻薬廃棄届(法第35条第2項) | |
|---|---|---|
| 対象 | 陳旧麻薬、変質、調剤ミスで使えなくなった麻薬 =処方箋で払い出していないもの | 患者に交付された麻薬を、死亡等により遺族等から譲り受けたもの |
| 届出 | あらかじめ(廃棄の前) | 廃棄後30日以内 |
| 立会い | 麻薬取締員等(行政の職員) | 他の薬剤師又は職員(薬局内) |
| 廃棄する人 | 麻薬取締員等の指示に従う | 麻薬小売業者自ら、又は管理薬剤師 |
古くなったり、変質等により使用しない麻薬、調剤ミスにより使えなくなった麻薬等を廃棄しようとするときは、あらかじめ「麻薬廃棄届」により、都道府県知事に届け出た後でなければ廃棄することはできません。廃棄は麻薬取締員等の指示に従ってください。
麻薬処方せんにより交付された麻薬を、患者の死亡等により遺族等から譲り受けた場合は、麻薬小売業者(薬局開設者)自ら、若しくは管理薬剤師が、他の薬剤師又は職員の立会いの下に廃棄してください。
廃棄は、焼却、放流、酸・アルカリによる分解、希釈、他の薬剤との混合等、麻薬の回収が困難で適切な方法によってください。
また、廃棄後30日以内に「調剤済麻薬廃棄届」により都道府県知事に届け出てください。なお、30日以内であればその間の複数の廃棄をまとめて一つの届出書で提出しても差し支えありません。
調剤ミスで1錠だめにした——これは事前届出+麻薬取締員の立会いです。すぐには捨てられません。
逆に患者さんが亡くなって返ってきた麻薬は、薬局内で廃棄できます。立会いは他の薬剤師か職員で足り、届出は事後30日以内。しかも複数回の廃棄をまとめて1通で出せます。
手間が重いのは、患者に渡していないほうです。直感と逆になりやすいので、ここは掲示しておく価値があると思います。
そして帳簿にも記載が要ります。備考欄に廃棄年月日と調剤済麻薬廃棄届の提出年月日を書き、廃棄の立会者が署名又は記名押印してください、と定められています。
外来患者から返却された麻薬は、すべて廃棄です
マニュアルに一行、はっきり書かれています。「外来患者から返却された麻薬はすべて廃棄してください」。
再利用の余地はありません。ここは迷わなくていい部分です。
金庫に、麻薬帳簿を入れてはいけません
保管の条文(法第34条)は、具体的です。
(2) 麻薬小売業者が所有する麻薬は、薬局内に設けた鍵をかけた堅固な設備内に保管しなければなりません。
なお、「鍵をかけた堅固な設備」とは、麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金庫(重量金庫)で、施錠設備のあるものをいいます。(手提げ金庫、スチール製のロッカー、事務机の引き出し等は麻薬の保管庫とはなりません。)
(4) 麻薬保管庫内には、麻薬以外の他の医薬品、現金及び書類(麻薬帳簿を含む)等を一緒に入れることはできません。
(5) 麻薬保管庫は、出し入れのとき以外は必ず施錠し、鍵を麻薬保管庫につけたままにしないでください。
3点あります。
- 固定式か重量金庫。手提げ金庫・スチールロッカー・事務机の引き出しは名指しで否定されています
- 麻薬帳簿を一緒に入れられません。「書類(麻薬帳簿を含む)」と明記。金庫の中に帳簿を置いている薬局は、この時点で外れます
- 鍵を挿しっぱなしにしない。出し入れのとき以外は施錠
ただし例外が括弧書きで一つ。「麻薬の出し入れを頻回に行う施設等にあって、1日の間の麻薬の出し入れを管理するための書類を除く」。その日の出納メモは入れておけます。
設置場所については「盗難防止を考慮し、人目につかず、関係者以外の出入がない場所を選ぶことが望まれます」とされています。こちらは「望まれます」——努力目標の書き方です。
麻薬処方箋には、一般の処方箋にない項目が2つあります
受付でまず見るところです。
| 麻薬処方箋の記載事項(法第27条第6項) |
|---|
| ① 患者の氏名、年齢(又は生年月日)、住所 |
| ② 麻薬の品名、分量、用法用量 |
| ③ 処方箋の使用期間(有効期間) |
| ④ 処方箋の発行年月日 |
| ⑤ 麻薬施用者の記名押印又は署名 |
| ⑥ 麻薬施用者の免許番号 |
| ⑦ 麻薬施用者が処方を行った医療機関の名称及び所在地 |
※ ①患者の住所及び⑥麻薬施用者の免許番号については、一般の処方せんにはない項目ですので、麻薬処方せんを受け付ける場合は、必ず当該項目が記載されていることを確認してください。
患者の住所と、麻薬施用者の免許番号。この2つだけ意識すれば、記載不備は拾えます。
ファクシミリは、一般薬と同じに扱えます
ファクシミリにより送信された麻薬処方せんの処方内容に基づき麻薬の調製等を開始することは、一般薬と同じようにできます。後刻、実物の麻薬処方せんを受領し、内容を確認してから麻薬を交付してください。
(患者等が受け取りに来ない場合、調剤前の麻薬として再利用できます。また、液剤等で再利用できず廃棄する場合は事前に麻薬廃棄届を都道府県知事に提出してください。)
取りに来なかった錠剤は、棚に戻せます。まだ交付していないからです。ただし液剤など戻せないものは「麻薬廃棄届」ルート——事前届出と立会いが要ります。
なお麻薬処方箋の保存は、一般の処方箋と同じく調剤済みとなった日から3年間(薬剤師法第27条)。マニュアルは「一般の処方せんと分けて保存すると便利です」と添えています。
事故届に、数量基準はありません
麻薬小売業者が所有している麻薬が、滅失、盗取、破損、流失、所在不明その他の事故が生じたときは、すみやかにその麻薬の品名及び数量その他事故の状況を明らかにするために必要な事項を「麻薬事故届」により都道府県知事に届け出てください。
① 麻薬を盗取された場合には、すみやかに警察署にも届け出てください。
③ アンプル注射剤の事故に伴い、廃棄する必要がある場合、麻薬事故届にその経過を詳細に記入することで麻薬廃棄届、調剤済麻薬廃棄届の提出は必要ありません。
向精神薬には「錠剤120個以上」という基準がありましたが、麻薬にはありません。1錠でも、1枚でも事故届です。
そして③が実務で効きます。アンプルを割ってしまったとき、麻薬事故届に経過を詳しく書けば、廃棄届は別に出さなくていい。知らないと二重に出すことになります。
事故届を出したら、帳簿の備考欄にその旨を記載し、麻薬事故届の写しを保管します。

帳簿で、つまずきやすいところ
法第38条です。保存は最終の記載の日から2年間。ここは向精神薬と同じですが、中身が細かい。
- コデイン類は「譲渡し」の記載が要りませんコデイン、ジヒドロコデイン、エチルモルヒネ及びこれらの塩類は、譲り渡した分の記載が不要。処方箋で出した患者名も不要です
- 患者からの返納は( )書きで、残高に加えない購入した数量と区別するためです。マニュアルの記載例に明示されています
- 修正液・修正テープは使えません二本線等で判読可能なように抹消し、脇に正しい数字。訂正箇所に管理者等の訂正印
- 予製したら、新しい口座を作る原末から10%散を作ったら、10%散の口座を新設して記載します
- 慢性疼痛のフェンタニル経皮は「慢」と書く備考欄に記載し、慢性疼痛緩和目的の受け払いだと明確にします
コンピュータで処理して帳簿とする場合は、「原則として定期的に出力された印刷物を1ヶ所に整理し、立入検査等の際に提示できるように」とされています。麻薬取締職員等の立会署名を要することもあるためです。
薬局間の貸し借りは、絶対にできません
麻薬小売業者は、麻薬処方せんの交付を受けた者に対し、その処方せんにより調剤した麻薬を交付する以外に麻薬を譲渡することはできません。また、麻薬卸売業者へ返品することもできません。
※ ……薬局、病院、診療所等の間の貸し借りは絶対にしてはいけません。譲渡・譲受違反となります。(同一開設者が開設する薬局間においても同様です。)
同一法人の店舗間でもだめです。ここは明記されています。卸への返品もできません。
唯一の例外が麻薬小売業者間譲渡許可(法第24条第11項)です。
| 要件 | ① 相手方が在庫不足で調剤できない場合に限り、不足分を補足するため ② いずれの業務所も同一の都道府県の区域内 |
|---|---|
| 申請先 | 地方厚生(支)局麻薬取締部に共同で |
| 有効期間 | 許可の日からその年の12月31日(期間限定ならその最終日のいずれか早い日) |
| 回数 | 有効期間内は制限なし |
| 保存 | 許可書は3年間/処方箋の写しと譲渡・譲受確認書は2年間 |
受け渡しのときの決まりが細かいので、押さえておきます。
- 譲渡側・譲受側の双方が立ち会い、品名・数量・破損等の有無を直接確認する
- 運搬はそれぞれの管理薬剤師、又はその管理の下で業務に従事する者が行う
- 譲渡側は、譲受側が受領した処方箋に基づく予製行為をできません
- 同時期に2以上の許可を受けない(許可書を返納した場合を除く)
交付時までに破損が見つかれば譲渡側が、交付後に見つかれば譲受側が事故届を出します。
年間報告は、在庫がなくても出します
麻薬小売業者は、毎年11月30日までに、次の事項を「年間麻薬譲渡・譲受届」により都道府県知事に届け出なければなりません。
◎ 前年の10月1日に所有していた麻薬の品名及び数量
◎ 前年10月1日からその年の9月30日までに譲り受け、譲り渡した麻薬の品名及び数量
◎ その年の9月30日に所有していた麻薬の品名及び数量
① 届出期間中に麻薬を所有していなかった場合であっても、「在庫なし」と届け出る必要があります。
集計期間は10月1日から翌9月30日。年度でも暦年でもありません。
そして「在庫なし」でも届出が要ります。麻薬を1品目も扱わなかった年でも、届出義務は消えません。
書き方で1点。調剤済麻薬廃棄届により廃棄した数量は記載不要ですが、麻薬廃棄届により廃棄した数量と事故のあった数量は備考欄に記載します。ここでも2つの廃棄届の違いが効いてきます。
15日以内の届出が、たくさんあります
| 場面 | 期限 |
|---|---|
| 業務を廃止したとき(麻薬小売業者業務廃止届) | 15日以内 |
| 免許証の返納(有効期間満了・取消し・亡失免許証の発見) | 15日以内 |
| 免許証の記載事項変更(住所・氏名・業務所の名称) | 15日以内 |
| 免許証の毀損・亡失を発見したとき(再交付) | 15日以内 |
| 業務廃止後、所有麻薬を譲り渡したとき(麻薬譲渡届) | 譲渡の日から15日以内 |
| 業務廃止後の麻薬の処分(譲渡又は廃棄) | 廃止後50日以内 |
| 調剤済麻薬の廃棄後の届出 | 廃棄後30日以内 |
基本は15日。廃棄がらみだけ30日と50日——そう整理すると覚えやすいと思います。
免許の有効期間は免許を受けた日の属する年の翌年12月31日まで。更新は毎年11月頃から受付が始まります。年間報告(11月30日)と時期が重なるので、まとめて処理すると楽です。
なお営業所を移転する場合は、記載事項変更ではありません。現免許証を廃止して、新規免許申請になります。
薬局で確認すること
- ◻️ 麻薬保管庫が固定式又は重量金庫である(手提げ金庫・スチールロッカー・机の引き出しは不可)
- ◻️ 保管庫の中に麻薬帳簿・他の医薬品・現金を入れていない
- ◻️ 鍵を保管庫につけたままにしていない
- ◻️ 麻薬処方箋で患者の住所と麻薬施用者の免許番号を確認する手順がある
- ◻️ 2つの廃棄届の違い(事前届出+取締員立会い/事後30日+薬局内立会い)を全員が言える
- ◻️ 外来患者から返却された麻薬はすべて廃棄だと共有できている
- ◻️ 事故届に数量基準はない(1錠でも届出)ことを共有できている
- ◻️ 盗取のときは警察署にも届け出ると決めてある
- ◻️ 帳簿の訂正に修正液・修正テープを使っていない
- ◻️ 患者からの返納を( )書きで残高に加えず記載している
- ◻️ 年間麻薬譲渡・譲受届(11月30日まで)を、在庫がなくても出す運用になっている
- ◻️ 免許の有効期間(翌年12月31日)と更新受付(11月頃)を把握している
- ◻️ 定期的に帳簿残高と在庫現品を照合している
まとめ
- 廃棄届は2種類で、手続きが正反対。調剤していない麻薬は事前届出+麻薬取締員等の立会い、患者から返ってきた麻薬は薬局内で廃棄して30日以内に届出
- 外来患者から返却された麻薬は、すべて廃棄です
- 麻薬保管庫に麻薬帳簿を入れられません。手提げ金庫・スチールロッカー・机の引き出しも保管庫になりません
- 麻薬処方箋には一般の処方箋にない項目が2つ。患者の住所と、麻薬施用者の免許番号
- 事故届に数量基準はありません。向精神薬の120個のような基準はなく、1錠でも届出。盗取なら警察署にも
- アンプルを割ったときは、事故届に経過を詳細に書けば廃棄届は不要です
- 薬局間の貸し借りは、同一開設者でも譲渡・譲受違反。卸への返品もできません。例外は麻薬小売業者間譲渡許可のみ
- 年間麻薬譲渡・譲受届は毎年11月30日まで。集計期間は10月1日〜翌9月30日で、在庫がなくても「在庫なし」で届出
- 各種届出は原則15日以内。免許の有効期間は受けた日の属する年の翌年12月31日まで
次回は覚醒剤原料です。麻薬・向精神薬と違い、厚生労働省が薬局向けの手引を公開していません。覚醒剤取締法の条文から組み立てます。
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出典
- 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課「薬局における麻薬管理マニュアル」(平成23年4月)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/mayaku_kanri_02.pdf - 厚生労働省「医療用麻薬・向精神薬の適正管理」(麻薬・覚醒剤等の乱用防止対策)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/yakubuturanyou/index.html
※ 本記事は厚生労働省が公開している「薬局における麻薬管理マニュアル」の原文に基づいています。同マニュアルは平成23年4月版です。
※ 様式・提出先・手数料は都道府県により運用が異なる場合があります。実際の手続きは、所在地の都道府県薬務主管課又は保健所にご確認ください。
※ 条文は改正されます。最新の内容は法令および都道府県の案内でご確認ください。

