執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
まず、処方箋の記載で決まる部分
第1 銘柄名処方
1 「変更不可」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合
処方薬に代えて、後発医薬品(含量規格が異なるもの又は類似する別剤形のものを含む。)を調剤することができる。
ただし、処方薬の近傍に「含量規格変更不可」又は「剤形変更不可」の記載等がある場合には、患者に対して説明し同意を得ることを条件に、その指示に従い調剤することができる。
2 「変更不可」欄に「✓」又は「×」の記載があり、かつ「保険医署名」欄に処方医の署名又は記名・押印がある場合
処方薬を後発医薬品(含量規格が異なるもの及び類似する別剤形のものを含む。)には変更できない。
第2 一般名処方
処方薬と一般的名称が同一である成分を含有する医薬品(含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品を含む。)を調剤することができる。
| 処方箋の記載 | 同一含量規格 | 含量規格が異なる | 類似する別剤形 |
|---|---|---|---|
| 記載なし | 可 | 可 | 可 |
| 「変更不可」+保険医署名 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 「含量規格変更不可」 | 可 | 不可 | 可 |
| 「剤形変更不可」 | 可 | 可 | 不可 |
| 両方の記載 | 可 | 不可 | 不可 |
「変更不可」は保険医署名とセットです。チェックだけで署名がなければ、通知の第1の2に当てはまりません。
ここからが本題——「類似する別剤形」の範囲
処方箋に何も書かれていなくても、変えられる剤形の範囲は決まっています。
類似する別剤形の医薬品とは、内服薬であって、次の各号に掲げる分類の範囲内の他の医薬品をいうものであること。
ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
ウ 液剤、シロップ剤、ドライシロップ剤(内服用液剤として調剤する場合に限る。)
「分類の範囲内」です。ア・イ・ウをまたぐ変更は「類似する別剤形」に当たりません。
| 変更 | 原則 | 供給不安でやむを得ない場合 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 錠剤 → OD錠 | 可 | 可 | どちらもア群 |
| カプセル → 錠剤 | 可 | 可 | どちらもア群 |
| 錠剤 → 散剤 | 不可 | 可 | ア群とイ群。事務連絡2②で可 |
| OD錠 → 細粒 | 不可 | 可 | 同上 |
| 散剤 → 顆粒 | 可 | 可 | どちらもイ群 |
| シロップ → 液剤 | 可 | 可 | どちらもウ群 |
| 散剤 → シロップ | 不可 | 不可 | ウ群は事務連絡の対象外 |
| 外用薬・注射薬の剤形変更 | 不可 | 不可 | 「内服薬であって」と限定されている |
「飲みにくいから粉にする」は、いまでも変更調剤ではできません。次章の事務連絡が認めているのは供給上やむを得ない場合であって、飲みやすさを理由にした剤形変更ではないからです。こちらは疑義照会が必要です。
そしてこの分類は内服薬だけの話です。軟膏とクリーム、テープとパップのような外用薬の剤形変更は、そもそも対象外です。
ドライシロップだけが、2つのグループにまたがっています
よく見ると、ドライシロップ剤はイ群とウ群の両方に出てきます。ただし条件が違います。
| ドライシロップの扱い | どの群か | 変更できる相手 |
|---|---|---|
| 散剤としてそのまま渡す | イ群 | 散剤・顆粒剤・細粒剤・末剤 |
| 水に溶かして液剤として渡す | ウ群 | 液剤・シロップ剤 |
同じ薬でも、どう調剤するかで所属する群が変わります。薬剤調製料の算定でも同じ考え方で、内服用液剤として出すなら液剤、散剤としてそのまま出すなら内服用固形剤として算定します。
剤形が同じでも、通らない条件が2つあります
含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は、変更調剤後の薬剤料が変更前のものと比較して同額以下であるものに限り、対象となるものであること。
また、含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤は、規格又は剤形の違いにより効能・効果や用法・用量が異なる場合には対象外とするものであること。
- 薬剤料が同額以下であること。変更して高くなるならできません。10mg×2錠を20mg×1錠にまとめる、といった変更は計算して確かめる必要があります。ただしこの条件は、次章の事務連絡により供給不安時には外れます
- 規格や剤形の違いで効能・効果や用法・用量が異なるなら対象外。同じ成分でも、規格によって適応が違う薬があります
なお含量規格違いへの変更は、同一剤形が対象です(第3の3)。「含量規格も剤形も同時に変える」は、類似する別剤形への変更として扱います。
供給不安のいま、群をまたげます(令和6年3月15日 事務連絡)
ここまでが原則です。ただし、いまはこの原則がゆるめられています。供給不安を受けて、厚生労働省保険局医療課が事務連絡を出しています。
保険薬局において処方薬の調剤に当たり、医薬品の入手が限定されること等により必要量が用意できないようなやむを得ない状況においては、変更調剤による対応を柔軟に取り扱うことが有用であると考えられる。
1 後発医薬品の銘柄処方において、「変更不可」欄に「✓」又は「×」が記載されていない場合にあっては、患者に対して調剤する薬剤を変更することを説明の上、同意を得ることで、当該処方薬に代えて、先発医薬品(含量規格が異なるもの又は類似する別剤形のものを含む。)を調剤することができる。
2 処方薬の変更調剤を行うに当たって、以下に掲げるものについては、変更調剤後の薬剤料が変更前のものを超える場合であっても、患者に対してその旨を説明の上、同意を得ることで、当該変更調剤を行うことができる(ただし、規格又は剤形の違いにより効能・効果や用法・用量が異なるものを除く。)。
① 含量規格が異なる後発医薬品又は類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤
② 内服薬のうち、類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤がやむを得ずできない場合であって、次に掲げる分類間の別剤形(含量規格が異なる場合を含む。)の医薬品への変更調剤
ア 錠剤(普通錠)、錠剤(口腔内崩壊錠)、カプセル剤、丸剤
イ 散剤、顆粒剤、細粒剤、末剤、ドライシロップ剤(内服用固形剤として調剤する場合に限る。)
(例:アに該当する錠剤をイに該当する散剤への変更調剤)
「例:アに該当する錠剤をイに該当する散剤への変更調剤」——通知が名指しで認めています。原則で越えられなかった線が、ここで越えられます。
原則との違いを並べます。
| 原則(保医発0305第12号) | 供給不安時(事務連絡) | |
|---|---|---|
| ア群↔イ群の変更 | 不可 | 可 |
| 薬剤料 | 同額以下に限る | 超えてもよい |
| 後発品処方から先発品へ | 規定なし | 可(変更不可欄に記載がない場合) |
| 効能・効果や用法・用量が異なる場合 | 対象外 | 対象外(変わらず) |
| ウ群(液剤・シロップ)へのまたぎ | 不可 | 不可(変わらず) |
| 外用薬・注射薬 | 対象外 | 対象外(変わらず) |
使うときの条件は4つです
- やむを得ない状況であること。「医薬品の入手が限定されること等により必要量が用意できない」場合です。飲みやすさや患者の好みは理由になりません
- ②は最後の手段です。条文は「類似する別剤形の後発医薬品への変更調剤がやむを得ずできない場合」と書いています。まず同じ群の中で探し、それが無理なときに群をまたぎます
- 患者への説明と同意。薬剤料が上がる場合は、その旨も説明します
- 処方元への情報提供。剤形を変えたなら剤形を、含量規格を変えたなら含量規格を含めて伝えます(事務連絡3)。あらかじめ合意がある医療機関は、その方法で構いません
疑義照会は求められていません。条文が求めているのは患者の同意と、処方元への事後の情報提供です。
そしてこの事務連絡には「当面の間」とあるだけで、終期が書かれていません。2026年8月29日に厚生労働省・地方厚生局の公表資料を確認した範囲では、廃止・終了の通知は見当たりませんでした。運用の前に、最新の発出状況をご確認ください。
変更したあとに、やることが2つあります
① 選んだ基準を患者に説明する
後発医薬品への変更調剤を行うに当たり、保険薬局の保険薬剤師は、当該保険薬局において当該後発医薬品を選択した基準(例えば、当該後発医薬品に係る薬価、製造販売業者における製造、供給、情報提供に係る体制及び品質に関する情報開示の状況等)を患者に対して説明すること。
「安いから」だけではありません。通知が挙げているのは薬価に加えて、製造・供給・情報提供の体制と品質に関する情報開示の状況です。供給不安が続いている今は、ここを説明できるかどうかが実際に効きます。
② 処方元に情報提供する
変更調剤を行ったとき、そして一般名処方の処方箋を調剤したときも、調剤した薬剤の銘柄等を処方元の保険医療機関に情報提供します(第3の7)。
ただし「あらかじめ合意が得られている場合は、その方法で差し支えない」とされています。1件ずつ連絡する必要はありません。要否・方法・頻度を医療機関と決めておけば、それに従えます。決めていない医療機関があれば、一度話をしておくと毎回の手間が減ります。
一般名処方は、そもそも別のルートです
一般名処方は「変更調剤」ではありません。同一成分の医薬品を調剤しているだけです。だから事前確認も要りません。
通知はその趣旨も書いています。
一般名処方とは、単に医師が先発医薬品か後発医薬品かといった個別の銘柄にこだわらずに処方を行っているものであること。
ただし一般名処方でも、患者が長期収載品を希望すれば選定療養の対象になります。銘柄にこだわらない処方であっても、患者の希望は別の話です。
そして一般名処方でも、「含量規格変更不可」「剤形変更不可」の記載があれば、その指示に従います。
窓口で使える判定の順番
- 「変更不可」欄に印+保険医署名があるかあれば変更できない。ここで終了
- 「含量規格変更不可」「剤形変更不可」の記載があるかあればその指示に従う(説明と同意が条件)
- 規格・剤形の違いで効能効果や用法用量が変わらないか変わるなら対象外。ここは事務連絡でも外れない
- 変えたい先が同じ群かア=錠・OD錠・カプセル・丸/イ=散・顆粒・細粒・末/ウ=液・シロップ。同じ群なら薬剤料が同額以下かを確認して実行
- 同じ群で用意できないか用意できるならそちらが先。群をまたぐのは最後の手段
- 入手が限定されて必要量を用意できない状況か該当すれば事務連絡ルート。ア群↔イ群をまたげる。薬剤料が上がってもよい(ウ群・外用薬は不可)
- 患者に説明して同意を得たか/選んだ基準を説明したか薬価だけでなく供給体制・品質情報の開示状況も。薬剤料が上がるならその旨も
- 処方元への情報提供変えた剤形・含量規格を含めて。事前の合意があればその方法で
まとめ
- 原則では「類似する別剤形」は3つの群の中だけ。錠剤→散剤はできない
- ただし令和6年3月15日の事務連絡で、供給上やむを得ない場合はア群↔イ群をまたげる。通知が「例:錠剤を散剤への変更調剤」と名指ししている。疑義照会は不要
- 事務連絡では薬剤料が上がってもよい。後発品の銘柄処方から先発品への変更もできる
- ウ群(液剤・シロップ)へのまたぎと外用薬は、事務連絡でも対象外。ここは変わらない
- この分類は内服薬だけ。外用薬・注射薬の剤形変更は対象外
- ドライシロップだけが2つの群にまたがる。散剤として出すならイ群、液剤として出すならウ群
- 原則は薬剤料が同額以下。効能効果・用法用量が変わるなら、原則でも事務連絡でも対象外
- 「変更不可」は保険医署名とセット
- 選んだ基準の説明義務がある。薬価だけでなく供給体制と品質情報の開示状況も
- 処方元への情報提供は事前合意でまとめられる
あわせて読みたい
出典
- 厚生労働省「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」(平成24年3月5日 保医発0305第12号)※平成22年3月5日 保医発0305第12号は平成24年3月31日限りで廃止
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/tuuchi1-4.pdf - 厚生労働省保険局医療課「現下の医療用医薬品の供給状況における変更調剤の取扱いについて」(令和6年3月15日 事務連絡)
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001229089.pdf - 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号・0619訂正後)別添3 区分01 薬剤調製料(ドライシロップ剤の扱い)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf
※ 個別の医薬品について変更の可否を判断する際は、必ず当該製剤の添付文書で効能・効果および用法・用量をご確認ください。
※ 令和6年3月15日事務連絡は「当面の間」の取扱いで、終期が定められていません。2026年8月29日時点で廃止・終了の通知は確認できませんでしたが、運用前に最新の発出状況をご確認ください。
