医薬品供給不足時の患者紹介と分譲実績|地域支援・医薬品供給対応体制加算1の実務【2026年度改定】

医薬品供給不足時の患者紹介・分譲実績(地域支援・医薬品供給対応体制加算1の施設基準) ~2026年度調剤報酬改定~ をやさしく解説 調剤報酬・制度改正
この記事は約12分で読めます。

執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

本サイトは、薬剤師をはじめとする医療従事者向けの情報提供サイトです。記載内容は告示・通知・添付文書などの原文を確認したうえでまとめています。一般の方が医薬品の使用を判断される際は、必ず医師・薬剤師にご相談ください。
【広告】本ページには広告が含まれます。記事の内容は広告主の影響を受けていません。

地域支援・医薬品供給対応体制加算1は27点。令和8年度改定で算定できる範囲が広がりました。施設基準(1)は「特別調剤基本料Bを算定している保険薬局以外の保険薬局であること」——特別調剤基本料Bの薬局だけが対象外です。

27点処方箋1回につき特別調剤基本料B以外が対象
54万円月2,000回なら年間600万円を超える
1回必要な分譲実績直近1年間に1回でよい

届出しようとすると、ほぼ全員が同じ一点で止まります。「他の保険薬局への分譲実績」です。

実績は「作る」ものではありません。多くの薬局は既にやっていて、記録していないだけです。

この記事では、実績がゼロの状態からどこに手をつけるかを軸に、患者案内(様式4-2)と分譲の証跡までを実務の順で整理します。

加算1で求められるもの

この記事は加算1の「分譲実績」要件にしぼって書いています。加算1〜5の全要件を通知原文で確認したい方は地域支援・医薬品供給対応体制加算の全要件を先に読んでください。そもそも自局が加算を取れる区分かは調剤基本料の区分で決まります。

令和8年度改定で、地域支援体制加算と後発医薬品調剤体制加算が統合され、地域支援・医薬品供給対応体制加算に再編されました。加算1は医薬品の安定供給に資する体制のみを評価する区分です。

要件内容
後発医薬品の調剤数量割合85%以上(統合により共通要件に組み込まれた)
他の保険薬局等への分譲実績直近1年間に実績があること(同一グループは除く)
計画的な購入・在庫管理体制を有すること
供給不足時の対応体制他局への案内(事前の在庫確認を含む)または処方医への照会
掲示後発医薬品の調剤を積極的に行っている旨を、当該保険薬局の内側及び外側の見えやすい場所に掲示すること
調剤基本料の区分特別調剤基本料Bを算定している保険薬局以外であること

後発品85%は日々の運用の積み重ねで、いまさら短期間では動きません。対して分譲実績は、やり方さえ分かれば今日から作れます。だからここが分かれ目になります。

【広告】薬剤師の求人・派遣・転職「ファルマスタッフ」

株式会社メディカルリソースが運営する薬剤師専門サービスです(2000年設立)。転職だけでなく「派遣」を扱っているのが特徴で、有料職業紹介(13-ユ-010743)と労働者派遣(派13-010770)の両方の許可を持っています。拠点は全国12支店。運営元は日本調剤グループです——選ぶ材料になるので書いておきます。

「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。

※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

第92 地域支援・医薬品供給対応体制加算1に関する施設基準を並べた図。(1)特別調剤基本料Bを算定している保険薬局以外の保険薬局であること。(2)アは在庫を抑制した結果、他の保険薬局からの分譲を頻繁に受けざるを得ない状況や卸売販売業者への過度な依頼を行わざるを得ない状況に陥らないよう、計画的な調達や在庫管理を行うこと。イは直近1年間において他の保険薬局等に医薬品を分譲した実績があること、分譲に係る伝票又は医療用医薬品の譲渡書を2年間保存すること、同一グループの保険薬局への分譲は実績に含めないこと。ウは医薬品が入手困難な場合に在庫を持つ保険薬局を探し予め連絡して在庫を確認した上で案内するか、処方医に処方内容の変更可否を照会すること。エは重要供給確保医薬品のうち内用薬及び外用薬を1か月分程度備蓄するよう努めること。オは値引き交渉を慎み全品目を単品単価交渉とすること。カは頻回配送等への過度な依頼を慎むこと。キは卸売販売業者への返品を慎むこと。クは地域の医療機関・薬局・団体と連携し情報共有や事前の取り決めを行うことが望ましいこと。(3)直近3月間の後発医薬品の規格単位数量の割合が85%以上であること。(4)後発医薬品の調剤を積極的に行っている旨を内側及び外側の見えやすい場所に掲示すること
厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添1 第92 地域支援・医薬品供給対応体制加算1に関する施設基準(令和8年度)

「分譲実績がない」薬局の多くは、実はやっている

ここがこの記事でいちばん伝えたいところです。

実績を「作る」必要はありません。多くの薬局は既にやっていて、記録していないだけです。

供給不安が続くなか、近隣の薬局から「◯◯を少し分けてもらえないか」と電話が来る。あるいは門前のクリニックから「往診用に足りない」と言われる。その場で融通して終わり——これが記録に残っていないだけ、という薬局が相当あります。

要件は直近1年間に1回以上です。毎月やる必要はありません。1回、証跡つきで残っていればいい。

だからまず確認すべきはこれです。

  • この1年で、他社の薬局やクリニックに薬を渡した記憶はないか
  • そのとき譲渡書を書いたか。控えは残っているか
  • 相手は同一グループではなかったか

記憶にあるのに書類がない、が最も多いパターンです。この場合、実績としてカウントできません。次からは必ず残す運用に変えるところから始まります。

本当にゼロなら、どこから手をつけるか

1年間まったく分譲していないなら、相手を作る必要があります。現実的な順に並べます。

相手実績として認められるか現実性
門前・近隣のクリニック○(疑義解釈で保険医療機関への分譲も含まれると明示)最も高い。既に関係があり、往診用の不足も起きやすい
近隣の他社薬局○中。日頃の関係次第
同一グループの他店舗×——
他社から譲り受ける×——(方向が逆)

見落とされがちですが、医療機関への分譲が認められています。門前クリニックとは日常的にやり取りがあり、往診用や院内処置用で薬が足りなくなる場面は珍しくありません。薬局間で新しく関係を作るより、はるかに現実的です。

薬局間で開拓する場合も、身構える必要はありません。供給不安はどの薬局も同じように困っています。「うちで在庫が余っている品目があれば声をかけてください。逆にこちらも困ったときはお願いします」——この一言で成立する話です。

ただし初回の相手とは、事前に(または初回譲渡時に)書類を交換します。

  • 相手が薬局なら薬局開設許可証のコピー
  • 相手が医療機関なら保険医療機関指定通知書のコピー
  • あわせて、持参した人の本人確認書類も控える——様式に「確認書類:運転免許証・社員証・その他」の欄がある

分譲したら、譲渡書に何を書くか

国が統一様式を用意しています。別紙様式4-1「医薬品の販売授与証明書」です。

別紙様式4-1 医薬品の販売授与証明書の様式。譲渡日、販売授与先・販売授与元それぞれの名称や確認書類、医薬品名・数量・単位・ロット番号・使用期限の表がある
別紙様式4-1「医薬品の販売授与証明書」(出典:厚生労働省)

この様式を見ると、自分で譲渡書を作る必要がないことが分かります。そして何を確認すべきかも、様式が教えてくれます。

とくに見落とされやすいのが「確認書類」の欄です。

確認書類:運転免許証・社員証・その他(    )

この欄が「販売授与先」と「販売授与元」の両方にあります。薬局そのものは「薬局開設許可番号・保険薬局コード」で特定しますが、それとは別に、やり取りした人の本人確認を求めている作りです。

急いで薬を渡した場面ほど、ここが空欄になります。様式を印刷して薬局に置いておくだけで、確認漏れは防げます。

ここは調剤報酬の話ではなく薬機法の要求です。記載が漏れると、実績があっても証明できません。

記載事項注意点
譲渡年月日——
譲受人(分譲先)の名称・所在地・電話番号——
譲渡人(自局)の名称・所在地・電話番号——
品名(医薬品名)——
数量単位も明記する
ロット番号(製造番号)忘れやすい
使用期限忘れやすい

そして運用として、

  • 譲渡書を相手へ交付し、控えに相手(譲受人)の受領印または署名をもらう
  • 控えを2年間保存する(個別指導で提示を求められる)

ロット番号と使用期限が抜けている譲渡書をよく見かけます。急いで渡した分ほど抜けます。渡す前に控えを写真で撮っておくだけでも違います。

他局へ患者を案内するときの手順

もうひとつの要件が、供給不足時に他局への案内または処方医への照会を行う体制です。案内する場合、順番が決まっています。

別紙様式4-2 医薬品供給不安等に伴う患者紹介に係る案内書の様式。(1)紹介元の記載欄と(2)紹介先への連絡事項欄に分かれている
別紙様式4-2「医薬品供給不安等に伴う患者紹介に係る案内書」(出典:厚生労働省 事務連絡 令和8年4月2日)

上が実物です。上半分の(1)が紹介元の記載欄、二重線から下の(2)が紹介先への連絡事項欄で、この2つは切り離さずに患者へ渡します。

様式の下段を見てください。(2)に「電話相談日時」「相談対応者氏名」を書く欄があります。事前に在庫確認の電話をしていなければ、ここは埋まりません。様式そのものが、電話を先にすることを前提に作られています。

そして(2)の下に、はっきり書かれています。

紹介先保険薬局ではこの案内書を2年間保管すること。

  • 先に電話で在庫を確認する。患者を送ってから「ありません」は不可
  • 国が指定する統一様式「案内書(別紙様式4-2)」を使う
  • 案内書は切り離さずに患者へ渡す

案内書に書く内容は2つに分かれます。

欄記入する内容
基本情報欄案内日/自局(紹介元)の所在地・名称・電話番号・FAX番号/対応した保険薬剤師の氏名と署名/患者名/在庫がない医薬品名/処方元保険医療機関/紹介先保険薬局の名称
紹介先への連絡事項欄紹介先保険薬局の名称/電話相談日時/相談対応者の氏名/在庫確認した医薬品名/自局で調剤できない理由(例:メーカー出荷調整のため)

「電話相談日時」と「相談対応者の氏名」を書く欄があるのが要点です。事前に在庫確認したことを、様式の上で証明させる作りになっています。電話をしていなければ埋まりません。

患者には、処方箋の有効期限内に紹介先へ行くこと、窓口で案内書を提示することを伝えます。患者の承諾があれば、処方箋を紹介先へFAXすることもできます。

案内しなくてもいい ―― もうひとつの道がある

ここを知らずに苦労している薬局があります。

要件は「他の薬局への案内(事前の在庫確認を含む)または処方医への照会」です。案内だけが唯一の道ではありません。

他局への案内処方医への照会
やること在庫確認の電話 → 様式4-2を作成 → 患者に交付処方医に連絡し、在庫のある薬への変更等を相談
患者の移動必要(別の薬局へ行ってもらう)不要(自局で完結する)
書類様式4-2の作成・交付疑義照会の記録(薬歴)
向く場面その薬でなければならない場合代替可能な薬効群の場合

患者を歩かせずに済むのは照会のほうです。供給不安で欠品しているのが後発品で、同一成分の別メーカー品や先発品で対応できるなら、処方医に相談したほうが患者の負担は小さい。

体制として求められているのは「どちらかを行う運用があること」です。店舗のルールとして、どちらを原則にするかを決めておくと、現場が迷いません。

実務的には、まず処方医に照会し、変更不可なら他局へ案内するという順序が自然です。この順番を店舗の手順書に書いておけば、それがそのまま「体制がある」ことの説明になります。

「計画的な購入・在庫管理」とは何を指すか

加算1のもうひとつの要件です。分譲実績ほど話題になりませんが、指導で説明を求められるのはむしろこちらです。

求められているのは、供給不安のなかで在庫を場当たり的に持たない体制です。具体的には次のような運用が該当します。

  • 出荷調整品目を把握している——メーカーの出荷情報を定期的に確認する担当と頻度が決まっている
  • 買い占めをしない——供給不安を理由に必要量を超えて発注しない
  • 不動在庫を把握している——使用期限と回転を管理し、期限切れ廃棄を減らす
  • 分譲できる余剰を把握している——これがそのまま分譲実績につながる

最後の項目に注目してください。不動在庫と余剰を把握していれば、近隣から問い合わせが来たときにすぐ答えられます。在庫管理と分譲実績は、別々の要件に見えて実はつながっています。

在庫リストを近隣薬局と共有している薬局もあります。そこまでやらなくても、「うちで余っている品目」を月1回でも見直しておくだけで、分譲の機会は拾えます。

様式の最下段には、紹介元に向けた依頼文も印字されています。

紹介元保険薬局が、患者又はその家族等に、処方箋有効期限内に紹介先保険薬局に行くよう案内するとともに、紹介先保険薬局へ提示するよう説明した上で配布してください。

「渡すだけ」ではなく「説明した上で配布する」と書かれています。患者が案内書を出さなければ、紹介先は保存すべき書類を受け取れません。説明までが紹介元の仕事です。

案内された側になったら ―― 2年保存が発生する

見落とされやすいのはこちらです。案内を受け入れた薬局にも義務が生じます。

  • 患者が持参した案内書を、処方箋と一緒に必ず受け取る
  • 受け取った案内書は2年間保存する
  • 破棄も、患者への返却もしてはいけない

患者が「もう要らないので」と言っても返しません。受け取った側の保存義務です。運用としては、処方箋の控えと一緒に綴じてしまうのが確実です。

よくある質問

数年前の分譲実績でも要件を満たしますか

満たしません。要件は「直近1年間において、他の保険薬局に医薬品を分譲した実績があること」です。6月1日の算定開始に向けた5月届出であれば、前年6月1日から本年5月31日(または届出日)までが審査対象になります。

他社から譲り受けた実績ではだめですか

だめです。要件は「他の保険薬局に医薬品を分譲した実績」で、方向が決まっています。自局から出した記録が必要です。

クリニックや病院への分譲でもよいですか

認められます。疑義解釈で「保険医療機関への分譲も含まれる」ことが明示されています。門前クリニックへの分譲も、譲渡書等の証跡があればカウントされます。前述のとおり、ここが最も現実的な入口です。

同一グループの他店舗に融通した分はどうなりますか

カウントされません。グループ内の移動は対象外です。チェーン薬局ほど「日常的に融通しているのに1件も実績がない」という状態になりやすいので、注意が要ります。

今日から確認すること

  • ◻️ この1年で、グループ外へ分譲した記録があるか探した——記憶ではなく書類で
  • ◻️ 譲渡書にロット番号と使用期限が入っているか確認した——最も抜けやすい2項目
  • ◻️ 控えに相手の受領印または署名があるか確認した
  • ◻️ 実績がゼロなら、門前クリニックとの分譲から検討した
  • ◻️ 初回取引先と薬局開設許可証等のコピーを交換する運用にした
  • ◻️ 他局へ案内するとき、先に電話で在庫確認しているか——様式4-2に相談日時と対応者名を書く欄がある
  • ◻️ 案内されて受け入れた患者の案内書を2年保存する仕組みがあるか
  • ◻️ 後発医薬品の調剤数量割合が85%以上あるか——こちらは短期では動かない

27点を取り逃さないために

分譲実績の要件は、直近1年間に1回です。ハードルとしては高くありません。

それでも届出できない薬局が出るのは、やっていないからではなく、記録していないからです。渡した事実はあるのに譲渡書がない。譲渡書はあるのにロット番号が抜けている。相手が同一グループだった。

月2,000回受付の薬局で、27点は月およそ54万円。譲渡書1枚の書き漏れで失う金額としては、あまりに大きい。

まずはこの1年分の譲渡書を探すところから始めてください。1枚でも要件を満たしていれば、届出できます。

あわせて読みたい

タイトルとURLをコピーしました