調剤ベースアップ評価料|途中入職・退職・40歳到達の扱いを厚労省の手引きから整理【2026年度改定・新設】

調剤ベースアップ評価料 途中入職・退職・40歳到達の扱いを厚労省の手引きから整理2026年度改定・新設 調剤報酬・制度改正
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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調剤ベースアップ評価料は、対象職員を間違えると計算が全部ずれます。そして、その線引きは直感に反します。

40歳以上の薬剤師は対象外薬剤師にだけ年齢の線が引かれている
なし事務職員の年齢制限令和8年度改定で対象に加わった
8点2027年6月からいまは4点。来年2倍になる
薬剤師は40歳で切られ、事務職員は年齢を問わない。ここを取り違えると、報告書の数字が根本から狂います。
調剤ベースアップ評価料の対象職員。40歳未満の薬剤師と事務職員等は対象、40歳以上の薬剤師・管理者・事業主・使用者・開設者・業務委託により勤務する者・本部職員やエリアマネージャー等は対象外
保医発0305第8号 第109の1(2)。施設基準は除外する者を列挙する形で書かれている

対象職員は誰か(40歳の壁)

まず、ここを間違えると全部ずれます。

施設基準通知に、薬局向けの定義がそのまま書かれています。

当該保険薬局に勤務する職員(事業主、使用者、開設者、管理者、40歳以上の薬剤師及び業務委託により勤務する者を除く。以下、この区分において「対象職員」という。)がいること。ただし、他の保険薬局又は事業所を主たる勤務先とし、当該保険薬局における調剤業務等に直接従事していない管理的業務に専従する者(本部職員、エリアマネージャー等)は、対象職員に含めない。

「管理者」——つまり管理薬剤師も、年齢に関係なく対象外です。概要資料には出てこない除外なので、ここは通知の原文で確認しておいてください。

薬局に引き直すと、こうなります。

職員対象
40歳未満の薬剤師対象
40歳以上の薬剤師対象外
管理薬剤師(=管理者)対象外(年齢を問わない)
事務職員等対象(年齢の制限なし)
業務委託により勤務する者対象外
事業主・使用者・開設者対象外
本部職員・エリアマネージャー等
(他の薬局等を主たる勤務先とし、当該薬局の調剤業務等に直接従事していない管理的業務の専従者)
対象外

薬剤師にだけ年齢の線が引かれています。事務職員には年齢制限がありません。そして管理薬剤師は、何歳であっても対象外です。若くして管理薬剤師になっている人も外れます。ここが直感に反するので、最初に押さえてください。

令和8年度改定では、この対象範囲そのものが拡大されました。改定前は「主として医療に従事する職員(医師、歯科医師、専ら事務作業を行う事務職員等を除く)」でしたが、改定後は事務職員と40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師が加わっています。

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「派遣」は、常勤か辞めるかの二択しかないと思っている人ほど知っておく価値があります。いま動く予定がなくても相場は交渉材料になりますし、地域差は大きい——厚労省の偏在指標で見ると、足りない地域ほど条件は動きます。在宅に移りたい方は「力を入れています」を届出で見分ける方法もどうぞ。

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計算の軸は「同じ年齢・職位で揃えて比べる」

ここが本記事の中心です。冒頭の3つの疑問は、すべてこの原理から答えが出ます。

賃金改善の実績は、次の2つを比べて判定します。

  • 改善後:当該評価料を算定した年度に勤務している対象職員の基本給等総額
  • 改善前:令和8年3月時点の給与体系を、当該年度に勤務している職員の賃金に当てはめた場合の基本給等総額

ただし、令和8年度の「賃金改善中間報告書」では基準日が違います。施設基準通知は「原則として令和8年3月時点」としていますが、中間報告書の様式は「令和8年5月(3月)時点の給与体系」となっており、厚労省のQAは「賃金改善を開始する前月の給与体系」と答えています。6月に賃金改善を始めたなら令和8年5月、7月からなら6月です(ベースアップ評価料等に関するよくあるご質問 令和8年8月18日時点 報告21)。

「令和8年3月時点の給与体系に当てはめた場合」とは何か。厚労省の手引きは、こう説明しています。

令和8年3月に、賃上げ後と同じ年齢・職位の人が在籍していた場合の給与です。

手引きに載っている例がわかりやすいので、そのまま引きます。

令和8年3月令和8年6月
係員Aさん 30歳 給与25万円主任Aさん 31歳 給与27万円

2万円上がっていますが、昇進なのか、年功なのか、ベースアップなのかが分かりません。そこで、次のように処理します。

令和8年3月のAさんの給与ではなく、令和8年3月に、6月と同じ「31歳の主任」が在籍した場合の給与を算出します。もし26万円であれば、26万円を記載します。(この額を27万円と比較します。)

つまり、実在した過去の給与ではなく、「今の職員を、昔の給与表に当てはめたら」という仮定計算をします。

これによって昇進・年功による上昇が差し引かれ、ベースアップによる改善分だけが残ります。評価料が賃上げに使われたかを見る仕組みなので、当然といえば当然の設計です。

途中入職・退職・40歳到達の考え方

この原理を当てはめると、3つの疑問はこう整理できます。

年度の途中で入職した職員

比較の基準は「当該年度に勤務している職員」です。令和8年3月に在籍していたかどうかではありません。

したがって、3月には居なかった職員でも、その職員の年齢・職位を令和8年3月時点の給与体系に当てはめて「改善前」の額を算出します。実在しなかった過去を仮定計算する、という点が独特です。

「入職したばかりだから比較のしようがない」とはなりません。給与表さえあれば計算できる設計になっています。

年度の途中で退職した職員

年度途中で雇用又は退職した対象職員の取扱い如何。
(答)雇用した月以降又は退職した月までは、対象職員として取扱って差し支えない。

対象は「当該評価料を算定した年度に勤務している対象職員」です。

報告書に記載するのは、賃金改善実施期間の開始月時点の常勤換算数と基本給等総額です(令和8年度の中間報告なら令和8年6月時点、7月開始なら7月時点)。その時点で在籍していれば集計に入り、その後に退職しても、開始月時点の数字は動きません。

なお、令和7年度分の実績報告について厚生局が示している考え方では、「初回届出時点」と「賃金改善実施期間の開始月時点」のいずれにも在籍している職員を対象に常勤換算数を出す、とされています。算出が困難な場合は、初回届出時点の1人あたり平均額に、開始月時点の対象職員数を乗じる方法も認められています。

人の出入りで数字が歪まないよう、比較する集団を揃えるのが一貫した考え方です。

年度の途中で40歳になる薬剤師

誕生日ではありません。月の初日で判定します。

疑義解釈(その3・令和8年4月20日 事務連絡)に、そのものずばりの問答があります。

問 ベースアップ評価料の算定期間中に40歳となった医師、歯科医師及び保険薬局に勤務する薬剤師について、対象職員に含める基準(中略)における取扱い如何。

(答)賃金の支払いの対象となった月の初日時点で、40歳未満であれば対象職員として扱う。

つまり40歳の誕生日を迎えた月は、まるごと対象に含まれます。外れるのは翌月からです。

8月15日に40歳になる薬剤師月初日の年齢対象
7月39歳対象
8月(誕生日のある月)39歳(8月1日時点)対象
9月40歳対象外

「誕生日で切る」と処理すると、その月がまるまるずれます。ここは間違えやすいところです。

同じ問答には、続けて変動があったときの記載方法も示されています。

当該評価料算定期間中に対象職員の変動があった場合の賃金改善実績報告書等への記載については、「対象職員として取扱って賃金改善を行った期間における基本給等の総額」を「ベースアップ評価料の総算定月数」で除した値を1月当たりの基本給等総額に計上すること。

年度の途中で対象から外れた職員も、対象だった期間の総額を、算定月数で割って計上するという処理です。除外して終わりではありません。

あわせて、対象職員の数に1割以上の変動があり、区分が変わる場合は、算出を行った月内に地方厚生(支)局長へ届出を行い、翌月から変更後の区分で算定します。

第109 調剤ベースアップ評価料の施設基準(3)(5)(6)を並べた図。(3)使途は、当該評価料により得られる収入を対象職員の基本給又は決まって毎月支払われる手当(基本給等)の引上げ(ベア等)及びそれに伴う賞与、時間外手当、法定福利費(事業者負担分等を含む)等の増加分に用いること。夜勤手当は、恒常的に夜間を含む交替制勤務をとっている職員に支払われるものについて決まって毎月支払われる手当に準じて基本給等に含めて差し支えない。例外として、処方箋受付回数の変動等により収入がベア等に用いた額を上回り追加でベア等を行うことが困難な場合に限り、賞与等の手当などベア等以外の方法による賃金改善が認められる。歯止めとして、賃金の改善を実施する項目以外の賃金項目(業績等に応じて変動するものを除く)の水準を低下させてはならない。(5)周知は、賃金改善を実施する方法等と就業規則等の内容を周知し、照会を受けた場合は書面を用いて説明すること等により分かりやすく回答すること。(6)店舗販売業を併設している保険薬局は、収入を保険調剤に従事する職員の賃上げにのみ用い、明瞭に分けられない場合は全職員数に全収入に対する保険調剤による収入の割合を乗じて得た職員数を用いること
厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」別添1 第109 調剤ベースアップ評価料 1(3)・1(5)・1(6)(令和8年度)

基本給等総額に何を含めるか

計算の元になる「基本給等総額」の範囲です。

含める含めない
基本給
毎月決まって支払われる手当
(扶養手当、住居手当、地域手当、通勤手当 等)
夜勤手当(恒常的に夜間を含む交代制勤務の職場に限る。令和8年度改定より追加)
賞与等、特定の時期にのみ支払われる手当
令和7年度「保険薬局における賃上げ・物価上昇に対する支援事業」の補助金による部分

補助金部分を除くという指定は見落としやすいところです。手引きには「調剤ベースアップ評価料による賃金改善分のみを比較するため」と理由が明記されています。補助金で上げた分まで評価料の実績に計上してしまうと、二重計上になります。

なお、調剤ベースアップ評価料を原資として支給される手当は含みます。

賞与の扱い

報告書には、報告年度と前年度の賞与の支給月数を記載します。

月数ではなく金額で支給している薬局も多いはずです。その場合の扱いも示されています。

「年間で支給された(令和8年度は支給予定の)賞与額 ÷ 基本給等」で割り出した月数を記載してください。職員が複数在籍する場合は、平均値を算出してください。

該当がない項目には「0」を入力します。空欄にすると正しく計算されません。

調剤ベースアップ評価料の届出・報告・保管の義務。届出は様式103、賃金改善実績報告書と賃金改善中間報告書は毎年8月に様式104の別添1又は2で地方厚生(支)局長へ報告、法人内・グループ内で集約する場合は別添2、賃金水準を引き下げて賃金改善を行う場合は特別事情届出書(様式94)、算定に係る書類は年度終了後3年間保管。対象職員からは事業主・使用者・開設者・管理者・40歳以上の薬剤師・業務委託者・本部職員等を除く
厚生労働省「特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」第109 調剤ベースアップ評価料(令和8年度)

手続きが変わりました

項目令和8年度の扱い
賃金改善計画書作成・提出は不要
賃金改善中間報告書算定した年度の8月に提出
賃金改善実績報告書翌年度の8月に提出
令和8年度の提出期限令和8年8月31日
賃金改善算定基礎額調剤ベースアップ評価料では算出不要

令和6年度から続いていた賃金改善計画書は不要になり、代わりに中間報告書が新設されました。計画を出させるのではなく、進捗を報告させる形に変わっています。

令和8年度の報告期間

  • 開始月:令和8年度改定後の調剤ベースアップ評価料の算定を開始した月(令和8年6月または7月)
  • 終了月:令和8年7月

この回答は令和8年8月18日に訂正されています。それ以前に確認した内容で作業している場合は、必ず現行の記載を確認してください。

中間報告書が不要なケース

令和8年8月以降に新たに算定を開始する場合、中間報告書の提出は不要です。令和8年度の実績は、翌年8月の実績報告書で報告します。

また、令和8年4月から5月の実績は、報告書に記載する箇所がないため反映不要とされています。

複数店舗をまとめて計算できます

令和8年度改定で、同一の給与体系に基づく法人内・グループ内の複数薬局について、「月額賃金総額」や「対象職員数」を通算できるようになりました。

通算する場合は、様式104の別添2を使用します(通算しない場合は別添1)。

ただし注意点があります。報告書は保険薬局ごとに作成・提出が必要です。本部でまとめて1通、というわけにはいきません。メールで提出する際も、薬局ごとにメールを分けるか、本文にどの薬局の報告かを明記します。

また、Zip等で圧縮すると受理されません。細かい話ですが、本部でまとめて送る運用にしていると引っかかります。

本部・管理薬剤師のチェックリスト

  • ◻️ 薬剤師を40歳未満・40歳以上で分けた名簿を作った
  • ◻️ 40歳前後の薬剤師について、判定時点を厚生局に照会した
  • ◻️ 業務委託・経営者・法人役員を対象職員から除外した
  • ◻️ 事務職員を漏れなく含めた(年齢制限なし)
  • ◻️ 令和8年3月時点の給与表を保管している(仮定計算に必須)
  • ◻️ 途中入職者について、その年齢・職位を3月の給与表に当てはめて算出した
  • ◻️ 基本給等総額に毎月支払う手当を含めた(扶養・住居・地域・通勤 等)
  • ◻️ 交代制勤務の夜勤手当を含めた(令和8年度改定より)
  • ◻️ 令和7年度の補助金による部分を除外した
  • ◻️ 賞与が金額支給なら、年間賞与額÷基本給等で月数に換算した(複数人なら平均)
  • ◻️ 空欄を残さず、該当なしは「0」を入力した
  • ◻️ 通算する場合、別添2を使い、薬局ごとに提出した

実務でいちばん詰まるところ

店舗運営を支援する立場から言うと、この報告で本当に大変なのは数式ではなく、前提データを揃えることです。

とくに「令和8年3月時点の給与表」が残っているか。仮定計算はこれがないと成立しません。改定のたびに給与表を上書きしている法人は、過去の版を保管する運用に変えておく必要があります。

そして職員の生年月日と職位の履歴。40歳の線引きと職位の当てはめに、両方が要ります。人事データと給与データが別システムだと、ここで手作業が発生します。

報告書そのものはExcelの自動計算が効くようになっており、入力箇所は赤いセルだけです。緑のセルは自動計算なので触りません。詰まるのは、その赤いセルに入れる数字を作る前段の工程です。

まとめ

  • 調剤ベースアップ評価料は令和8年度改定で新設
  • 対象職員は40歳未満の薬剤師と事務職員等。40歳以上の薬剤師は対象外。事務職員に年齢制限はない
  • 計算の軸は「令和8年3月に、同じ年齢・職位の人がいたら」という仮定計算。昇進・年功分を差し引き、ベア分だけを見る
  • 途中入職者も対象。3月に居なくても、年齢・職位を給与表に当てはめて算出する
  • 基準は賃金改善実施期間の開始月時点の在籍
  • 40歳到達の判定時点は、公開資料からは確定できなかった。該当者がいる薬局は厚生局へ照会を
  • 令和7年度の補助金による部分は含めない
  • 賃金改善計画書は不要。中間報告書(8月)と実績報告書(翌年8月)

この計算を自動化するツールを開発しています

40歳の年齢境界の判定、年度途中の入退職者の按分、令和8年3月の給与体系への当てはめ——本記事で整理した計算を、毎回Excelで手作業していませんか。

本部で全店分の集計を担当する中で、この計算を自動化するツールを開発しています。21日〆〜20日締といった給与サイクルにも対応し、6人分のベンチマークデータで検証済みです。

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出典

※ 40歳到達の判定時点は、疑義解釈資料(その3・令和8年4月20日 事務連絡)問5に明記されています。

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