執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。
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令和8年度改定で新設された薬学的有害事象等防止加算。算定要件は読めば分かりますが、「実際にどんな場面で取れるのか」が分かりません。とくに「そのほか薬学的観点から必要と認める事項」が広すぎます。
そこで、全国の薬局から報告されて公開されている実例から、型を抜き出しました。通知の原文とあわせて、この記事だけで判断できるようにしています。
算定要件——「処方が変わったか」が全て
薬学的有害事象等防止加算は、薬剤服用歴等又は患者及びその家族等からの情報等に基づき、次に掲げる内容について、処方医に対して連絡・確認を行い、処方の変更(残薬調整に係るものを除く。)が行われた場合に処方箋受付1回につき算定する。
ア 併用薬との重複投薬(薬理作用が類似する場合を含む。)
イ 併用薬、飲食物等との相互作用
ウ そのほか薬学的観点から必要と認める事項
「処方の変更が行われた場合」が条件です。疑義照会をして、医師が「このままでいい」と答えたら算定できません。ここが最初の分かれ目です。
そして残薬調整は除かれます。残薬を理由に日数が減った場合は、こちらではなく調剤時残薬調整加算です。
4つの区分と点数
| 区分 | 対象 | 点数 |
|---|---|---|
| イ | 在宅(在宅患者訪問薬剤管理指導料・在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料・在宅患者緊急時等共同指導料・居宅療養管理指導費・介護予防居宅療養管理指導費)を算定している患者で、処方箋の交付前に処方医へ提案を行い、その提案に基づく処方箋を受け付けた場合 | 50点 |
| ロ | 上記の在宅を算定している患者で、(1)を実施した場合 | 50点 |
| ハ | 服薬管理指導料「1のイ」または「2のイ」(=かかりつけ薬剤師)を算定する患者で、(1)を実施した場合 | 50点 |
| ニ | イ〜ハ以外で、(1)を実施した場合 | 30点 |
イは「処方箋が来る前」の提案です。在宅で訪問したときに気づいて医師へ伝え、その内容が処方箋に反映されて届く——この順番でないとイになりません。
同じ内容でも、かかりつけ薬剤師の患者なら50点、そうでなければ30点。差は20点です。

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。
算定できない・注意が必要な場面
- 調剤管理料を算定していない場合は算定できません(要件(5))
- 同時に複数の処方箋を受け付け、複数の処方箋について薬剤を変更した場合でも1回限り(要件(6))
- 残薬調整に係るものは除く。そちらは調剤時残薬調整加算
- 薬剤調製料の時間外加算等の基礎額には含まれません(自家製剤加算・計量混合調剤加算・調剤時残薬調整加算と同じ扱い)
実例1:1年以上続いていた併用が、突然禁忌になっていた
患者はカルブロック錠16mg(アゼルニジピン)とクラリシッド錠200mg(クラリスロマイシン)を1年以上継続して服用していました。今回も同じ処方です。
ところが2026年3月に両剤の添付文書が改訂され、新たに併用禁忌になっていました。薬剤師が気づいて疑義照会し、カルブロックがアテレック錠10へ変更されています。
報告された要因が、この事例の怖いところです。
- 薬局から処方元へ情報提供はしていたが、長期間続いていた処方だったため医師が見逃した
- 薬局のレセコンにも併用禁忌の情報が自動更新されていなかった。医療機関の電子カルテでも同様で、チェックシステムが働かなかった可能性がある
事例のポイントには、こう書かれています。
新たに追加された併用禁忌が電子カルテやレセプトコンピュータなどの相互作用チェック機能へ反映されるまでには一定の時間を要する場合があり、システムに依存した監査だけでは見逃される可能性がある。人的な確認が行えるように、安全性情報が更新された際には薬局内へ情報を周知しておくことが重要である。
レセコンが鳴らない期間があります。添付文書が改訂されてから、システムに反映されるまでの空白です。ここは人が見るしかありません。
実例2:用法用量が変わったことを、処方医が知らなかった
痛風発作の患者が、かかりつけの医療機関Aから数か月前よりコルヒチン錠を処方されていました。発作で歩行困難になり、自宅近くの医療機関Bを受診。患者は内服中であることを伝え、それまでと同量の「1回1錠 1日6回 3〜4時間おき」が処方されました。
薬剤師は2026年6月にコルヒチン錠の添付文書が改訂され、用法及び用量が変更されていたことを把握していたため疑義照会し、「1回1錠 1日2回 朝夕食後」へ変更されました。
| 改訂前 | 改訂後(2026年6月) |
|---|---|
| 1日3〜4mgを6〜8回に分割経口投与 | 1回0.5〜1.0mgを1日1回又は2回 ただし1日の総投与量は1.5mgを超えないこと |
背景には、1日1.5mgを超える高用量の投与により重篤な中毒症状(胃腸障害・血液障害・腎障害・肝障害等)が発現し、死亡に至った症例が報告されていたことがあります。
推定される要因は「医療機関Bの処方医はコルヒチン錠を処方することが少なかった」。処方頻度の低い薬ほど、改訂が届いていません。
実例3:新しい薬の「初回量」と「維持量」
持効型インスリンがランタスXR注ソロスター(1日1回)からアウィクリ注フレックスタッチ(週1回)へ変更になった患者。処方箋には100単位を週1回で継続投与と書かれていました。
この量は、連日投与していたBasalインスリンの1日総投与量の7倍をさらに1.5倍にした量。添付文書上、初回投与量としては適切ですが、2回目以降の維持量としては過量です。疑義照会の結果、2回目以降は70単位へ変更となりました。
| アウィクリ注の投与量(添付文書 7.4) | |
|---|---|
| 維持量 | 連日投与していたBasalインスリンの1日総投与量の7倍に相当する単位数が目安 |
| 初回のみ | 切替時の血糖上昇を防ぐため、上記を1.5倍に増量(2型では推奨、1型では原則) |
初回量を維持量として続けてしまう——新しい投与間隔の薬に共通する落とし穴です。アウィクリ注は国内初の週1回投与の持効型インスリンで、2025年1月に販売開始されたばかりです。
3件に共通する型
並べると、はっきりします。
| 事例 | きっかけ | 医師が見逃した理由 |
|---|---|---|
| カルブロック×クラリシッド | 2026年3月の添付文書改訂(新たに併用禁忌) | 1年以上続いていた処方だった |
| コルヒチン | 2026年6月の添付文書改訂(用法用量変更) | 処方することが少ない薬だった |
| アウィクリ注 | 新規性の高い薬の用量設計 | 初回量と維持量が異なる薬だった |

つまり薬学的有害事象等防止加算を積み上げる近道は、添付文書の改訂を追うことです。改訂情報を薬局内で共有し、該当薬を継続している患者を抽出して先に確認しておく。事例のポイントにも、そう書かれています。
算定につながる型の一覧
要件のア・イ・ウに沿って整理します。いずれも「処方が変わった」ときに算定できます。
| 要件 | 型 | 気づく場面 |
|---|---|---|
| ア 重複投薬 | 同一成分の重複(別医療機関・別名称) | お薬手帳、他科受診の聞き取り |
| 薬理作用が類似する重複(要件に明記)——同種同効薬、抗コリン作用の重複、鎮静系の重複 | 成分名が違うので手帳では気づきにくい | |
| OTC・健康食品との重複 | 初回質問票、購入相談 | |
| イ 相互作用 | 添付文書改訂で新たに併用禁忌・注意になったもの | 改訂情報の確認。レセコン更新前は鳴らない |
| CYP阻害・誘導、P-糖蛋白質 | 抗菌薬・抗真菌薬の追加処方時 | |
| 飲食物との相互作用(要件に明記)——グレープフルーツ、納豆・青汁、乳製品、アルコール | 生活状況の聞き取り | |
| ウ その他 | 用法用量の改訂に追随していない処方 | 処方頻度の低い薬ほど起きる |
| 初回量と維持量が異なる薬で、初回量のまま継続 | 新規性の高い薬、投与間隔が長い薬 | |
| 腎機能・肝機能に対する用量過多 | 検査値、高齢者、脱水エピソード | |
| 禁忌(併用禁忌以外)の見落とし、アレルギー歴との不一致 | 初回質問票、副作用歴 | |
| 配合変化・投与ルート(在宅の注射剤) | 中心静脈栄養、抗菌薬の側管投与 |
薬歴に何を書くか——要件で決まっています
(3) 当該加算を算定する場合においては、重複投薬が生じる理由を分析するとともに、処方医に対して連絡・確認する際に必要に応じてその理由を処方医に情報提供すること。
(4) 薬学的有害事象等防止加算の対象となる事項について、処方医に連絡・確認を行った内容の要点、変更内容を薬剤服用歴等に記載する。
薬歴に残すのは、最低この3つです。
- 何に気づいたか(ア・イ・ウのどれか、根拠となる添付文書等)
- 処方医に連絡・確認した内容の要点
- どう変更されたか(変更後の薬剤名・用法用量)
重複投薬の場合は、これに「なぜ重複が生じたのか」の分析が加わります。「他科受診で同種同効薬が出ていた」「患者が別の薬局で受け取っていた」など、理由まで書きます。

この加算は、単独では終わりません
ここが実は一番大きいところです。かかりつけ薬剤師フォローアップ加算の算定対象患者は、次の両方に該当する人と定められています。
ア 服薬管理指導料「1のイ」又は「2のイ」を算定していること。
イ 直近6月以内に外来服薬支援料1、服用薬剤調整支援料1若しくは2又は調剤管理料の調剤時残薬調整加算若しくは薬学的有害事象等防止加算を算定していること。ただし、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算に係る業務を行うことによって当該算定に係る問題(残薬等)が解消されている場合を除く。
つまり1人の患者から、こう連鎖します。
- かかりつけ薬剤師の同意を得る服薬管理指導料「1のイ」「2のイ」を算定する
- その患者で薬学的有害事象等防止加算「ハ」を算定する50点。かかりつけでなければ「ニ」で30点
- 6か月以内なら、かかりつけ薬剤師フォローアップ加算が算定できる50点・3月に1回。要件イを満たしている状態
- 地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績が積み上がる実績ウ(残薬調整・有害事象)と エ(かかりつけ)に同時に効く
地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績要件は、ウが20回以上(加算4・5は40回)、エが20回以上(同40回)。しかも加算2ではエが必須項目です。この連鎖を意識するかどうかで、上位区分に届くかどうかが変わります。
狙う患者像もはっきりします。複数の医療機関にかかっていて、併用薬が多く、継続処方が長い患者。実例1がまさにそれでした。
明日からやることのチェックリスト
- ◻️ 添付文書の改訂情報を、薬局内で共有する仕組みがある(朝礼・電子薬歴への注意喚起登録など)
- ◻️ 改訂があったとき、その薬を継続している患者を抽出して事前に確認している
- ◻️ レセコンの相互作用チェックが更新されるまで、人が見る手当てをしている
- ◻️ 疑義照会したが処方が変わらなかった場合、算定していない
- ◻️ 残薬理由の変更は、調剤時残薬調整加算のほうで算定している
- ◻️ 薬歴に「気づいた内容」「照会の要点」「変更内容」の3つを書いている
- ◻️ 重複投薬のときは生じた理由の分析も書いている
- ◻️ かかりつけ薬剤師の患者かどうかで、ハ(50点)とニ(30点)を正しく分けている
- ◻️ 在宅の患者で、処方箋が来る前に提案できた場合は「イ」で算定している
- ◻️ 調剤管理料を算定していることを確認している
まとめ
- 算定できるのは「処方の変更が行われた場合」だけ。照会しただけでは取れない
- 区分はイ・ロ・ハが50点、ニが30点。かかりつけ薬剤師の患者かどうかで20点変わる
- 公開されている直近の事例は、3件中2件が添付文書の改訂に処方医が追いついていないケース
- 危ないのは新規処方ではなく、続いている処方・めったに出ない薬・出たばかりの薬
- レセコンの相互作用チェックは、添付文書改訂に遅れる。その空白は人が見るしかない
- 薬歴には気づいた内容・照会の要点・変更内容。重複なら生じた理由の分析も
- この加算はかかりつけ薬剤師フォローアップ加算の前提要件であり、地域支援・医薬品供給対応体制加算の実績にも直結する
あわせて読みたい
- 調剤時残薬調整加算・薬学的有害事象等防止加算とは|7日分ルールと6日分以下の例外を通知原文から整理
- 地域支援・医薬品供給対応体制加算の全要件|加算1〜5の施設基準を通知原文から
- かかりつけ薬剤師指導料が廃止|服薬管理指導料イ・ロの分岐と新設加算2種を通知原文から整理
出典
- 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保医発0305第6号・0619訂正後)別添3 区分10の2 調剤管理料/区分10の3 服薬管理指導料
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713883.pdf - 公益財団法人日本医療機能評価機構「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」共有すべき事例 2026年No.8 事例1・事例2/2026年No.6 事例1
https://www.yakkyoku-hiyari.jcqhc.or.jp/contents/sharing_case/index.html - 日本薬剤師会「調剤報酬点数表(令和8年6月1日施行)」(点数の確認)
https://www.nichiyaku.or.jp/files/co/pharmacy-info/2026/20260402_01.pdf
※ 事例は上記事業で公開されている内容を要約したものです。詳細および専門家による「事例のポイント」の全文は、出典元でご確認ください。個別の算定可否は事実関係により判断が分かれます。

