ステロイドと保湿剤の混合|希釈すると効果は落ちるのか、安定性はどうなるか

ステロイドと保湿剤の混合 希釈すると効果は落ちるのか、安定性はどうなるか 外用薬・点眼薬・坐薬
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こんにちは、『薬Talk』編集長、薬剤師のNoriです!

本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
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ある日、処方袋を手にした患者さんからこんな質問がありました。

「この軟膏、薄めてあるって書いてあるけど…効き目、大丈夫なんですか?」

答えを先に書くと、「濃度が半分になった=効き目が半分になった」とは言えません。ヒトで確かめた試験では、ステロイド軟膏を保湿剤と1:1で混ぜたら、ステロイドの濃度は半分なのに皮膚の反応はむしろ強くなった組み合わせがあります。反対に、混ぜたあと基剤の乳化が壊れると反応は下がりました。

この記事は、その試験(大谷道輝ほか「市販ステロイド外用剤の混合が与えるヒトの血管収縮効果への影響」薬学雑誌 122(1):107-112(2002))の数字を中心にまとめます。後半では、混ぜたあとの防腐剤と細菌汚染を調べた同じ著者らの試験と、メーカーが出している配合変化表で何がわかり、何がわからないかを書きます。


外用ステロイド2剤の添付文書には希釈・混合に関する記載が一切ない(全文で出現0回)。用法は1日1〜数回適量を患部に塗布とだけあり、濃度や希釈倍率の指定はない
PMDA 添付文書 サレックス軟膏・クリーム/アルメタ軟膏

ステロイド外用剤の添付文書には、希釈や混合についての記載がありません。判断の材料は、こうした試験の報告になります。

試験の方法:健康な成人20名(男女各10名)の背中に、リドメックス軟膏(ベタメタゾン吉草酸エステル)単独、保湿剤との1:1混合3種類、リドメックスクリームを50mgずつ貼って4時間密封しました。はがしてから2・5・20時間後に、ステロイドの血管収縮による皮膚の蒼白化を皮膚科医が判定しています(二重盲検法に準じた方法)。

塗ったもの2時間後5時間後20時間後
リドメックス軟膏 単独50%55%0%
+パスタロンソフト(尿素)1:185%80%20%
+ケラチナミン軟膏(尿素)1:180%75%10%
+ヒルドイドソフト(ヘパリン類似物質)1:165%60%5%
リドメックスクリーム 単独90%95%35%

数字は血管収縮反応の陽性率(20名中の割合)。太字は軟膏単独と比べて統計的に有意に高かったもの(論文の表2・本文)。

読み取れることは3つです。

1. 尿素製剤と混ぜると、濃度が半分でも反応は上がった。パスタロンソフトとの混合はすべての時点で、ケラチナミン軟膏との混合は2時間後で、軟膏単独より有意に高くなりました(5時間後はp=0.090で有意差なし。論文の表2と考察による)。反応の強さを点数にした合計(total score)は、尿素製剤との混合で軟膏単独より70%以上増えています。

2. ヒルドイドソフトとの混合は、有意差はなかった。陽性率はすべての時点で軟膏単独より高い傾向で、total scoreは50%増えましたが、統計的な差にはなっていません。同じ「保湿剤との混合」でも、相手によって結果が違います。論文は、保湿剤を尿素製剤からヘパリン類似物質に(またはその逆に)切り替えると、ステロイドの吸収が変わり、臨床効果に影響しうると考察しています。

3. 同じ濃度でも、軟膏よりクリームの方が反応が強い。リドメックスはクリームの陽性率がすべての時点で軟膏より有意に高く、論文は、顔や陰部などで安易に軟膏からクリームへ変更すると副作用につながるおそれがあると述べています。


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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

同じ論文では、リドメックス軟膏とケラチナミン軟膏の混合品を遠心分離して乳化を壊し、分離した水を除いてから同じ試験をしています。陽性率は2時間後80%→45%、5時間後75%→40%と、どちらも35ポイント下がりました。total scoreは約50%減り、軟膏単独とほぼ同じになっています。

この混合品は、混ぜた直後でも肉眼では水の分離が見えないものの、顕微鏡では乳化の破壊が見られたと書かれています。論文が引用する別の報告(桜田ら)では、フルオシノニド軟膏に尿素軟膏などを混ぜたもので、混合1か月後に水分が分離し、陽性率が約30〜50%下がったとされています。

著者らは、混合方法によって乳化の壊れ方が違い、特に回転数の高い機械での混合は乳剤性基剤には用いるべきではないとの考えを示しています。


言えること:ステロイド軟膏を保湿剤と混ぜると、濃度が下がっても皮膚への移行が増えて、作用が強くなることがある。逆に、基剤が分離すれば弱くなることがある。どちらに動くかは、相手の保湿剤と基剤の状態で変わる。

言えないこと:この試験は健康な人の背中に1回、4時間密封して血管収縮を見たもので、湿疹が治るかどうかを比べた試験ではありません。組み合わせもリドメックス軟膏と3製剤だけで、ほかのステロイドや比率にそのまま当てはめることはできません。

同じ論文によると、皮膚科医へのアンケート(江藤ら)では83%がステロイド軟膏とほかの外用剤の混合を行っており、理由は「コンプライアンスの向上」51.3%、「副作用の軽減」41.4%でした。「副作用を減らすために薄める」という目的と、「混ぜると反応が強くなることがある」という結果は、必ずしも一致しません。


大谷らは同じ2002年に、アンテベート軟膏(ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル)を保湿剤4種類と1:1で混ぜ、防腐剤(パラベン類)の濃度と細菌汚染を調べています(薬学雑誌 122(12):1153-1158)。相手はウレパール(尿素・O/W型)、パスタロンソフト(尿素・W/O型)、ヒルドイド(ヘパリン類似物質・O/W型)、ヒルドイドソフト(同・W/O型)です。アンテベート軟膏は防腐剤を含まないので、混合品のパラベンは保湿剤から来たものだけです。

調べたこと結果
混合品のパラベン濃度1:1で半分になった。その後3か月、室温で保存しても下がらなかった
混合品を1日2回・7日間、指で触った室温でも冷蔵庫でも、4種類すべて細菌は検出されなかった(各3本)
遠心分離で水を分けた(O/W型の2種類だけ水が分かれた)分けた直後は検出されなかった
分けた水を1日2回・7日間、指で触った室温で3本中3本、冷蔵庫でも3本中1〜2本から検出(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)

数字は論文の本文と表3〜5による。

論文の結論は、乳化が壊れない限り、細菌汚染の点ではあまり問題ないというものです。問題になるのは水が分かれたときで、分かれた水では冷蔵庫に入れても細菌の繁殖は抑えられませんでした。著者らは、水を分離しやすいO/W型の基剤では乳化を壊さないよう十分注意して混ぜ、分離しにくい製剤を選ぶべきだとしています。

患者さんへの指導として論文が挙げているのは2つです。使う前に手を洗うことと、容器に直接指を入れず綿棒などで取り出すこと。同じ論文は、皮膚科医へのアンケートで混合して渡した軟膏壺からMRSAが検出されたという回答があったことも紹介しています。

なお、この試験の水の分離は遠心分離で強制的に起こしたものです。ただし論文は、通常の混合でも分離は多く報告されているとして、投薬の場面でも問題になると書いています。


混ぜてよいかを調べるとき、よく使うのがメーカーの配合変化表です。例として、健栄製薬の「ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「ケンエー」の他剤との配合変化について」(2026年7月作成)を見ます。

試験の条件は、1:1(一部はほかの比率)、自転公転式の撹拌機で混和、25℃・60%RHで保存。見ている項目は性状(色・におい・分離)、pH、硬度または粘度です。ステロイドの含量は測っていません。

ステロイド外用剤(1:1)結果
リンデロン-VGクリーム0.12%2週間後に分離
マイザー軟膏0.05%4週間後にブリーディング(やや分離)
リンデロン-DPクリーム4週間後にブリーディング(やや分離)
ロコイドクリーム0.1%4週間後にブリーディング(やや分離)
フルメタクリーム配合直後に軟化。経時でやや硬化、分離なし
リンデロン-V軟膏・クリーム、リンデロン-VG軟膏、リンデロン-DP軟膏、アンテベート軟膏・クリーム、ネリゾナ軟膏・ユニバーサルクリーム、ボアラ軟膏・クリーム、アルメタ軟膏、ロコイド軟膏、フルメタ軟膏、プロパデルム軟膏、レダコート軟膏試験期間中、変化なし(アンテベートは12週間まで、ほかは4週間まで)

表1・表2の判定(○・×)による。

読み取れることは2つです。

1. 同じ成分でも、軟膏とクリームで結果が違う。リンデロン-VG、リンデロン-DP、ロコイドは、軟膏は4週間変化なし、クリームは分離やブリーディングが出ました。前半の血管収縮試験で、軟膏をクリームに変えると反応が強くなったことと合わせると、軟膏⇔クリームの変更は、混合品でも別の処方として扱うのが安全です。

2. 「○」は、見た目と物性が変わらなかったという意味。ステロイドの量が保たれているか、皮膚への移行が変わらないかは、この表からはわかりません。防腐効果を調べた大谷らの論文も緒言で、混合は物理・化学的変化だけでなく主薬含量の低下や皮膚移行性にも影響しうるとして、過去の報告を引いています。

もう1つ、この表は健栄製薬の油性クリームでの試験です。同じヘパリン類似物質0.3%でも、先発のヒルドイドソフト軟膏やほかの後発品では基剤や添加物が同じとは限らないので、結果をそのまま当てはめないでください。実際に混ぜる組み合わせのメーカー資料を見るのが原則です。


・「薄めてあるから弱い薬です」とは説明しない。混合で作用が強くなる組み合わせがあるため
・保湿剤の銘柄が変わった混合処方(尿素製剤⇔ヘパリン類似物質)、軟膏からクリームへの変更は、効き方が変わりうる変更として扱う
・混合品に水が浮く・分離するなどの変化があれば、塗らずに相談してもらう(乳化の破壊で反応が下がった報告がある。分かれた水では、冷蔵庫に入れても細菌が増えた報告もある)
・使う前に手を洗い、容器に直接指を入れず綿棒などで取り出してもらう
・混ぜてよいかは、実際に混ぜる組み合わせのメーカーの配合変化表で見る。「○」は見た目と物性の判定で、ステロイドの含量までは見ていないことが多い点に注意


大谷道輝ほか「市販ステロイド外用剤の混合が与えるヒトの血管収縮効果への影響」薬学雑誌 122(1):107-112(2002)(PDF)
大谷道輝ほか「酪酸プロピオン酸ベタメタゾン軟膏の混合が及ぼす防腐効果への影響」薬学雑誌 122(12):1153-1158(2002)(PDF)
健栄製薬 研究開発部「ヘパリン類似物質油性クリーム0.3%「ケンエー」の他剤との配合変化について」(2026年7月作成)(PDF)
サレックス軟膏・クリーム、アルメタ軟膏 添付文書(PMDA。図の出典)
論文と配合変化表の数字は、2026年10月31日に原文と照合しました。

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