覚醒剤原料は麻薬の金庫に入れられません|対象は2成分5品目、患者から返ってきたら届出が2回【誰にも聞けないシリーズ④】

覚醒剤原料は麻薬の金庫に入れられません|対象は2成分5品目、患者から返ってきたら届出が2回【誰にも聞けないシリーズ④】 薬局実務
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執筆:Nori(薬Talk編集長・薬剤師)/調剤薬局勤務26年。管理薬剤師を経て、現在はチェーン薬局の本社部門で店舗運営支援を担当しています。

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覚醒剤原料は、麻薬保管庫に入れてはいけません。毒薬・劇薬とも区別が要り、毒物・劇物の保管庫にも入れられない。鍵のかかる場所が、もう一つ必要になります。そして患者さんから返ってきたときは、届出が2回——麻薬より1回多い。対象になる医薬品は2成分5品目しかないのに、決まりごとは麻薬と別建てです。
5品目該当する医薬品セレギリンとリスデキサンフェタミン
2回患者から返却されたときの届出麻薬は1回。譲受と廃棄で別々
0件必要な免許・指定調剤に使うだけなら不要

該当するのは、2成分5品目です

まず範囲から。薬局で扱う「医薬品である覚醒剤原料」は、これだけです。

物質名商品名
セレギリン塩酸塩エフピーOD錠2.5
セレギリン塩酸塩錠2.5mg「アメル」
セレギリン塩酸塩錠2.5mg「タイヨー」
リスデキサンフェタミンメシル酸塩ビバンセカプセル20mg
ビバンセカプセル30mg

パーキンソン病の薬と、ADHDの薬です。それだけ。扱わない薬局のほうが多いと思います。

だからこそ、いざ処方が来たときに手が止まります。そのための記事です。

エフェドリンは指定されているのに、除外されています

覚醒剤原料の物質名一覧を見ると、見慣れた名前が並んでいます。エフェドリン、メチルエフェドリン、ノルエフェドリン。

驚きますが、続きがあります。

* エフェドリン、メチルエフェドリン、ノルエフェドリンについては覚醒剤原料として指定されているが、国内承認品はいずれも濃度規制の含有量以下であるため、覚醒剤原料から除外されています。

別名濃度規制
エフェドリン、プソイドエフェドリン10%以下除外
メチルエフェドリン10%以下除外
ノルエフェドリン、フェニルプロパノールアミン50%以下除外

濃度で線が引かれています。日本の承認品はすべて規制濃度を下回るので、覚醒剤原料としては扱いません。dl-メチルエフェドリンが入ったかぜ薬を、金庫に入れる必要はありません。

免許も指定も、要りません

麻薬は麻薬小売業者の免許が必要でした。覚醒剤原料は違います。

麻薬:薬局で麻薬を調剤するには、麻薬小売業者の免許が必要。

医薬品覚醒剤原料:薬局で医薬品覚醒剤原料を調剤する際、覚醒剤原料取扱者等の指定不要。

ただしできることは調剤に限られます。

薬局は、調剤で使用する場合に限り、医薬品覚醒剤原料を取り扱うことができます。

しかし、覚醒剤原料取扱者の指定を受けていない薬局では、医薬品でない覚醒剤原料(試薬等)を取り扱うことはできません。また、医薬品覚醒剤原料であっても、調剤以外(販売、譲渡、薬局製造販売医薬品の製造等)の目的で取り扱うことはできません。

そして麻薬と同じく、貸し借りができません。「他の薬局(開設者が同一である場合を含む。)、病院又は診療所との貸し借り並びに購入先への返品をすることはできません」と明記されています。

覚醒剤取締法における覚醒剤原料の保管と届出。保管は鍵をかけた場所、麻薬保管庫には入れられない。患者から譲り受けたときは速やかに、廃棄したときは30日以内に都道府県知事へ届け出る
覚醒剤取締法 第30条の12・13・14/2行目のみ麻薬及び向精神薬取締法 第34条第2項

麻薬の金庫に入れられません

ここが本題です。保管の条件が、他の3つの区分すべてと衝突します。

ア 覚醒剤原料は、薬局内のできるだけ人目につかない場所で、かつ、かぎをかけた場所に保管しなければなりません。
なお、「かぎをかけた場所」とは、施錠設備のある倉庫、薬品庫、金庫、ロッカー、医薬品棚、引き出し等のことです。

イ 覚醒剤原料保管庫は、容易に破られない材質のものにしてください。

ウ 覚醒剤原料保管庫が容易に持ち運べる場合は、床にボルト等で固定してください。

エ 覚醒剤原料は、麻薬保管庫内で保管することはできません。(麻薬及び向精神薬取締法第34条)

オ 覚醒剤原料は、毒薬・劇薬と区別して保管しなければなりません。(医薬品医療機器等法第48条)

カ 覚醒剤原料は、毒物・劇物を貯蔵する保管庫内で保管することはできません。

整理すると、こうなります。

一緒に置けるか
麻薬保管庫不可
毒薬(鍵をかけた場所)区別が必要
毒物・劇物の保管庫不可

つまり、覚醒剤原料のための鍵つきの場所が別に要ります。「麻薬金庫に空きがあるから」は通りません。

ただし設備の水準は麻薬より緩いです。麻薬は「鍵をかけた堅固な設備」=固定式か重量金庫でしたが、覚醒剤原料は「かぎをかけた場所」で足ります。施錠できる引き出しでも構いません。

条件は2つ。容易に破られない材質であること、そして持ち運べるものなら床にボルト固定すること。

毒薬・劇薬の保管については毒薬と劇薬は何が違うのか|かぎをかけるのは毒薬だけに書きました。

患者さんから返ってきたら、届出が2回です

麻薬では、廃棄後に「調剤済麻薬廃棄届」を出せば終わりでした。覚醒剤原料は2段階です。

  1. 譲り受けたとき速やかに「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料譲受届出書」を管轄の保健所等へ
  2. 廃棄したとき廃棄後30日以内に「交付又は調剤済みの医薬品である覚醒剤原料廃棄届出書」を管轄の保健所等へ

受け取った時点で1回、捨てた後にもう1回。麻薬と同じつもりでいると、最初の届出を落とします。

廃棄の方法は麻薬と同じで、管理薬剤師等が薬局の他の職員の立会いの下、焼却・放流等、回収が困難な方法で行います。保健所職員の立会いは不要です。30日以内なら複数回分をまとめて1通で出せます。

そして再利用はできません。「患者等から譲り受けた交付又は調剤済の医薬品覚醒剤原料は、再利用できず、速やかに廃棄する必要があります」と明記されています。

よその薬局が出した分も、引き取れます

ここは麻薬より広い。

医薬品覚醒剤原料の交付を受けた患者やその相続人等から、施用中止又は死亡等の理由により施用する必要のなくなった医薬品覚醒剤原料を譲り受けることができます(他の病院や薬局等が交付した医薬品覚醒剤原料を含む)。

薬局は、どこが交付したものでも受け取れます。一方、病院等が受け取れるのは自分が交付したものだけ、という整理になっています。

もう一つの廃棄届は、保健所職員が帳簿に書きます

患者に渡していない分——古くなった、変質した、調剤過誤で使えなくなった——は、別ルートです。ここは麻薬とまったく同じ構造で、事前届出+立会いになります。

覚醒剤原料廃棄届出書交付又は調剤済み…廃棄届出書
対象古くなった/変質・汚染・破損/使用の見込みがない/調剤過誤患者・相続人等から返却されたもの
届出廃棄する前廃棄後30日以内
立会い管轄の保健所等職員薬局の他の職員
帳簿の記入立ち会った保健所等職員が行う薬局が行う

帳簿の備考欄は、廃棄に立ち会った保健所等の職員が記入します。立ち会った職員の記名押印又は署名も入ります(手引 Ⅲ 2 の記載例)。

手引は、はっきり警告しています。「覚醒剤原料廃棄届出書で廃棄手続きを行うべき覚醒剤原料を無断で廃棄した場合、法違反となりますので、十分注意してください」。

令和2年4月に、麻薬と揃った点があります

いまの制度は、そう古くありません。令和2年4月1日施行の覚醒剤取締法改正で、麻薬と同じ扱いになった項目があります。

項目改正で可能になったこと
所持患者が死亡した場合、相続人等による所持が可能
返却患者・相続人等から薬局へ返却が可能
廃棄交付又は調剤済みのものに限り、都道府県職員の立会いなしに廃棄可能
譲渡大臣の許可を受ければ、品質不良等のものを譲り渡せる
携帯輸出入許可を受ければ、自己の疾病の治療目的で携帯輸出入が可能

逆に言えば、令和2年3月までは「患者が亡くなったら相続人が持てない」状態でした。返却も廃棄も、受け皿がなかった。いまの2回の届出は、その受け皿として作られた手続きだと考えると腑に落ちます。

麻薬との違いを、1枚に

麻薬医薬品覚醒剤原料
免許・指定麻薬小売業者の免許が必要不要(調剤に使う場合)
保管鍵をかけた堅固な設備(固定式・重量金庫)かぎをかけた場所(施錠できる棚・引き出し可)
同居麻薬以外の医薬品と区別麻薬保管庫は不可/毒物・劇物の保管庫も不可/毒薬・劇薬とは区別
返却の受け皿麻薬診療施設か麻薬小売業者薬局(他所が交付した分も可)/交付した病院等
返却時の届出廃棄後に1回譲受時と廃棄後の2回
事故届数量基準なし数量基準なし
帳簿の保存最終記載から2年最終記載から2年
年間報告あり(11月30日まで)なし
廃止時の報告15日以内に所有数量を届出(免許が効力を失ったとき)15日以内に所有数量を報告(所有なしでも)
出典:東京都「覚醒剤原料取扱いの手引(薬局用)」令和8年3月改訂 Ⅱ・Ⅴ/麻薬及び向精神薬取締法 第34条・第35条・第36条・第38条・第47条/覚醒剤取締法 第30条の12・第30条の14・第30条の15・第30条の17

事故届は麻薬と同じく数量基準がありません。喪失・盗取・所在不明のとき、速やかに「覚醒剤原料事故届出書」を提出します。盗取なら警察署にも届け出ます。

立入検査についても、麻薬・向精神薬と同じ書き方です。「犯罪捜査のために行うものではありません」——覚醒剤監視員が身分証票を携帯しているので、提示を求めて確認します。

薬局で確認すること

  • ◻️ 覚醒剤原料を麻薬保管庫に入れていない
  • ◻️ 毒物・劇物の保管庫にも入れていない/毒薬・劇薬と区別している
  • ◻️ 保管場所が施錠でき、容易に破られない材質である
  • ◻️ 持ち運べる金庫なら床にボルト固定している
  • ◻️ 患者から返却を受けたら「譲受届出書」を速やかに出す手順がある
  • ◻️ 廃棄したら「廃棄届出書」を30日以内に出す手順がある(届出は2回)
  • ◻️ 返却されたものを再利用していない
  • ◻️ 調剤過誤等は事前届出+保健所職員の立会いだと理解している(無断廃棄は法違反)
  • ◻️ 覚醒剤原料専用の印を用意している(麻薬との兼用印は可。ゴム印・スタンプ印は避ける)
  • ◻️ 譲渡証を2年間保存している/帳簿を最終記載から2年保存している
  • ◻️ 帳簿の訂正に修正液・修正テープを使っていない
  • ◻️ 他店舗との貸し借り・卸への返品をしない(同一開設者でも不可)

まとめ

  • 対象は2成分5品目。セレギリン(エフピーOD錠等)とリスデキサンフェタミン(ビバンセカプセル)
  • エフェドリン類は指定されているが、国内承認品は濃度規制以下のため除外されています
  • 調剤に使うだけなら、免許も指定も不要です。ただし調剤以外の目的では扱えません
  • 麻薬保管庫に入れられません。毒物・劇物の保管庫も不可、毒薬・劇薬とも区別。鍵のかかる場所がもう一つ要ります
  • 設備の水準は麻薬より緩く「かぎをかけた場所」で足ります。持ち運べるなら床にボルト固定
  • 患者から返ってきたら届出が2回。譲受時に速やかに、廃棄後30日以内にもう1回
  • 薬局は、よそが交付した分も引き取れます。返却されたものは再利用できません
  • 調剤過誤等の廃棄は事前届出+保健所職員の立会い。帳簿の記入は立ち会った職員が行います。無断廃棄は法違反
  • いまの仕組みは令和2年4月1日施行の改正で整いました。それ以前は相続人が所持することもできませんでした

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※ 本記事の制度・添付文書に関する記載はすべて原文を確認しており、広告主の影響を受けていません。

出典

※ 本記事は東京都保健医療局が公開している手引(令和8年3月改訂)の原文と、覚醒剤取締法・麻薬及び向精神薬取締法の条文に基づいています。
※ 様式・提出先・運用は自治体により異なります。届出先は「管轄の保健所等」で、都道府県ごとに窓口が違います。お住まいの都道府県が公開している手引を必ずご確認ください。
※ 品目一覧は令和8年3月現在のものです(2026年10月28日確認)。指定は政令で改正されます。

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