向精神薬の免許は、申請しなくても持っています|施錠は「人がいない時間」だけ、事故届は錠剤120個から【誰にも聞けないシリーズ②】

厚生労働省「薬局における向精神薬取扱いの手引」から。薬局開設者は向精神薬小売業者・卸売業者の免許を受けた者とみなされる。向精神薬は第1種から第3種の3種、錠剤は120個以上で事故届、第1種・第2種の記録は2年間保存、施錠は注意する人がいない時間 薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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向精神薬の免許を申請した記憶がない——それで合っています。薬局開設者は、申し出をしない限り、免許を受けた者とみなされます。麻薬とは真逆です。そして手引を読むと、実務の答えがはっきり書いてあります。施錠は「人が見ていない時間」だけ必要。事故届は錠剤なら120個から。患者さんに渡した分は記録が要りません。
0枚必要な免許申請書別段の申出をしない限りみなし免許
120個錠剤の事故届の基準盗取・詐取なら量に関係なく届出
2年記録の保存期間最終記載の日から。第3種は義務なし

免許は、申請しなくても持っています

まずここから。麻薬小売業者は免許を申請しますが、向精神薬は違います。

薬局開設者は、都道府県知事に別段の申出をしない限り、向精神薬卸売業者及び向精神薬小売業者の免許を受けた者とみなされます。

したがって、通常、薬局開設者が向精神薬小売業者の免許を申請する必要はありません。

「みなし免許」です。しかも小売業者だけでなく卸売業者の免許までみなされます。

これが後で効いてきます。薬局は「小売業者」と「卸売業者」の顔を両方持っている——記録の話で、ここが問題になります。

まず、3つの種別を押さえます

向精神薬は、乱用の危険性と治療上の有用性によって3つに分かれています。この種別で、記録の要否が変わります。

種別物質名(国内で医薬品として流通しているもの)記録
第1種メチルフェニデート、モダフィニル、セコバルビタール必要
第2種フルニトラゼパム、ペンタゾシン、ブプレノルフィン、アモバルビタール、ペントバルビタール必要
第3種トリアゾラム、ブロチゾラム、ゾルピデム、ジアゼパム、エチゾラム以外の大半のベンゾジアゼピン系、クロナゼパム、クロバザム、フェノバルビタール、ミダゾラム、マジンドール ほか義務なし

数でいえば、ほとんどが第3種です。第1種と第2種は、合わせても国内流通品は10成分に届きません。

覚えるなら第1種と第2種だけ。そこに入っていなければ第3種、という順で考えるのが早いと思います。

投与日数の上限は、この種別とは別の告示で決まっています。混同しやすいところです。

施錠は「人が見ていない時間」に必要です

ここが実務でいちばん迷うところだと思います。手引の書き方が、そのまま答えです。

① 薬局内の人目につかない場所で保管すること。

② 保管する場所は、業務従事者が実地に盗難の防止に必要な注意をしている場合以外は、かぎをかけた設備内で行うこと。

〔例〕
a)調剤室や薬品倉庫に保管する場合で、夜間、休日で保管場所を注意する者がいない場合は、その出入口にかぎをかけること。日中、業務従事者が必要な注意をしている場合以外は、出入口にかぎをかけること。
b)ロッカーや引き出しに入れて保管する場合も、夜間、休日で必要な注意をする者がいない場合には、同様に、ロッカーや引き出しあるいはその部屋の出入口のいずれかにかぎをかけること。

読み解くと、こうなります。

状況施錠
営業中で、業務従事者が実地に盗難防止の注意をしている不要
営業中でも、注意している者がいない必要
夜間・休日必要

「常に鍵をかけろ」ではありません。「人が見ていない時間は鍵をかけろ」です。麻薬の保管(鍵をかけた堅固な設備)とは、考え方がまったく違います。

そしてもうひとつ、実務的に大きいのが「いずれかに」という言葉です。

引き出しに鍵をかけなくても、部屋の出入口に鍵をかければ足ります。調剤室の扉を施錠して帰る運用なら、それで条件を満たします。向精神薬用の金庫を買う必要はありません。

ただし①の「人目につかない場所」は営業中もかかります。待合から見える棚に置かない——ここは日中の話です。

注射剤には、名指しの注意があります。

ペンタゾシン、ブプレノルフィン等の向精神薬注射剤については、特に乱用・盗難のおそれが高いので保管管理を厳重にし、不正使用や盗難防止に一層留意してください。

患者さんに渡した分は、記録が要りません

記録の対象は、思っているより狭いです。

第1種向精神薬又は第2種向精神薬を譲り受け、譲り渡し、又は廃棄したときは、次の事項を記録し、この記録を最終記載の日から2年間保存しなければなりません。

① 向精神薬の品名(販売名)・数量 ② 譲り受け、譲り渡し、又は廃棄した年月日 ③ 譲受け又は譲渡しの相手方の営業所等の名称・所在地

a)患者への向精神薬の交付、患者に交付された向精神薬の返却、返却を受けた向精神薬の廃棄については、記録の必要はありません(施行規則第42条)。

調剤して渡した分は、記録の対象外です。記録するのは卸との出入りと廃棄——ただし患者さんから返ってきたものを捨てる場合は、それも要りません。

そして第3種には記録義務がありません。トリアゾラムもブロチゾラムもゾルピデムも第3種です。日常でいちばん動く薬に、記録義務がない。

ただし手引は、こう付け足しています。

第3種向精神薬については、記録義務はありませんが、譲受けについて記録し、定期的に在庫確認をすることが望ましいです。

記録で引っかかりやすい2点

  1. 小売業者と卸売業者の記録は別にする同一薬局内でも別です。両者の間で譲受け・譲渡しがあった場合はそれぞれ記録します
  2. 伝票で代えられるが、綴じ方に条件がある向精神薬が記載された伝票の保存で記録に代えられます。ただし向精神薬が記載されていない伝票とは別に綴ること

2つ目は立入検査で見られるところだと思います。伝票を一括で綴じていると、条件を満たしません。

向精神薬の事故届が必要になる数量。末・散剤・顆粒剤は100グラムまたは100包、錠剤・カプセル剤・坐剤は120個、注射剤は10アンプルまたは10バイアル、内用液剤は10容器、経皮吸収型製剤は10枚
麻薬及び向精神薬取締法施行規則 第41条第1項(e-Gov法令検索)

事故届は、錠剤なら120個から

数が合わない、落として割った、なくなった。どこから届出なのかが、数字で決まっています。

薬局で所有する向精神薬について、下記の数量以上の滅失、盗取、所在不明その他の事故が生じたときは、すみやかに……「向精神薬事故届」により都道府県知事に届け出てください。

* 下記以下の量であっても、盗取・詐取等の場合には、都道府県知事に届け出ると共に警察署にも届け出てください。

剤形届出が必要になる数量
末、散剤、顆粒剤100グラム(包)
錠剤、カプセル剤、坐剤120個
注射剤10アンプル(バイアル)
内用液剤10容器
経皮吸収型製剤10枚

そして注記が1行。「ODフィルム剤は『錠剤』にあたります」。迷いやすいので明記されています。

読み方の順番はこうです。

  1. 盗取・詐取かそうなら量に関係なく、都道府県知事+警察署へ。ここが最優先
  2. 滅失・所在不明なら、数量を見る錠剤120個以上、注射剤10アンプル以上……に達していれば「向精神薬事故届」
  3. 基準未満なら届出不要ただし記録と原因の確認は別の話。届出が要らない=放置してよい、ではありません

1錠落として割った、は届出不要です。ここを知らないと、必要のない届出をすることになります。逆に盗まれたなら1錠でも届出——数量基準は盗難には効きません。

廃棄に、許可も届出も要りません

向精神薬の廃棄について、許可や届出の必要はありませんが、第1種向精神薬及び第2種向精神薬を廃棄したときは記録が必要です。

廃棄は焼却、酸、アルカリによる分解、希釈、他の薬剤との混合等、向精神薬の回収が困難な方法により行ってください。

麻薬とはまったく違います。麻薬の廃棄は届出と立会いが要りますが、向精神薬は薬局の判断で捨てられます。

条件は「回収が困難な方法」であること。そのまま捨てるのではなく、他の薬剤と混ぜる・水に溶かす等が求められます。

使用期限切れの医薬品全般の扱いは使用期限切れの医薬品、薬局はどう扱うか|「貯蔵」も禁止される根拠と、麻薬・向精神薬・覚醒剤原料で違う廃棄手続にまとめています。

偽造処方箋は、向精神薬で来ます

手引には、注意喚起の項が独立して置かれています。

向精神薬を不正に入手(詐取)する目的で、不審な処方せん(例えば、カラーコピー、パソコン等により偽造されたもの、印影が不自然なもの)が薬局に持ち込まれることがありますので、書式等が不自然な処方せんや遠隔地の医療機関の医師から発行された処方せんには注意が必要です。

挙げられている手がかりは4つ。カラーコピー/偽造/印影が不自然/書式が不自然、そして遠隔地の医療機関です。

根拠条文が薬剤師法第24条(疑義照会)である点も大事です。疑義があれば、確認するまで調剤できません。

知っておくと迷わない、4つの小ネタ

調剤は「製剤」に当たりません

向精神薬は製造・製剤・小分けができません(法第50条の15)。では予製はどうなるのか。

調剤(予製を含む。)については、製剤に該当しません(法第2条第29号)。

予製は問題ありません。明記されています。

立入検査は、犯罪捜査ではありません

手引がわざわざ書いています。「犯罪捜査の目的で行われるものではありません」。

検査に来る職員(麻薬取締官・麻薬取締員その他の職員)は身分を示す証票を携帯しているので、必ず提示を求めて確認してください、とも書かれています。

一方で、拒否・妨害・虚偽の陳述は処罰の対象です(法第72条第11号)。

承認条件で、確認が要る薬が2つあります

製剤薬局に求められること
メチルフェニデート
(リタリン・コンサータ)
投薬する医師・医療機関・薬局が限定される。第三者委員会による流通管理。確認のうえ調剤する
ブプレノルフィン経皮吸収型製剤
(慢性疼痛への処方)
処方医が製造販売業者の提供する講習を修了した医師であることを、薬剤師が確認する

どちらも根拠は承認条件です。保険のルールでも通知でもありません。

向精神薬取扱責任者を置いていますか

法第50条の20です。薬局の管理者は、自ら向精神薬取扱責任者となるか、営業所ごとに向精神薬取扱責任者を置かなければなりません。

責任者の役割は、譲渡し・譲受け・保管・廃棄・記録が適切に行われ、法に違反する行為が行われないように業務従事者を監督することとされています。

薬局で確認すること

  • ◻️ 向精神薬取扱責任者が決まっている(管理者が兼ねるのでも可)
  • ◻️ 向精神薬を人目につかない場所に置いている(待合から見えない)
  • ◻️ 夜間・休日は、引き出しか部屋の出入口のいずれかに施錠して帰る運用になっている
  • ◻️ 第1種・第2種の譲受け・譲渡し・廃棄を記録し、最終記載から2年保存している
  • ◻️ 伝票で代える場合、向精神薬が載っていない伝票と別に綴じている
  • ◻️ 小売業者の記録と卸売業者の記録を別にしている
  • ◻️ 事故届の数量基準(錠剤120個・注射剤10アンプル等)をスタッフが知っている
  • ◻️ 盗取・詐取は量に関係なく届出+警察署だと共有できている
  • ◻️ 廃棄は回収が困難な方法で行っている(他剤と混合等)
  • ◻️ 不審な処方箋のチェック観点(カラーコピー・印影・書式・遠隔地)を共有している
  • ◻️ 第3種も、譲受けの記録と定期的な在庫確認をしている(望ましいとされている)

まとめ

  • 免許の申請は不要です。薬局開設者は別段の申出をしない限り、小売業者と卸売業者の両方の免許を受けた者とみなされます
  • 施錠は「人が見ていない時間」に必要。常時施錠ではありません。引き出しか部屋の出入口のいずれかで足ります
  • 「人目につかない場所」は営業中も必要です(保管の①)
  • 記録が要るのは第1種・第2種だけ。第3種に義務はありません(譲受けの記録と在庫確認は望ましい)
  • 患者への交付・患者からの返却・返却分の廃棄は、記録不要です(施行規則第42条)
  • 事故届は錠剤120個・注射剤10アンプル・経皮吸収型10枚から。ODフィルムは「錠剤」扱い。ただし盗取・詐取は量に関係なく届出+警察署
  • 廃棄に許可も届出も要りません。ただし第1種・第2種は記録が必要で、方法は「回収が困難な方法」
  • 予製は「製剤」に当たりません。法第2条第29号
  • メチルフェニデートとブプレノルフィン経皮吸収型製剤は、承認条件で薬局に確認義務があります

次回は麻薬です。向精神薬とは免許も保管も廃棄も、すべて違います。「薬局における麻薬管理マニュアル」を原文から読み解きます。

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

※ 本記事は厚生労働省が公開している「薬局における向精神薬取扱いの手引」の原文に基づいています。同手引は平成24年2月版で、巻末の向精神薬一覧は平成24年1月現在のものです。本記事では品目(商品名)の一覧は転載していません。販売名は入れ替わっているため、個々の製剤の種別は当該製剤の添付文書の「規制区分」でご確認ください。
※ 種別の指定は政令で改正されることがあります。
※ 投与日数の上限は本記事の種別とは別の告示(掲示事項等告示 第十)で定められています。

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